「あ、あのさ…これってどういう事かな?」


俺の声がどことなく上擦ってしまうのには訳がある。
というよりも、この状況下でうろたえるなという方が無理な話だ。
俺も短いながらも色々な事のあった人生だが、15年間生きてきてこんな事は生まれて初めての経験になる。
そして、出来ればあまり経験したくない状況なのは確かだ。


「分かんないの?結構ニブイんだね?」


そう言ってニヤリと笑ってみせる俺の後輩、今年の青学男子テニス部のルーキー越前リョーマの整った顔を見上げながら、俺は奴に組み敷かれた体勢のまま冷や汗を流すしかなかった。






年下好み






事の発端は、放課後の練習が終わった後の部室での着替えの時に交わされた不二との会話からだった。

俺のロッカーは不二の右隣にあるから、着替えの時も必然的に奴の隣で着替える事になる。
そのせいか、俺と不二とは普段から着替えの間に話をする事が多かった。
その日もいつもと変わらず、疲れた身体をもてあましながら他愛もない話に花を咲かせていた。



「そういえば、彼女と別れたの?」

ふと思い出したようにそう聞いてくる不二に、小さく苦笑いしてみせて俺はシャツのボタンに手を掛ける。

「あー…何で分かったわけ?」
「だって最近あの子、の事待ってないじゃない。以前なら部室を出た途端に『くーん』って飛びついてきてたのに。」


やれやれといったように苦笑する不二の言葉に、なるほど――と内心思いながら溜息をつく。
確かに不二の言う通り、二週間前までは俺には彼女がいた。
俺より一つ年下の二年生で、まあ可愛い方だったと思う。
でも今は――――居ない。


「何?又相手の不安が爆発したの?」
「何だよそれ?」
「だって前もそうだったでしょ?ってモテるから相手が不安になっちゃうんだよ。そのうち不安が大きくなるにつれて心が耐えられなくなって、向こうから別れを切り出してくる……違う?」

俺より少しだけ小さな不二が下から見上げるようにしてにっこりと笑みを浮かべる。
流石につきあいが長いせいか、不二は俺の事を良く見ていると思う。
黙ってしまった俺に小さく笑って、不二は自分のロッカーの扉を静かに閉めた。
確かに不二の言う通り、俺は何回もそのパターンで彼女と別れるハメになっている。
でも、俺にはそれが不本意でならなかった。
俺が浮気したとかで三行り半を突きつけられるならともかく、こっちには一つのやましい事も無いのに『好きだけど、もう耐えられないの』という一言の元に、一方的に別れを切り出されてはたまらない。
俺に一体どうしろと言うんだ?!


みたいなタイプは年上の彼女の方が良いんじゃない?」
「年上?」
「そう。今までって全員年下の彼女だったじゃない?何か訳でもあるの?」
「ん~~?だって俺、年下の方が好きだもん。何かさー可愛くて守ってやりたくならねー?不二だって裕太の事可愛いと思うだろ?」


そう言ってみせると、不二は何だか複雑そうに苦笑した。

「彼女と兄弟はちょっと違うんじゃない?」
「そっかー?俺兄弟居ねぇから分かんねーけど、俺年下は好きだなー男女に限らずさ。やっぱ可愛いよ。」

そう言って俺は自分の後ろの方で、ヘタバりながら着替えている一年生達を見やった。
まだまだ体格も小さくて、体力もあまりない一年生が、必死になってキツイ練習について来ようとする姿は、俺の中の保護欲を酷く掻きたてる。
甘やかす訳じゃないけど、助けてやりたい、支えてやりたいと思うんだ。
小さく微笑みながら、小さな一年生達の集団をくるっと見回していたら、その内の一人と目が合った。


「…っ?!」


越前リョーマ。

今年の青学男子テニス部の期待のルーキー。
一年生にもかかわらず、圧倒的な力で2・3年生を押さえてレギュラーにまでなった少年。
強気な瞳は自信に溢れ、常に上を、常に遥か先を見据えている。
そういえばこいつも一年生だったな――と内心で思いながら、俺は越前に向かって微かに微笑んでみせた。



