福岡攻防戦！ コナンvs怪盗キッド
〜CONAN IN FUKUOKA〜
第１話
その日の昼過ぎ。
米花町内のデパートにあるファーストフード店のテーブルに毛利蘭、鈴木園子、そして
江戸川コナンの３人が座っていた。
今日は休日と言うこともあって、蘭と園子のショッピングにコナンが付き合わされてい
る、と言うわけである。
そして丁度昼過ぎ、と言うこともあって昼食を取ろう、と言うことでこの店に入ったの
だ。
「焼きそばとお好み焼きセットのお客様〜」
カウンターで店員が呼びかける。
「あ、は〜い！」
蘭がその呼びかけに応えカウンターで受け取り、テーブルに腰掛けているコナンたちの
前に持ってきた。
「じゃ、食べよう」
そして３人が割り箸を取った。
「…はい、蘭。紅生姜あげる」
そう言うと園子は蘭の焼きそばが乗った皿に自分の焼きそばに乗っている紅生姜を乗せ
る。
「ちょ、ちょっと園子。そんなのいらないわよ！」
「…あれ？ 園子ねーちゃん、紅生姜嫌いなの？」
コナンが聞く。
「そ。私小さい頃から生姜とかそういったのが嫌いなのよ。あの妙な辛さが嫌いでさ」
（…ははは、コイツにも嫌いな食べ物があったのか）
「…ところで園子」
蘭が話しかけた。
「なに？」
「今度の話だけど…」
「ああ、それね。明日にでも飛行機の席は取っておくし、ウチが経営しているホテルに泊
まってもらうから心配は要らないわよ。とにかく一度泊まったら気に入るわよ。福岡の夜
景が凄く綺麗に見られるし、福岡タワーやヤフードームも近くにあるし…」
＊
九州の西の玄関口・福岡。
その福岡の玄界灘を臨むように建っている球場と言えば、福岡YAHOO！ JAPANドーム・
通称「ヤフードーム」である。
そのヤフードームから程近いところにある高さ234メートルと言う堂々たる高さを誇る
福岡タワーのすぐそばに建っているのが平成２年、つまり1990年にオープンした福岡市博
物館である。
その福岡市博物館２階の「特別展示室」でこの度「日本にある世界の秘宝展」と言うの
が開催されることになり、全国各地から数々の宝物が集められることになった。
当然と言えば当然なのだが、今回鈴木財閥にもその手の話があり、鈴木財閥もいくつか
珍しい宝物を提供することになった。
で、「折角だから開催初日に福岡に見に行こう」と鈴木財閥の次女である園子が親友であ
る蘭に話し、コナンにも「一緒に行かないか」と誘い、２週間後の開催初日に彼女たちは
福岡に遊びに行くことになったのである。
ついでに、と言うことで他にも福岡タワーやヤフードーム、太宰府天満宮と言ったとこ
ろも見物して東京に帰る予定を組んだ。
＊
２週間後、羽田空港に向かう車の中。
園子の姉・鈴木綾子が運転する車の中に蘭、コナン、園子、そして綾子と毛利小五郎の
５人が乗っていた。
「いやいやホントに済みませんな。色々とお世話になって」
助手席の小五郎が綾子に言う。
「いえ、構いませんよ」
（…おいおい、園子が誘ったのはオレと蘭だろ？ 何でおっちゃんがついて来てるんだ？）
後部座席に乗っているコナンはそう思った。
そう、蘭とコナンがショッピングから帰った夜にどこで聞きつけたのか、蘭とコナンが
福岡に出かける、と言うことを知った小五郎が「自分も連れて行け」と言い出したのだ。
どうしていいか困った蘭が園子に相談すると「別に構わない」と言う返事を貰い、こう
して小五郎も一緒にいる、と言うわけである。
駐車場に一台の車が停まった。
中から蘭、コナン、園子、そして園子の姉の鈴木綾子と毛利小五郎が降りてきた。
「忘れ物しないでね」
園子が全員に言う。
そして後ろのトランクから一行の荷物を降ろし始める。
