碁盤師鷺山の世界

祖父の代から始まって100年を超え。三代目の碁盤師として、高品質の榧碁盤、将棋盤を製作、加工、修理。東海地方で行われるタイトル戦のほとんどを、二代目の時から製作してまいりました。 現在は機械作りの碁盤、将棋盤がほとんどですが、伝承の職人技で総手作りの数少ない碁盤職人です。


碁盤の脚作り

首の部分に使う 彫刻刀


特注のノミ


のみ、小刀までこの後
ペーパーと蝋磨きになります。

鷺山の脚の作りは二丁取り。普通は横に彫る人が多いのですが、縦にノミを入れることにより、彫る角度が正面に見えるので、正確に彫ることができるのです。
最上級の脚を作るためにノミを特注しています。これは彫る場所によりノミの曲がりなどが違うためです。小刀もかける箇所により、長さと刃先の角度を使い分けています。一番短い小刀がもう1cm短くなると、新しい小刀をおろして順繰りに使い分けていくのです。小刀2本で仕上げる人が多い中、小刀11本、ノミ14本と、碁盤の脚の細工の綺麗さ、正確さのこだわりは道具にも現れています。
脚の形は初代、ニ代目、三代目と徐々に曲線が変わってきています。ニ代目も三代目も、先代の脚を参考に図面を何枚も書いてから、自分の脚の形を決めて製作しています。理想の形に仕上げるために、前述のようにノミを特注しています。だから脚の形は作る職人の個性が出るのです。
脚は1組仕上げるまでに25時間ぐらいかかります。そのうちペーパー掛けに大半の12時間から15時間を費やし、80番のペーパーから120番、240番、320番と仕上げていきます。


碁盤・将棋盤の目盛り

ヤライと刀を使っての
      目盛りの利点



目盛りにはヘラ盛りや刀盛りなど、いくつかの種類があり、鷺山は刀盛りです。ヤライという特別の道具を使うため、目盛り前の鉛筆線は、横1線目と19線目、縦は4つ角に5mm程の目印をつけるだけで、均等で美しい目盛りに仕上げることができます。刀は線の長さとほとんど同じに作ってあるため、余分な傷をつけずに縁目線(1線目)から縁目線(19線目)までしっかり目盛りを引くことができ、20年〜30年後でも薄くなることが少ないのです。
また盤面の木目の違い、たとえば盤面の柾目の部分と板目の部分では漆の乗りが違います。乗りの悪いところはヤライを使う事によってゆっくり刀を使用でき、目盛りが均一に綺麗に出来るのです。ヤライを使っての目盛りは職人の技術もさることながら、ヤライと刀をいかに正確に作るかにもかかっています。
目盛り用の刀


刀は親子ニ世代から三世代でも使えますが、二代目の鷺山は自分で刀を製作し、三代目も目盛り用の刀は自分で作るように言われ、鋼鈑で作っております。二代目は鉄板で作っており、加工は楽なのですが、後年刃先の角が磨り減って補修が必要です。鋼板で刀を作るのは難しいのですが、使っていて減らないのが利点です。
右の上が碁盤用、下が将棋盤用で縦、横2本で1組。ともに長さが3cm違います。
幅9cm、長さ60cm、厚み3mmの鋼材を使い約10日間ほどかかりました。後年雛盤用に4組ほど製作しています。
目盛りをする前に漆を縦横、同じ厚味に、桧で出来たへらで伸ばします。三代目の修行時代には二代目はいっさい教えなかったので、二代目のいない時に内緒で漆をのばす練習にマヨネーズを使っていました。後日、漆のほうが楽に伸ばせたので、漆の代用に難しいマヨネーズで練習したことが役に立ちました。
二代目は職人肌の人で、技は目と身体で覚える、それで身に付かないのなら素質がないと考えていました。後ほど出てきますヤライについても本当に木が解っていないとできないし、それは理屈ではなく、道具や木、それぞれの持ち味を職人が自ら体得するもので、教えられて身に付くものではないと一切教えなかったようです。
ヤライ


目盛りをするために使う道具。桂材で作りました。縦用は1分(3mm)違いに8組作ってあります。30年から50年の古盤はいくら木が乾燥していても縮み幅が狭くなっていますので、19線の目盛り幅が正確に出来るように、縦用1尺3寸4分〜1尺4寸1分まで、横用1尺4寸8分〜1尺5寸1分の4組で使い分けています。
他に将棋盤、雛盤用のヤライ13組を作っています。
正寸は 
碁盤  1尺5寸X1尺4寸
将棋盤 1尺2寸x1尺1寸

ですが、現在は上記より1分大きく作ることが多くなりました。
ヤライをいかに正確に作るかによってヤライを使っての目盛りの綺麗さが決まります。1本1本角度と幅を精密に測りながら手作りしています。
盤面の九つの星
20年〜30年後でも星の形が変わらないように漆の乗せかたに一工夫しています。
星の大きさと、特に高さが同じでないと後年星の形が変形してきます。画面でお伝えできないのが残念です。

碁盤の裏 人頭の彫り
   
人頭の中を正確な長方形にして、カンナをかけたように、ノミで薄くはいで刃物切れの良い仕上がりにしています。
 



蝋磨きして出来上がった
上くり脚
 

ミニ碁盤 23x21.6x16.4cm


ミニ将棋盤 18.6x17x15.4cm


碁盤師鷺山の名も、二代目の生存中に世に出すことができませんでした。碁盤屋さんの碁盤を作って生業としていたので、どの碁盤にも父の名も兄の名も残らないのです。東海地方のタイトル戦で使われる碁盤は殆どこの2人が作ってまいりました。これをご覧になって少しでも父と兄のことを知っていただければと妹の私が悪戦苦闘して作りました。このホームページで今でも全部手作りで作っている職人がいるのだとご覧下さった皆さまに知っていただければ幸いです。


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黒田碁盤製造所
黒田 信
碁盤師 鷺山
名古屋市西区枇杷島4丁目−25−26
電話 (052)524−1789

FaX (052)524−1789