それは首輪だった。
 赤い、まるで大型犬様のように大きくてしっかりした作りの首輪だった。
「…これは?」
 俺は差し出された首輪を受け取り、問い返した。
「…うん、あの、ね……それを、私に…つけて欲しいの…」
 彼女はまるで寒さを我慢するかのように身を捩って震える。
 熱でも在るかのように顔を赤らめて、吐息を荒くして。
「…私が、慎一のモノっていう…印が欲しいのっ…。だから……っ…」
「ダメだ、と言ったら?」
「えっ……?」
 まさか断られるとは思ってなかったのか、一瞬彼女の顔に怯えが走る。
 それを見て口元を歪める、意地の悪い俺。
「冗談だよ。つけてあげるから…髪、上げて」
「う、うん…」
 自ら首を差し出し跪く彼女に赤い首輪を巻き、ベルトを固定する。
 苦しくないように首輪と首の間に指が数本はいるほどの隙間は残した。
 彼女の服装―――水色のパジャマがより一層首輪のエロティックさを強調しているような気がした。
「ぁっ…ぁ、ンッ…!」
 ただ首輪を巻いてやっただけで彼女は恍惚の声を漏らし、ピクンと体を跳ねさせる。
「凄いな…、首輪を巻かれただけでイッたの?」
 彼女を見下ろし、蔑むような視線を送ってやる。
 そういう視線を受けることがますます彼女を敏感にするからだ。
「っ……ぁっ……」
 彼女は跪いたまま俺を見上げ、蕩けたような目で正直にコクリと頷いた。
 両手で肩を抱いて、パジャマのボタンがはじけ飛びそうなくらいに胸元を強調して。
 健全な男なら誰でもゾクゾクさせられるような光景。
 俺はまた意地悪な笑みを浮かべて、彼女の頬を優しく撫でる。
「…ホント、怖いくらいに似合ってるよ。姉さん」

『Feather』

 俺の名は羽村慎一、専門学校生で現在はマンションで2つ上の姉と二人暮らしをしている。
 両親は別に死んだとか蒸発したわけではない、ただ暮らす場所が違うだけだ。
 俺の現在の状態を理解してもらう為に、軽く俺の姉の話をしておこうと思う。

 俺の姉、羽村早百合は俺が高校1年の時に強姦された。
 いや、相手が不特定多数だからこの場合は強姦というよりは輪姦の方が正しいかも知れない。
 やったのは主に姉にアタックをして無惨にフラれた男達だった。
 弟の俺が言うのも何だが、姉は外見こそ周囲の女子達から抜きん出ていたものの、厚顔不遜なその態度はお世辞にも褒められたものではなかった。
 そんな姉だったから、きっと男達の誘いを断る時にも不必要な詰りを加えたりして無用の恨みをかっていたのだと思う。
 自業自得、何も知らないヤツラはきっと影でそう囁いているかも知れない。
 でも、だからといってレイプの的にされてもいいという法があるはずもない。

 その”事件”は思いの外、姉の精神に大きな傷痕を残すことになった。
 2週間ほどの入院生活を終えて家に戻ってきた姉は人が変わったように大人しく、無口になっていた。
 医者の診断では極度の男性恐怖症を含む対人恐怖症、人間不信に加えてそれらに併発される外出恐怖症等々、また軽度の退行の症状もみられるという。
 なるほど、姉の様子はまさにそれだった。
 家族以外の人間を極端に恐れ、一人では決して外出しようとせず、高飛車だった態度はすっかり消えてまるで虐待された猫のように大人しくなってしまっていた。
 軽度の退行というのも頷けた。
 昼間はまだ良いのだが、夜などは見える範囲に誰か一人でも居ないと泣き出してしまうという始末だ。
 こんな状態で学校へなど行けるはずもない、姉は事件から数えて約一ヶ月後―――卒業まであと半年というところで高校を中退した。。

 俺の家は両親二人とも共働きだった。
 別にそうしないと食っていけないわけじゃなかった、むしろ親父も母もそれぞれ並の会社員の2倍は給料をもらえるような仕事をしていたからどちらかが仕事を辞めても家計は別に苦しくもならない筈だった。
 それでも共働きをする理由は単純、二人とも『仕事が生き甲斐』タイプの人間だったから。
 当然様に家を何日も空け、姉があの様なコトにあってからもそれは変わることはなかった。
 自然と姉の相手をするのは俺の役目ということになってくる。
 事件以降一人では眠れなくなった姉を寝かしつけたり、少しでも外の空気に慣れるようにと一緒に散歩をしてやったり。
 俺は俺なりに精一杯、姉のリハビリに協力した。
 そのことは少なからず間接的に俺の受験勉強を圧迫することになった。
 結果、俺は志望大学には悉く落ちて滑り止めの専門学校に通うハメになったのだが、そのことで特に彼女を恨む気持ちは微塵も無い。

 高校を出た後、俺は通学距離の関係で家をでることになった。
 大学にも通らず、さらには県外の専門学校に通うはめになったわけだから当然俺は安アパート&バイト三昧の日々を覚悟していた。
 だがそれはいい意味で、いや…或いは悪い意味でアテが外れることになった。
 丁度その専門学校の近くに知り合いが持っているマンションがあるから親父はそこに住めと言う、しかも家賃なんかも全額親父が出してくれるという。
 勿論俺は両手放しで喜んだ、が―――美味しい話というのは大抵裏があるものだ。
 俺はマンション暮らしの条件として両親から姉の世話を押しつけられることになる、これが両親の…いや、ヤツらの本心だった。
 事件以降ヤツらはあからさまな態度で姉を厄介者扱いしていた、学校へも満足に行けない娘など要らないとばかりに。
 厄介払いができるのならマンションの一つや二つ惜しくはないといったところか。
 仕事に生きる人間というのは金だけは持っている、俺は親父達に微かな怒りを感じながら、それでも条件を飲んだ。
 あの家に一人で残る姉のことを考えると飲まざるを得ない条件だった。