「あ、いいですよ、持ちます」
小五郎が鈴木姉妹の荷物も持つ。
そんな彼らを横目に園子が携帯電話を取り出すとどこかに電話を掛ける。
「もしもし。あ、パパ？ …うん、うん。そう。今から行くから」
そして園子は携帯電話を切った。
実は園子の両親は既に昨日福岡に行っており、後から園子たちが向かい、現地で合流す
る、と言うことになっていたのだ。
「さ、行こう」
そして園子を先頭に５人は空港に向かって歩き出した。
空港の中に入り、手続きをするために綾子と小五郎がカウンターに向かう。
その間、何の気なしに空港に備え付けてある時計を見る一同。
「あら〜、ちょっと早く来過ぎちゃったわねえ…」
園子が時計を見て言う。
そう、彼らは飛行機が出発する２時間も前に来ていたのだ。
そうしているうちに手続きを終えた二人が戻ってきた。
「おいおい、まだ出発まで２時間もある、って言うじゃねーかよ」
小五郎が言う。
「どうするの？」
「それじゃ、こうしようか。それまで売店かどこかで時間潰して、そうねえ…、午後１時
にここに集まろう」
園子がそう提案し、一行は一時的にばらばらとなった。
＊
そして午後１時近く。
先ほどのカウンターにはコナンたち３人と綾子の４人がいた。
「…園子、どうしたのかしら？」
蘭が言う。
「お姉さん、わかりませんか？」
小五郎がいう。
「いえ…。『ちょっと見たいものがある』って園子が言うから売店の前で別れたきりなんで
す」
…と、程なく
「ゴメンゴメン、待った？」
園子がカウンターに駆けつけてきた。
「全く、どこ行ってたのよ？」
「ゴメンゴメン、ちょっと色々と見てきたから。さ、みんな行こうよ」
そして５人は搭乗口へ向かっていった。
＊
羽田空港から飛行機に乗って約１時間５０分。
飛行機は福岡空港に降り立った。
一歩空港の外に出ると、
「綾子、園子！」
一人の男が二人に声を掛けた。
「あ、お父さん」
綾子が応える。
そう、その男こそ、二人の父親であり、鈴木財閥会長の鈴木史郎だったのだ。
「いやあ、鈴木さん、お久しぶりです」
小五郎が挨拶をする。
「おお、これはこれは毛利さん、こちらこそ。実はあなたが来るのを楽しみにしてたんで
すよ」
「…といいますと？」
「中洲でいい店を見つけましてな。後でご案内しますよ」
「そうですか、それは楽しみですな〜。ハハハ」
「お父さん！」
蘭が言う。
「ま、とにかく乗ってください。福岡市博物館にご案内しますよ」
一行の目の前には一台のワンボックスカーが停まっていた。
＊
そして福岡空港から車を走らせ、福岡市博物館近くにある駐車場に１台のワンボックス
カーが止まった。
中からコナンたちが降りてくる。
「あれが福岡市博物館ですか…」
小五郎が言う。
博物館と言われなければ外国の会議場か何かと思えるような建物が彼らの目の前に建っ
ていた。そして話に聞いたとおり、近くには福岡タワーが博物館を見下ろすように建って
いた。
「あ、鈴木史郎様…、ですね？」
博物館に入ろうとした時、一人の男が史郎に近づいてきた。
「…この方は？」
「ああ、この福岡市博物館の副館長だそうだ」
「申し遅れました。私、副館長の宮城、と申します」
宮城と名乗ったその男は小五郎たちに頭を下げた。
＊
「…こちらが常設展示室です」
宮城副館長の案内で常設展示室の前にやってきたコナンたちは受付で入場券を買うと中
へと入っていった。
室内には何人か先客がいたのだが、咳一つするのもはばかられる位静かだった。
室内には教科書やＴＶで見た数々の歴史的な石器や土器、書状などが置かれてあった。
中でも彼らの目を引いたのは…
「あ、コナン君、見てみて。金印よ」
蘭があるケースを指差した。
