13Bオーバーホール(Part1)


降ろしたエンジン

●はじめに
皆さん、ロータリーに長く乗っていると、ほとんどのヒトがO/Hを経験するのではないかと思います。
そして、ほとんどの方が、自分のエンジンの中身を見ることなく、リフレッシュされたエンジンで再び走り出すのではないかと思います。
しかし本来なら、異常を起こしたエンジンを自分の「目」 で確認し、異常の「原因」を知ることができれば、次回のO/Hを回避出来るかもしれません。
そうです!同じあやまちを犯さないことが大切だと思います。
自分の大切な愛車ですからネ!!
そこで、ここでは悲しいことにO/Hすることとなった、Myエンジンを参考に、絶好調から不調の状況へ、そしてO/Hで分解、 そのエンジン内部の状態、そして次期候補エンジンの仕様という流れで紹介したいと思います。
どのように扱われると、エンジン内部がどのように磨耗するのか紹介します。
もしかしたら、あなたのエンジンも同様な状況かもしれません。
特にバラしたエンジンは、洗浄等をしていない、開けた直後の状態なので非常にレアな画像だと思います。
そして、せっかくバラシたのですから、途中途中でその時にしか見られない、パーツのチェックポイントも紹介していきます。


タービンインペラ
※タービンのチェック!!
これは、純正のシーケンシャルツインターボから変更した、トラスト(三菱?)製、TD06−25Gです。
ヒトによっては、ロータリーとは相性があまり良くないタービンと言われているようです。
しかし、今の自分の仕様では、下からトルクが出て、プンプン吹けて、レブまでフラットな特性なのでとても乗りやすいです。
逆に、刺激ある特性がお好みの方には、向かないでしょう。

日ごろからチェックして欲しい、インペラーの軸のブレ(前後を含む)、滑らかな回転、形状のチェックは全て問題なし!!








●本来の状態
絶好調の状況では、最初はアイドリング900回転で、負圧が480前後、4年程で3万キロ位走りました。
つまり、OHは今回で3回目なんですネ・・・(苦笑)
この頃はすごい好調で、変な表現ですが、「透き通る」ように綺麗に吹き上がるエンジンでした。
うまく表現できませんが、「雑音が無い」「滑らか」「フラット」 これらの言葉を混ぜ合わせたフィーリングと言えば解って頂けるでしょうか?
レシプロでは演出出来ない、これが「本物のロータリー」だと思います。

プラグコード
※プラグコードのウラ技!!
このプラグコードは、ノロジーのアース付きケーブルです。
このパーツの特徴は、ボディアースだけでなく、バッテリーのマイナスから直接コードをつなげることで、従来品よりも電圧を高く供給 させて、点火力を高めることにあります。
また、プラグコードは消耗品です。
ある程度使用したら、交換する必要があるようですが、Kyasuiにはそのタイミングが判りません。

皆さんはプラグを交換する時、勿論プラグコードを抜きますよね?
その時、1本づつ交換すれば、プラグコードを間違いなくセット出来ると思います。
しかし、ある日Kyasuiは、プラグコードを全部いっぺんに抜いてしまいました。(泣)
これには、自分の愚かさを呪いました。(笑)
これが、純正ならば判ったのでしょうが ・ ・ ・
適当につなげて、OKとはいきません。コイルから追いかける方法もあるでしょうが、その場でスロットルをバラす自信も無かったのでNGです。
点火時期にシビアなロータリーには致命的な失敗です。
結局このときは、お世話になっているショップまでゆ〜っくり走ってチェックしてもらいました。
しかしまた同じあやまちを繰り返さないように、「転ばぬ先の杖」ではありませんが、考えた結果、画像のように 「色付きタイラップ」をトレーリング、リーディングに前後の色を変えて巻くことにしました。
これなら、もしもプラグ交換を他人に任せた場合でも、後から確認できます。このアイディアいかがですか?
ちなみに、最初は油性マーカーで書いていましたが、オイルが付着すると消えちゃうんだな、これが!!