 そして新天地での、俺と姉の奇妙な二人暮らしが始まった。
 さっき俺は姉のことを厄介者と言ったが実際にはそれほど苦になるようなことは実を言うとほとんど無い。
 しいて言えば夜は一緒に寝てやらないといけないことと外出をするときは同伴して尚かつ手を繋ぐか腕を組むかしてやらないとすぐパニックを起こしてしまう所くらいだろうか。
 その辺のことを除けば家事は一応やってくれるし料理だって作ってくれるから俺としては大助かりなわけだ。
 何より姉は(変な言い方だが)俺に良く懐いていて滅多に逆らわないのだ。
 それにほんの一年ほど前まで人を人とも思わない様な態度で勝手気ままに生きていた姉をいいようにコキ使うというのもなかなか快感だったりする。

 …思えば、俺はそんな彼女をもう姉とは思っていなかったのかもしれない、だから彼女も俺を弟と思わなくなっていたのかもしれない。
 だから―――。

 それは二人暮らしを初めて丁度一ヶ月ほど経ったある日の晩のことだった。
 その時俺はベッドの中で次の日の授業の事なんかを考えながらぼんやりと呆けていた、何故かは分からないが一向に寝付けなかった。
 俺の背中のすぐ向こう側には姉さんが寝ていた。
 未だに俺が一緒じゃないと寝てくれなかったしそれに部屋にはベッドが一つしかなかったからだ。

「んっ……」
 深夜を少し回った頃だっただろうか、不意に背中の方からそんな息づかいが聞こえた。
 初めは姉さんが寝言を言っているのかと思った。だが、違った。
「……ぁっ…、んっぅ……ぁっ、んっ……」
 押し殺したような声、妙に艶を帯びたその声に俺の心臓は途端にギクリと跳ねた。
 金縛りに在ったように体を硬直させて、俺は耳に神経を傾けた。
 やがて、しゅっ…しゅっ…と衣擦れの様な音が聞こえてくると、一層姉さんの声が大きくなる。
「ぁっ、ぁっ…んっ……ぁっ、やっあンッ!…………ぁっ……!」
 音と微かなベッドの振動で何をしているかははっきりと分かった。
 一気に広がる気まずい雰囲気。
 俺は自らの微かな息づかいさえ押し殺して狸寝入りを続けた。
 背中から聞こえてくる声と動きはますます大きくなってくる。
 次第にちゅっ、ちゅっ…と水音の様なものまで聞こえて来た。
 …思わずゴクリと、生唾を飲んでしまう。
 無意識のうちに耳に神経を集中させて淫らに自慰に耽る姉の姿を想像していた。
(ッ………姉…さんッ…)
 いつのまにかトランクスの中で俺自身も興奮していた。
 咄嗟に俺は目を瞑って気を紛らそうとした―――その時、だった。
「あッ…ぁっ、ンッ!…ぁっ……っち、っ……、ッしん、いちぃッ…ぁっッ…」
 空耳かと思った、否、空耳だと信じたかった。
 背後から俺の名が聞こえたような気がした。
 ギクリとして再び目を開ける、が、当然振り返って尋ねたりするわけにはいかない。
 俺は再び耳に神経を集中した。
「ぁっぁっ…慎一ッ、慎一っ…ぁっ!」
 今度はしっかりと聞こえた、『慎一』、そう言っている。
 姉さんが、俺の名を呼びながら…自慰をしている…ッ!?
「ッ……!」
 訳も分からず胸が苦しくなって俺は無意識に軽く身を捩った。
「……―――ッ!?」
 途端、ビクッと背中のむこうの全ての動きが制止した。
 衣擦れの音も甘い媚声もぱったりと聞こえなくなった。
 代わりに背中の方からジットリと絡みつくような視線を感じた。
 見ている。
 姉さんがこっちを見ている。
 俺が本当に寝ているかどうか確認している…ッ。
「………ぃっッ!!」
 冗談抜きで心臓が口から飛び出しそうな程驚いた、姉さんの手がそっと俺の肩を掴んだからだ。
 咄嗟に唇を噤んで声を押し殺したが―――バレ、たか…?
「しん、いち……起きてる…の…?」
 すっ、と姉さんの手に促されるままにおれは仰向けに体を倒される。
 無論俺は寝たふりを敢行する、目を瞑ったまま開かず、すぅすぅと寝息を立てる。
「慎一 …」
 首から顔にかけて生暖かい吐息がかかってきた。
 ふぅふぅとまるで怪我を負ったケモノのような息づかい。
 そして唇にツッ…と微かに柔らかい感触。
「んっ…、慎一と、キス…しちゃった……ぁ、ァンッ!」
 クチュッ、という音と姉さんの媚声はほぼ同時だった。
 背中越しではない、耳元での喘ぎ―――強烈すぎた…ッ!
(やっ、ば……!)
 さっきみたいに背中を向けているわけではない、俺は仰向けに寝かされている。
 感触からして股間の辺りが多分、相当に誇張されているはずだ。
 もし…、もし、姉さんが…俺が興奮しているのに気付いたらっっ…!
「ぁっッ!あっっ、ッ!やっっ……ふ、ぁ、ぁっあぁッ……!」
 衣擦れの音はますます大きくなる。
 姉さんの悦声も比例するように大きく、ますます艶を帯びてくる。
 ちゅっ、ちゅっ、と水音まで加速するように早くなってきて、そして―――
「ぁっっ、ぁあっ!ぁ、あぁあッあンッッッ!!!!」
 ビクッ!
 姉さんが震えるのがベッドの振動ではっきりと分かった。
 それきりぱったりと衣擦れの音も悦声も水音も途絶えて、代わりにフゥフゥと荒い息づかいだけが聞こえる。
(イッたんだ……姉さん…っ)
 俺自身、必死に興奮を抑えて荒ぶる息を何とか寝息のそれに似せるのに精一杯だった。
 トランクスの中では痛いくらいに剛直が怒張していた。
 姉さんが気付かないのは部屋が暗いからか、自慰に集中していたからか、…それとも知っていてあえて惚けているのか。
 どちらにせよこれであとは素直に寝てくれると、そう思った矢先だった―――
「…んっ……」
 唇に吐息がかかった瞬間、再び柔らかいものが押しつけられる感触。
 その中から湿ったものが割り出てきて、ぺろりと唇が舐められた。
 二度目のキス、艶めかしい舌の動きに何故か背筋がゾクリと冷えた。
 そしてばふっ…と俺のすぐ隣に寝そべる音、吐息が耳にかかる。
「慎一…」
 どこか満足そうな、姉さんの囁き声。
 ぴったりと寄り添うように体を寄せてきて―――
「………っ……!」
 咄嗟に体を強ばらせた。
 頬の辺りに何か生暖かい粘液のようなものが塗りつけられる感触があった。
 塗りつけたのは姉さんの指、塗りつけられたのは多分、姉さんの―――。
「慎一、好き…」
 耳元で再び姉さんが囁いてきて、そして俺の体をギュッと抱きしめてくる。
 姉さんの柔らかい体の感触と湿った熱気が着衣越しに伝わってくる。

