同じものは二度とできない
中内智子(23歳、俳優、現在テラ・アーツ・ファクトリー所属

ファクトリー活動記録、ワークショップグループC          
活動形態:演劇ワークショップ
会場:新宿村スタジオ

(*FはFメソッドの基本用語。自在性と自由性を指す。)

○本日のメニュー
1、ストレッチ
2、Fメソッド基礎T
●2人1組になり、その場で交流。
●2人1組になり、交流しながら動く。
●2人1組になり、その場で交流。
●鏡に向かって確認。
●左右の体重移動。
Fメソッド基礎U
●4人1組になり声だけで「すばらしいわ・・・」発語。
●4人1組になりその場で「すばらしいわ・・・」発語。
●4人1組になり空間をつかって「すばらしいわ・・・」発語。

3、お話声について
4、休憩

5、Fメソッドコア
●また割りの姿勢で8割の力で発語。
●両手を前に出して、爪先立ちでお尻を10cmあげてしゃがんだ体勢で 発語。
●膝をつき、手は上に、顔を上げ天井を見上げた体勢で発語。
●F基本運動→チェンジ→基本テクスト発語。
●2組に分かれて、基本運動→チェンジ→指定テキスト発語。

6、お話…日本語の独自性、Fメソッドについて

○詳しい内容
2、Fメソッド基礎T
2人1組になり、腰の回転を使った動きを中心に、相手との気の交流を して、相手を受けたり自分から仕掛けたりしながら、動きの強弱を変え て行う。場所は移動しない。

次に、以前からFメソッドをやっている人で2人1組になり、最初のも のに場所移動を含めた動きを行った。何回かその場でお互いの動きを合 わせていき、動ける間ができたら、片足をゆっくり前に出し、そして腰 を中心にした回転運動でお互いの位置を入れ替わる。そしてまたその場 で気の交流を行うのが基本的な動き方になっていた。動きのスピードは その時によって違う。スペースを広く使って動く。

今度は4月以降にワークショップに参加した人たちで2人1組になり、 最初のものにその場の足の移動を加えた動きを行った。

Fメソッドは腰をいれて動かないと、回転での移動や、スローの動きに 急に変わったときなど即座に対応ができない。2人1組で行うときは、 始めのうちは相手の見た目のスピードにあわせ動きの強さを変化させて いく。そして徐々になれてきたら、お互いの内面の動きを感じて動いて いく。1人の世界に入ってしまうのではなく、相手を感じていくことが 大切なのだと思った。

Fメソッド基本運動(ファリファリ)
次は個人で鏡に向かって立ち、Fメソッドの動きで腰を中心にした回転 運動の動きを、それぞれが確認した。たまに鏡を見て自分がどのように 動いているのか、腕に力が入りすぎていたり、その逆でふにゃふにゃに なりすぎてしていたりしないか、きちんと腰が入っているかなどを確か めた。動きのスピードにも強弱をつけ、動きにブレーキをかけて惰性で うごいたり、速いスピードで動いたり、それぞれが様々に動いた。

そして、左右の体重移動の動きを鏡に向かって行いそれぞれで確認し た。この動きは、左右へ体重移動をしながら、背骨を波のようにゆっく り柔らかく動かし、徐々にねじりを加えていく。いつもこの動きをやっ ていると、どんどんと体がほぐれていき、水の中にいるような気になっ ていく。

Fメソッド基礎U
4人の組を作り円になって、テクスト「すばらしいわ」「こわいわ」 「どうしたのさ」「壊れちまいそう」の4フレーズを使い、それぞれ1 人1つの言葉を言っていく。前の人の言葉を受けて自分の言葉を言わな ければならないので、ただ言うのではなく、4人で流れを作り、感じな くてはいけない。流れを感じ、いろいろなバリエーションで組み立てを していく。

次にその場での動きを加えて行った。体を声にあわせて早く動かした り、ゆっくり動かしたりした。力の入り方によっても、声や動きか違っ てくる。頭で考えるのではなく、体で反応して動かなければいけないと 思った。

