T am you.
〜テーマパーク殺人事件〜

(エピローグ)



 結局梅雨の晴れ間はその日だけであり、次の日からまた雨が降り出した。
 それでも天気予報によると雨が降りやすい天気はここ2〜3日くらいで、週末には天気
も回復して早ければ来週末にも梅雨明けの宣言が出されるだろう、ということだった。

「じゃ、お父さん、言ってくるね」
“蘭”が小五郎に言う。
「ああ、気をつけろよ。この間見たく階段で滑って転げ落ちたなんてことになるなよ」
 小五郎が言う。
「コナン君、行こ」
“蘭”が“コナン”に呼びかける。
「うん」
 そして二人は玄関を出た。

「…そうか…、もうあれから1週間近く経つんだね」
“蘭”が呟く。
 そう、コナンが“蘭”となり、蘭が“コナン”となって1週間が経とうとしていた。
 二人も相変わらず慣れないことで戸惑ってるし、二人の周囲もどこか様子がおかしいこ
とに薄々と感づいているようだ。
 やはり、自分達の目の前にいるのは確かに“蘭”や“コナン”なのだが、 普段の二人と
はどこか違っているのだろうか。
「…そういえばあの日もこんな雨が降っていたのよね」
“コナン”が言う。
「このまま戻らなくなっちゃったらどうなるんだろ…」
「どうなる、って言ったって…。なるようになるしかないよ」
「そうね…」
 そして“コナン”は一歩踏み出した。
「あっ…」
“コナン”が叫んだ。
 そう、雨で濡れていたのか、“コナン”が階段で足を滑らせてしまったのだ。
「蘭ねーちゃん、あぶない!」
“蘭”が慌てて手を伸ばす。
 何とか“コナン”を捕まえたものの、自分も足を滑らせてしまい、二人は階段を転げ落
ちていった。

「…いってえ…」
 コナンは頭を掻きながら身を起こした。
 慌てて自分の体を見る。派手に転がった割には擦り傷程度で済んだようだった。
「蘭ねーちゃん、大丈夫?」
 コナンは自分の目の前にいる蘭に話しかける。
「う…うん、大丈夫だけど」
 そう言いながら蘭も身を起こしたその時、
「あーっ!」
 二人が同時に声を上げた。

「…蘭ねーちゃん?」
 声を発したコナンの目の前には蘭がいた。そして、
「…コナン君?」
 声を発した蘭の目の前にはコナンがいるのだ。
「…元に戻ったんだ!」
 そう、おそらくもう一度転げ落ちたショックだったのだろう。二人の精神は元の体に戻
っていたのだ。
「よかった! 元に戻ったんだ!」
「そうだね、元に戻ったんだね!」

「…おい、お前ら、何騒いでんだ!」
 小五郎が不思議に思ったのか上から下の二人に向かって叫んだ。
「ん、なんでもないのよ、お父さん」
 蘭が慌てて言う。
「それならいいけどよ、怪我はないのか?」
「う…、うん。大丈夫、心配しないで」
   *
「じゃあね、園子。バイバイ」
 園子と別れた蘭は歩道を歩いていた。と、
「蘭ねーちゃーん!」
 コナンが蘭に駆け寄ってきた。
「あ、コナン君」
 そして二人は並んで歩き出した。

「…ねえ、蘭ねーちゃん」
「何?」
「…結局何だったんだろうね、あれは」
 コナンが言う。
「そうね…、精神が入れ替わっちゃうなんて。でも、やっぱり自分の体が一番いいわね」
 蘭が言う。
「そうだよね。やっぱりボクはボク、蘭ねーちゃんは蘭ねーちゃんなんだからね」
(…そうだよな、体が小さくなった上に蘭と精神が入れ変わっちまうなんて…。もうこん
なことはごめんだぜ)
 コナンは思った。

(終わり)


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