 程なく姉さんは寝息を立て始める―――俺は、朝まで眠れなかった。。

「しんいちーっ!朝だよーっ?」
 翌朝。
 明け方に漸く寝たか寝てないか分からないくらいの僅かな睡眠をとった俺は妙にハイテンションな姉さんの声に起こされた。
「ん…今起きる…」
 鉛のように体が重かった。
 引きずるように上半身を起こしてベッドの端に座った。
 時計を見ると7時半、いつも起きる時間だ。
「慎一、起きた?」
 程なくお玉を片手に姉さんが部屋に入ってくる。
 パジャマの上からエプロンを着た、見慣れているいつもの恰好だ。
「あ、うん…。起きた…けど」
 咄嗟に顔を逸らしてしまう。
 昨夜のことが頭をよぎって俺は姉さんの方をまともに見れなかった。



「ねえねえ、慎一、今日は何時に帰ってくるの?」
「ん、多分5時過ぎくらいになると思う」
「えー…また遅いの…?」
 朝食の最中も姉さんはいつも通りだった。
 あえて違いをあげるとするなら、いつもより機嫌がいいということ。
 そういえば前にも似たような事があった。
 朝起きると妙に姉さんが陽気で、上機嫌なことが…。
 もしかして、あの時も…。
「姉さん、あのさ…」
「なに?」
 ぴくんっ、と体をテーブルの上に乗り出して俺の方を向く。
 話しかけてもらうのが嬉しくてたまらない、そんな風に見える。
「…ゴメン、やっぱり何でもない」
「むー……気になるよぉ…」
 子供のように頬をふくらせて、じとぉ…と俺の方を見る。
 いつもなら可愛いな、と思うだけの姉さんの表情でも今日は不必要に観察してしまう。
 美人、というよりは可愛い、と見る者に思わせるようなそんな外見。
 普段の素振りのせいか顔つきそのものは昔よりも幼く見えてしまうから不思議だ。
 そのくせ、不釣り合いなくらいに体の方は大人っぽいから目に毒と言わざるを得ない。
(こうしてみると…姉さんって凄いヤラシイ体してるよな………)
 エプロンが無くなった胸元は不必要にはだけていて深い谷間が露わになってしまっている。
 しかも辛うじてとめられている一番上のボタンが今にも弾け飛んでしまいそうなくらいパジャマの前が張ってしまっていた。
「……姉さん、もしかして…また、ブラつけてないの?」
「えっ……っ…」
 途端に姉さんが顔を真っ赤にして両手で胸元を隠してしまう。
 そんな姉さんの仕草にムラムラときてしまう俺…やばい、昨日の夜から何か…変だ。
 俺も顔が赤くなってしまって、思わず顔を逸らした。
「んと…そのっ、…また、胸大きくなっちゃって…ブラジャーつけてると…苦しいの…」
「また…って……そんな、この前買いに行ったばっかりなのに…」
 そう、何故か姉さんの胸は成長期でもないのに大きくなる。
 これも事件のショックが原因の後遺症なのかな…とか俺は勝手に結論づけてしまう。
「じゃあ、また新しいの…買いに行かなきゃ…」
 正直に言ってしまうと俺は姉さんと一緒に外出をするのは嫌だった。
 理由は一つ、”恥ずかしいから”だ。
 俺たちはそれほど似ているわけでもない、それでも二人並んでいれば姉弟というのは一目瞭然なことだ。
 それでいてまるで通行人に対して俺を盾にするように姉さんがしがみつくから余計に注目を集めてしまう。
 そして当然、俺は女性下着売り場の奥底までつき合わされることになる、…思い出しただけでも恥ずかしいことこの上ない。
「あ、でも…私は平気だよ?ブラジャー無くても…」
 多分俺が露骨に嫌な顔をしていたのだろう、姉さんは咄嗟にパッと笑う。
「……俺が、平気じゃないんだよ」
「えっ、何…?」
「何でもない、学校行ってくる。」
 俺は乱暴に席を立って、カバンを肩に掛けて急ぎ足で玄関に向かう。
 これ以上姉さんと一緒にいると本当にどうにかなってしまいそうだった。
「あ、うんっ…早く…帰ってきてね…?」
 姉さんの見送りに軽く手で返事をしてそのまま部屋を出る。
 …何故か、また胸の奥が苦しくなった。