、越前みたいなのでも可愛いと思う?」

俺の視線の先を追っていた不二が、何かを思いついたらしく悪戯っぽい表情になって、そう問い掛けてくる。

「んー?思うけど?なかにはナマイキだって思ってる奴も居るみたいだけど、実力がともなってるんだから別に構わないだろ?それに、それが越前の個性だろうしさ。」

不二がどういう答えを求めていたのか分からないけど、俺はそう答えてロッカーの扉を閉めた。



「だって。良かったね、越前?」



にこにこと笑いながら、不二が俺の後ろの方へと視線を向ける。

「え?!」

驚いて振り返ると、先程まで一年生達の輪の中に居たはずの越前が、いつの間にか俺の真後ろに立っていた。
俺の胸元あたりにある大きな瞳がじっと俺を見上げてくる。



「へえーそういう風に思っててくれたんだ?」



嬉しそうに僅かだけ目を細めて、越前は口元を持ち上げる。
不敵な笑み――と表現されるであろうその笑顔も、越前の幼さの残る整った顔のおかげで俺の目には何だか可愛く映った。

「越前、頑張ってるもんな?大変な事も多いのに。」
「別にたいした事無いっスよ。」
「お、言ったな?!」

すました顔でサラリと言ってみせる、こういった所が逆に酷く可愛いと思う。
強がってるわけじゃないとは思うから、そこが越前の魅力なのかもしれない。
俺は思わず口元が綻んでしまうのが分かった。
俺達の前ではこうしてすましてみせる越前だけれど、年相応の表情を見せる事だって確かにある。
くだらない事に妙にムキになったり、変に絡むとムスッとした表情を見せたり、驚いた時にはその大きな目が落ちるんじゃないかと思う程キョトンとした表情を浮かべたり、ファンタが大好きでいつもそればかり飲みたがったり……こうしてあげていったらキリが無い。
それ位、越前には年相応の可愛さがたくさんあると思う。
普段クールに見られがちな分だけ、そのギャップが大きくて余計に可愛いと思うのに拍車をかけている。
俺は思わず越前の柔らかな髪に、そっと手を伸ばしていた。


「うんうん、可愛いなー越前は♪」


にこにこと笑いながら越前の髪をグリグリかき回すと、少しだけ不機嫌そうに眉が寄る。

「そんな顔すると手塚みたいに眉間の皺が取れなくなるぞー?」
「可愛いって言われても嬉しくないっス!」
「そんな事言うなって。今のうちだけだぜー?」

よっぽど可愛いと言われる事が嫌なんだろう。
俺の言葉に、益々ムッとした表情を浮かべる越前。

「おいおい、そんな顔しないでくれよ。な、機嫌直してくれって。」

不機嫌オーラをまとった越前の目の高さまで屈みこんで、俺は顔の前で手を合わせる。
睨むようにして俺を見上げていた越前の瞳をじっと見詰めると、ほんの僅かだけそのキツイ視線が弱まった。


「…………じゃあ、帰り一緒に帰ってよ。そしたら許すっス。」

「分かった、分かった。じゃ、一緒に帰ろうぜ?」


何だか小さい子のわがままのようだと思いながらも、そんな所が又俺には可愛いくて仕方ない。
わがままが出るってのは、甘えられてるって事だし。
俺はもう一度にっこりと笑ってみせて、越前の頭を軽く2・3回叩いた。


















「へえ~?俺ん家のすぐ近くだったんだなー越前の家って。」


登下校の通り道にある寺の門を見上げて俺は声をあげる。
越前の家が寺だっていうのは確かに聞いた事あったけど、まさか自分の家の近所にあるこの寺の事だとは思ってもいなかった。

