平成16年4月23日
平成16年(ヨ)第21号 仮処分命令申立事件
     
                  債権者 岡田みどり
                  債務者 財団法人二千五年日本国際博覧会協会     
名古屋地方裁判所
      御中
準備書面

第1 債権者は次のとうり主張する。
1,二千五年日本国際博覧会会場間ゴンドラ第7支柱建設予定地である「土石流危険渓流」の下流域(吹き出し口)にある「池」はこれまでもその際に住む当町住民に「私財を投じてでも護岸工事を」という思いにさせるような水害をもたらしてきた。ガソリンスタンドを経営なさっていたY氏は店鋪の床にしみこむ「水」のため つい最近 スタンド経営継続を断念なさったほどである。(甲-33)

2,上記の原因の中に「旧八割り池埋め立て」(平成2年)が関係している。(甲-34)
この「急きょ」「緊急」な必要性のため埋め立てられた池の工事について 隣接する当町はもとより 旧スタンド経営者Y氏ら「旧八割池」の上流の「池」の際に家屋を持っている方々もなにも説明を受けていない。

3,「旧八割池」は現在 埋め立ては終了、「池」から「旧八割池への水路」も土砂等が流れ込み もはや役割を果たしていない。(甲-35)「水害」は上流域よりこの「池」に流れ込む大量の雨水等の次の逃げ場がないためにおこった。

4,この無制御の水の流れは 2000年9月の「東海豪雨」の時 当町ただ一つの出入り口を「冠水」させ 生活に支障を来させた原因の一つである。

5,二千五年日本国際博覧会協会(以後 協会)は「土石流危険渓流」の中に建設する第7支柱には 土砂災害対策として「蛇かご」「土木マット」「土のう」「しがら柵」を施すとしている。

6,下流域にたいし通常の土砂流出に対処したと思われるこれらは、しかし「土石流危険渓流」地でおこると想定されうる土砂災害にあらがえる有効手段とは認めにくいし「水」に対しては全く対処していないと申し上げるしかない。

7,協会はゴンドラ建設のため 地番2−1、237の土砂流出防備保安林を少なくとも約755uは伐採 改変等する予定である。(作業のため入山する方々の「道」はこの中に入らない。)当然 保水力は低下 「貧栄養」の土質であるので 現在の保水力回復にはかなりの年月がかかる。(60年という研究者の声もある)当然 今まで以上に水害は増える。

8,しかも 下流域も水流経営はとん挫している。この建設が行われれば 当然 当町出入り口の「冠水」の頻度と規模は増し当町住民の生活に支障をきたす。

9,よって「現状を把握していない」本ゴンドラ建設は差し止めるべきである。

第2 債権者は債務者の平成16年4月5日付準備書面に対し次のとうり主張する。
1,「債権者は町民の代表者とあるのは失当」との主張に異議をとなえる。
 本訴えは当町総意の住民運動「ゴンドラ白紙撤回運動」が「礎」となっており 個人についての判断を仰ぐものではない。(甲 )

2,「過去の道路建設計画等による苦しみ等は本件(万博ゴンドラ建設)に関係がない」との主張に深いため息と共に異議をとなえる。あの「非人間的な道路計画」と「行政方の傍若無人な態度等」がなければ 当町はこの運動をそもそも始めさえしなかった可能性はあった。あの苦しみののち町は多くのものを失った。(甲- )行政方の反省を求めると共に「名古屋瀬戸道路のルートに変更すれば、その調査データが使える」(甲- )との声がかつてあった事実も債権者が異議を唱える事の 正当性を認められる一因になりえよう。

3,山口連区の犯罪が増加しつつあり(甲- )当地域が「犯罪重点地域」に指定されている(瀬戸警察署 生活安全課 係長談)事実はもとより 当町も
平成14年 泥棒3件(家族の方が2階にいた昼間入られた。やはり在宅中に現金を取られた。等)

平成15年 家の中の鞄をとられた。軽自動車をそのままとられた。等 犯罪の増加をひしひし感じる。現状でもこの有様である。「自分たちの町は自分たちで守ろう」(瀬戸警察署)「債権者の想像」ではない。過去のデータに基づく「確率性の高い予想」である。

4,甲8の土砂崩れについては場所は地図上にさし示す。(甲- )
又 規模は「準備書面の補充(2)」に述べたとうり 縦約30メートル 横約8メートル 高さ約5メートルにわたって推定500リューベ 下方に土砂が流出している。正確な測量ののちの結果ではないという事は認めるが、土砂災害危惧地でもないところが ささやかな「刺激」で「土砂崩れ」を起こしている事実は 認めるべきである。この里山全体が土砂災害危惧地である。大きな「刺激(ゴンドラ支柱建設)」は次の大きな災害をもたらす。これは 4月5日付債務者の準備書面第1の1に対する主張でもある。
 (甲- )の写真では判明不可能とされたが 瀬戸市は毎年1月税務課がかなりの精度の「固定資産税徴収用航空写真」をとる。これを入手できれば この土砂崩れ発生時期が特定できるはずであるが 個人情報のため情報開示不能である。

5,本ゴンドラ建設にあたり協会は「建設用ヘリコプターの騒音は81デジベル以下である(受忍限度内である)」としたが 環境基本法第16条第1項の規定に基づく騒音にかかわる環境基準は最高60デシベル以下であるので これは住宅地で起こして良い騒音の限度を遥かに超えている。本訴えの主張の一つに「住民のプライバシーの侵害の怖れ」を明記したが プライバシーには「「安全」「安心」に人間らしく住める権利」も含まれる。81デシベルは当町住民より「人間らしく」住む権利を奪う。

求釈明
1,平成16年4月5日付債務者の準備書面第1の2にある「道」について「仮に作る場合にも」とあるがどんな場合に作る事になるのか?

2,同じく 同準備書面の第2の9 「追跡調査」の後撤去計画を策定しとあるがそもそもこのような大規模な 工事は 撤去も含めた全体計画決定の後 建設着手するものではないのか。
 又「追跡調査」の後 「撤去計画中止」という事態はけしてあり得ないと理解して良いのか。

3,同じく 同準備書面の第3の1 「万博ゴンドラについて調光ガラスは使用予定」とあるが 装着しても「観客よりの強い要望により作動できず」という事態はあり得ないか?(債権者は実際に六甲ライナーに乗車し「閉塞感」を覚えた。)万博開催中 協会は「サービス業」となる。お客の要望に押し切られ「プライバシー保護区」消滅という事態はあり得ないか?

4,同準備書面の中でいくつかの質問は「釈明不要と思料する」とされたが (住民説明会で土石流の説明がなかったことについて 事故責任者について 支柱が15基が14基になった事についてなど)この建設には国税も一部投入されると理解している。特に31億円もの建設費がかかる施設が「いつ」「誰」の発案で決定に至ったのかは当町当初からの疑問である。再度 釈明を求める。

「モニタリング調査で異常な観測値が出た」とされた。これはゴンドラとは無関係との事であるが この地の生活者である当町住民にはすべて関係してくる。他にもいろいろな住環境に関する予想もできない「問題」が万博関連建設に伴い浮上して来るであろう。万博会場建設のみでも大変な「ストレス」がある。すでに「住環境複合負荷」は始まっている。ゴンドラ建設はその「複合負荷」に追い打ちをかける。
 これ以上の「住環境負荷」を当町は拒む。

 債権者はゴンドラ建設差し止めを強く求める。

 
ゴンドラ問題に戻る