北陸新幹線・並行在来線問題連絡会は2011年2月17日、富山県と石川県の両県に「孫ひ孫の時代にも維持可能な並行在来線を実現するための申し入れ」を行いました。申し入れの全文を掲載します。(後日、長野県、新潟県にも申し入れます)
 
 
       2011年2月17日 富山県への申し入れ      2011年2月17日 石川県への申し入れ
 
 
孫ひ孫の時代にも維持可能な並行在来線を実現するための申し入れ
 
 私たちは、並行在来線といわれる北陸本線・信越本線が、孫 ひ孫の時代までも地域住民の生活と地域経済、さらには国土のつり合いの取れた発展のために維持・存続されることを切に願っています。これは、沿線住民の共通する願いでもあります。
 貴県も参加している並行在来線関係道県協議会(11道県)の国への「要請書」(昨年10月27日)にも明記されているように並行在来線は、地域公共交通の基幹、地域間を結ぶ幹線鉄道です。また、国の物流政策の基幹であり、地球環境からも重要な役割を担う鉄道です。
 さらに、11道県「要請書」が指摘しているように並行在来線は、「国の運輸政策の中で引き続き維持存続すべきもの」と考えます。
 しかし、整備新幹線が開業すれば並行在来線を「廃止」(JR経営分離)するという国の運輸政策の基本は、政権は変わっても変更されることもなく、沿線自治体、利用者と住民生活、地域経済に過大な負担を背負わせるものになっています。
 そのもとで国は、並行在来線を受け継いだ第三セクター鉄道が“極めて厳しい経営状況にある”ことを認める発言がありました。
 だが、JRが撤退した後の地域社会の社会的損失はどれくらいなのか、地域社会に及ぼす影響はどれくらいなのか、などの説明はありません。
 また、並行在来線の経営からJRが撤退しなければならない“経営上の根拠”や“経営上の必要性”については、国からも、JR東日本やJR西日本からも示されてはいません。国鉄からJRに変わった時点と現在の両社の経営状況は内部留保の増大にみられるように大きく変化しています。
 本来国は、11道県の「要請書」が示しているように、前政権の「政府・与党合意」ついて根本的な「見直し・再検討」を行い、並行在来線を将来に渡って維持・存続するための実効ある政策をしめすことが国の責務であると考えます。
 そこで、現在の並行在来線を巡る各県の取り組み状況も踏まえ、貴県が国に対し、またJRに対して、そして、貴県が各県との連係のもとに、積極的なイニシアチブを発揮されることを求め、下記の申し入れを行うものです。
 
 
1、県は、並行在来線(北陸本線・信越本線)が孫 ひ孫の時代にも維持可能な鉄道とする制度を創設することを国に働きかけること。
 
2、当面、整備新幹線貸付料などを運用し、現行通りJR東日本・JR西日本が並行在来線区間を運行する制度を確立するよう国に求めること。
 また、JRは適切な貸付料を負担しているか、検証するよう国に働きかけること。
 
3、11道県「要請書」が求める鉄道施設の「無償譲渡」「初期投資への助成」「税制上の優遇措置」「貨物線路使用料増額」「赤字補填・運営費助成」「災害助成の充実」などは多くの県民の同意が得られるものである。
 よって、この内容を県民に周知し、県民とともに政府に実行を求めること。
 
4、やむをえず並行在来線区間をJR経営から分離しなくてはならなくなっても並行在来線区間は、上下分離方式により維持・存続をはかること。
 その際、インフラ部門は、国とJRが維持するよう国に求めること。
 
5、北陸本線・信越本線の並行在来線区間の線路・電路・橋梁・トンネルなどの施設・設備は、JRの責任で総点検を行い、必要な修理・保守、新型車両の導入・譲渡などを行うよう、各県が共同でJRに働きかけること。また、国にも働きかけること。
 
6、一昨年12月の国土交通大臣や整備新幹線問題検討会議「基本方針」は、JRとの係わりにふれて「沿線自治体の要請があった場合は、関係者により必要な対策を検討する」としている。よって、各県とJRとの話し合いや協議の場を設けるよう国に働きかけること。
 
7、並行在来線を引き継ぐ新運営会社を設立しなくてはならなくなった場合でも長野県・新潟県・富山県・石川県4県の共同運営とすること。
 新潟県は並行在来線を引き継ぐ新運営会社を設立しているが、やむを得ず各県ごとの運営会社を発足する場合でも4県をつなぐ一体運行ができるシステムをつくること。
 また、県境で運賃体系を分離しないこと。特急などJR列車の乗り入れができるようにすること。
 
8、長野県・新潟県・富山県・石川県の4県が、並行在来線に関して多面的に相談・協議を行うことができる「場」を設置すること。
 そのために貴県は、積極的なイニシアチブを発揮すること。
 
9、県の「並行在来線対策」について、また並行在来線を引き継ぐ運営会社の取り組みなどについて住民への情報公開を徹底するとともに、住民参加の制度をつくること。
 
10、並行在来線の各駅を軸とした路線バス、コミュニティバス、電車などのシームレスな仕組みや、まちづくりとの係わりを重視し、住民参加など住民の総意をくみつくすこと。
 
11、JR大糸線、JR氷見線、JR城端線、JR七尾線などは、住民と利用者の要望を汲み取り生かして利便性の向上をはかること。
 また、引き続きJRが運行するよう各県との連係を強めJR西日本に働きかけること。
 
12、JRとは改札口を共有し、スムーズな乗降・乗り換えが行えるよう利用者の利便性の向上を図ること。
 
 
◆2月17日、北陸新幹線・並行在来線問題連絡会として申し入れた団体は
 在来線を守る長野県連絡会、長野県労働組合連合会、国鉄労働組合長野地方本部、暮らしと地域を支える鉄道の充実をめざす新潟県連絡会、新潟県労働組合総連合、国鉄労働組合新潟地方本部、公共交通をよくする富山の会、富山県労働組合総連合、公共交通を守る石川の会、石川県労働組合総連合、国鉄労働組合北陸地方本部