「知らなかったの?先輩いつも家の前通って行くから、俺は前から知ってたけどね。」

やれやれというように、越前が呆れ顔で溜息をつく。
そんな越前に苦笑いして、俺は小さく頭を掻いた。

「あはは……そう言うなよ。」
「ま、そんな所が可愛いんだけどね。」

「は?!」

思いもしなかった越前の言葉に、俺は一瞬凍りついた。
何だか予想外の単語が越前の言葉の中に含まれていたような気がする。
可愛い………とかなんとか。
越前みたいなのならともかく、俺みたいにある程度ガタイもデカくなって、顔つきも変わり声変わりも過ぎたような奴に言うようなセリフじゃないと思う。
俺は思わず目を白黒させながら、目の前の越前の顔を凝視してしまった。


「そんな事より…先輩、今フリーなの?」
「え………?あ、ああ…そうだけど?」
「ふう~ん?で、年下が好みなんだ?」


さっき部室で不二と話していたのを聞いていたんだろうか?
意味ありげに笑いながら、越前がずいっと俺に近付く。
じっと見上げてくる瞳は、獲物を見つけた猫のようだった。


「う………う~ん…そ、そう……だけど……?」

「じゃあ先輩、俺と付き合わない?」


サラリとこぼれた言葉に、俺は瞬間的に頷きそうになってしまった。

「な………何だって?!」
「だから、俺と付き合ってみない?年下好きなんでしょ?」

幼さの残る、まだあどけない顔がニヤリと笑みを浮かべる。
俺の学生服の前の部分を掴んで、下から見上げてくる越前の表情は、半ば小悪魔のようだった。
突然の告白に呆然としてしまい、俺は越前の成すがままに体勢を低くする。
すぐ目の前に越前の透き通るような綺麗な瞳が惜しげもなく晒されて、俺は大きく息を飲んだ。




「付き合おうよ、先輩。」




自信たっぷりといった様子の越前の笑みが、俺の心臓を跳ね上がらせる。
まさか一年生に、それも越前に告白されるとは思わなかった。


「付き合おうって……俺もお前も男だぞ?!」
「いいじゃん。別に俺の事キライじゃないでしょ?」
「え…それはそうだけど……。」
「俺、ずっと先輩見てたんだよね、入部してからずっとさ。でも、全然気付かないんだもん。」


そう言って越前は溜息をついてみせる。

「嘘だろ?!」
「本当。不二先輩だって気付いてた位なのに。」
「は?!不二が…何だって?!」
「だから、不二先輩は俺が先輩の事いつも見てたの、知ってるって事。」


全く鈍いんだから――とブツブツ言いながら、越前は俺の制服から手を離す。
やっと自由になったのに、俺は動く事が出来なかった。
どういう事か理解するのに時間が掛かりそうだけど、とにかく一つだけは分かる。
越前が俺に告白してきて、付き合おうと言っている事。



「で、返事は?先輩?『可愛い』後輩がこう言ってるんだけど?」



じっと俺の顔を見据えたままそらされる事の無い鮮やかな笑みに、俺はあっさりと自分の中の何かが陥落していくのが分かった。
こうして俺は、越前と付き合う事になった。


















越前と付き合い始めて、俺は予想外に長続きしている現実に驚かざるをえなかった。
正直今までは、もって一ヶ月だったから、越前とが一番続いてる事になる。
授業中はともかく、昼休み以外に部活中や下校時に一緒にいられる時間が多いっていうのが一番の理由かもしれない。
接触が多ければコミュニケーションも取れる。
それが多ければ多いほど、少なくとも二人の関係が悪くなるって事は無いと思う。
今日も今日とて、俺達は放課後の練習を終えて、一緒に家路へとついていた。


「何?先輩の家、今日誰も居ないの?」
「ああ、親父の実家で法事があってさ、おふくろと二人で出かけてるんだ。」
「じゃあ、今日は一人なんだ?」
「そうなんだよ。鬼の居ぬ間に…ってね。」

