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■「改造具」の誕生
 1900年1月1日、地球外文明圏の超巨大宇宙船が地球に接近。一旦、月に衝突したソレは大気圏外でバラバラに砕けながら地球に落下。
地球外生命体との遭遇はなく、そこに生物が生存していたであろう形跡は認められなかった。

 宇宙船のもたらしたテクノロジー自体は、当時の技術を1、2世紀ほど上回っていた程度だが、その技術は戦闘機から洗濯機まで幅広く応用され、人類は急激な技術革新に大いに沸いた。
そんな、人類の初めて手にする科学のひとつに宇宙船内で稼動していた人間大の自律防衛ロボットがあった。
 メタモルフ(Meta-morpho)と名付けられたこのロボットは極めて攻撃的で、世界各地の宇宙船探査隊が犠牲になった。メタモルフは、大体の国では已む無く破壊されたが、アメリカやドイツ、ソ連などでは捕獲されて研究対象になり、当時の技術革新の一翼を担った。

 日本にも幾つか宇宙船の破片が飛来したが、そこで一体のメタモルフが捕獲された。
そのメタモルフの頭部シリコンプレートに流れる微弱電流の変化と、人間の脳波を重ね合わせて<感情>の起伏に似たモノを発見した日本の生物学者が、メタモルフの頭部に特殊な変換機を埋め込むことでメタモルフの「言葉」を理解することに成功した。以降、このメタモルフを「改造具」と呼称するようになる。

 当時の日本の研究者達は人間世界を改造具に教えようと、実際に社会に出して、ゆっくりと学習させていった。
ザリガニ程度の知能しかなかった改造具は、ヒトとの交流や人間社会の生活の中で様々なことを学習し、二十年近い歳月をかけてヒトと「会話」できる知性に成長した。
そして1928年、人型ロボット:改造具「摩耶」-MHAYA-を昭和天皇即位の記念博覧会に発表。他の先進諸国と異なり日本はロボットと共存する道を選んだ。



 そして時は流れて1936年。
日本で最初の改造具「摩耶」は突如《女王》の能力に覚醒。「摩耶」は大量のメタモルフを受胎した。
このまま胎内で成体メタモルフまで成長させると、凶暴な戦闘ロボットを産出してしまう事に悲観した「摩耶」は、未成熟のうちに胎内から取り出し、自分が知性を得るに至った20年間の人間社会での学習データを娘達に記憶してやることを望んだ。
受精後8週の胚(エンブリオ)は胎児になるギリギリのところまで成長した後に摘出され、「中陰」と呼ばれる特殊な培養槽の中で、「摩耶」自身が体験した膨大なライブラリ、「バルド・ソドル」と呼称されるソフトを6ヶ月かかってインストールされた。
そして無事、1936年9月14日第一世代国産改造具108体が誕生した。



 「摩耶」は、その後も10数年に渡り出産を繰り返し1000体近い改造具を生み出したが、1946年の東京裁判開廷直後、アメリカに接収される。(建前は戦中、多くの軍用改造具を生んだ張本人と言う事になっているが、アメリカ側の本当の目的は《女王》の能力者の確保だったらしい。)
ところが、アメリカ本国への搬送中に「摩耶」は暗殺され、海外で改造具が生み出される事は無かった。

 地球で最初の《女王》の能力者「摩耶」の死亡から数年後、「摩耶」の直系である第一世代改造具の中の一体に《女王》の能力が発現。第二世代改造具の出産をはじめた。
2代目女王も10年近く出産を続け、《女王》の能力を喪失すると、その能力は3代目、そして現在の4代目へと引き継がれ、今に至る。


■終戦直後の「改造具」
1950年1月1日、第二の超巨大宇宙船がオーストラリアに墜落。
1900年の宇宙船と同様、多数のメタモルフが艦内で稼動していたが、この無脊椎型メタモルフは前回の脊椎型メタモルフとは比べ物にならないほど強力な武装を施されており、太平洋戦争の戦後処理に追われていた連合国は、地球外文明圏との交戦を余儀なくされる。


ところが、『敵』メタモルフの「人間の精神を侵蝕する」能力のために既存兵力が役に立たず、程なく連合国軍はオーストラリアから撤退。

1950年3月、連合国軍は撤退後、『敵』の精神侵蝕に対抗するため、日本暫定政府に改造具の参戦を要請。二代目女王が発見された直後だった。


一年以上に渡る改造具と敵側メタモルフの戦闘の後、1951年、『敵』に勝利。

この功績により、サンフランシスコ講和条約で、日本の戦後処理が終了した際に、改造具に人権が認められた。




■戦後の「改造具」
 1952年、改造具に対する人格が認められ、制限付きながらも人権を獲得する。
これは、「改造具を社会システムの監視下に置き《女王》の能力者探しを安易にする」という思惑があったが、とりあえずは改造具とヒトとの友好関係を確立させた。
改造具は女王から取り出された胚の状態では市民権を持たない。「バルド・ソドル」のインストール装置「中陰」から出た際に、「三級市民権」が与えられる。なまじ人権を持っているモノだけあって、改造具の購入予定者に対する国の審査は過敏で、それをクリアーした購入予定者数の数だけ胚を「中陰」の中にセットする。
(※胚の状態のメタモルフは、あらゆる改造具の部位・臓器に加工することが出来るので、出産過多になった胚は臓器移植用にまわされるらしい・・・。)

