2012年12月20日
富山県知事 石井驤黶@様
富山県並行在来線経営計画概要の最終策定にあたっての要請
−孫・ひ孫の時代まで安定的な経営で存続するために−
北陸線・ローカル線の存続と公共交通をよくする富山の会
(略称:公共交通をよくする富山の会)
貴職では、富山県並行在来線経営計画概要(最終・案)を公表され、来年1月には県並行在来線経営計画概要の最終を策定されるとうがっています。
公共交通をよくする富山の会は、2001年に結成して以来、北陸本線(並行在来線)が、孫・ひ孫の時代まで安定的な経営のもとに存続することを願い、先行事例の調査、私たちで出来うる限りの北陸本線の実態調査や、県民に「討論の場を提供する」するシンポジウム(ほぼ毎年開催)、この間に3回の県民アンケート実施などによる県民要望の集約などを行ってきました。
これらの取り組みの結果などについては、これまでに5回に渡る私たちの「提言」として貴職に届け、発表し、関係者(団体)にも届けてきたところです。
以上を踏まえつつ、県として検討すべき以下の事項について要請するものです。
〔参考:5回の「提言」、沿線住民・荷主アンケート、シンポジウムなどは当「会」ホームページをご覧下さい〕
〔1〕 利用者、県民の参加と要望を生かす思い切った施策を展開すること
(1) 「乗りましょう」だけの一方通行にならない取り組みを
県は、県並行在来線対策協議会を解消し、来年度には「新たに利用者の代表を加えた県並行在来線利用促進協議会(仮称)」を設置されるとのことです。
JRから経営分離後の運行を担う第三セクター鉄道会社は、“県民鉄道”としての役割と、“全国鉄道ネットワークの一翼”を担うことになります。青い森鉄道・IGRいわて銀河鉄道が、東日本大震災直後の石油輸送に大きな役割を果たしたように、北陸本線が第三セクター鉄道に引き継がれても、日本海縦貫貨物鉄道の役割を担うことは国土形成の上でも欠かせないことです。
また、並行在来線を受け継ぐ第三セクター鉄道は、新しく会社を発足させるのにもかかわらず、経営上の「制約」(初めから赤字が見込まれる)などを背負ったままでの旅立ちになります。
そこで、県、県並行在来線利用促進協議会(仮称)、県並行在来線株式会社(以下、新会社)の取り組みが、新会社が担う役割を明確にした上で、「乗りましょう」だけの一方通行にならないようにすることが求められます。
(2) 『乗って活気を、乗せて発展』する鉄道に向けて「鉄道委員会」(仮称)の設置を
私たちは、2002年11月の第一次「提言」以来、「公共性と企業性の調和がとれた北陸本線のために、県民的な討論と検討、合意」を重視し、鉄道の運行に当たっては「『乗って活気を、乗せて発展』を趣旨とする住民、行政、交通事業者が共同した取り組み」を求めてきました。
新たな段階に当たり、県及び新会社と利用者・県民のかかわりについて、
@徹底した情報開示のもとに、利用者・住民が施策に対して評価や判断が行えるようにすること。
A鉄道事業者、二次交通事業者、利用者、商店会、市民公募、民間企業、行政、専門家、鉄道関連労働組合などによる「鉄道委員会」(仮称)を設置すること。「鉄道委員会」には、「研究会」や「専門委員会」を設けること。地域委ごとにも「鉄道委員会」を展望すること。
B新会社は、並行在来線という特殊な鉄道であり、国とJRに対する課題と要求を明確にし、県と市町村、利用者・住民との取り組みを継続して行うこと。
県民生活と産業にとって基幹となる新会社です。上記の仕組みをつくることは、県民に支えられる鉄道、孫・ひ孫の時代まで運行できる鉄道への展望につながるものと考えます。
(3) 富山県並行在来線経営計画概要・最終に対する県民意見を広く求めること
富山県並行在来線経営計画概要(最終)は、「住民説明会」(仮称)を来年1月から3月に行う計画ですが、合わせて、広く利用者・県民の要望を汲み取ることができるような措置(利用者・住民アンケートなど)をとることが必要です。
〔2〕 富山県並行在来線経営計画概要・最終に、利用者・県民の強い要望である、通学定期は現行JR運賃を維持するなど運賃の低廉化、JR特急の県内乗り入れを明確にして取り組むこと
(1) 通学定期は現行JR運賃を維持するなど運賃の低廉化を
県並行在来線経営計画概要(最終案)は、「通学定期もある程度値上げする場合も含めて検討をすすめる」としました。運賃値上げを当然視し、利用者・県民に負担を押しつけることがあつてはなりません。
報道によれば、運賃の値上げを抑制するように求める自治体に対して県は、「継続的に事業が成り立つことを示さないと、鉄道事業の許可がおりない。赤字を埋めるための方策もセットでないといけない」(「毎日」2012.11.13)と述べたとのことです。
一般論としては、理解できるが、北陸本線のJR経営分離は、国の運輸政策によって赤字を背負わされる鉄道経営をしなくてはなりません。あくまでも国の役割とJRの責任を求めていく立場を堅持し、JR現行運賃を維持するよう、とりわけ通学定期は現行水準を維持するよう求めます。
もし、国とJRの腹の中に真っ先に入って、県民を説得にかかるような姿勢になったのでは、結果として、利用者・県民に、冷たく負担を押しつけることだけの県政になります。
(2) 先行事例にない、JR特急の乗り入れを実現を
JR西日本は、かたくなにJR特急列車の乗り入れを拒んでいます。これぼど県民の願いとかけ離れたJRの態度は、県民の大きな批判にさらされています。
県は、特急を走らせた事例がないからこそ、先行事例が到達できなかった新しい峰を構築することが県政に求められているのです。