 それから何度も俺は”眠れない夜”を経験した。
 勿論俺は寝たふりをして姉さんの自慰が終わるのをじっと待つ。
 姉さんは時折俺が本当に寝ているのかを確かめてきたり、キスをしてきたり、体を軽くなで回してきたりとちょっかいを出してきた。
 俺はひたすら興奮を抑え、寝たふりを続ける。
 そして翌朝になると、何も知らない顔で姉さんと朝食を食べて学校へ行く。
 非常識な日常だった。
 でも、俺には解決策は見いだせなかった。
 それどころか―――


 ―――気がついたのは偶然だった。
 学校に提出するレポートを打ち終わってついでとばかりにパソコン内のデータの整理をしている時、ふとブラウザの履歴に見慣れないHP名を見つけた。
 少し履歴を遡って見てみるとほぼ毎日そのページにアクセスしていることも分かった。
「……………」
 そっと振り返ってベッドの方を見てみる―――姉さんはすぅすぅと静かに寝息を立てていた。
 このパソコンを使っているのは俺以外には姉さんしか居ない、ということは俺に覚えのないページを閲覧したのは姉さんということになる。
 俺は僅かな胸騒ぎを覚えてそのHP名をクリック、たちまち画面にそのHPのウインドウが開いた。
「…ッ…これっ……」
 それは俗に言う『官能小説』を一般公開しているページだった。
 黒々としたページデザインにいくつかのリンクボタン、その中から俺は『novel』のボタンを選んだ。
 画面が切り替わってズラリと並ぶ官能小説の列群。
 その中から一つを選び、開いてみた。
 黒の背景に白い文字で書きつづられたその文章。
 内容はごく大雑把に言えば『ご主人様と奴隷』の話だった。
 主人公が自分の家の地下室に好きな女の子を監禁し、徐々に調教して飼い慣らしていくその過程が巧みな文章で生々しく描かれていた。
 …そのほかにもいくつかあった見慣れない名前のページはその殆どが官能小説のページだった。
 そして姉さんが読んだ形跡のある小説群全てに共通するコト―――それはどれもが”女の子が奴隷として扱われていること”だった。
「…姉さん、こういうの…好き、なんだ………」
 小説の挿絵にある―――全裸に首輪だけをつけた女の子。
 俺は同じように首輪をつけた姉さんの姿を想像してみた。
「……ッ…」
 ズボンの中で勝手に俺自身が興奮して怒張する。
(姉さんを…俺の、奴隷に…?)
 考えただけでゾクゾクしてきた。
 もし、そんなことができるのなら、俺は―――。
「慎一…?」
「っっいッ…!?ね、姉さんっっ!?」
 咄嗟に俺はctrlとescキーを同時押し、さらにaltキーとMキーを同時に押して全ウインドウを最小化する。
 姉さんは眠そうな目を擦りながらむくりと上体を起こしていた。
「慎一、何…してるの?」
「ん、なんでもない。学校の宿題だよ」
 俺は笑って誤魔化して手早くPCのスイッチを切り、部屋の電灯も消してベッドに入った。
 
 その夜はいつもとは違う興奮で眠れなかった。
 そして次の日、俺は生まれて初めて姉さんの事を考えながら自慰をした。
 従順な…俺の奴隷になった姉さんの姿を想像して…。

 それからも日常は相変わらずで多いときは週に4度は”眠れない夜”につき合わされた。
 俺はといえば相変わらずの見て見ぬフリ。
 でもそのことにさえ目を瞑れば俺たち二人の生活はとても巧くいっていた。
 そう、巧くいっていた筈なのに―――


「お帰りっ、慎一」
「…ただいま、姉さん」
 ドアを開けるなり、いきなりまってましたとばかりの出迎え。
 飛びつくように俺に寄り添ってきて腕を絡めてきて、パジャマ越しに自らの胸を無防備に押しつけてくる。
 なんてことのないいつもの”出迎え”だった。
 それなのに、何故だか急に姉さんが鬱陶しく感じて―――。
「…離せよッ」
「ぇっ……きゃっっ!」
 俺は腕に絡みつく姉さんを思いきり突き飛ばす。
 ドンッ…とマンションの壁を響かせて、姉さんは背中を打ってそのまま尻餅をついた。
「しん…いち…?」
「……………。」
 姉さんが困惑するような目で俺を見上げる。
 俺は姉さんを無視して居間へと急ぐ。
 何故かは分からない。
 そう、分からないのに姉さんを見ていると―――無性にイライラした。
 


 夕食の最中も姉さんとは一言も口を聞かなかった。
 いや、口を聞かなかったんじゃない、一方的に無視した。
 始めはいろいろと話しかけてきた姉さんも俺が相手をしないと分かると次第に口を噤んだ。
 姉さんと暮らし初めてから一番静かな夕食だった。

