功法紹介1. 当時の記事からの抜粋・・・
誰にもできる気功
「内養功」と「強壮功」のやり方 劉桂珍
気功の具体的な功法(やり方。たんに功とも言う)は、古来、多数にのぼり、私どもが発見・収集して整理したものだけでも、四十種類以上ある。ただ、その内容はいずれも大同小異で、姿勢は臥式、立式、歩行式の四種類であり、方法も、すべて、いかにして呼吸をととのえ、大脳をおちつかせ(入静という)、注意力を集中するかにつきる。そこで、今回は、誰にも簡単にやれてしかも効果の大きい功法を二つだけ紹介するので、興味のある向きはやってみられるがよい。
【内養功】
内養功は内臓を丈夫にする功法で、とくに消化器系統の病気の予防・治療には奏効する場合が多い。私自身、1947年には、胃潰瘍、肺結核、肋膜炎、神経衰弱をわずらい、いずれも相当重症だったが、この功法をおぼえて急死に一生を得た経験がある。いらい三十余年、ただいちずにこの功をやってきたので、六十歳になった今日も、身心ともに健康でいる。
では、内養功の具体的なやり方を申し上げよう。
1.姿勢。姿勢には、側臥式、伏臥式、坐式および壮式の四つがある。
@ 側臥式―左右どちらを下にしてもよい。食後行うときは胃の消化活動を考えて、普通右を下にするが、たとえば胃粘膜脱垂などで右側がおもわしくない人は、左を下にしてよい。
頭には枕をしき、背すじは少し弓なりにして、やや胸をかかえこむ形になる。下側の手はタナゴコロ(掌)を上にして枕の上におくが、親指以外の四指は指先を少し曲げる。上側の手は自然に伸ばし、指はすべてらくに開いたまま、臀部のところにおく。下側の脚は自然に伸ばしたままでよいが、上側の脚はヒザを下の脚のヒザに軽くのせて120度に曲げる。両眼は軽く閉じるか、わずかに開けたままにする。
A 仰臥式―枕をしいてあお向けに寝、アゴを引き胴をまっすぐ伸ばす。脚は自然に伸ばし、カカトを合わし足の先を自然に開く。両腕は、手の指を自然に開いたままタナゴコロを下または内に向け、両脚にそってゆったり伸ばす。
目はかるく閉じるか、わずかにあける。
B 壮式―仰臥と同じだが、次の点がちがう。枕を24pほどの高さにすること。そして、肩のところもちゃんと枕があたるようにする。中ぶらりんの形はいけない。
C 坐式―腰掛にきちんと腰をかける。頭はややうつむきかげん、背すじをまっすぐ伸ばし、ちょっと胸をかかえこむようにし、肩をはらないこと。手はタナゴコロを下に向け向こうヒザに置く。両足は肩幅と同じに開き、左右平行になるようにする。ヒザから下はまっすぐ立て、足のウラは地につける。目はかるく閉じるか、わずかに開けたままにする。
2.呼吸法。内養功の呼吸法は、ちょっと面倒だが、普通行われているのは次の二つの方法である。
@ 口はかるくつむったまま、鼻で呼吸する。まずイキを吸い、そのイキが下腹部までとどいたと感じたところで、しばらくとめる。そのあと徐々に吐き出す。
順序は、スウ*トメル*ハクだが、この順序にあわせて、次のような文句を(各自、自分で自由に)心の中で唱えながらやるとよい。
“マイニチヤレバ・・・・ビョウキニキクゾ”
“マジメニヤレバ・・・・アシタモゲンキ”
はじめのほうの例で行くと、マイニチヤレバで吸い、ビョウキニキクゾで吐くのである。そのようにして何回かくりかえし、頭の中が完全に落ち着いたら(入静になったら)、それまでとする。
なお、イキを吸うときには、舌は上あごにふれたまま動かない。吐くときはその舌を下げながら吐く。
A @と同じだが、次のところがちがう。つまり、吐いたあとでとめ、イキを吸いはじめてから文句を唱えるのである。したがって順序は、スウ*ハク*トメルとなる。
3.意守法。普通二つのやり方がある。
@ 意守丹田 丹田はヘソの下の下腹の中にあり、漢方の“気海”という穴位にあたる。昔の人も、“気海は生気の海にして気のあつまるる所、これを守れば元気さかんとなり、百病消徐す”と言っているが、意守丹田とは注意力を下腹に集中することである。内養功の意守法は、結局、“意”によって“気”を下腹に送り込むことであり、これを続けると、内養功をやればすぐ下腹が暖かくなるようになる。
A 意守タン中穴 これは女性用でタン中穴は両乳の中間のところにある。
【強壮功】
強壮功は上述の内養功を基本にして、ひろく仏(仏教)、道(道教)、儒(儒教)、俗(民間)、各流派の気功の精華を吸収しながら私どもがまとめたもので、日本の「岡田式静座法」や「藤田式静座法」とも相通ずるものがある。また、臨床的にも実験ずみで、病人の保健予防や老人の健康保持などに、一定の効果があることが認められている。
でっは、やり方を申しあげよう。
1.姿勢。姿勢には坐式、立式、自由式の三通りある。
@ 坐式―自然なアグラをかき、頭、首筋、背筋はシャンと一直線に保つ。胸をかかえこみぎみに、首は楽にし、頭はやや前に傾ける。両眼はかるく閉じ、両腕は自然に垂らす。両手は組んでもよし、タナゴコロに手の甲をのせて下腹にあててもよい。この坐式だと、両脚がしびれてきて、容易に入静できるので、身体に非常によい効果がある。もし我慢できないようなら、シビれた足のツケ根を硬いものでたたいたり、手でさすってもよい。