今度は選抜された4人が空間を使っての動きを加えて行った。声の組み 立ても大切だが、空間の組み立ても大切だと思った。その時の自分の入 れるポジションをうまく見つけないと、変に間が抜けてしまうと思っ た。単調にならずに色々な変化を加え、全員で流れを感じ、どんなこと にも柔軟に対応できるようにしなくては、と思った。

3、お話…今回は「声」についてだった。
声はみんなが同じではなく、個人個人の声がある。そのため、同じ台詞 を言っても様々なバリエーションが生まれてくる。伝統演劇の能や歌舞 伎(肉体演劇と言われている)にはそれぞれの型がある。しかし、個人 の持つ声の違いによって同じ演目を行っても、まったく同じにはならな い。伝統演劇の中でも浄瑠璃と義太夫の声の表現力はすごいものがあ る。しかし、その芸を習得するには長い年月と努力を必要とするので、 「やっとスタートラインに立った」と思ったときにはかなりの高齢にな ってしまう、という。

5、F基本発語・・基本テクストを使っての稽古…
また割りの姿勢になり、全員が8割の力でセリフを言う。息の使い方、 姿勢に気をつける。腰を落として、腹から声を出す。

次に両手を前に出して、爪先立ちでお尻を10cmあげてしゃがんだ体勢 でセリフを言った。次第に足が震え、お尻を下げたくなりながら必死に セリフを言った。そのせいか、声に迫力があった気がした。言い終わっ たときには前へ崩れるほどに足が疲労していた。

今度は膝をつき、手は上に、顔を上げ天井を見上げた体勢でセリフを言 った。声の出しにくい体制なので、体の状態を探りながらセリフを言っ た。

まずは5回、体勢を鋭くチェンジして基本テクスト発語。テンションが 次第に高くなっていくのに気がつく。内側から変化を加えていく。そし て、F基本運動から3回チェンジで基本テクスト発語。体の一部に負荷 をかけ、声を変化させたりしながら。

2組に分かれ、片方が行い片方がそれを見る。まずは基本動作からチェ ンジ3回で基本テクスト発語。セリフをただ言うのではなく、組み立て ながら行う。次に基本運動からスローな動きになり、チェンジ3回から 基本テクスト第一声に踏み込んだ。そして、基本運動からチェンジ1回 で基本テクスト発語。途中で姿勢を変えながら、声の力を強くすること を心がけながら行った。組を交代して、基本運動からチェンジ三回で基 本テクスト。とにかく強く、強く声を出す。再びF基本運動からチェン ジ3回で基本テクスト発語。さっきよりももっと強く声を出す。そし て、F基本運動からチェンジ1回で基本テクスト発語。強さだけでな く、組み立てにも注意して。

選ばれた6人で、まずは基本運動からチェンジ3回で基本テクスト発 語。体に負荷をかけ、声を強く出す。再びF基本運動からチェンジ3回 で基本テクスト発語。バリエーションを加えていく。F基本運動からチ ェンジ一回で基本テクスト発語。のどが限界というところまで追い詰め ながら、声をとにかく強くだす。次に一人がセリフを言い、ほかの人が それを受ける。声の力が弱いと、その場が成り立たない。声の影響力が 重要だと思った。ラストに6人全員で基本テクストの発語をして、終 了。

8、お話…日本語はとてもすごい力がある。
「息」というひとつの言葉に「いのち」「いきおい」などの言葉も含ま れている。漢字が日本に入ってくる前からあった言葉。それに漢字をあ てはめて、今現在使っている。

Fメソッドは基本となるもの。相手との[間]を意識する、相手の呼吸を 読むこと、空間を感じることなど、様々なことの基本になることが含ま れている。Fメソッドができるようになれば、どんなことにも応用がで きる。
 