「…ごめんなさい」
「…ん?」
 夕食を終えて翌日提出するレポートを印刷しようとパソコンを起動した時だった。
 突然背後から姉さんの声が聞こえて、とっさに俺は振り向いた。
 夕食の後かたづけを終えたばかりの、まだエプロンすら外していない姉さんが居た。
 俺の機嫌を伺うように、チラチラと落ち尽きなく視線を泳がせている。
「ごめんなさい」
 両手でキュッとエプロンを握りしめて、もう一度呟くように言う。
「…何で謝るの?」
「だって…慎一、怒ってる…」
「別に怒ってないよ」
 自分でも驚くくらい俺の口調は冷淡だった。
 姉さんの唇がキュッと締まる。
「じゃあ、どうしてっっ…」
「姉さん、最近ちょっと甘えすぎだよ。少しは年を考えてくれよ」
 俺じゃない俺が、俺の口を勝手に動かしてる、そんな錯覚だった。
 そうでなければ、俺が姉さんにこんなコト言う筈がない―――。
 でも、蒼白になっている姉さんの顔を見ていると、また、無性にイライラしてきて―――。
「…姉さん、俺たち…別々に暮らそうか」
「えっ……」
「姉さんはここに住んでいいよ。俺はどこかアパート借りるから」
 本心じゃなかった。
 ただ、そう言えば姉さんが”困る”と思った。
 だから、俺は言った。
「いやっ…、慎一ッ…なんで、急にそんなことっ…」
「急に?それは違うよ。今まで我慢して姉さんのワガママにつき合ってきただけ。でももう限界だ。姉さんとは一緒に暮らしたくない」
「そん、な…私っ…慎一に捨てられたら……っ…」
 気がつくと俺は薄ら笑いを浮かべていた。
 追いつめられた姉さんの顔を見るだけでゾクゾクしてきた。
 もっと追いつめてみたい。
 もっと嬲ってみたい―――俺の中でドス黒いものがわき上がってくる。
「しん、いち…お願いっ…なんでもするからっ…、慎一に迷惑かけないように頑張るから…だからっお願いっ…」
 今にも泣き出しそうな顔での懇願。
 背筋にゾクゾクッと何かが駆け上ってきた。
「……姉さん、本当に何でもする?」
「えっ、…う、うんっ」
 俺がとびきり意地悪な笑みを浮かべていたからか、姉さんの返事はぎこちなかった。
 尤も、俺に捨てられると本気で思ってる姉さんには選択肢など無いようなものだけど。
「くすっ…。じゃあ姉さん、そこで…俺の目の前でオナニーしてみせてよ」
「…えっ…な、何……?」
「何、じゃないよ。聞こえなかった?俺はオナニーしてみせて、って言ったんだけど?」
 きょとんと呆ける姉さんにあえて念を押す。
「…そん、な………っ…なんで、……そんなコト…ッ……」
「いつも姉さんが夜中にこっそりシてるみたいにすればいいんだよ。…簡単だろ?」
「えッ……?」
 姉さんの体がビクッと震える。
 キュッと肩を抱いて、怯える兎の様な目で俺を見る。
「姉さん、もしかしてバレてないとでも思ってた?あんなに毎晩ヤラしい声出して、俺にまでちょっかい出してきて…」
「そ、んな…毎晩、なんて…」
「ふうん、じゃあ時々シてたのは認めるんだ…?」
 かあぁと姉さんの顔が真っ赤になる。
 だからといって、俺は容赦なんかしない、してあげない。
「どうするの?姉さん。するの?しないの?俺はどっちでも良いよ」
「ッッ…慎一 …冗談、だよね?…本当にしなくても…っ…」
「それはつまり、”しない”っていうコト?」
 姉さんを追い込む。
 追い込まれたときの姉さんは本当にいい顔をする。
 体の芯までゾクゾクさせられるような、そんな怯えた顔を―――。
「ほら、姉さん。するならベッドに座って?」
「…っ…………………」
 おぼつかない足取り。
 それでも、姉さんはゆっくりとベッドに向かう。
 そして俺の方を向いて、静かにベッドに腰を下ろした。
「始めて」
「…う、ん…………」
 姉さんの手が持ち上がって、ゆっくりとパジャマの上、エプロンの下に潜り込んでいく。
 辿々しい手つきで、下着をつけていない豊かな膨らみをこね始める。
「姉さん、触っているところが見えないよ。エプロン外して」
「……っ…」
 言われたとおりにエプロンを外して、円を描くように両手で自らの胸をなで回す。
 パジャマの上からでも分かるくらいに尖った先端を中心に、さわさわとまるで焦らすように。
「姉さん、そんなんでイけるの?本気でやってよ」
「…っ…ほ、本気……って」
「いつも姉さんが一人でシてる時みたいにすればいいんだよ」
「ッ…ぅ………」
 態と機嫌が悪そうに言うと、それだけで姉さんの動きは良くなった。
 パジャマのボタンを外し、露わになった乳房に左手を添えるように這わせる。
 重そうな乳房を小さな掌で転がして、にゅむっ、と指を埋没させて、イヤらしくこね回して。
「ぁっ……ぁっ……ぁっぁ…!」
 姉さんが押し殺したような声を上げ始める。
 右手の先がするりとパジャマのズボンの中に入っていって、蠢く。
「んっっ…うッ…ぁっ、んっ…ぅっ……」
 体を少し前屈みにしながら小刻みに右手を動かす。
 でも、パジャマのズボンをはいたままだから俺の位置からは具体的に何をしているのかはよく見えない。
 だから―――
「姉さん、ズボンとショーツ脱いでよ。そのままじゃ見えない」
「ッ…やっ、…慎一っ…それ、は……」
「別に、イヤなら今すぐ止めても良いよ。」
 そのかわり―――と含みを持たせ、口元を歪める。
「………ッ…」
 姉さんがキュッと唇を結んでゆっくりと立ち上がる。
 まず一枚、パジャマのズボンを脱ぎ、続いて二枚目、ショーツに手をかけ、辿々しく降ろしていく。
「…くすっ、姉さん…今、糸引いたね」
「……っゃッ…!」
 反射的にショーツを上に戻してしまう。
 勿論、俺はそんなのは許さない。
「ダメだよ、姉さん。ちゃんと脱いで」
「…ッ…ぅ………ッ」
 顔を真っ赤にして、辿々しくショーツを足首の辺りまで降ろす。
