<県並行財政線経営計画概要・最終の策定にあたっての要請に関する資料>
真の「実質無償譲渡」を実現し、新会社の経営安定の道筋をつけるために
2012年12月20日 公共交通をよくする富山の会
 
 JR鉄道資産の譲渡価格は、新会社の経営安定の根幹にかかわります。報道によれば知事は、JR鉄道資産を「約110億円で買い取る方針で合意」(「読売」)。約110億円の内訳は、車両費約26億円、鉄道施設費約84億円とのことです。この「買い取り価格」について、以下の問題点を指摘せざるを得ません。
 
第1に、JR西日本が示す県内区間の鉄道資産の簿価がいくらであったのか、その簿価とどれだけの開きがあって、約84億円になったのか、はっきりしないことです。
 私たちは昨年9月、県の経営計画概要の策定作業に当たっての第4次「提言」で、新会社にとって必要なものだけ譲渡を受ければよいとしました。
 まず、「合意価格」は、いらないもの、「ムダ」なものを削った上でのものか、どうかがはっきりしません。
 さらに、2001年当時、北陸本線の簿価は約600億円とされており、県内区間のJR資産(簿価)は案分して約159億円でした。2008年には、約129億円と試算されています。
 報道では、県は最大で約230億円(車両を含む)から、5月には知事とJR西日本の社長との交渉で約151億円(車両を含む)になり、今回約110億円で買い取るとのことです。
 
 これまでの北陸本線県内区間の譲渡資産(簿価等)の推移を表にすると下記のようになります。
  2001年 2008年 2012年1月 2012年5月 2012年12月
簿価譲渡額 約159億円 約129億円      
買取予想額     198〜230億円 151億円  
実価格         約110億円
 備 考      車両費を含む 車両費を含む 車両費約26億含む
 (注1:2008年は県並行在来線対策協議会平成20年5月13日資料より。土地、償却資産、取替資産の合計金額)
 (注2:「簿価譲渡額」は県試算。「買取予想額」は対策協議会で示された金額。「実価格」はJRと合意したとされる金額)
 
 いったい、北陸本線の県内区間のJR資産の簿価はいくらなのか。JR西日本が示した簿価はいくらで(JR西日本は、簿価額を提示したのか、どうかもはっきりしない)、県の試算とは、どれだれの開きがあって、約84億円になったのかが明確ではありません。
 ちなみに、青森県の場合は、JR東日本が示した八戸・青森間の簿価は160億円でした。それを半額の約80億円にして譲り受けました。仮に、2008年の試算額約129億円の半額であれば、約65億円で買い取ることができます。(実譲渡価格に車両費が含まれていないものとして)
 
第2に、1q当たりの譲渡総資産額を先行事例と比較すれば、以下のようになります。
  総資産額(億円) 延長キロ(q) 1q当たり資産額(億円/q) 備考
しなの鉄道 103 65.1       1.58 簿価・実価格
IGRいわて銀河鉄道 82 82.0       1.00 簿価・実価格
青い森鉄道(目時・八戸) 24 25.9       0.93 簿価・実価格
青い森鉄道(八戸・青森) 約80 96.0       0.83 簿価160億円
肥薩おれんじ鉄道(A) 63 116.9       0.45 簿価
肥薩おれんじ鉄道(B) 10 116.9       0.09 実価格
石川県の場合は 18 20.6       0.87 実価格
富山県の場合は 約84 95.5       0.88 実価格
 (注:各会社とも車両費は含まないものとして比較する。各県の総資産額はいずれも「新聞」報道による)
 
 富山県の1q当たりの譲渡総資額は、先行事例や石川県と比べても決して“安くなった”というものではありません。
 
第3に、JRから引き出した金額(支援金)についてです。一覧表にすると、
  富山県 石川県 青森県(八戸・青森)
人件費支援 約40億円 約16億円(10年間) 約30億円
車両関係費
 
20億円以上(新型車両導入効果)    ※
 
約28億円
(中古車両の譲渡)
施設修繕費 約10億円 約2億円 約40億円
観光キャンペーン 約3億円   約7億円
合 計 約73億円(以上) 約18億円 約105億円
1q当たり支援額 0.764(億円/q) 1.0(億円/q) 0.914(億円/q)
 (注1:11月22日の「日経」「読売」「中日」「毎日」「北日本」各紙による。青森県の金額は「東奥日報」2009年2月28日)
 (注2:※印は「北日本新聞」2012年11月22日付より。)
 (注3:富山県の車両の項の「20億円以上」は、「新型車両導入による検査費用などの縮減効果」との説明もある。)
 
 車両費を除く鉄道資産の譲渡価格が約18億円となる石川県の知事は、「JR出向社員の人件費16億円(10年間)と、レールなど施設修理負担の2億円をJRが負担するため、県は差し引き実質的に無償になるとみている」(「中日」)と記者会見しました。これは、確かに数字の上では「実質的無償」といえるものです。
 富山県は、JRの支援は約73億円(以上)になりますが、石川県と同様の項目では約53億円です。
 
第4に、昨年9月、私たちの第4次「提言」で、JR西日本に521系の新型車両を一日も早く県内と直江津まで導入させ、中古になった521系の譲渡を受ければ安くなると「提言」しました。
 その後の県のみなさんの努力は、評価されなくてはならないと考えています。
 今回の譲渡価格のなかで、「JRの譲歩で、新型は1編成当たり、製造費の3分の1の約1億5000万円で買い取る」「車両21編成を約26億円」で買い取る(「読売」)とあります。また、「21編成のうち16編成を新型車両で譲り受ける」(「日経」)との報道もあります。
 しかし、新型車両の製造費は、JRがいくらとしているものを、いくらで買い取るのか。中古車両は、何編成・何両でいくらなのかは新聞報道では明らかではありません。
 
 参考までに、第三セクター会社発足時の旅客車両費用は下記のようになります。
    富山県    石川県  しなの鉄道  IGRいわて銀河 肥薩おれんじ鉄道
新 造   不明    13億円            7.77億円     22.8億円
 編成数 16 5      
中 古 不明 不明 5.55億円 3.13億円  
合 計 約26億円   5.55億円 10,09億円 22.8億円
 (注1:富山県の「合計金額」は車両21編成を約26億円で購入の報道から記載した。)
 (注2:しなの鉄道は新造車両なし。肥薩おれんじ鉄道はジーゼル化のためすべて新造車両)
 
第5に、国の支援は富山県だけではありません。
 知事は、「JRに払う貸付料などによる国の支援」が約40億円であり、上記のJR支援金と合わせて、譲渡価格約110億円は「実質無償譲渡」になると、県議会で報告されました。
 しかし、国の支援は富山県にだけに限定されるものでしょうか。北陸信越の各県にも国の支援があるのではありませんか。先行事例の各社にも当然、適用される支援制度ではありませんか。
 富山県知事が奮闘されてたことを私たちは否定するものではありませんが、かつて岩手県や青森県、住民の運動、そして全国の連帯した取り組みのなかで、JR貨物のアボイダルコストを変更させ、国が係わるJR貨物の線路使用料の仕組みをつくつた人たちのことも忘れてはなりません。