平成16年(ワ)第5148号
索道7号支柱及びその前後の支柱建設差止請求事件
平成16年3月18日
名古屋地方裁判所
3部合議係 御中
原告 岡田みどり 外14名
被告 財団法人二千五年日本国際博覧会協会
準備書面
1.索道の建設差し止めを要求する根拠は、住民は平和で安全な生活を営む権利があり、索道建設によって生命財産を災害の危険から守るためである。また、索道搬器からは住民個々の家の中およびその周辺、また住宅域全域を眺めることができ、住民のプライバシーを侵害する恐れがある。我々が危惧するプライバシーの侵害とは個々の家の中を直接覗き込むことのみならず、その周辺または住宅地域での特定の人の行動を監視できることを含む。我々はなん人からも、個人の行動を監視される可能性を排除する権利を有する。
2.差し止めを要求する支柱は6号から14号支柱全体である。中でも特に7号支柱は上之山町3丁目地内に大きな災害をもたらす危険性があるので、建設中止を強く要望する。
3.搬器から上之山町を見渡すことができ、プライバシーの侵害に当たると考える範囲を6号支柱から14号支柱までの全域と考え、これを持って6から14号の支柱の建設の差し止めを要求する。加えて、7号支柱は災害危険箇所に建設が予定されており、防災上、住民の生命財産を守る上で、建設の差し止めを要求する。
求釈明
(1)オオタカの生息への影響
索道7号支柱建設予定地付近でのオオタカの営巣は、昨年に続いて今年も確認されている。環境庁の指針によればオオタカの営巣場所を中心に12〜36ヘクタール以内では工事等による環境の改変を禁じている。現在見つかっている営巣中の巣は、索道支柱建設予定地明らかにこの範囲内にある。当初計画された2005年日本国際博覧会海上が青少年公園を主会場とする2会場に変更された理由の1つに、会場予定地にオオタカの営巣が確認されたことにもある。その後、環境省のオオタカ保護に関する方針が変更された事実はない。しかし、索道7号支柱建設計画においてはオオタカの営巣が確認されているにもかかわらず、その事実は環境影響評価にも記載されず、建設計画においてもほとんど考慮されていないのはなぜか。
2005年日本国際博覧会会場を結ぶ索道の建設が、ここの地域のオオタカの生息に影響はないとする根拠を明らかにされたい。
(2)不透明な索道撤収計画
二千五年日本国際博覧会協会は準備書面において、索道の撤収は、今後行う環境影響評価の結果を参考に、環境への負荷の少ない方法で行うとしている。ところが、3月13日の新聞報道によれば協会は日本ケーブルを含む共同企業体との間で撤収を含む工事の契約を結んだとされている。撤収方法が決められていないのにそのような契約が行われたという事実は我々としては理解できない。撤収の方法を示されたい。
その方法が地域の植生等に将来とも影響を及ぼす危険性はないのか、専門家の考え等を聞き、方法の良否を決定する必要がある。撤収方法についての良否判断はどのような機関が行うのか。
ゴンドラの撤収は博覧会が終わり、協会が存在しない状態で行われる工事となる。どこが責任の主体となるのか明らかにされたい。また、その後予想される、索道の建設や撤収に起因する災害の責任はどこが負うのか明らかにされたい。
(3)ヘリコプター騒音
工事期間10日間1日20回5分間空中で停止するヘリコプターによる騒音は、常時騒がしい市街地であれば我慢の範囲内とすることもありうるが、いつも静かな上之山町3丁目で81dbの騒音は我慢の限界を超えるものである。81dbの航空機騒音は空港周辺に設定された、空港を存続させるための基準であり、隣り合う2人が会話のできないほどのうるささである。そもそも我々が我慢をせねばならない理由はどこにもない。工事の方法によっても騒音の大きさは左右される。環境影響評価においては建設にはヘリコプターを使用するとあるが、どのような手順で建設が行われるか示されていない。また、建設時にヘリコプターを使用するとすれば、撤収においても同様にヘリコプターが使われると思われる。この件についてはこれまでまったく示されていない。撤収時の騒音についても提示していただきたい。
(4)土砂流出対策
土砂流出危険渓流「sh-2-29」での工事に伴う土砂流出対策は蛇かごを固定した簡便なものであり、この程度の対策では工事で移動した土砂の流出を止めるのがやっとであろう。ひとたび表層の一部が流れ出す、いわゆる土砂崩れが起こればこの程度の対策では到底食い止めることはできない。蛇かごによる土砂流出対策とはどの程度の土砂流出を想定した対策か、説明を求める。
幸い土砂崩れの規模が小さく、直接人家への被害がないにしても、周囲の貴重な植物種に打撃を与える可能性は大きい。特に撤収後は2度手を加えられた場所であり、大規模な土砂流出の危険性は大きい。木々が勢いを増し、地力が回復するまでの20〜30年に及ぶ対策が必要であると思われるが、その対策を説明していただきたい。
(5)瞬間調光ガラスの運用
博覧会協会は住民のプライバシー保護のために、搬器の下部には遮光フィルム、側面には瞬間調光ガラスを採用し、利用客からは町内が見えないようにするとしているが、どの区間を調光区間とするのか明らかにされたい。
実際を想定すると、搬器が6号支柱から瀬戸会場駅に至る全域で上之山町3丁目住宅地域を見渡すことができると思われるが、この間搬器のガラスは外が見えない状態に置かれるのであろうか。このように長い区間、外が見えない状態に置かれた乗客は精神的に大きな不安に刈られ、他の問題が発生する可能性はないのか。
(6)非常用道路の確保
索道施設に関する技術上の基準を定める省令によれば、搬器内に乗客が閉じ込められるような事故を想定し、地上から救出するための措置をあらかじめ用意する必要がある。博覧会協会の索道建設計画では7号支柱はヘリコプターを使って建設するため、索道ルートの下に道路は作らないとしているが、非常時の救出はどのように考えているのか。
ゴンドラ問題に戻る