●不調の状態
絶好調であったのに、点検から帰ってくると、負圧が380になっていました。
その場で言ったのですが、「これが普通」、「変わっていない」の一点張りでです。
もう、後の祭りって感じで ・ ・ ・
感じとしては、少しトルクが細くなったかな?というレベルでしたが ・ ・ ・
それからは、サーキットONLYに走ったりして、ますますトルクが細ってきて、発進が困難になったので、対策で1100回転に アイドルアップして誤魔化してきました。
さすがにここまでアイドリングを上げれば、見た目の負圧も480位になりましたが ・ ・ ・
次第に、このアイドリングでも負圧も34〜360まで落ちてきしまい、アイドル中はこれまでは、「ボーーーー」だったのが 「ボーーッボッボーー」という感じで「不完全」点火(不発?)が発生するようになり、暖気中にはプラグがカブり、たまにエンストする ようになってしまいました。
大体ここまで不調になるのに、例の点検から5000キロ位走行しました。
それからは、キーを回す度に、いやなアセが出るようになりました!(苦笑)
そしてその時のコンプレッションを測ったら、

コンプレッション実測値
ローター前後計測回転数第一圧縮値第二圧縮値第三圧縮値
フロント212RPM7.16.76.5
リア214RPM7.26.06.3


鋭いヒトは気が付いたと思いますが、これは、本来250回転で比較するもので、当然実際の圧縮よりも低く計測されていますが、換算 方法を詳しくは知りません。
100回転で、1.0変化すると聞いたことがありますが、本当のところはどうなのでしょう?
ご存知の方がいたら、教えて頂けないでしょうか?
単純に、「内向と外向の積」で250回転に換算すると、以下のようになりました。

250回転換算値
ローター前後換算回転数第一圧縮値第二圧縮値第三圧縮値
フロント250RPM8.377.907.65
リア250RPM8.417.07.35


「見た目」の圧縮が上がりましたが、これでも隔壁の差が大きいのと、特にリアローターの「7.0」は低すぎると思います。
新品の時の圧縮は、いくつを叩き出すのでしょう?
この値と、カブリ、そして決定的だったのが、ブーストアップのインプに直線で置いてかれることから、O/Hの決断に至りました。
果たして、この状態で何馬力でていたのでしょう?
でも、不調になってから5000キロ、サーキットばかり走った結果なので、こんなものなのでしょうか?

ピーポーフライホイール
※ツインプレートクラッチとフライホイール
このクラッチは、RE雨宮のツインプレートクラッチとピーポーフライホイールです。
メタルのツインだからなのか、最初の一発目はかなりシビアにつながるので、注意が必要です。
でも、温まればかなり滑らかにつながるフィーリングに変わります。
そして空ぶかしするととても特徴的な音、「ピ〜ヒョロロ〜〜」と笛を吹いたような音を奏でるので、一発で「あれはピーポーだな!」と判ります。
また、こんなことがありました。以前に特に滑っている感触は無かったけど、フライホイールの面研ついでに、O/Hしたことがあるの ですが、出足がまったく違うのです。
一歩前に出ると言うか、トルクが上がった感覚になりました。
クラッチのO/Hだけでこれだけ変わるとは思いませんでした。
最後にピーポーに詳しいヒトなら気が付いたと思いますが、これ一番初期タイプなんですよね!
現在第三世代まで出ていることを考えると、よく保っているな〜と思います。
これもひとえに、アオられようと、アイドリングでつないでいたおかげかもしれません。

スロットル
※バタフライ・スロットルバルブ
下段がプライマリーで上段の2個がセカンダリーです。
作動順序は、最初にプライマリーから開き、セカンダリーが開きますが、このバルブ、かなり賢くて、いきなりアクセルフラットアウ トにしても、バルブは全開になりません。
メーカーも考えているようで、(いきなりの)全開 ⇒ 大量の混合気 ⇒ プラグがかぶる、を回避するため少しづつ開くように 制御されているようです。
つまり、実際には足の動きにスロットルは連動していないんですね〜!
実はこれを嫌って、ウェーバーやソレックス等の市販のキャブに変更するヒトがいますよね?
でも、この画像を見ると、意外に汚れが偏っていますね〜
これは、自分の場合この直前で「追加インジェクター」が吹いており、自然と左側に当たるので、放置しているうちにそこにゴミが 付いたのだと予想出来ます。
追加も無く、ノーマルのヒトで、このバタフライが汚れているなら、汚い空気を吸っている可能性があるので、一度チェックを 入れてみるのも良いかもしれません。