知事は、特急の乗り入れにの要望に、「努力する」とする一方で、“先行事例では特急を走らせた事例はない”などと述べています。そのうえ、特急を運行した場合の動力費、人件費などまで負担する試算をしてみせるのは、“県民を黙らせる”ような手法といわれても仕方のないものです。
先行事例の実態としては、寝台特急の走行には、JR旅客から線路使用料が払われています。
今だからこそ、JR特急の乗り入れなど新たな到達点を築くために、県内市町村と北陸信越の各県との連携をさらに強め、県民とともに、国とJRに対して強く要望・交渉することです。
〔3〕 国の役割とJRの社会的責任を求めつづけ、並行在来線の経営安定をはかるために、真の「実質無償譲渡」を実現し、新会社の経営安定の道筋をつけること
いま、゛だれのための「富山県並行在来線経営計画概要」か゛が問われることになっています。
それは、新会社の将来にかかわる問題として、JR資産の譲渡問題があるからです。知事は、JR鉄道資産を「約110億円で買い取る方針で合意」(「読売」)とのことですが、この「買い取り価格」については、いくつもの問題を指摘せざるを得ず、真の「実質無償譲渡」の実現に向けて県民とともに努力されることを求めます。
(参考:別紙「真の『実質無償譲渡』を実現し、新会社の経営安定に筋道をつけるために)
これまでの県の努力も、県議会の総意と努力、県民の願いを生かして、新会社を展望しなくてはなりません。JR鉄道資産は、県議会の決議が求めているように無償譲渡を目指すべきです。仮に、有償であってもその金額を寄付させる方法もあります。
県は、なによりも利用者と県民の利益をまず第一に考え、率直に現状を県民に知らせ、新会社の安全を守り、利便性を向上させ、運賃の低廉性を確保するなどに取り組むことです。
そのために、国の役割と、JRには社会的責任をしつかり果たさせる立場を確立し、貫くことを求めるものです。
〔4〕 県内市町と住民が並行在来線・新会社に関与できる仕組みをつくること
私たちは、今年9月の「提言」〔富山県並行在来線経営計画概要(最終)策定と富山県並行在来線準備株式会社発足にあたっての「提言」−富山県の「並行在来線経営計画概要(案)」に対するに沿線住民及び事業所・企業へのアンケートをもとに−〕で、県は、市町村と住民が第三セクター鉄道会社に関与できる条例(または指針)をつくるよう提案しました。
この「提言」は、「県並行在来線の新会社は、県とは別の営利法人になります。しかし、この会社は『経営理念』案にもあるように、地域振興と住民福祉の向上を目指す公益性・公共性ある企業です。現行法では、資本金の2分の1以上を出資する県以外の自治体は、新会社への関与が制限されます。各市町村と住民が、第三セクターである新会社の安全や利便性の向上、経営になど関与できる条例(または指針)を制定し、県民が支える仕組みを確立することです」と提案しました。
富山県は、県の努力があって全国的にも特徴のある県内すべての市町村が新会社にかかわる仕組みをつくろうとしています。県内市町村の努力を生かしていくためにも、新会社発足後を展望した、県内市町村と住民が関与できる仕組みをつくることです。
〔5〕 並行在来線が将来に渡って安定的に経営ができる抜本的な法律の創設を国に求めること
私たちは昨年9月、県経営計画概要(案)の策定に当たって、「並行在来線の経営が成り立つ新たな国の法律の制定」を「提言」しました。
この「提言」は、「『政府・与党合意』から20年以上経過しても、第3セクター鉄道の経営が一向に良くなっていません。もはや、『政府・与党合意』にとらわれず、国に、並行在来線の維持・存続に関する新たな法律の制定を求めるしかありません。
その法律は、全国鉄道網を維持することを明確にして、並行在来線が将来も維持可能となる経営のために、JRの役割と関与を具体的に明確にするとともに、重大な災害や事故の補償と大規模修理・修繕に対する国の財政支援を明確にします。また、全国鉄道ネットワークを形成・維持する見地から、インフラ部門をJRの管理とすることも検討されなくてはなりません。
財源は、当面はJRが整備新幹線使用料として鉄道・運輸機構に支払う貸付料を活用し、将来的には鉄道・道路・空港・港湾などを一体にした『総合交通特別会計』(仮称)を創設することです。」
この「提言」は、「均衡のとれた国土形成のうえからも、いよいよ並行在来線の経営が成り立つ新たな国の法律の制定がもとめられています」という立場からのものでもあります。
また、私たちは、各県ごとの運行会社ではなく、運転指令所を一カ所にし、県境をつないだ鉄道運行会社をつくるよう繰り返し提言してきました。
11月14日開催の北陸信越44市でつくる北陸新幹線関係都市連絡協議会は、国土交通省などに並行在来線の経営安定化を要望した際、富山市の森市長は「『各県ごとに(運行会社を)つくるのが妥当なのか』と述べ、将来的に一体的な運行にも見直しも必要との認識も示した」(「北日本新聞」11月15日)との報道があります。
これは、北陸本線・並行在来線の将来を考えての建設的な発言と考えます。
いずれにしても、県民鉄道として、全国鉄道ネットワークの一環を担う、新会社であり、国に対して、並行在来線が将来に渡って安定的に経営ができる抜本的な法律を創設するよう県民とともに奮闘されることを要請するものです。
(注:上記に引用した各紙は、年月日を記載していないものは、いずれも2012年11月22日付のものです)
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