北陸・東北新幹線開業に伴う並行在来線の
JR経営から分離の第三セクター鉄道比較
 
 北陸新幹線(高崎・長野間)の開業に伴って、軽井沢・篠ノ井間は第三セクター鉄道「しなの鉄道」となった。2002年12月には、東北新幹線の盛岡・八戸間は、県境分離で「いわて銀河鉄道」「青い森鉄道」が第三セクター鉄道として開業する。そこで、この三つの第三セクター鉄道の対比表を作成し、比較検討を試みる。(2002年8月末作成)
しなの鉄道 いわて銀河鉄道 青い森鉄道
社名 しなの鉄道株式会社 IGRいわて銀河鉄道株式会社 青い森鉄道株式会社
設立 1996年5月1日 2001年6月1日 2001年5月30日
開業 1997年10月1日 2002年12月予定 2002年12月予定
営業区間 軽井沢〜篠ノ井(篠ノ井から長野まではJRへ直接乗り入れ) 盛岡〜目時間(岩手・青森の県境で分離。相互直通乗り入れ) 目時〜八戸間。新青森まで開業した場合は目時〜新青森間。
営業キロ 65.6q(営業キロ65.1q) 営業キロ82.0q 営業キロ25.9q(目時〜青森間は121.9q)
資本金 23億円 20億円 6億円(会社設立時)
会社設立の理由 ・北陸新幹線の長野までの開業に伴い、並行在来線となる旧信越本線の軽井沢〜篠ノ井間は、政府・与党申し合わせ(90年12月24日)によりJR東日本から経営分離。
・横川〜軽井沢間(11.2q)は廃線となり、バスによる代替輸送。
盛岡〜八戸間の東北新幹線の開業に伴い、政府・与党申し合わせ(同左)により、並行在来線をJR東日本から経営分離。 ・東北新幹線盛岡〜八戸間、八戸〜新青森間の開業に伴い、政府・与党の申し合わせ(同左)により、並行在来線をJR東日本から経営分離。
・11年後に、青森までの区間を運行する二段構え。
該当県の態度 ・97年6月運輸大臣は、JR東日本の廃線申請を許可。運輸省、JR、群馬・長野県知事の4者協議で「廃線やむなし」と合意。
・地元9市町村が廃止に反対。群馬県議会も存続決議を上げていた。
・経営分離はやむなし。91年3月沼宮内〜八戸間経営分離に同意。
・96年7月盛岡〜沼宮内間の経営分離に同意。
・91年7月「経営分離はやむを得ない」と八戸までの経営分離に同意。
・98年1月八戸〜青森間の経営分離に同意。同意の結果、新青森までフル規格で着工。
 
本社 長野県上田市常田1−3−39 岩手県盛岡市内丸(県有施設の賃貸) 青い森鉄道、県鉄道管理事務所とも青森県八戸市大字長苗代宇上亀子谷地9番地
線路 複線電化 複線電化 複線電化
乗客数 ・一日平均22,000人の当初計画が9,000人程度下回っている。毎年3%前後の減少。
・一日1q当たり8,377人(00年)
 