●エンジン不調の究明
エンジン開封 エンジンを開けたところです。
綺麗に焼けていますね〜!
スラッジ等もほとんど無く、キツネ色の醤油味焼きオニギリの登場です。
燃焼状態も良好だったようです。
オイルが乾燥しているためか、画像では白っぽく見えるローターですが、実際にはもっと金属色が強いです。
コーナーシールを押してみると、まだ反発もあり、まだまだ使えそうです。
アペックスシールに固着も無く、ゆすれば落ちるくらいなので、曲がりもないようです。
まぁ、磨耗状態は、計測したわけではないので判りませんが ・ ・ ・
冷却水路も詰まり等の問題も無く、ここまでは絶好調のように思えてしょうがありません!!(笑)







ローター(1) ムムゥ!こっ、これは!
画像でも確認できるように、ローターのアペックスシールすぐ下の中央に、1cm角ほどの接触の 「跡」を発見!!
この「跡」はローター頂点の片側に、詳しく言えば左回りとした時、その右側だけに付いていました。
更に、その「跡」は1ローターの各頂点の3箇所にあり、前後のローターにあるので、全てで6箇所ありました。















ローターハイジング 今度は、ローターハウジングに目を向けると!
このパーツは、アペックスシールが常に押し付けられるため、かなり過酷な部分です。
思った通り、いや!かなりひどい有様で、ハウジング全体が磨耗しています。
特に前述のローターの接触跡は、ハウジングを一周するキズが付いてしまっています。
指で触れば判る位、はっきり「スジ」が入ってしまってます。
ロータリーのO/Hでは、通常ローターハウジングは交換するのが常ですが、これなら理解できます。
というより、通常はこんなに磨耗しないでしょうが ・ ・ ・










サイドハウジング それでは次に、サイドハウジングをチェックしてみます。
これもハッキリ判る位にコーナーシールが通る「道」が判ります?(悲)
特に、燃焼室側(プラグ側)に行くほど「スジ」が深くなっていき、吸入側に行くほど浅くなっています。
インターミディエイトハウジングにも、同様な磨耗が進んでいました。
通常のO/Hでは、サイドは再使用することがあるそうですが、これはシロート目にも限界を超えているのが判ります。













?Bアペックスシール それでは、最後に「アペックスシール」です。
最初にお断りしておきますが、画像がピンボケなことに、他意はありませんのでご了承下さい。

驚くことに、アペックスシール及びコーナーシールはほとんど問題ありませんでした。
割れは勿論、偏磨耗すらしていません。
ローターがハウジングに接触するような強烈な「衝撃」を受けたにも関わらず、アペックスシールはまったく無事でした!!
さすがは、この某2ピース・アペックスシールは、「頑丈」ということで有名なだけは あります。
宣伝ではありませんが、このアペックスシールが出た時は、ロータリーの発展に相当貢献したようです。
当時は高価なセラミック製(純正、社外を含む)や、一部の市販品を除けば、ノーマルのシールでは、高ブーストや高回転で簡単に アペックスシールが破損してしまい、その破片がエンジン内を回ることで、全ブローとなっていました。
これには制御方法にも問題があったとはいえ、もしも耐えられることが出来れば、どのような性能を発揮出来るのか 「未知」なる領域が多かったようです。
そこで、このアペックス、コーナーシールが登場したことで、その「先」が見えるようになり、ロータリーの 可能性を広げるきっかけになったようです。

●磨耗原因の追求

最後にバラしたエンジンをチェックして、調子を崩す(磨耗した)原因を追求したいと思います。
ここをおろそかにして、また同じ過ちを犯してO/Hに陥ってしまうのは悲しいですからネ!