 
今日のワークショップでは、感じることの大切さを再確認しました。流 れを、相手を、呼吸を、空間を、様々なものを感じる力を鍛えていきた いと思いました。そして、自分の声はひとつしかないので、大切にして いきたいと思いました。Fメソッドには本当に色々なことが含まれてい て、毎回違ったことに気づきます。すごいな・・・とつくづく思いまし た。

2003年6月11日(水)

ワークショップの感想

(*FはFメソッドの基本用語。自在性と自由性を指す。)

ワークショップを始めて7ヶ月が過ぎました。まだまだわからない事だ らけで、どうすればよいのかわからなくなる時も多々あります。それで も体を動かして声を出してみると、面白いと思うのです。

ワークショップを始めて、自分の中がちょっとだけ変わった気がしま す。それは上手くは言えないのですが、表現することへの恐怖心が減っ たような、そんな感じがするのです。それを感じたのはワークショップ の藤野合宿の発表の時なのですが、ステージに立った時、いつもとは違 う感覚でその場にいたのです。

Fメソッドをしていると、自分を縛っているものから自由になってい く、そんな気がします。自分自身、こんな声も出せたのかぁ、とびっく りする時もあります。

その場の空気を読んで、ここだと思うところで入る…今はまだまだわか らない自分です。最近サークルをやり始めて、中途半端に入ってしまう 自分がくやしいのですが、それでも何回もやってみて、自分のペースで 頑張っていこうと思っています。

とりあえず、全力で頑張ってみようと思います。




[記録]
同じものは二度とできない

ファクトリー活動記録、ワークショップグループC          
活動日:2003年5月14日(水)19:00〜21:00
会場:新宿村スタジオ
記録:中内智子


○本日のメニュー
1、お話…今後の活動の予定について。
2、ストレッチ
3、発声
4、テクスト「カサンドラ」(オレスティア3部作より)テクストを使 っての稽古
●円になっての群読
●横になって足を90度にして
●2組になり、壁に背中をつけてまた割りの姿勢で
●円になって、個人でまた割りの姿勢で
●2組になり、Fサークル

5、休憩
6、お話…言葉について
7、基本テクストテクストを使っての稽古
●また割りの姿勢で8割の力で
●膝をつき体を後ろにそり、片手を床に、片手を上に上げた状態で
●Fコア:F基本運動→チェンジ→テクスト
●人のことばを聞いて動く
●Fサークル


○詳しい内容
3、発声…腹筋を使っての「シ」と「ア」の発声。徐々に速さを上げ て、最後に息を詰めて長く発声し、息を使い切る。その後、また割り発 声、ランニング発声を行う。(それぞれ「アエイウエオアオ」でア〜パ 行まで)

4、テクスト「カサンドラ」を使っての発語稽古…全員で円になり、指 定されたセリフを郡読する。まだセリフの入りが甘いため、強さがまち まちになってしまい、途中でストップした。

次に横になって足を90度に起こし、個人のスピードで左右床につけず に足を倒しながら「カサンドラ」のセリフを発語。早く倒したり、ゆっ くり戻したりして、力の入り方の違い、セリフの組み立て方、息の詰め 方などに注意しながら行う。単なる腹筋運動ではないので、セリフを大 切にして行うことが重要。

今度は2組にわかれ、片方が壁に背中をつけまた割りの姿勢になる。そ して、セリフを言い、ポイントとなるところでもう片方の人に両膝を壁 に押し付けるつもりで押してもらう。1人でやっている場合は、壁に両 膝を自分で近づけるようにする。この時、誰かに押してもらっている人 は1人でやっているときとは逆に、押してもらっている力に反発するよ うに壁から離れるようにする。その押し合いで力が生まれ、自然とセリ フにも必死さが出てくる。一回ごとに足がプルプルしているのが解る。 ほかの人を聞いていても押されている時とそうでない時は、力のこもり 方に違いがあった。

壁から離れ、円になり全員がまた割り姿勢でセリフを言った。個人個人 がセリフの組み立て、息の使い方に注意しながら行った。ただなんとな く言うのではなく、自分で組み立てていかないと、この「カサンドラ」 の言葉に負けてしまい、聞いていてつまらないものになってしまう。

