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*正確な鑑定

 正確には、宇宙空間に存在したことを証明するために、宇宙線に照射された履歴の存在を確認します。 特に小さな隕石を除けば、宇宙線によってできた放射性核種の出す放射線を検出できるかどうか調査されます。 しかし、この方法は特殊な検査装置を要し簡単にはできません。そこで、素人でも可能な方法から検証してみましょう。


1.落ちてすぐの隕石
 ・表面に黒皮があるか
 地球の重力圏外から落下する隕石は、大気に突入する時には、最低でも秒速12キロメートル以上 という途方もない速度となって地球大気と衝突します。音速の30倍以上という速さです。 これほど高速のため、隕石表面にぶつかる大気は数千度から1万度以上という温度に加熱されます。 高温大気に接することで、隕石表面は溶融し、また蒸発します。落下した隕石表面にはこの溶融層が 固化して残されます。ただ、一般に、加熱される時間が数秒ですので、加熱の影響は表面のごく薄い 層にとどまります。このようにして、落下した隕石表面には隕石自身が熔けてできた厚さ1ミリメー トル程度の黒皮、すなわち「溶融被殻(fusion crust)」が形成されます。これはいかなる隕石種で も共通して存在する重要な特徴です。
 一般に溶融被殻は艶のない真っ黒で、ルーペで分かる程度の小さな亀裂が覆っていることも少なくあ りません。これは、陶器の釉薬が冷える時に微細な割れが生じることがあるのと同様な形成理由による と思われます。また、ルーペで見ると、ガスが抜けたような小さな穴が見つけられることもあります。
 数十センチメートル以上の大きな隕石になると、表面に指で押さえたような窪みが見られることが少 なくありません。この窪みは、溶岩に見られるガスが抜けた穴のように深くなく、また、窪みの大きさ は数センチメートルと、ほぼ揃っています。
 一般に、溶融被殻は角が取れています。もし触って痛いような鋭い角が残っているようであれば、 いくら黒い色をしていても溶融被殻ではないでしょう。

 ・新鮮な断面の特徴
 隕石表面は一般に溶融被殻で覆われていますが、我々が手にする時、割れた内面が見えていること もあります。その一部にでも溶融被殻が残っている場合は、前述のとおりに判断できますが、希に、 全面が割れてしまって、溶融被殻が全く残っていないことも考えられます。このように割れてしまう 原因として、隕石が大気中を落下する最後の過程である「ダークフライト」中に割れる場合と、 地上などに落下した衝撃で割れる場合があります。ダークフライトとは、落下する隕石が大気との 衝突で十分減速したため、溶融、蒸発、発光をしなくなった状態で、ほとんど鉛直方向に自由落下して います。一般に、ダークフライト中の分裂は珍しく、多くは地上落下の衝撃による分裂です。
 断面の特徴は、隕石種によって違いますので、詳細は隕石の種類と対応させなければなりません。 ただ、共通して言えることは、今まさに目の前に落ちてきた石が溶融被殻に覆われていない隕石である ためには、その石の表面が割れたばかりの新鮮な断面でなければなりません。例えば、泥や汚れ、苔な どが付いている、あるいは流水や風食によって磨かれ、削れた痕跡がある場合、これに該当しません。

 ・磁石に対して
 隕石の多くは鉄分を含んでいます。このため、磁石に反応するものが多いのですが、一部には そうでないものもあります。また、地球の石でも磁石に反応する磁鉄鉱などの石は少なくありません。 決め手ではなく、参考資料とご理解ください。

 ・密度
 多くの隕石は、比重が地球の石より重いです。逆に、地球の石より密度の小さい(軽い)石はほとんど ありません。これも、決定的ではなく参考資料程度です。水に浸けて密度を調べることは、もし本当の 隕石だった場合、後の分析に悪影響が生じることも考えられますので、避けるのが適当です。