 「中陰」から出た改造具は、すぐ富士青木ヶ原樹海にある国の教育施設(通称:ロボット学校)に送られ、3年間の一般教養習得期間を終えオーナーに引き渡された時に「準二級市民権」が与えられる。その後、ヒトと共生するようになって1年間無事故・無違反だった改造具は、一般生活を送る上で殆ど制限のない「二級市民権」が与えられる。



 二級市民権登録改造具の市民権は生活日数や態度、社会貢献度で「準一級」「一級」「特級」とランクアップしていく。ランクが低い場合、各種交通機関へ単体で乗車できなかったり、公共施設の使用に制限がかかったり、パーソナルデータを定期的に役所へ送らなければならなかったり、摂取できる食事に制限がかかったり、強制的にパワーセーブさせられたり、睡眠中はハンガーで拘束されていなければならなかったり、etc…と、色々面倒なことが多い。(※ちなみにそれらの禁止事項の感覚としては未成年がエロ本を買ってはいけないぐらいの規制の緩さ。)

 改造具の自我の芽生えの程度は個体差があり、あまりに粗暴だったり、幼稚な改造具は、ロボット学校を留年したり、例え卒業しても「三級」以下から登録されてしまう。また、特別な使用目的での武装過多な改造具も危険性を鑑みて市民権が低く設定されてしまう。
ちなみに現在「特級」はおらず、「一級」が数人いるぐらいな程、審査は厳しい。


■現在の「改造具」
改造具は、改造具自身の修理・加工産業だけでなく、その汎用性の高さから改造具に付随する産業が広く展開されている。
 戦後、日本の各企業は戦中の技術停滞を取り戻すため、軍に統制されていた改造具産業が次々と民営化され、復興を目指した。

 1963年、当時、メーカーが技術能力のプレゼンテーションとして、開かれていた改造具同士の格闘興行や、アングラな賭け試合が統合され、競技規則の詳細を規定して、「ソリッド・バーサス」と命名。第一回全国大会が開催される。開催地は東京大空襲で荒野と化した東京。
 その後も大会は各地で予備戦が開催され、全国大会は過去23回行われた。












【「改造具」の特性】
■「改造具」の定義・・・受精8週に女王の胎内から胚の状態で取り出され、「バルド・ソドル」を「中陰」の中でインストールされたメタモルフの総称。逆に「バルド・ソドル」を入れていないモノは改造具とは認定されない。
(※「バルド・ソドル」・・・最初の改造具「摩耶」が知性を獲得するために20年間の歳月をかけて、人間社会を学習したデータ)
(※「中陰」・・・摘出された胚が6ヶ月間、バルド・ソドルを書き込まれつつ成体まで育成される培養装置)

■改造具のしくみ・・・30%が有機物で構成されており、アデノシン3リン酸の加水分解に伴って発生する化学エネルギーをダイニン等のタンパク質素子を利用して力学エネルギーに直接変換している。
つまるところ改造具自身が強力な分子モーターで、改造具の主な燃料は炭水化物。
みんな、パンよりもお米大好き。

■改造具の繁殖方法・・・《女王》の能力は前代の女王が能力を喪失したり、死んだ場合、その女王が生んだ世代の改造具の中の一体にランダムで引き継がれ、次の世代を産む。
誰が《女王》の能力に発現するかは規則性が殆ど無く、日本政府は女王が能力を失ったとたんに、血眼で次の《女王》能力者探しをしなければならない。
現在、改造具を海外へ持ち出す事を極端に規制しているのは《女王》の海外流出を避けるため

■《女王》の能力・・・女王改造具が体内のタンパク質を使って100%有機物の雄属性メタモルフを数体構築する。それら雄属性メタモルフと女王が交配すると女王は108体の雌属性のメタモルフを受胎する。
雄属性メタモルフは、消化器官や呼吸器官を持たないので、生まれてから数時間しか生きることが出来ない。交配後すぐ溶解してしまう。
ちなみに《女王》の能力を持たない改造具が雄属性メタモルフと交配しても受精卵は胎内で育たない。

■《女王》の特性・・・物質的な体の構造自体は女王も、一般の改造具も差異はない。
ただし、あらゆる改造具に『女王を傷つけることは出来ない』という強制力を持っており、その支配力は直系の世代でなくても効力も発揮する。

■改造具の修理・・・国から認定を受けた改造具の企業は、出産過多で「中陰」に入れなかった改造具の胚を買い付けることができ、改造具の破損部位の換装用パーツや移植用臓器に加工される。
改造具には各々固有のシリコンパターンを持っており、改造具自身の持つ修復能力を超えるような破損箇所の修理にあたっては、パーツを取り換えて終了、というわけには行かない。
外科手術を行い物理的に取り付けた後、取り付けたパーツのシリコンパターンが各改造具固有のパターンに書き換えられるまで、と時間がかかる。改造具同士で器官/臓器を交換することは、原則的に出来ない。