そう、その中には国宝にも指定されている「漢委奴國王」の文字が刻まれた金印が置か
れてあったのだ。
「思ってたより小さいんだな…」
小五郎がつぶやく。そう、その金印は２．３センチ×２．２センチと言う大きさだから
彼らが想像していたよりも小さなものだったのだ。
「ええ、ここに来た皆さんはそう言いますよ」
副館長の宮城がいう。
＊
そして常設展示室を一回りして出ると小五郎が、
「…ところで副館長。その秘宝展というのは…？」
「ああ、それですか。ここの向かい側に特別展示室というのがあるんですが、明日から１
ヶ月にわたってその特別展示室で行なうんですよ。鈴木財閥さんにも貴重な宝石や彫刻を
いくつかご提供いただきましたし。…よかったらご案内しますよ」
そして副館長の案内で特別展示室に向かう一行。
「…本来だったら入場料を戴くんですが、まだ準備中ですので、そのまま入って構いませ
んよ」
特別展示室の中には係員が忙しく動いていた。
いよいよ明日初日ということで準備も最後の追い込みになっているのだろう。
室内に置かれたショーケースには既にいくつかの宝物が設置されている。
「鈴木財閥さんからご提供いただいた宝物は今回の秘宝展の目玉でもありまして。あそこ
に展示する予定です」
そして副館長はあるショーケースを指差した。
「しかしこれだけ展示するとなると警備の方も大変でしょう」
小五郎が言う。
「確かにそうですね。一応福岡県警の方にも協力をお願いしてますし、我々としても考え
得る限りの警部網を敷くことにしていますよ」
そしてこれ以上邪魔になってはいけない、と思ったのか、一行は早々と退散した。
＊
そしてホテルにチェックインするために福岡市博物館を出た時だった。
「…コナン君、どうしたの？」
蘭が聞いた。
そう、さっきからコナンは福岡市博物館の正面玄関のほうをじっと眺めていたのだ。
「ん？ い、いやなんでもないよ」
そしてコナンは歩き出した。
（…なんか気になるんだよなあ…）
コナンはワンボックスカーの中で外の景色を見ながらそう思ってた。
そう、コナンの脳裏に「アイツ」の姿がチラついていたのだ。
（…これだけの秘宝展なんて滅多に行なわれるものじゃないし…、もし「アイツ」がこの
情報を知っていたとしたら、何かしら動いていてもおかしくないはずだよな…）
そんな事を考えてる時だった。
「…君、コナン君？」
蘭の声がした。
「あ、どうしたの、蘭ねーちゃん」
「ホテルに着いたわよ」
見ると、他の者たちは車から降りて荷物を降ろしているところだった。
「え？ もう着いたの？」
「そ、忘れ物しないでね」
そしてコナンは車を降りた。
＊
「ホント、綺麗ね」
夜、ホテルの一室から福岡の夜景を眺める蘭。
確かに園子の言ったとおり、目の前には福岡の夜景が広がっていた。
コナンはその夜景を眺めながら「アイツ」の事を考えていた。
どうも「アイツ」が既に動いているような気がしたのだ。
（…もしかしたら、この夜景のどこかに「アイツ」が潜んでるんじゃねーか…）
その時だ、蘭たち３人の部屋の電話が鳴った。
蘭が電話を取る。
「もしもし」
「あ、蘭？」
園子の声だった。
「園子、どうしたの？」
「ちょっと大変な事が起こったの。来てくれない？」
「どうしたの？」
「来たら話すわ。あ、それとおじさんとコナン君もお願い」
「わかったわ、すぐ行く」
そして蘭が電話を切る。
「どうしたの、蘭ねーちゃん？」
コナンが聞く。
「なんか園子が来てくれ、って言うのよ。とにかく行ってみよう。あ、お父さんとコナン
君も一緒に来てくれ、って」
「わかった」
そして３人は部屋を出た。
第２話に続く＞＞
この作品の感想を書く
戻る