2.昔に落ちたであろう隕石
 かなり難しい判断を要します。それでも、新鮮な隕石について十分判断できるようになれば、ある程 度見通しが立つでしょう。多くの隕石では、その中に鉄分を多く含みますので、時間の経過によって錆 びて、茶色いシミや、全面が茶色くなったりします。
 判断が難しいためか、一部の国の石を扱う店では「隕石」と名付けて売られている石が、隕石でない と推定できる場合さえあります。もし購入する場合は「隕石」というラベルだけに頼らないようご注意 ください。



3.隕石の分類
 隕石の種類は、細かく見てゆくとかなり多くあります。これに関する書物も多く、お近くの図書館で も簡単な内容の記述は見つけられるのではないでしょうか。
 ネット上では、次のようなページで解説があります。

国立科学博物館 宇宙の質問箱

美星町・星のデータベース

ササヤン氏による分類解説

4.火球から隕石落下を推定する
 ・明るい火球が出現すると隕石が落ちるのか?
 地球大気に突入する隕石速度の少しの違いが、溶融、蒸発に対して強く影響します。 速度が速いと、より容易に蒸発が進む代わりに、大変効率良く隕石の持っている運動エネルギーを光に 変換し、明るく発光します。地球大気に突入する流星物質のほとんどが、このようにして大気中で 蒸発し尽くして、地上には到達できなくなります。大きな流星物質であり、なおかつ突入速度が小さい ごくわずかの流星物質だけが、幸運にも地上に到達し、発見回収の機会を与えてくれます。 このような隕石落下では、一般には満月程度の光度以上の明るい火球として光りますが、逆に満月程度 以上の明るい火球でも、地上に落ちずに燃え尽きてしまうものの方がはるかに多いでしょう。明るさ だけが隕石落下の決め手ではありません。「明るい火球」は隕石落下の必要条件ではありますが、 十分条件ではありません。

 ・消滅点高度が重要な指標
 火球の明るさによって隕石が落ちたかどうかの判断が困難な代わりに、火球の消滅点の地上高度が 重要な判断材料となります。つまり、地上20キロメートル程度以下まで光っていた火球の場合、 ほぼ確実に隕石が落下したと判断できます。これを知るためには、正確な目撃情報、映像情報に基づいて、 特に消滅点の方位角と高度角が求められることが必要です。

 ・すぐ近くに落ちた・・!?
 大きな火球の報告されるとき、時折、隕石が近くの落ちた(ように見えた)ので、探したけれど 見つけられなかった、という報告があります。実際に隕石が落下した場合でも「近くに落ちたので 探した」という話を何度か聞きました。本当の落下点は何十kmも先だったのですが。残念ながら、 人間の目の遠近感は、数百m先であるか、数十km先かを識別できる能力がありません。たいへん 明るい火球を目にすると、その明るさのために、「すぐ近く」と錯覚するのではないでしょうか。 本当の落下点は、複数の経路観測から慎重に決定しなければなりません。

5.隕石情報の真偽と連絡
 さて、私ども、あるいは私たちの知人宛には、時々「隕石ではないか?」という石の情報がもたらさ れます。しかし、その多くは、宇宙由来の隕石ではなく、地球の石と判断できるものです。残念ながら 本当の隕石は、めったに現れません。従って、「隕石か?」と思われてこのページをご覧になった皆様 も、その多くは「違った」という結論に至ったのではないでしょうか。それでも逆に隕石であるとの確 信に近付いた、とお考えになられたならば、ぜひお近くの専門家へ連絡をして下さい。とりわけ落下し てすぐの場合は極力お早めにお知らせ下さると助かります。なぜなら、落下後直ちに分析を開始する ことで、宇宙環境の履歴が淡くならないうちに、あるいは地球物質による汚染を最小限の状態で科学的 結果を得ることができるからです。また、そのためには直接手で触れることなく新鮮なビニール袋など で保管するなどの配慮をいただけると助かります。