■改造具の持つ特殊能力・・・改造具に突然発現する能力。
生まれた時から持っているモノではなく、成長に伴って現れるらしい。その発現については謎。ソリッド・バーサス参加者のような危険な場所にいる者の方が能力に目覚めやすいらしい。
ちなみに歴代《女王》全員、もともとエネルギー操作系(原動種)の能力者だった。
<主な特殊能力の種類>
‐強化種‐筋力、強度、反応速度、センサー感度等の何らかの身体能力を向上させる能力
‐構築種‐体内・外の成分を媒介に、物質・器具・装置の生成、破損部位の修復等、何らかのモノを造り出せる能力
‐原動種‐熱・電気・重力・磁力等の何らかの膨大なエネルギーをもった空間を生み出す能力

■改造具は涙を流さない。
ロボットだから。マシンだから。
それはさておき、過度に人間が改造具に特別な感情を抱かないように、改造具に涙腺は無い。

■改造具の寿命・・・改造具にも寿命は存在する。中枢制御装置の経年劣化や、改造具に組み込まれているテロメアの消耗が原因で、第一世代改造具では、50年が一般的な限界稼働時間だった。
現在は、技術向上により定期検診さえキチンと行っていれば80年間近くまで稼動できる。



【改造具の派生系「機改人」】
■「機改人」とは・・・特殊法人「改造具開発事業団」が進めている「超人間計画」により産みだされた、改造具と人間のハーフ。計画自体は、初代女王の「摩耶」が《女王》に目覚めた1936年から始まっている。
《女王》の卵細胞と地球上の様々な生命体の精子/精核との掛け合わせ実験の後、1955年、2代目女王の卵細胞と人間の精子との受精に成功。超人間計画一号験体「機改人」が誕生した。
現在、9体が実働していて、予定では10号体までが計画されている。

■改造具との違い・・・機改人の受精卵は「中陰」のような培養装置内では成長せず、人間の胎内だけでしか成長できない。そのため機改人は改造具と異なり「バルド・ソドル」がインストールされていない。
構造上、ソフトフェアのプリインストールが不可能で、新生児として誕生したあと、人間と同じだけ時間をかけてゆっくり成長する。

■機改人の構造・・・60%が有機物で構成されていて、構造的には改造具よりも人間に近く、改造具のようにスペアパーツが存在しない。派手な欠損部位は自己修復能力で気長に治るのを待つしかない。

■受胎実験・・・機改人と雄属性メタモルフとの交配は、《女王》の能力を持たない改造具と同じく、胎内でメタモルフが育つことは無かったが、人間との交配では人間の胎児を身篭る事がわかっている。

■その他機改人の特性
《天使力》改造具で言うところの「特殊能力」にあたるもの。ただし、改造具の特殊能力の種類に分類出来ないようななモノばかり。

《エンジェルハイロウ》天使力を行使するために依代として頭上に現れる光輪。「天使力」の使用時だけ現れる者と、常時物質化している者がいる。

《魔人掌》超人間計画は、「ヒトと改造具の可能性を模索する」という建前の他に、別の目的があるらしく、機改人には改造具には許可されていないような戦闘能力の強化が施されている。
人間の破壊衝動を人為的に具現化させた能力で、その効果は各機改人によって異なる。

《偽翼》機改人の背骨から直接生えているフライトウエポンユニット。生れ落ちた直後に外科手術で取り付けられ、「魔人掌」のコンバーターになっている。つまり、「偽翼」がないと「魔人掌」が使用できない。


【改造具の歴史】※テストに出ません。
1900.1.1-
世界各地に地球外文明圏の超巨大宇宙船の破片が墜落する。
1928-
改造具「摩耶」-MHAYA-が発表される。
1936-
改造具製造事業法を施行。
「摩耶」の《女王》の覚醒に伴い、本格的な改造具の生産がはじまる。戦時中は軍の統制下で改造具工業の確立を目指した。
秘密裏に「超人間計画」発動。
1936-
第一世代国産改造具が誕生。
1946-
東京裁判開廷直後、軍用・民間用問わず改造具がGHQにより接収される。 それから5年間、改造具狩りが行われ、処分された改造具の総数は500体とも1000体とも言われている。
1950.1.1-
オーストラリアに第二の地球外文明圏の超巨大宇宙船が墜落する。
連合国軍は『敵』メタモルフとの戦闘を開始。改造具に参戦を要請。
1951-
『敵』との戦闘に勝利。
1952-
改造具に対して市民権が認められる。
1955-
超人間計画一号験体「機改人」が誕生
1963-
ソリッドバーサスの第一回全国大会が開催される。
現在


・・・・・・・改造具が半世紀以上の歳月をかけて人間社会に溶け込んだにもかかわらず、改造具自身が野蛮な「闘い」に身を置きたがるのは、改造具の本質が「戦闘ロボット」だからなのかもしれない。




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