保護したい日本文化


日本にしかなく、
外国語に訳すことがひどく困難なあれは、
そろそろ、レッドデータブックに登載されるであろう。

それは、
「お化け」「もったいない」だ。

”お化け”――
似た言葉は、たくさんあり、
それらなら何とか訳せる。

「化け物」、「怪物」……Monster
「幽霊」、「亡霊」……Ghost、Apparition

といった感じだろうか。
が、お化けはどうにもなりそうにない。

怪物というのは、フランケンシュタインやドラキュラ、狼男などであり、
幽霊は、死後の人間がこの世に姿をあらわしたものである。
(地域・時代によって、幽霊の考えは若干異なるが……)

そして、お化け――
お化けカボチャ、顔のある傘、ちょうちんの化け物……
あたりがメジャーなところだろう。
怪物と似ているようだが、
どこかユーモラスであり、
億が一、実際に出会ったら、
怖がるよりも、笑ってしまう可能性すらある(失礼なのかな?)。

このような”お化け”は、
物、そして川、山にも、
ヒトと同じような心がある、と考える日本文化の
代表的産物と言えるだろう。

(直感的に考えても、
目のついた傘が人を脅かしたり、
ちょうちんが、
火を放ちながら追いかけてきたりする、なんてことは
日本以外で起こりそうにない(笑)。)

さて、もうひとつの
”もったいない”
和英辞典だと、”Waste(無駄)”と出ていたが、
これは明らかに違う気がする。

もったいない、は、
ダメになりゆく物を見たとき、再び復活させてみたくなる感覚。
あくまで、本能的・瞬間的に感じるもので、
”無駄だ”と感じるときのような、
損得勘定は働いていないことが多い。

これも、お化けと同様、
物を擬人化する、日本ならではの
感情であろう。

この2つは、
絶対に絶滅してほしくない。
物を大切にしよう、
という考えを継承するのに、
この2つがあれば十分過ぎるくらいだから。
すぐにでも、特別天然記念物に指定して、
保護するべきだろう。

尚、お化けの中に、
”座敷わらし”というものが伝えられている。

ある地域の民話によると――
昔、とてつもなくやさしい女の子が病気に倒れ、
「みんな幸せになりますように」
と言いながら死んだという。
そして、この生まれ変わりが”座敷わらし”に
なったのだとか。

座敷わらしが出ると、
その家には、よいことが起こると伝えられる。
座敷わらしが、
家々に幸福を運んでいるからだそうだ。

ところが、誰かから聞いたが(TVだったかな)、
お化けの減少とともに、
座敷わらしも滅びてしまった。

その結果、景気が悪くなり、
治安が悪化して、事件も増えたとか。

座敷わらし、
という、科学的でないモチーフが使われているにもかかわらず、
どんな理論よりも説得力があるような気がするのは
自分だけだろうか。


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