 俺はその経過をじっくり、値踏みするように見る。
「脱いだね。じゃあベッドに座って…足、もっと開いて。姉さんの指がどういう風に動いてるか見えるように、ね」
「っ……こ、れで…いい、の……?」
 姉さんは俺の言うとおりに座って、足を開く。
 俺が静かに頷くと、もどかしそうに指を動かし始めた。
「んっ…く、ぁ……」
 左手がさっきと同じように右乳房を捏ね、くりくりと乳首をつまみ上げる。
 右手は先ほどよりやや控えめな動きで秘裂へと伸びていき、ヒクヒク蠢くそこを愛でるように指を絡ませていく。
「ぁ、、…ぁンッ…ぁっ、ふぅ、ぅ……」
 どうやら割れ目の上、淫核の部分を撫でる時が一番姉さんの反応が良い様だった。
 さらにトロトロと溢れる恥蜜を指に絡ませながらゆっくりと割れ目の中へと埋没していく。
 ちゅぷっ、ちゅぷり。
 微かにそんな音が聞こえてきた。
 俺はその光景を食い入るように見つめ、耳を澄ませた。
「やッ…慎一っ…そん、っ…な…見…ないで…ぇ…………」
「うん?」
 ズボンとショーツが無くなったせいか、時折俺の視線の先を確認するようにこちらを見てくる。
 ………見るなと言われると余計に見たくなるのが人の心理だ。
「…しん、いち………?」
 俺は椅子から腰を上げ、態とベッドに座っている姉さんの真ん前にしゃがみ込む。
 咄嗟に姉さんが足を閉じようとするのを、手で”阻止”する。
「姉さん、続けて」
「えっ…、だ、だって……」
「続けて」
 姉さんを”見上げ”る。
 驚愕と怯え、そしてどこかそれを悦び、快感に変えているような貌。
 …ゾクゾクしてくるっ…!
「………ぅっ、ッ…んっ、ぅ…」
 緩やかな手つきで姉さんが自慰を再開する。
 目の前で姉さんの指がヤラしく秘裂を弄り、膣口に飲み込まれていく。
 ちゅぷっ…!
 人差し指と中指がそんな音を立てて膣口にめり込み、恥蜜が飛び、俺の頬にもかかった。
「凄いね…。姉さんってオナニーするときこんなに大胆に指動かすんだ?」
「ぁっっぅ!…それ、はッ……ッ、やっぁ、言、わないでっっ…」
 顔を羞恥に染めて、姉さんの指の動きが一瞬緩やかになる。
 でも、それもすぐに前よりも大胆な動きに変わる、見る者を誘い、魅入らせるような動きに。
「ぁっ…、ぁあっ、、ぁっ…ぅ…ぅっッ、、…ぁっ、あンッ…!ぁっ…!」
 姉さんの動きが徐々に激しくなってくる。
 押さえ気味の声だがいつも姉さんの自慰の声を聞いていた俺には分かった。
 ”もうすぐイきそうな声だ”と。
 だから―――
「姉さん、指止めて」
「ぁっ…ぁっ…あッ…!ぅ、ん…………ぇ……?」
「指、止めて。姉さん」
 自慰に没頭して呆けたような顔をしている姉さんにもう一度強い口調で言う。
 数秒経って漸く俺が言ったコトが理解できたのか、指の動きを止めた。
「…ぁ、ぅ…慎一、…なんで……?」
「別に理由なんてないよ。姉さんだって無理矢理こんなことさせられてイヤだったんじゃないの?」
「そ、れは…」
 キュッと太股を閉じて、まるで尿意を我慢するように姉さんが震える。
 熱でもあるみたいに息を荒くして、チラチラと俺の方を見る。
「姉さん…イクまで続けたい?」
「ッ…ぅ、………ッ…………」
 耳元に唇を寄せて囁いてやる、それだけで姉さんは電気が走ったみたいに体を震わせた。
 そして控えめに、ゆっくりと頷いた。
「そっか、でも駄目だよ。そのまま我慢して」
「ッ…そん、なッっ…慎一っ…」
 姉さんが泣きそうな声を上げる。
 その隣に腰を下ろして、再び耳元に唇を寄せて、意地悪く囁いてやる。
「くすっ、姉さんって…本当にオナニー好きなんだ?」
「ッッ―――」
 囁くだけで姉さんは面白いくらい反応してくれる。
 可愛い姉さん―――だめだっ―――もう、俺の方も―――ッ。
「…姉さん」
「ぇっ…慎一っ…ぁっ、っっ…」
 姉さんの手を取って、哮る股間に押しつけた。
「姉さんのヤラしい姿見てたら俺の方が興奮しちゃったよ。…勿論、姉さんが責任とって処理してくれるんだろ?」
「しょ、処理…?」
「そう、姉さんの口で、ね。」
「……慎一のを……私が……?」
 姉さんの手が辿々しく動く。
 俺の哮りを探るように、熱を感じ取るように。
 ッ…焦れったい…。
「さっ、姉さん」
「…う、うんっ…」
 返事とは裏腹に、さしたる抵抗もなく意外にあっさりと姉さんは俺の前に跪き、もどかしい手つきでジッパーを降ろした。
 さらにトランクスをずらして、グンッ、とそそり立つ剛直。
「ぁ…っ…凄、ぃ…慎一の…こんなに、…なってる……」
 聞いているこっちがゾクリとするような姉さんの声。
 姉さんがそっと唇を寄せて、剛直に舌を這わせてくる。
「……んっ…ちゅっ…はむっ…!」
 姉さんの手つき、舌つきはさっきの自慰の時とは明らかに違った。 
 戸惑うような辿々しさが消えて、大胆にむしゃぶりつくように剛直に舌を、唇を這わせてきた。
「ッ……随分積極的だね、姉さん」
「んふぁっ…らって、ひんいひのらもん…んっちゅっ…んんぅっんっ…ちゅっ」
 啄むようにキスをしてきたかと思うと、カリ首にゾワゾワ舌を這わせてきたり、今度は包み込むように口に含んできたり。
 まるでアイスキャンディーを食べるように深く咥えこんで吸われたり。
 姉さんが口を動かすたびに、男根の根本からジンジンと、未知の感覚がわき上がってくるッ。
「ッ…く、…姉さんっ……!」
 与えられる快感とは別に視覚的な快感もあった。
 俺のを美味そうに舐めて、しゃぶる姉さんを…上から見下ろす。
 それだけでゾクゾクしてきて、今にも、出して、しまいそう、に―――ッ…!
「ッ…やばっ…出ッ…るっ!」
「んっっ!?」
 姉さんの頭を押さえつけて剛直を喉奥まで押し込んだ。
「姉さんッ…飲んでっ…」
 電気のような快感が背骨を駆け抜けた。
 びゅくんっ!
