<意見書を書いてみました>

 

「会場間ゴンドラ設置に伴う環境影響調査(予測・評価)」について

▼そもそも無理なゴンドラ計画 手続きがおかしい
 元々、BIEに提出し承認を得た輸送手段には、ゴンドラは計画されておらず、万博実施に必要不可欠な施設ではないばかりか、環境万博の名に反するものである。
 しかも、本事業には、地元住民の同意が得られていない(地元である瀬戸市上之山町3丁目町内会は同事業の白紙撤回を求めている)。住民は納得できないとして再三に渡り再度の説明会の開催を求めているが、博覧会協会は応じていない。また、今年に入って、ゴンドラルート予定地周辺で新たなオオタカの営巣や、ギフチョウ、カザグルマといった絶滅危惧種の生育も確認されている。そのような状況にも関わらず、博覧会協会は本調査報告書も発表されていない段階で、早々と工事説明会を強行した。これは、「予見し得る環境への悪影響を極力未然に回避できるよう計画づくりに反映する」「幅広い意見聴取を行う」「このような環境影響評価のプロセスが21世紀における人類共有のモデルとなることを目指す」など、先進的・民主的な環境影響評価を目指すと唱われた通産省(現経済産業省)通達(「2005年日本国際博覧会環境影響評価要領について」平成10・03・26産局第1号)からはほど遠い。環境影響評価を形骸化するものである。
 また、今回の追跡調査報告書の公表にあたっては、意見募集について広報がされていないことが大きな問題である。特に、不安を抱える地元住民に対しては、積極的に説明会等を行い、意見を求める必要がある。 

▼ゴンドラ輸送の安全性への不安
 本事業の契約先である日本ケーブル株式会社と名鉄住商株式会社が関連する御岳ロープウェイにおいて、本年10月15日ゴンドラ落下死亡事故が起こった。ゴンドラに関わる事故は毎年各地で起こっており、その構造からも安定した乗り物とは言えない。本事業では、国道155号線、グリンロード(名古屋力石線)、HSSTの上空を横切るため、多くの危険なケースが想定され、しかも、万一の際、大惨事になることも否定できない。よりリスクの低い輸送手段を検討すべきである。
 また、「ルートが樹林内を通る部分では支柱の間隔を最大限に取ることにより、その本数を削減」するというが、支柱の削減によりゴンドラの安全性に危惧が生じる。この点についての検討がなされていない。

▼保安林の大規模改変による危険性
 ゴンドラの7号支柱建設による改変面積は約700・にも及ぶが(10/10アセス市民の会と協会の意見交換会で明らかにされた)、支柱建設による土砂の流出等保安林の機能低下に関する評価がされていない。愛知県砂防課が本年6月に発表した「土砂災害危険個所マップ」によれば、「土石流危険渓流」「急傾斜地危険個所」指定地域である。
 このような大規模地形改変が明らかであるのに、保安林解除申請をせず、一時作業許可申請で工事の手続きを進めようとするのは森林法に違反するものである。

▼環境への負荷の低減のためヘリコプターを使用するというが?
 ヘリコプターによる資材の運搬時、ヘリコプターの排気ガスによる大気質への影響が懸念されるが、環境影響評価の重点検討項目になっていないがなぜか。含めるべきである。また、ヘリコプターの燃料タンクの落下事故等も想定し評価すべきである。なお、ヘリコプターによる騒音は最大で83dBという激しいものであり、航空機騒音の基準で計算して基準内とされても受忍できるものではない。

▼既に環境汚染の激しい地域に更なる負荷を与えてはならない
 浮遊粒子状物質は、数地点が環境基準を超えていることについて、「本事業による寄与は低いと予測されるものの、一般車両及びバックグラウンド濃度による値が既に環境基準を超えているため」とするが、そのように既に大気汚染の激しい地域を選んで環境万博を計画したのであるから、その地域の汚染状況を本万博事業を通じて改善するくらいの施策が必要なのではないか。少なくとも、これ以上汚染に寄与してはならない。
 「本事業の工事用車両及び一般車両の走行による道路交通騒音は、長久手町長湫において最大76dB、豊田市八草町において最大75dB、瀬戸市石田町において最大71dB、瀬戸市上之山町において最大76dBと予測されており、本事業による新たな影響は少ないものの、全ての地点において道路に面する地域に係る環境基準値を上回っている。」とするが、これも上記浮遊粒子物質に対する取り組みと同じことが言える。