悪戯っぽく片目を瞑ってみせると、リョーマ――名前で呼べとリョーマが言った――が何か考え込むようにして足を止める。


「ん?どした?」

「ねえ先輩、今日泊まりに行っちゃダメ?」
「は?うちにか?」
「そう。先輩も一人より二人の方がいいんじゃない?」


じっと下から見詰められて、俺は思わずグラついてしまった。
この、賢い恋人はいつの間にか、上手いおねだりの方法を覚えてしまったようだ。
俺が上目遣いに見詰められると弱い事は、すっかり分かってしまったらしい。
俺は小さな恋人の可愛いわがままに、やれやれと肩をすくめるしかなかった。

「この確信犯が!ま、別に構わないけどな。」
「本当?!」
「そのかわり、晩飯とか大したもん出せないからな?」


嬉しそうなリョーマの顔を見て、俺も何だか嬉しくなる。
こんな事位で喜んでくれるんなら、又機会を見つけて泊まりに来させても良いかもしれない。
俺は夕闇にまぎれて繋いでいたリョーマの手をもう一度握り締めて、目の前に見えてきた我が家の門をくぐった。


















「リョーマ、おい、リョーマ!!」


風呂から出てきてみたら、いつの間にかリョーマがソファーの上でうたた寝していて、俺はリョーマの肩をゆっくりとゆすった。
疲れているのは分かるから、寝かせてやりたいのはやまやまだけど、このままじゃ風邪をひきかねない。
俺は小さく唸っているリョーマの顔を覗き込んで、もう一度身体をゆすった。


「風邪ひくぜ?寝るんなら布団で寝ろよ?」

「う~~~~……先輩?」


寝ぼけているのか、少し舌たらずな感じに呟いて、リョーマが目を開ける。

「俺、まだ起きてるから、寝るんなら隣の部屋に布団敷いてあるから、ちゃんとにそっちで寝ろよ?」

起きる気配が無いように見えて、俺はそこまで言って屈みこんでいた身体を起こそうとする。
けれど、予想もしなかったリョーマの行動に、それはあっさりと阻まれてしまった。




「ん~~~~~っ?!!」




急に身体を引き寄せられ、噛み付くように口付けられる。
驚きのあまり、俺は腕の力が抜け落ちそうになってしまった。
別にリョーマとキスしたのは初めてじゃないけど、正直言ってここまで情熱的に求められたのは初めてだった。


「……っ!こらリョーマっ!!いきなり何だよ?!」
「何だはないんじゃない?さっきまであんなに大人しかったのに。」
「は?!何言ってんだお前?!」

どうやら、まだ寝ぼけているらしい。



「………何だ、夢だったのか………。」



ふう――と大きく溜息をついてリョーマは何だか残念そうな表情を浮かべた。

「何の夢見てたのか知らねえけど、勘弁してくれよ。」

俺はうっすらと赤くなった頬を押さえて、小さく息をついた。
やっぱり恋人と二人きりっていう状況は、かなりクルものがある。
まさか、まだ幼いリョーマに手を出す訳にはいかないから、二人の間にはキス以上の事は無かったけれど、あんな風にされれば、俺だって健全な一青少年だから、流石にグラついてしまう。
俺は改めて大きく息をついて身体を起こした。

「とにかく、寝るんならあっちの部屋行けよ?」

肩の力を抜くと、何だか異様に疲れた気がした。



「………………ねえ、先輩?」
「ん?」
「俺達付き合ってるよね?」
「ああ、そうだな。」
「今日誰も居ないんだよね?」
「?そうだけど?」
「今、二人っきりだよね?」
「???何が言いたいんだよ?」



かなり意味深なリョーマの言葉に、俺は首をかしげる。
リョーマが何を言いたいのか良く分からないけれど、何だか嫌な予感がして俺は一つ小さく身震いした。


「分かんないの?」


そう言って、リョーマは自分の着ているブカブカのパジャマのボタンに手を掛けた。

「お、おいおい!ちょっと待った!!」

慌てて俺は飛びつくようにしてリョーマの腕を押さえる。
確かにリョーマは結構積極的だけど、流石にこうくるとは思わなかった。
恋人と二人きりっていう状況だけでも、俺の理性がどこまでもつか分からないのに、肝心のリョーマの方から仕掛けられたらたまらない。
俺はおもいきり大きく溜息をついた。