 剛直が跳ねて、先端から熱い精液が迸った。
「んんっ…ふっ…!」
 姉さんが眉を寄せて咽ぶ。
 構わず俺は姉さんの頭を押さえつけて剛直を押し込み、精液を流し込む。
 びゅくっ!びゅくっ!びゅくっ!
 一射するたびにガクガクと腰が跳ねて頭の中が真っ白にぼやけた。
「ッ…んふっ…!」
 ゴクリ…、姉さんの喉が動いて、精液が嚥下された。
 ゴクッ…ゴクッ…。
 喉の動きを”振動”で感じながら、俺は射精の止まった剛直を姉さんの唇からゆっくりと引き抜いた。
「んっ!ケホッ…けほっ…!かはっ……」
 途端に姉さんが咽び始める。
 俺は髪を撫でながら落ち着くまで待った。
「…けほっ…けほっ………………しん、いち…気持ち、よかった…?」
 呼吸を整えながら、健気に俺を見上げてそんなことを聞いてくる。
 自慰を命じた時とは違う、喜びの笑みを浮かべて。
「…ああ、気持ちよかったよ」
 出来るだけ感情を込めずに答えた。
 それでも姉さんは嬉しそうににっこりと微笑んだ。
「…ねえ、慎一 …」
「…うん?」
「そのっ…私、ね…、慎一と―――」
 頬を朱に染めて、吐息を荒くしながらチラチラと俺の機嫌を伺うようにして。
 もどかしそうに太股を擦り合わせる仕草。
 …姉さんの意図はスグに分かった。
 俺は右手で姉さんの乳房を掴み、強く握った。
「ぁっあン…ッ!や、い、痛ッ…」
「…姉さん、抱いて欲しいの?」
 姉さんの耳に唇を寄せて、まるで悪魔がそうするように囁きかける。
「ぇっ…ぁっ……うん…抱いて…欲しい…」
 恍惚の貌でコクリと頷く。
 俺は姉さんから離れて、再び見下ろした。
「…姉さん、何言ってるの。そんなのダメに決まってるだろ?」
「えっ…そん、なっ…」
「俺たち、これでも姉弟なんだから。俺には姉さんは抱けないよ」
 恍惚に染まっていた姉さんの顔が再び追いつめられた兎のそれになる。
 それを意地悪く、じっくりと見下ろす、俺…。
「でも、そうだな…。姉さんが俺の奴隷になるっていうのなら、俺も奴隷として姉さんを抱いてあげるけど、どうする?」
「ど、れい…?」
 奴隷―――その言葉を聞いた途端、姉さんの体がピクンと跳ねる。
 息づかいも表情も、その全てが戸惑い、そして悦んでいるようだった。
「私が、慎一の奴隷……ぁっ………」
 呟きながら姉さんが身震いする。
 肩を抱いて切なそうな顔で俺を見上げる。
「…その顔は、OKってコト?」
「うん…、お願い、私を…慎一の奴隷に…して」
 自らを貶めるような言葉。
 呟きながら、姉さんの顔がますます艶やかになってくる。
 …俺も、もう我慢できそうになかった。
「姉さん…ッ…!」
「ッ…っきゃっあ!」
 姉さんの体を無理矢理ベッドに押し倒した。
 腕の付け根を押さえつけて、哮ったままの剛直を姉さんの秘裂に押しつける。
「ぁっっ!しん、い、ち…?」
「ッ…挿れる、よ―――ッ!」
 腰を突き出す。
 先端にヌルリと恥蜜が絡みついてきて、そして飲み込まれるような錯覚。
「あッ、あぁぁぁッ!んッンン!!!」
 姉さんが暴れるのも無視して剛直を突き挿れる。
 ズプズプとヌラついた肉壁が絡みついてくるッ―――!
 口でしてもらうのとは違う、まるでいくつも舌があるかのように剛直が嬲られ、締め付けられた。
「ぁっ…!あっ…ッ!しん、いちっ……ぁっ…!」
 見下ろす―――死にかけの魚みたいに口をパクつかせてる姉さんが居た。
 その唇を無理矢理奪った。
「んんんンッ!!」
 舌を差し込み、姉さんの口腔内を蹂躙する。
 チュクチュクとヤラしい音を立てて奏でる舌のダンス。
「んぁっ…慎一 …好き…っ…ぁ、あんっ!」
 吐息混じりの姉さんの声。
 聞いているだけでゾクゾクさせられる声。
 そんな姉さんの声がもっと聞きたくて、俺は両手で姉さんの双乳をもみくちゃに捏ね、膣内を突き上げる。
「ぁっ!あぁっあッ!好きっ!好きッ、慎一っっ…ぁあっあッあンッ!」
 膣奥を小突くと姉さんは体ごと震わせてギュウギュウと締め付けてきた。
 両手を俺の背中に回してきて、抱きついてくる。
 切なそうな声を上げて、小刻みに体を震わせて。
 背中に回った手が爪を立てて食い込んでくる。
「っ……姉さんの膣内っ…凄ッ……トロトロでッ、ギュウギュウ締まってくる…!」
 狭まる膣内をこじ開けるように剛直を突き込む。
 それだけで先端から根本にかけて走る痺れるような快感。
 いや、快感だけじゃない―――これは、満足感―――?
 姉さんを抱いているという―――姉さんを抱けたという満足感が―――。
 胸の中にわだかまっていた苛立ちの原因が霧になって頭から抜けていくような錯覚。
 ああ、そうか―――今際の際に俺は理解した。
 苛立ちの原因、それはつまり姉さんを抱けないという不満の鬱積だったのだと。
「ッ…姉さんっっ!」
 姉さんがそうするように俺も姉さんの背中に手を回して抱きしめた。
 同時にぐりゅっ、と鈍い音を立てて姉さんの膣奥にめり込む、剛直。
「あ、ぅッ!慎一っっ…あくッぅ、あンッ!!!!!」
 悲鳴に近い姉さんの声―――途端、暴れるように膣内が収縮した。
「姉さんッ、膣内に…出すよッ…!!」
 自分でも驚くくらいに、獣みたいに息を荒げて俺は”宣言”した。
 刹那、姉さんの膣内で剛直が震えた。
 びゅくんっ!びゅくっ!びゅくっ…!
 精液が音を立てて尿道を通っていく、震える姉さんの体の奥底にはき出されていく。
「あぁぁああぁああッ!!!!ふぁっぁ…あっ、あっ、ぁっ…熱いのっ…出てっ………あッ…!」
 痙攣するように震える姉さんの体を抱きしめる。
 蠢く膣内がまるで精液を搾り取るように絡みつき、締め付けてくる。
「はぁっ……はぁっ……姉さん…っ…んっ……」
「ぁ、んっく……慎一っぁ……んぅっ……」
 互いに息を整えるのも惜しむようなキスだった。
 