・アペックスシール、コーナーシール
アペックスシールには、まったく異常が無く、このまま再使用出来そうなくらい綺麗な状態です。
コーナーシールには、12個中6個の片面(サイドハウジング側)に幅0.8ミリ位の「線キズ」が入っている程度です。
「チョン」って感じで、アペ溝の近くに付いていますが、これはそれほど問題にならないレベルだと思いました。
これは不思議な事に、全て同じ形であることと、インタメ側には無かったことから、「吸入ポート」をかすめるときに跡がついたと予想 出来ます。
これは、インタメ側にキズが付いていなかったことから、ポートの大きさの違いによると判断しました。

・サイド、インターミディエイトハウジング
ハウジングの磨耗は、主にコーナーシールによるもので、ノーマルのコーナーシールを使用していれば、ここまでハウジングが磨耗す る前に、コーナーシール自体が破損しているのではないでしょうか?
つまり、コーナーシールそのものが、「頑丈」であるが故に起きた現象のようであり、またそのおかげでここまで走れたのかもしれません。
そして、磨耗の深さが均等でないことから、後述するエキセン、またはローターの「ブレ」の影響があったと思われます。

・ローター、ローターハウジング
ここの特徴的な磨耗は、前述でお話ししたアペックスシールのすぐ下の「接触跡」です。
普通に考えると、直線であるローター頂点の中間が接触することは考えにくいですが、実はローターは「熱膨張」により、極端に言え ば、丸く膨らんでいるため、この中間部分が出っ張るようです。
しかし、通常なら接触しないクリアランスを保っているはずなので、ここで問題なのは接触した理由です。
考えられるのは、ローター自体、またはローターを支えるエキセンが「振れ」たためでしょう!!
あんなに頑丈(そう)な、金属の棒が、「たわんだ」のでしょうか!?
考えられるのは、以下の通りです。

@エンジンパワーの出すぎ
Aオーバーレブ
Bローター自体の「ブレ」

@は、強力な爆発エネルギーに耐えきれず起きるようですが、確かに組んだ当時は450馬力位出ていましたから、ボディブロー にはなったでしょうが、つい最近まで支障無かったことから、直接の原因とは考えにくいです。
Aは、思い当たります。(苦笑)つい熱くなって回しすぎたことが ・ ・ ・ 主に3,4,5速で ・ ・ ・
Bは、この前後ローターをチェックして不思議に思ったのが、重量区分が「B」と「D」ということです。
ロータリーエンジンは、レシプロと違い、ダイナミックバランスを取りにくいことからなんとも言えませんが、シロート考えではあり ますが、ローターの重量合わせ(または、近い方が)をした方が、バランスが良さそうです。
カウンターウエイトとの兼ね合いがあるのでハッキリ判りませんが、こんなところにショップさんのノウハウが隠されているのかも しれませんが ・ ・ ・
また、前述のサイド、インタメハウジングの磨耗により、ローターがブレてしまい、その結果、さらにハウジングが偏磨耗へと悪循環 したとも考えられます。

以上のことを踏まえて自分なりの推論ですが、オーバーレブによるエキセンが「振れ」ることで、その瞬間に隣の燃焼室に燃焼ガスが 漏れることで、デトネーション(異常燃焼)が発生!!
その時、ローターがローターハウジングに接触、さらなる「振れ」を誘発することで、「頑丈」なコーナーシールによる サイド、インタメハウジングの偏磨耗を生み、その結果、さらにローターが「振れ」るように回るようになってしまい、偏磨耗を増大 させていったのではないか?
まぁ、偏磨耗が初めにあって、オーバーレブが後押しした可能性もありますが、結局のところ、ロータリーエンジンとは、ローターが 「芯で回る」ことが、一番大切であることに間違いないようです。

それではこれで、エンジンのバラし工程は終了します。
勿論、バラしたら、次に「組み」がないとKyasui的にも困るので、Part2では、ど のようなエンジンを組むのかを、紹介したいと思います。


13Bオーバーホール(Part2)


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