「と、とにかく!お前寝ぼけてるんだから、早く寝ろって。」


そう言い捨ててから、慌ててその場を離れようと立ち上がると、パジャマの裾の後ろの部分をぐっと引っ張られて、俺はそのままバランスを崩して後ろ向きに倒れこんだ。


「おわっ?!!」


重力に従って倒れこんだ所で感じる柔らかな感触。
驚いて悲鳴をあげた俺の身体を受け止めたのは、ソファーの上のリョーマだった。




「逃がさないよ?」




仰向けに倒れた俺の顔を覗き込んでくるリョーマがニヤリと笑う。
そしてそのままクルリと体勢を入れ替えて、俺の身体を仰向けのままソファーの上に押さえ込む。
その間の動きは、とても無駄が無くて、俺は咄嗟に動く事が出来なかった。
そして、この状況。
確かに俺の方が身体はデカイし力はあるだろうけど、この状況はいささか不利としか言いようがない。
先程から感じていた、嫌な予感が現実のものになったような状況に、俺の喉がゴクリと鳴った。



「あ、あのさ…これってどういう事かな?」



猛獣相手じゃないけれど、出来るだけリョーマを刺激しないように、にへらっと笑って上から見下ろしてくるリョーマに問い掛ける。
何となく声がうわずってしまっているのは、この状況下なら仕方ないと思う。
それもそうだろう、今の俺の状態は『自分より年下で自分より小さな恋人に、押し倒された上に押さえ込まれて、今にも襲われそうな状況』としか表現出来ないありさまなのだから。
何と言うか、情けない以前に俺の頭の中は驚きでいっぱいだった。
俺もリョーマも男だから、どっちがどうという決まりなど無いけれど、二人の年齢や体格なんかを考えたら、俺がリョーマを抱くんだろうと思っていた。
だからこそ、暫くは理性との闘いだろうと覚悟していたのに、この状況はその予想を遥かに裏切ってくれている。
俺は硬直した状態のままリョーマの大きな瞳を見上げた。



「分かんないの?結構ニブイんだね?」



俺とは対照的に少しも慌てた様子の無いリョーマが、意味ありげに口の端を持ち上げて笑みをつくる。

「い、一応聞くけどさ、もしかして……俺を抱くつもりだった……とか?」
「他に何があるわけ?」

意を決して聞いた一言に、サラリと答えるリョーマ。
爆弾を落とされた俺には、もううろたえる以外出来る事が無かった。


「ちょ、ちょっと待てって!お前、何か間違ってねーか?!」
「何が間違ってるのか分かんないんだけど?」
「よく考えてみろよ俺とお前の体格差!逆ならともかく、お前が俺をって……無理だろーが?!」
「そう?そんな事無いと思うけどね。それに先輩が協力してくれればいい事だしさ。」


何をどう協力するんだ――?!という叫びは寸での所で呑み込まれた。
口にしたら、嬉々としてリョーマは実行するに違いない。
自分で引き金を引くバカもないだろう。
俺は何とかリョーマをなだめて、この体勢から脱する方法は無いかと必死に考えをめぐらせる。
冷や汗がツーッとこめかみを流れるのを感じながら、俺は静かに息を飲み込んだ。



「可愛いね、先輩。そんなに恐がる事ないよ。」



そういう訳にいくか!と内心で思いながら見上げたリョーマの顔が、にっこりと鮮やかな笑みを浮かべる。
一瞬ホッとしかけた俺は、次に聞こえてきた言葉に、今度こそ完全に気力を失わされる事になった。


「優しくしてあげるからさ♪」


そう言って近付いてくるリョーマの表情は、もう可愛いだけの小さな恋人ではなかった。




「や、やめっ!ちょっっ!こらっ!!リョーマ~~~~~~っっっ!!!!」




俺が逃げられたかどうかは……リョーマのみぞ知る………。




↑ PAGE TOP