211系5000番台の床下加工
 1988年の実車登場以来、待てど暮らせど製品化されなかったJR東海の211系5000番台が、23年の時を経て、やっとグリーンマックスから完成品・塗装済キットとして発売されました。今や313系と並んで、静岡地区の主力車両とも言うべき車両の製品化というニュースに心躍ったのは私だけではなかったはず。当初発表の発売時期から遅れること約半年。いよいよ姿を現した製品と対面し、感激…のはずだったのですが、何かイメージしていたのと違う???
 実車のイメージに合わなかった原因は床下でした。正面助士席側の拡大された窓やインバータクーラーが搭載された屋根など、0番台などとの違いはきちんと再現されているものの、床下については0番台どころか、205系ATC車用や103系用の床下機器パーツが流用されたため、実車の持つ「国鉄型をJR風にアレンジ」した雰囲気とはどことなく異なっていたのです。
 まあ、目をつぶってしまえば…と一度は思ったものの、「流用」と分かってしまうと余計に気になるもので、実車の資料と照らし合わせながら、床下機器を並び替えてみたり、足りない機器を追加してみたりと、自分なりに「雰囲気重視」で加工をしてみました。完全に実車と一致させることはできませんでしたが、同じように加工される際の参考になればと思い、以下に紹介させていただくことにしました。
(※なお加工にあたっては、自己責任において行ってください。)
製品の床下

 上の写真は、先頭車クモハ211-5000(動力車)を山側から見たものです。パッと見、なかなか良い雰囲気なのですが、海側を見ると印象が一変します。

 こちらは、先頭車クモハ211-5000(動力車)を今度は海側から見たものです。ズラッと並んだ抵抗器がどことなく古い雰囲気。また、車体と床下機器との間の微妙な間隔も間延びした感じに見えてしまいます。
流用パーツの正体

 完成品では既に必要なパーツだけが床下に接着されていますが、塗装済キットでは、上の写真の3種類の床下パーツが同梱されています。参考までに、それぞれ下側はグリーンマックスの分売パーツとして販売されている形態です。成型色が異なるだけで、内容は全く同一のパーツです。
 それぞれ、クモハ:床下機器(B)、モハ:床下機器(A)、サハ・クハ:床下機器(C)を、一部加工(一部の機器を切断)して使用しています。
 一見すれば分かりますが、モハに使用する床下機器(A)では、実車にはないMGが表現されていたり、クモハに使用する床下機器(B)では、たくさんの抵抗器が表現されていたりと、211系の専用品ではなく、あくまで他の国鉄型形式に汎用的に使用する「共通パーツ」です。
 後述しますが、塗装済キットにはこのランナーの状態で同梱されているのがポイントで、完成品の床下を加工するよりも、パーツの確保が容易になります。
クモハ211−5000の床下

 加工したクモハ211−5000です。上が海側から、下が山側から見たところです。(以下、上が海側、下が山側で撮影しています。)
 製品(完成品・塗装済キット)では、動力車がクモハ211形に設定されていますが、今回の加工に併せて、動力車をモハ210形に変更したため、トレーラーになります。
 まず、海側にズラッと並んでいた抵抗器箱は、3ブロックのみ引き続き使用しますが、その右横にある大小組み合わされた抵抗器箱は、床下機器(B)の付録パーツとして付属しているものを使用しています。運転台寄りには、エアタンク(供給空気ダメ)、ブレーキ制御装置箱を表現しました。抵抗器箱の連結面寄りにある誘導フィルタ箱を床下機器(A)のMG横にある補助抵抗器箱を使用して表現しました。なお、ATS−PT搭載の場合、最も連結面寄りに機器箱を追加します。
 山側は、製品そのままのパーツを使用しても、それなりに雰囲気は出ますが、遮断器の右側に過電流継電器を表現するため、寸法の近い箱を接着してみました。主制御器箱・励磁装置(実車は2ブロック分)は、これまた床下機器(B)の付録パーツを2つに分割のうえ、配置してあります。
 なお、車体と床下機器との間が間延びして見えないよう、パーツの土台部分を薄く削るなどしてから床板に接着してあります。
クモハ211−6000の床下

 製品では、クモハ211形5000番台と共通ですが、1M方式独特の「ぎっしり」並んだ床下機器を再現してみました。
 海側の抵抗器箱は、やはり床下機器(B)の付録パーツを使用しています。横に長いSCVは、3つの機器を接着して表現してみました。中央のメッシュ部は、実車とは分割形状が異なるものの、適当なパーツが見つからなかったため、幅の寸法が近い床下機器(A)のMG横のフィルタ装置箱を利用しました。運転台寄りにあるコンプレッサなどについては、床下機器(B)のブレーキ弁ユニットと床下機器(A)の除湿装置を組み合わせて、それらしく表現しました。
 山側も機器が盛り沢山です。主制御器箱・励磁装置箱は、やはり床下機器(B)の付録パーツを使用しています。5000番台のものと違い、分割されているものの間隔は狭く、パーツの間隔そのまま。遮断器もそのままです。
 6000番台は床下に余裕がなく、前後の台車間にぎっしりと機器が詰め込まれたような状態で、床板の窪みよりもさらに台車に近い位置にも機器が配置されています。台車が首を振った際に、機器に干渉しないように注意が必要です。
モハ210−5000の床下

