2003年10月7日発表
                           
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尾張東部衛生組合におけるガス化溶融炉死亡事故の経緯と結果報告

<組合事務局からの説明要旨>
 2003年2月発生の労災事故について。
 事故のあった施設は、1998年に川崎技研と尾張東部衛生組合の協同研究施設として建設された。「酸素式熱分解直接溶融方式」という方式で、一日当たり24tのゴミを、約1600度の熱で溶融し、排出するスラグは建設資材として再利用される。研究期間終了により、2000年12月に、この施設は尾張東部衛生組合に無償譲渡された。組合では、既存のストーカ炉のオーバーホール時の補助施設として活用してきた。また、施設の運転は、設計施工者である川崎技研に業務委託していた。
 事故の概要は、2003年2月28日午後1時30分頃、給じん装置の横で運転作業員が倒れているのを同僚が発見、ただちに愛知医科大学附属病院へ搬送されたが、3月2日午後7時26分に亡くなられた。死因は一酸化炭素中毒との診断。死亡された方は、川崎技研と委託契約を交わしている株式会社一光の社員(31歳、男性)。
 川崎技研は、事故原因究明のため、3月17日〜19日の3日間、事故を再現する運転を行った。この結果、事故は、不安定操炉(*1)により一酸化炭素が給じん装置内へもれたこと、開放作業厳禁の点検口を開けたこと(*2)、排気ガス管が閉塞していたこと、作業員への安全教育が不十分であったことなどが複合的に作用し、一酸化炭素の異常発生及び人体への吸引が起こったと考えられる。
 一光は、ご遺族への補償について話し合いを進め、5月18日に和解が成立し、補償を済ませている。
 川崎技研は、7月31日、災害原因調査運転報告書を瀬戸労働基準監督署へ提出し、受理された。
 瀬戸労働基準監督署は、労働基準監督官名で8月8日に川崎技研、8月14日に一光へ、それぞれ指導票を出した。その内容は、点検口を開放できないようにすること、ダクト内部の一酸化炭素濃度検出装置を設置すること、呼吸用保護具を備え付けること、作業時には一酸化炭素濃度測定器を携帯すること、労働安全教育を徹底することなどであった。この指導に対し、9月3日に川崎技研、9月10日に一光から瀬戸労働基準監督署長あて是正報告書が提出され、受理された。
 尾張東部衛生組合としては、3月から溶融炉の運転を停止し、労働基準監督署の指導に基づき、再発防止について万全の対策をとるよう川崎技研、一光へ指示した。また、労働安全衛生組織の見直しを行い、既存の労働安全衛生委員会の他に、新たに委託業者を含めた安全衛生協議会の設置を準備している。運転の再開は、設備の改善及び安全教育を徹底した上で行う。
 更に、事務長、事務次長、専門員3名に対して、9月11日に管理者より文書注意があり、二度とこのような事故が起きないよう、職員一同心を新たに業務にあたる決意である。

*1不安定操炉:生ゴミ等の一般廃棄物の燃えにくさ、搬送コンベヤ戻りゴミなどによる供給不安定などから、ゴミの切り出し量が過大・過小を繰り返し、炉内のゴミの高さが2m程とされる適正レベルを超えて上昇。これにより、炉と供給口の遮断部分が十分でなくなり、そこから火が入って煙が発生。これに、ゴミ供給量を増やして対応し、一層のゴミレベル高を招く。

*2開放作業厳禁の点検口の作業:ゴミ搬送コンベヤの戻りによる付着物を取り除くため、上部にある点検口を開け、事故にあったとされている。

ガス化溶融炉死亡事故の経緯と結果報告
                                    平成15年10月7日
1.経緯
H15年2月28日(金)午後1時30分頃 事故発生 愛知医科大学附属病院へ搬送
    3月2日(日)午後7時26分 死亡(死因 一酸化炭素中毒)
    3月3日(月)瀬戸労働基準監督署の現場検証
    3月4日(火)当組合労働安全衛生委員会開催
    3月17日(月)〜19日(水) 叶崎技研による事故再現運転
    3月26日(水)再現運転のデータを瀬戸労働基準監督署と守山警察署へ提出する。
    3月27日(木)組合議会で事故について報告
    3月28日(金)瀬戸市中央労働安全衛生委員会が現場視察。
    4月2日(水)瀬戸労働基準監督署に記録・日誌・マニュアル等20冊押収される。
    5月2日(金)瀬戸市懲戒審査委員会開催。事故の説明をする。
    5月18日(日)遺族と活鼬で和解が成立する。
    5月20日(火)当組合労働安全衛生委員会開催
    6月20日(金)当組合労働安全衛生委員会開催
    7月11日(金)叶崎技研が災害原因調査運転報告書を組合に提出する。
    7月31日(木)叶崎技研が災害原因調査運転報告書を瀬戸労働基準監督署に提出し受理される。
    8月8日(金)瀬戸労働基準監督署 労働基準監督官から叶崎技研に指導票が出される。
    8月14日(木)瀬戸労働基準監督署 労働基準監督官から活鼬に指導票が出される。
    9月1日(月)瀬戸労働基準監督署から押収資料の返却をうける。
    9月3日(水)叶崎技研が瀬戸労働基準監督署長宛てに是正報告書を提出して受理される。
    9月10日(水)活鼬が瀬戸労働基準監督署長宛てに是正報告書を提出して受理される。
    9月11日(木)管理者より事務長・事務次長・専門員の3名が文書注意を受ける。
    9月16日(火)当組合労働安全衛生委員会で「安全衛生協議会」の設置について協議する。
    10月7日(火)組合議会で事故の結果について報告する。

2.結果
 尾張東部衛生組合・叶崎技研・活鼬とも法的責任は問われませんでしたが、事故再発防止のため瀬戸労働基準監督署から叶崎技研と活鼬に指導票が出され、2社は労働基準監督署長に是正報告書を提出しました。

3.今後の対応
 指導票と是正報告書を基に、叶崎技研と協議してより安全なプラントに改良し安全運転に心がけるとともに、尾張東部衛生組合と委託業者とで「安全衛生協議会」を組織して再発防止に努めます。

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