・特急を除く一日1q当たり3,417人(00年) ・八戸付近で1日2,500人、目時〜金田一温泉付近で500人(97年)。
・特急を除く一日1q当たり1,919人(00年)。
駅数 18駅(直営9、委託6、無人2、共同使用1) 16駅(開業3年目に需要が見込まれる新駅4駅を想定) 7駅(目時〜青森までの全区間はは26駅)
社員 228人(2002年4月1日現在)。
開業時239人。
開業時は170人程度。 ・青い森鉄道は開業時21人。
・県鉄道管理事務所は10人前後で業務開始。
貨物 専用貨物列車が西上田〜篠ノ井間走行。 JR貨物列車が走行する。1日約50本。JR貨物は線路使用料を支払う。 JR貨物列車が走行する。1日約50本。JR貨物は線路使用料を支払う。
経営形態 ・第一種鉄道事業。 ・第一種鉄道事業。
・初期投資費約40億円の内20億円を資本費で、その他は県が無償資金を交付。
・公設民営(上下分離方式)。  ・線路、電路、駅舎などの鉄道施設は県が担う、鉄道管理事務所を設置(第二種鉄道事業)。
・旅客輸送事業は第三セクター会社(第三種鉄道事業)。旅客輸送事業は、独立採算性を確保し沿線自治体から財政支援は求めないとしているが議論あり。
出資者及び出資額 長野県17億2、500万円(75%)、沿線自治体3億4、500万円(15%)、民間企業2億3、000万円(10%)。<自治体負担90%> 岩手県10億円(50%)、沿線自治体7億円(35%)、民間団体3億円(15%)。
<自治体負担85%>
青森県3.3億円(55%)、沿線自治体1.2億円(20%)、民間団体1.5億円(25%)。
<自治体負担75%>
JR資産の購入 ・総額104億7,000万円(土地13億6,000万円、14駅舎を含む建物5億3,000万円、線路・電柱など約86億円)
・JR鉄道資産の取得のため、県が103億円を無利子貸付(07年から償還)
・94億円(土地、建物、線路設備、電路設備、駅など)。
・初期投資総額は134億円。(車両購入費15億円、施設設備費15億円など)。
・JR資産の取得費は、県が第三セクター会社へ全額無償交付。
・約23億円(土地、建物、線路設備、電路設備、機械装置など)。 ・初期投資総額約26億円。(改良工事費、保守用車両機器購入、備品など約3億円程度)
列車本数 上下111本。 ・現行一日JRは上下61本。   ・新会社は69本。
・八戸・盛岡間に直通列車24本運行。うち8本は快速。
・現行一日JRは上下27本。
・新会社は40本。
車両数 45両(115系電車33両、167系電車12両) 7ユニット(701系電車)1ユニット2両編成が基本。朝の混雑時は4両編成。 2ユニット(701系電車)。岩手県会社と一体となってプール運用(快速列車を除く)。乗務員は両県会社をそれぞれ担当運行。
ワンマン運転 ワンマン化実施の方向。 開業時からワンマン運転。4両編成時は2人体制。 開業時からワンマン運転。
運賃 ・開業時におけるJR東日本の運賃水準を基本とする。
・定期の割引率は通勤50%、通学68%と高いため、全国三セク鉄道平均の通勤37.4%、通学58.8%に見直しを検討。
・01年10%値上げ。
JRと比べた平均値上げ率は、
・普通運賃は現行の1.58倍(上限1.75倍)。
・通勤定期は現行の2.12倍。
・通学定期1.99倍。但し、通学定期は、激変緩和措置として2005年3月まで1.35倍に抑制。通学定期の抑制策として県・沿線自治体による基金の積み立てを検討。
(定期利用者は約6割)
JRと比べ平均1.49倍     ・普通運賃は現行の1.37倍。
・定期運賃は現行の1.65倍。
・八戸〜目時間の営業区間について、普通運賃、通学定期、通勤定期の営業キロと駅間ごとの運賃を設定。
(定期利用者は約6割)
運行管理 ・自社。 ・JR東日本が使用しているPRC装置などを活用。
 
・岩手県と相互乗り入れ制度を利用して実質的に共同運行。輸送業務は、当面岩手会社に委託。
車両研修 ・保守費を減らすため、列車速度を時速100qを85qに抑制。
・保守業務の外部委託(長電テクノサービス、JR)。
・設備管理所は、JR好摩駅構内の盛岡第一保線区好摩管理室の建物を増改築して整備。土地・建物はJRから譲渡。約60人体制。 ・車両基地は、JR東日本の施設を利用し、車両研修は委託。
・施設保守管理は八戸臨海鉄道に委託。
その他・特記事項 ・JR東日本からの出向社員に対するしなの鉄道の給与負担率を75%から65%に引き下げる。JR出向社員を2003年度末に減らす。
・2000年度4億1400万円の赤字。4年間の累積赤字は21億円。
・運賃の抑制で、14年目に想定していた黒字転換時期を、19年目に見直す。
・開業後30年間に約60億円の設備更新のため基金創設。
・開業5年目で、およそ1億1千万円の赤字が予想される。
・若手県職員による「並行在来線駅舎等活性化プロジェクトチーム」が駅の活用などの提言発表。
 
<作成資料の出所>
しなの鉄道HP、しなの鉄道経営改革検討委員会「提言」(平成13年12月)、信越本線裁判を支える会資料、岩手県並行在来線経営準備会「並行在来線経営計画概要(改訂版)」(平成13年3月)、岩手県並行在来線対策室HP、青森県並行在来線鉄道会社設立準備会「並行在来線経営計画素案(改訂版)」(平成13年5月)、青森県並行在来線対策室HP、青森県並行在来線駅舎等活性化プロジェクトチーム提言(平成14年3月)、松井田町・長野県の資料、日経新聞、東奥日報、信濃毎日、岩手日報、南日本新聞、しんぶん赤旗の各紙。鉄道ジャーナル02年10月号。
                                        <作成者:世話人・事務局担当WS>  
 
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