 モハ210形5000番台は、0番台などと違い、補助電源装置としてMGではなくSCVを採用したため、床下中央には丸い円筒形のMGではなく、横長の「箱」が設置されているのが特徴ですが、製品では、MGが表現された床下機器(A)を使用しています。
 海側中央部のSCVを表現するため、床下機器(A)の付録パーツであるSIVを利用しました。実車は、SCV右端のルーバーが独特の形状をしており、残念ながら適当なパーツが見当たりません。右端のコンプレッサは、1次車(5001〜5010)までが0番台などと同じ形式ですが、2次車以降は同容量の別形式(311系や313系にも採用)に変更されています。
 山側は極端に機器が少なく、特に右側(下り浜松・名古屋側)はガラーンとした印象です。実際には空気配管などもあるのですが、奥に配置されている上に側面から見た場合に目立つ機器箱はないため、省略しました。パーツはほとんど床下機器(A)から調達できますが、山側の車両番号下にある大きな蓄電池箱については、手元にあったジャンクパーツから調達しました。
サハ211−5000の床下

 サハ211形5000番台の床下機器は、製品では床下機器(C)から、ATC関係機器箱をカットして使用しており、後述のクハ210形5000番台の床下機器と同一とされています。しかしながら、実車がサハとクハで同じ床下機器配置であるはずがありません。
 海側には中央にブレーキ制御装置箱、下り寄りに補助変圧器箱。山側には接地スイッチ箱とエアタンク(供給空気ダメ)を配置します。いずれの機器箱も小さいので、他車両の床下を加工した後の残りのパーツを使用しました。
クハ210−5000の床下

 クハ210形5000番台の床下は、製品では前述のとおり205系ATC車用の床下機器(C)をベースに、ATC関係機器箱をカットして使用されています。
 海側の運転台寄りには、救援ブレーキ装置箱を若干奥側に配置して表現しました。中央にはブレーキ制御装置箱、ATS−PT装備車の場合には、写真のとおり連結面寄りに機器箱を追加して表現します。
 海側には運転台寄りにヒューズ箱、中ほどにエアタンク(供給空気ダメ)、連結面寄りに補助変圧器箱を表現しました。
クハ210−5300の床下
 クハ210形5300番台の床下は、基本的にクハ210形5000番台と同様ですが、トイレ設置車であることから、床下中央連結面寄りに水タンクを追加するとともに、近傍に水揚げ装置を表現しました。なお、床下機器(C)に付属の水タンクは、肉抜きのために大きく穴が開いてしまっているので、塗装済みキットには別途パーツが付属しています。
TOMIX製動力ユニットの組み込み

 唐突に、TOMIX製動力ユニットに交換すると言っても、グリーンマックス製からTOMIX製に交換するだけの理由があるか、検討が必要になろうかと思います。今回の製品(完成品・塗装済キット)に採用されている2モーター式の動力ユニットは、以前のグリーンマックス製動力ユニットと比較すれば、格段に性能が改善されていますが、2モーター個々の性能差が各台車間の性能差に直結してしまうため、低速での走行不安定さは否めません。これが、1つ目の理由です。
 もう1つの理由は、上の写真で説明します。上がグリーンマックスの動力ユニット、下がトレーラーの下回りです。比較すると、動力ユニットの台車の方が、カプラーポケットまでの腕が若干長く作られているため、トレーラー同士の連結間隔よりも、動力ユニットとの連結間隔の方が広くなってしまいます。(標準のアーノルドカプラーで連結すれば問題ないように、動力ユニットの台車に取り付けられているカプラーは、あらかじめ腕が短く作られている。)TNカプラーにすれば、台車の腕の長さには影響されなくなりますが、今度は連結面間隔が極端に狭くなり、曲線通過に支障をきたします。しかも、グリーンマックス製の動力ユニットには、標準でTNカプラーの取り付けができません。
 これらの理由の他にも、車内にモーターを覆うカバーが突出してしまうことや、製品ではクモハ211形を動力車に設定しているため、片方の台車は既にカプラーポケットが切断されており、中間車への移設ができないことなどもあり、TOMIX製動力ユニットへの交換を決定しました。

 床下機器については、トレーラー車と連結しても違和感がないよう、出来る限り同様の配置としました。
 床下機器については、動力ユニットのダイキャスト部に直接接着するのではなく、0.5mmのプラ板に機器を接着したものをいくつかのブロックに分けて、床下のダイキャスト部に接着しています。これは、プラスティック素材の機器を一旦プラ板に接着することで、接着強度をかせぐのと、プラ板のベースをダイキャストに接着することで、接着面積をかせぐのが目的です。また、床下を塗装する際にも、ある程度のブロックでまとめて塗装できるメリットもあります。
 動力台車については、メーカー間で表現に差があるので、TOMIX製の動力台車の側面をカットし、グリーンマックス製台車の側面を接着して、トレーラー車の台車と違和感が出ないようにしてあります。

 今回使用した動力ユニットは、TOMIX製207系用のものです。ボックスシートの表現がないことや、ボディの取り付けツメがそのまま利用できることを理由に選定しました。他にも、209系用、E231系用なども利用できますが、付属の動力台車がグレー成型であるのものの方が、動力台車の加工後も違和感がありません。
 また、ボディにはめ込む際に、動力ユニット前後にある室内灯支持用の柱や固定用のツメがボディに干渉するので、カットしてあります。

 クモハ211形6000番台にTOMIX製動力ユニットを組み込む場合は、ライトユニットと干渉する部分を削り、ライトユニットに通電させるため、動力ユニットの集電板を露出させます。また、ライトユニットの集電バネが長すぎて、動力ユニットがはまらなくなるため、バネを撤去し、リン青銅線に交換しました。
 他の3両・4両編成については、動力車をモハ210形とすることで、クモハ211形がトレーラーとなり、ライトの消灯が可能となりますが、クモハ211−6000番台については、消灯できません。

 ざっと、以上のような加工をして、自分なりの211系5000(6000)番台を製作してみました。
 私と同じように、211系5000番台の加工をお考えの方に、この試行錯誤の結果が、少しでも参考になれば幸いです。

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