隕石が落ちるときの経路と所要時間


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1.満月のように光って落下

隕石が地上に落ちる場合、たいへん明るく光ります。
満月と比べてもっと明るく光る場合も少なくありません。しかし、明るいだけが地上に落下する条件ではありません。

 1-1.速度が速いと燃え尽きやすい

あまり速い速度で落下してくると、大気と激しく衝突し、強く光り、激しく蒸発し、また細かく分裂します。
できるだけ、そろりそろりと落ちてきた方が、燃え尽きずに隕石となって地上に達することになります。
時間で表すと、最低限5秒以上光っていることが必要です。
大気中に斜め低い角度で突入すると、30秒くらい光ることもありますが、希なことです。

 1-2.突入角度の影響は?

同じ隕石が同じ速さで垂直に落下したときと、斜めに落下したときで、どちらが隕石として地上に達しやすいか、
という議論が時々議論がありますが、落下モデルに基づく計算では差がないように見えます。
これは、計算上の諸定数を同じとしての比較です。
一方、観測に基づく傾向は、低い仰角で落下するほうが質量の減少は少ない傾向が見えます。
これは、大気中の飛行時間が長くなることで放熱の時間が伸びたり、減速の時間が取れることが影響していると思われます。

2.上空20km・・・この高さが重要

流星や隕石は、落下しながら激しく蒸発し、どんどん小さくなります。
そして、小さくなった粒子が、空気抵抗を受けて十分減速すると、もう光らなくなります。
このような火球の光り終わりをよく観測することが、隕石の落下を検討するために重要です。
そのときに、どのくらいの大きさがあったかが推定できるからです。
なぜなら、低くなるにつれて大気密度が大きくなり、空気抵抗の効果が大きくなることと、
隕石が大きいほど空気抵抗の効果が小さくなることなどが関係するからです。
過去の隕石落下の観測から、地上20kmくらいの高度まで光っていた場合、
数キログラム〜十キログラムの隕石が地上に達したと推定できます。
一方、モデル計算では、消滅点の高さが1km高くなれば、地上に達する落下質量が1/3程小さくなります。
これらから、例えば消滅点高度が地上25kmなら、地上に達した隕石は、せいぜい数十グラムと推定できます。

一方、消滅するときの速度がどのくらい遅くなっていたかがわかると、重要な資料となります。
観測された最後の速度が遅いほど、大きな隕石が落下したであろうという期待ができますが、観測条件にも左右されます。
おおむね、秒速5km程度以下であることが望まれます。

3.ダークフライト

さて、上空20kmくらいで光らなくなった隕石は、どのように落下するのでしょうか。
このとき、速度は秒速3〜5kmくらいまで遅くなっているはずです。
さらに低い空に落ちてきて、大気密度が高くなると、空気抵抗はさらに大きくなり、
すみやかに減速して、自由落下(地球の重力でほぼ垂直に落下すること)へと移行します。
この、光り終わってから地上に達するまでを「ダークフライト」と呼び、地上からの観測がほとんどできない過程です。


 3-1.難問は空気抵抗の効果

 観測困難なダークフライトを解明するためには、その始まりである火球の消滅点をよく観測することに加え、
上空の大気の風を把握し地上高度から決まる大気密度とを合わせて運動を予測計算することができます。
この予測が正当かどうかは、既知の隕石落下で、落下した隕石について、その落下位置、質量、密度、形などのデータを集め、
計算の結果と比較することで調べることができます。

 このような経験を、未回収の隕石の落下地点を推定に利用します。
しかし、普通は、その質量や密度について得られるデータは誤差が大きく、隕石の形や落下姿勢に関するデータはほぼ皆無です。
すると、空気抵抗をどのように受けて減速が効くのか、また、上空の偏西風に吹かれてどのくらい流されるのか、
ほとんど予想ができません。この見積もりの不確かさは、落下地点にキロメートルの単位の誤差を生んでしまいます。
実際に、過去の「隕石雨」の落下域の広がりは、落下突入方向には落下仰角に依存する落下域の広がり
一方、その垂直方向には5km程度の広がりが一般的です。
やはり、空気力学的にキロメートルの桁の予測困難な誤差が現れることは避け難いようです。

4.火球を観測して隕石を見つけよう・・・難しいけれど

地球大気中を落下する火球を観測して隕石を発見することはたいへん困難な課題です。
しかし、この野心的な試みは、太陽系の起源や地球の生命の起源に大きなヒントをもたらす可能性を持っています。
多くの困難を克服して、取り組む科学的な魅力のある課題だと思います。