落下する流星は加速するのか減速するのか


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1.重力の効果

地球上にある物体は全て重力を受けるので、上空から落とせばほとんど加速しながら落下し加速しま。
このような効果は必ずあるはずです。
しかし、流星が加速しながら飛んだという話はあまり聞きません。

地球の遙か彼方から初速0で物体を落下させると、
地球大気に突入するときには秒速12kmくらいまで加速しています。
なかなか速くなっているのです。そうしたら秒速71kmくらいで大気に突入する「しし座流星群」は、
最初、秒速71−12=59kmくらいか?・・・いえいえ。初速は70kmくらいと計算されます。
エネルギー保存法則に従った正しい計算によるものです。
さて、流星が光る大気内を通過する時間はたいへん短いものです。
その短い間に、重力加速がうまく観測できるでしょうか。
果たして、重力による加速の効果は大きいのか、小さいのか?

2.空気抵抗の効果

落下する物体には、空気抵抗が働きます。羽毛のような質量の割に表面積が大きなものでは容易に大きな効果がわかります。
空気抵抗は、大気密度、落下速度、断面積、形によって決まる「抵抗係数」で決まるので容易に計算ができます。
結論を言うと、流星では、その速度がたいへん大きいため、かなり大きな効果があります。
それでも、光っている短い時間でうまく観測できるでしょうか。
流星の観測において「大気減速」と言えば、ここで言う空気抵抗による減速の効果のことです。

3.どちらが大きい?

どちらも重要な効果ではあるのですが、
重力加速は、観測するのが困難なわずかな量です。
慎重な観測を行えば、流星の経路前半で空気抵抗の効果が少なく、少し加速しているはずです。

一方、速度が遅く、大気密度の大きな低い空まで落下する流星では、
経路の末端で速度が遅くなっていることがわかる例があります。(下の図)
しかし、ほとんどの流星では、経路末端までほとんど同じ速度で飛んでいるようにしか見えません。


これとは別に、流星の速度が変わって見えることがあります。
経路の長い流星で、たまたま自分の方に近づいてくる場合などに起こります。