その後、2組に分かれてサークルを行った。自分がセリフを言った後も 気を抜かずにほかの人のセリフを自分の体に通す。なので、ものすごく 集中する。誰かのセリフで流れが止まってしまうと急に体の緊張感が解 けていく感じがした。前の人の流れでセリフを言ったり、前の流れを一 気に変えてセリフを言ったり・・・その場での空気が創られていくのが 実感できる。間が悪いとすぐに崩れてしまう。終わりの合図で一気に力 が抜けた。

6、お話…今回は言葉についてだった。
外国語の場合(英語等)はある言葉の発音を伸ばしてしまうとまったく 別の意味になってしまう。しかし、日本語は能を観ていてもわかるが、 伸ばしても(母音が子音に必ずついているため、どこからでも長母音化 できる)意味が変わらない。

芝居でもよく「体が基本だよ。体が大事だよ」というが、まずは「言 葉」が大事。息の使い方や、組み立て方でその言葉の印象も変わってく る。外国の人も日本語は面白いと言っている。セリフでも何でも、いか に言葉(音声)を組み立てていくのが大事か、というお話でした。

7、基本テクストを使っての稽古…鏡のほうを向きまた割りの姿勢にな り、全員が8割の力でセリフを言う。腹を使い、姿勢に気を付けて息の 使い方に注意しながら行う。

次に膝をつき体を後ろにそり、片手を床に、片手を上に上げた状態(ダ ンスのきめのポーズのような格好)で、頭は後ろに倒しセリフを言っ た。この格好だけでもかなりきつい。体がつった人もいた。変なところ に力が入りそうになるが、色々探りながらセリフを言った。

蛍光灯を消しライトの中でのFコア。まずは5拍で体の形をチェンジし て基本テクスト。息の使い方に注意しながら。次にF基本運動から5回 体の形をチェンジしてから基本テクストの発語。上辺ではなく、中から 変化させていく。声のバリエーションにも変化を加えていく。そして、 F基本運動から3回チェンジで基本テクスト発語。やっているうちに 段々と自分が壊れていく気がした。最後のほうは、体もきつい、呼吸も 苦しい・・・なのに気持ちよくなってしまうという不思議な状態になっ た。

今度は1人が言っているセリフを聞き、他の人はそれを体に通して反応 していった。力強く言ったり、ささやくように言ったり、泣きそうだっ たり、恐怖だったり、色々な声にそれぞれが反応していく。聞こえてく る声に集中し、体を動かした。言葉のエネルギーが足りないと、相手に 影響を与えることができないし、受ける側も集中して意識しないと相手 のエネルギーを感じ取れないと思った。

その後何人か呼ばれた人で、Fサークルを行った。他の人は周りで座っ てみていた。その場、その瞬間に合った場所に入り、セリフを言う。単 調にならないよう、声のバリエーションも変化させながら、前の人がそ の場をもたせられないと思ったら、すぐに入っていき、変化を加える。 入っていくときも、その場から出て行くときも、場を壊さないように。 空気の流れを感じ取ることに集中した。


今日のワークショップは、とても緊張したが、それ以上に楽しかった。 その理由のひとつは多分基本テクストテクスト(の自由組み立てによ る)を使用したFサークルをはじめてやれたからだと思う。今まで周り で見ていたときとは違う感覚を感じた。 あと、サークルの一番最後 で、根岸さんが『サロメ』のセリフを言っているのを見たとき、ずっと 見ていたいと思った。自分も一人でその場をもたせられるぐらいになれ るよう、これからも精進していかねばと思った。

Fサークルは毎回全く別のものが生まれる。同じものは二度とできな い。その瞬間を大事にしていくことが大切だと思った。

息をコントロールするのはまだまだできていないので、まずは自分の息 の使い方をつねに感じれるようにしたいと思った。


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