 その後は一晩中、姉さんを抱いた。
 肌を離すのも惜しむように、互いの体を求め合った。

「じゃあ、そろそろ学校行ってくるよ」
「あっ、うん…。なるべく早く…帰ってきてね」
 玄関での見送り。
 靴を履きながら振り返ると、そこには不安げな顔の姉さん。
 もはや普段着と化している水色のパジャマと、その首には紅い首輪をつけて。
 首輪を買ったのは姉さんだった。
 外には買いに行けないからネットの通販で買ったらしい。
 そして、俺が姉さんを抱いた数日後に自らそれを俺に差し出した。
 勿論、拒む理由なんかなかった。
 俺は姉さんの首に首輪を付けて儀式的な意味でも姉さんを俺の奴隷にした。
 首輪をつけたことでいくつか変わったこともあった。
 一つは首輪をつける前よりもつけた後の方が姉さんの感度が格段に上がったこと。
 もう一つは前にも増して俺に従順になったということ。
「…そうそう、姉さん?」
「うん、…なに?」
「いつも姉さん、俺が居ない間にエロ小説のサイト見て一人でシてるでしょ?」
「えっ……ッ、…」
 姉さんの赤面は嘘発見器のように露骨だ。
 首輪の効果というのもあるのかもしれない。
「それ、今日からは禁止ね。俺が居ない間に勝手に一人でシしたら…オシオキだよ?」
「…ぁっぅ…、…う、ん………我慢、する……」
 お仕置き―――姉さんの好きな言葉の一つだ。
 軽く会話の中にちらつかせるだけで可愛いくらいに敏感に反応してくれる。
「さて、そろそろ本当に学校行かなきゃ。今日は帰り遅くなるかもしれないけど、姉さん頑張って我慢してね」
 態と意地悪なコトを言って玄関を出る。
 別に俺としては姉さんが我慢しようができなかろうがどちらでも良かった。
 我慢できたのなら姉さんを優しく愛でればいいし、できなかったのならお仕置きをしてやればいい。
 どちらにせよ、俺も姉さんもそれぞれの役割を楽しんでいる、これ以上ないくらいに美味くかみ合っている。
 ただ、困ったことが無いわけでもない。
 こうして学校に向かっている最中も授業の最中も姉さんのことばかり考えてしまって全然勉強に身が入らないこともその一つだ。
 でも、それでもいい。
 今はただこうして姉さんと一緒に過ごしていければそれでいい。
 俺と姉さんの本当の意味で奇妙な二人暮らしはまだ始まったばかりなのだから。

to be continued.......

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