しばらくしてよくなれば、また別の姿勢で功法をつづける。
A 立式―両足は肩幅と同じ間隔で平行にならべ、ヒザを少し曲げる。胸をかかえこむ形をとり、背筋をまっすぐ伸ばし、ウツムキかげんになる。両眼をかるく閉じる。肩をイカらせず、二の腕は自然に垂らし、ヒジを少し曲げる。手の指は親指を他の四本とはなして、物をツマむ格好で下腹のところにおく。
また、ヒジを浮かせて両手を胸のちかくまであげ、ボールをおさえる格好をとってもよい。
B 自由式―姿勢にこだわらない。食後は少しやすんでから、あるいは仕事のあいまに、ときには乗物に乗っているときなど、その時の姿勢でよい。全身を楽にして、呼吸をととのえ、丹田を意守し、大脳を入静の状態にするのである。
2.呼吸法。強壮功には四種の呼吸法がある。
@ 静呼吸法―自然呼吸法ともいう。自然な呼吸法だが、普通の呼吸とはちがう。からだから力をぬいて雑念をはらい、心を安静にして行うので、イキをととのえ、精神のバランスをととのえる作用がある。身体の弱いものや肺結核の患者には向いている。
A 深呼吸法―深長混合呼吸法ともいう。長く深く肺いっぱいに呼吸することからはじめ、次第に、静かに細く、平均に、ゆるやかにしてゆく。大脳が入静の状態になったら、呼吸しているかどうかわからないくらいに、かすかにかすかに呼吸をつづける。
B 数取り式呼吸法―吸うときはかぞえず吐くときだけかぞえて、十までかぞえたらまた一からかぞえる。
こうすると比較的容易に大脳を入静の状態に誘導することができる。入静の状態になったら、かぞえない。
C 逆式呼吸法―逆、つまり、吸うときに胸を大きくし腹をひっこめ、吐いたときに胸をちぢめ腹を大きくするのである。このやり方だと、内蔵をマッサージすることになり、大脳を入静に導きやすいし、病気の治療・予防にきわめてよい効果がある。
なお、以上四方法に共通することだが、舌先はいつも上あごにつけること。ツバキがたまったら静かにのみこむ。静呼吸法だけは別だが他の三つの場合は、すべて「気沈丹田」を心掛けること。つまり、イキを吸うときはそれを下腹までとどけるんだと考えながら吸うのである。
【注意事項】
練習の前後には、以下に述べる注意事項を守ること。
1.気功法の原理の理解につとめ、気功法をやれば、自分の中に潜在する力を引き出すことができ、病気の治療・予防や健康法に役立つと信じること。また、気功をやればどんな効果があるかをよく理解し、練習前後の注意事項をよく守って、正しく、持続して練習ができるようになること。
2.精神を緊張させず、気持ちを愉快に保つこと。空気がきれいで静かな場所がよい。草花や樹木のある戸外でやるのが望ましいが、静かな寝室内でもよい。
3.どんな姿勢でやる場合でも、呼吸、血行のことを考えて衣服はゆったりしたものを身につけること。なお、練習前に用便をすませておくこと。
4.練習時間。
病気治療の場合は、やや時間を多くとり、一回一時間程度で一日五、六回。健康法としてやる場合は、朝晩一回、各三十分から一時間ぐらいがよい。
女性の場合、月経期間中もやってよいが、けっして力まないように。注意力は下腹ではなく心臓のところに集中する。月経過多の場合はただちにやめる。
5.初心者は簡単に入静できにくいことが多いが、そんなとき迷ったりあわてたりは禁物、ここを乗り越えてこそ真の意味で入門できるのだと心得るべきである。古人もいっている。「雑念は病因であり、入静こそ良薬である。入静の何たるかを会得すれば、適切なきっかけで入静できる」
きっかけとなる方法には、三つある。
@ 予備運動をする―具体的には頭部をマッサージしたり、指を屈伸させたりする。
A イキを整える―つまり呼吸運動である。あるいは前述したように、吐くイキを一回、二回とかぞえ、十までかぞえたら、また一からやる。さらに、呼吸にかすかな音をともなわせて耳をすませて聞くのもよい。
B 意守法―これも前述したが、注意力を一つのことに集中するのだ。愉快な出来事でも美しい風景でもよい。あるいは、下腹、心臓、足のウラなどに集中してもよい。
6.けいこを積んで入静できるようになると、人体は実にふしぎな感覚がおこるものである。頭が石のように重い、肩を押さえつけられるようだ。からだが自然にゆれる、筋肉がピクピク動く、下腹がぬくもってくる、体内に熱い暖気が流れるような感じがする、ヒフがかゆくなる、頭の中に幻影が浮かぶ、等々。これらはすべて、練習が本物になった証拠であり、治療、保健にきわめてよい作用があるのであるから、そのままにして恐れず、けっして無理に避けようとしないこと。
7.練習を積むと、消化力が増し、新陳代謝が旺盛になり、体重がめきめき増えてくる。それは、病人や虚弱者には良いことだが、健康者の場合、体重が増えすぎてもかえって有害である。したがって、練習を早めにきりあげたり、食事の量を少なめにしたりすること。また、マラソン、水泳、球技、体操などを同時にやるのもよい。虚弱者の場合も、他の体育療法を併用してさしつかえない。
8.練習が終わったときは、急激に立ち上がらないように。そっと目を開け、少し後頭部をマッサージしてから立ち上がること。立ち上がってからは、また少しからだを動かせてから他の動作にかかるとよい。