索道7号支柱及びその前後の支柱建設差止仮処分命令申立書

 名古屋地方裁判所 御中

                                平成16年1月13日

申し立ての趣旨
1.債務者(二千五年日本国際博覧会協会)は、二千五年日本国際博覧会に関わる索道7号支柱およびその前後の支柱を建設してはならない。
2.訴訟費用は債務者の負担とする。
 との判決を求める。

申し立ての理由(被保全権利及び保全の必要性)
 財団法人二千五年に本国際博覧会協会は二千五年日本国際博覧会(以後、博覧会という)の2つの会場をつなぐ輸送手段としての索道建設を計画しており、計画では索道の支柱が保安林の中に建設されることになっている。豪雨による土砂災害の危険があることやプライバシーを侵害される恐れがあることから、本申し立て債権者を代表とする瀬戸市上之山町3丁目住民は索道7号支柱及びその前後の支柱建設差止請求事件(平成15年(ワ)第5148号)で裁判中である(甲−1)。

1.索道7号支柱建設予定地周辺は保安林の中にあり、愛知県砂防課による土砂災害危険個所マップに示される、土石流危険渓流地域に位置する(甲−2)。前後の支柱も隣接する山中に計画されており、ひとたび工事が始まれば、この地域での木々の伐採や地形の改変は、豪雨による瀬戸市上之山町3丁目での土石流災害等の危険性が大きい。

2.索道支柱の建設が計画されている地域は保安林を含む場所であり、土石流危険渓流とされる地域であるのに、建設工事及びその後の土砂災害等会費のための方法が示されていない。債権者と瀬戸市上之山町3丁目住民は債務者に対し住民説明会の開催を再三要求してきたが聞き入れられず(甲−3)、索道建設は着工されようとしている。このままでは住民の土砂災害等における不安が大きい。

3.博覧会終了後、索道の撤収がいつどのように行われ、撤収後の災害保全対策がどのように計画されているのか、いずれにしても示されていない。索道支柱建設で、ひとたび木々の伐採や地形の改変が行われれば、その地が保全力を回復するまでに10年以上の年月を必要とする。博覧会終了後の防災体制・責任の所在について不明確であり、住民の不安が大きい。

4.ひとたび工事が始まれば、上記危険性を回避することはできず、本件を告訴した「索道7号支柱及びその前後の支柱建設差止請求事件(平成15年(ワ)第5148号)」の判決を待つことができないので、建設工事を中止する仮処分を申請するにいたった。

         疎明方法

甲1 索道7号支柱及びその前後の支柱建設差止請求事件訴状
       平成15年(ワ)第5148号          1通
甲2 愛知県砂防課土砂災害危険個所マップ           1通
甲3 住民説明会開催要望書とその回答             1式

         添付資料
甲号証                       各1通
登記簿謄本                     各1通

                                以上

プライバシーについて
 大多数の市民は自宅を購入するとき その人自身に大きな犠牲を強いる高額の長いローンを覚悟する。そのため 住まい家を
選択する時 人は生き方をも表明するのではないか。
 当町を「終の棲家」としたここの町民は 都会の便利さよりも 交通が不便であっても この山間の静けさを選んだ。言うなれば ひときわプライバシーにこだわる町民性があるといえよう。とはいえ平成13年5月23日の愛知万博会場間ゴンドラ説明会(資料1)に出てくる町の住民の言葉(「住民が見せ物になる」「半年カーテンを締めてくらせって?」(あの家はメシを食ってるぞ)他にも「下着が干せない」)は 万人共通の心配である。しかし これらの声にたいし協会の担当者は 「(お客様には)前に注意を引きつけてもらう。」という発言で 住民のプライバシーについてというより「そこに人間が住む住宅があるという事実」に全く頓着しない 故意に無視をする体質を露呈している。現に平成14年6月に発表された「環境影響評価書」の1259ページの「(ゴンドラルートの)視点の雰囲気」では(資料2)「付近に住宅等はなく・・・」と一般閲覧者にはゴンドラルート周辺にはあたかも 人間の居住地はないような印象を与える記述があり この町の住人は「人間としての存在権」を「環境影響評価書」という公の文書上で否定されたとの思いが拭えない。
 平成14年12月1日の説明会で「調光曇りガラス」(断電により透明ガラスがスモークガラスになる)の採用発表及び実験があったが(資料3)この時のガラス見本はフラットなタイプであった。が 実際のゴンドラに使用されるガラスというものは湾曲しているものが多く(資料4)実際使用されたとき 本当にプライバシーを守るにたるものかについては全く未知数である。又、この「スモーク」状態は ゴンドラルート全行程の特定部分に適応させるとの事であるが その特定部分はどこからどこまでかということも知らされていない。又、「スモークは両方向」という当時の本部長の言葉(資料5)は「スモーク部分は横のみで前後は普通ガラス」と解釈するとプライバシー対策としての調光ガラスは意味をなさない。これらの疑問について 当町は何度も「第4回目の説明会」を要望してきたが今だ実現していない。
 又 資料6の「想定写真」はゴンドラルートが町内の居住空間を近接するものであることを物語っているが このようなものが、万博開催中の6ヶ月間 ほとんど1日中 ほぼ8秒に1台 ほぼ頭上を通る事 それを目の当たりにしなければならない事は その落下等の事故の恐怖(実際 平成15年10月15日ゴンドラ死亡事故があった)と共に 絶えず見られている 絶えず人の気配がするという心理的圧迫感を当町住民に与え、自宅という「巣」で人間が当然得られるべき「くつろぎ」を奪う。
 
当町住民にこのような状態をもたらすと想定される「ゴンドラ計画」はプライバシーの面からも 当町住民の人格権を侵害するものである。

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