三井美唄鉱-入坑の風景

1番方の炭鉱マンの入坑風景を数少ない三井美唄の資料から引用しました。
ちょっとわかりずらい部分もあろうかと思いますが、何となく雰囲気はわかると思います。


早春の暗い夜のとばりからさめる頃、朝の静けさを破るがごとく、サイレンの音が三井中に鳴り響く。
1番方勤務の家々から勢いよく煙が吐き出され、三井美唄の一日が始まる。
午前6時、新鮮な朝の大きな“スコ”を背負った人や、名残惜しそうに最後の一服を吸っている人、キリっとした現場服に身を固めた人、寒そうに頬かむりをした人、それぞれ坑内の現場へと向かう1番方の人々が次第に集まって繰込み坂を登って行く。軽快なレコードのメロディーが鳴り終わって、坑内の保安状況が今日一日の安全を祈るがごとくアナウンスされている。
三井美唄鉱繰込み場

  この繰込み坂も以前はトンネルもなく、冬になると近所の腕白坊主の絶好の遊び場所で、冬は何人もの人がスッテンコロリン。
今はトンネルも作られその心配はない。
トンネルが尽きて安全塔前の広場に出た。アーチの標語が目に入る。
“首を出すな支柱が怒る” “運搬事故防止期間”と肉太に書いてある。
入坑風景 繰込み坂

平屋建ての安全灯場の入り口に、木札に大きく“禁煙区域”“自己捜検”
と書いた看板がぶら下がっている。
出勤してきた人はポケットより出勤票を出して繰込み掛の捺印場に並んだ。
4片式出勤票の中1片が残され、後の3片を抱いて現場に向かうわけである。

この頃になると(6時40分頃)安全灯を受け取る人、出勤票に印を押す音、大声で話し合うガヤガヤした声が一緒になる。入坑前の活気溢れる時だ。
先山、後山らしきグループがあちこちに見られ、一緒になって安全灯受け渡し口の方へ行く。
安全灯を受け取るやキャップランプの電池は腰に、ランプは首から廻され、頭の前に取り付けられた。
勇ましい炭鉱マンの姿が出来上がった。ランプを身につけたら捜検に向かう。
安全灯室

“オース”と鉱員さん。“おーした”と捜検のオッサン。手つきよろしく胸、胴、ズボンのポケットを順にさわっていく。
終わったものから次々と進発所に入って行く。何百人もの人々を20分位で検査するのだからこれも大変な仕事。
進発所-人車乗り場に行く前に一休みしたり、時々は常会が開かれたりする約120畳の広間集会所である。
やがて入坑人車の発車5分前のベルが響き渡る。
進発所

ホームへ出る。東区、西区方面行きの人車が長蛇の如く狭いプラットフォームを挟んで並んでいる。
午前7時、電車のサイレンが高らかに鳴り渡る
と同時に人車はゴトンと1ゆれして動き出した。
1番方入坑者を乗せた人車は、地底600メートル、延長8700メートルの坑内へと進んでいく。
赤いテールライトが次第に遠ざかる。

人車に乗って出発

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