▼ オオタカの慎重な保護策を!
 ゴンドラ予定地周辺で今年新たにオオタカの営巣が確認されたが、本来であれば環境省の「猛禽類保護手引き書」に沿って少なくとも2営巣期間の調査を行い、本事業がオオタカに与える影響についての予測評価の上で事業を検討するべきである。環境影響評価追跡調査(平成14年度)の報告では、瀬戸会場のオオタカが巣立ちに至らなかったり、営巣しなかチたことの原因究明と今後の保護策が明らかになっておらず、現時点では工事による地域改変の影響による可能性も否めないことからも、慎重かつ十分な調査が必要である。地元住民らの観察によると、瀬戸市上之山町3丁目にオオタカの親子が度々飛来したことが判明しており、これは営巣中心域の概念である「巣外育雛期の幼鳥の利用場所」に該当しているのであるから、6、7号支柱と同様8号支柱についても工事をオオタカの繁殖期を避けて行う必要がある。

 

「環境影響評価追跡調査(平成14年度)」について

▼追跡調査は進行中の事業に速やかに反映すべき
 公表がこのような時期まで遅れたのはなぜか。できる限り早く公表し、意見聴取を行い、「会場間ゴンドラ設置に伴う環境影響調査(予測・評価)」や、進行中の事業に反映させるべきもののはずである。また、調査をするだけに留まり、原因究明や保全措置の検討が見られない。これは、環境影響評価の本来の趣旨を損なうものである。

▼「本事業の影響は少ない」では済まされない大気汚染
 「沿道環境大気質の四季調査において、二酸化硫黄及び二酸化窒素が予測結果を上回る傾向にあり、二酸化窒素の及び浮遊粒子状物質の一部は環境基準値も上回ったが、広域の濃度変動を反映していること、高濃度が観測された期間の本事業による工事車両の台数は一般車両の1%未満とみられること等から、本事業の影響は小さいと考えられる。」というが、一部では、青少年公園の解体工事やHSSTの工事の影響が明らかだと言われていることから、各地点、各季において本事業の影響を一層低減させる措置を早急に検討し講じるべきである。また、沿道環境騒音においても、上之山で予測値を超え要請限度も超えているが、今後一層工事車両が増えることを考えると、早急に保全措置を講じる必要がある。ゴンドラ設置に伴う環境影響調査への意見の中で、浮遊粒子状物質等について述べたことと同様、既存の公害を改善する取り組みが必要である。

▼動植物の保全措置が急務!ムササビも軽視しないで!
 シデコブシの減少が大きいが、その原因を究明し早急に保全措置を講じるべきである。
 ムササビについては、修正環境影響評価書では、万博会場外に生息しており、ムササビに与える環境負荷は軽微であるとされたが、追跡調査書では、万博会場内で1件生息が確認され、本年10月10日時点では更に1件、会場内での生息が協会によって報告されている。従って、監視目標が、会場外のムササビの「生息が継続的に確認されること」だけであるのは問題である。会場内のムササビの生息に対する継続的で十分な調査と保全措置が早急に実施されるべきである。市民の観察によれば、会場内のムササビはこどもも生息している可能性が非常に高く、また別の固体も確認されており、万博会場工事により、生活圏が分断され、孤立化し、生存が危ぶまれることになる。監視目標に「会場内での生息が確認されること」を設定すること、直ちに専門家によるモニタリング会議を開催し、計画変更を含めた会場工事計画の検討を行う必要がある。
 瀬戸会場のオオタカが営巣地Bで巣立ちに至らず、営巣地Cは営巣しなかったことの原因を究明し、早急に今後の保護策に反映させるべきである。
 瀬戸会場の繁殖可能性ランクが全体的に激減しており、この原因究明と保全措置は早急に行われるべきである。
 青少年公園南東部では、カワセミ、ハッチョウトンボ、ベニイトトンボの確認地点が激減しているが、解体工事の影響と評価し、今後の事業における影響の低減措置を検討し講じるべきである。

▼「監視目標は概ね達成されている」???
 以上、取り上げたことから見ただけでも、「平成14年度においては、本事業による環境への著しい影響はみられず、環境保全のための監視目標は概ね達成されていると判断」していることは理解に苦しむ。「今後も引き続きモニタリング調査を継続し、環境への著しい影響が明らかになった場合には、その原因等について分析するとともに、必要に応じ専門家の意見を聴きながら、関係機関と調整して、適切な対策を講じる」とあるが、工事計画の変更も含めた適切な対策を、本追跡調査結果についても早急に行うべきである。

▼造成工事で使用された建築廃材の問題も慎重な調査を!
 なお、平成15年度分以降の追跡調査では、会場造成工事において、再生品の積極活用として再生クラッシャーラン(RC-40)が使用され、その中に目視の限り多くの産廃〜塩化ビニルパイプやビニル被覆電線、床材、壁紙材等の破片が混入し、化学物質等による土壌、水質汚染が懸念される問題についても重点検討項目とし、工事関連資材の厳しい管理体制の構築、詳細な環境影響調査による速やかな保全措置の実施が必要である。

(文責 柴山)

 

 

 

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