同人活動では、人によるが、客を神様として扱わない。客と店側は
対等である。昔から言われてきたことだ。なぜだろうか。
理由は様々にあるが、理念から説明すれば次のような理由による。
同人活動はファン活動であり、同人誌即売会は同好の集会である。同人誌即売会は
ファンの集会するサークル活動として考えていて、参加するものは等しく、
何かのファン、あるいは同好の志であり、店とお客の関係でなく、ファン同士対等
の関係である。
●同人誌即売会はサークル活動の一環として考えているから。
では次のような意見にはどう応えればいいだろう。
「金を払ってるのだから客として扱うべきだし、責任をもつべきだ」
お客様は神様です、という言葉の背景には金銭授受がある。相手に金を支払わせる
という行為には責任が付随するのが常識で、だから金を払った方は意見を言う権利があるのであり、
店よりも客の方が優位なのだ。同人もこの責任を免れない。
同人において、お客様は神様ではない。お客様優位の関係は、金銭授受を背景として
普遍的に発生するものではない。条件が満たされたときに成立する関係である。
その条件とは、売り上げで生計を立てているか、いないか、である。一般的に店側が客側より
弱いのは、売り上げがなければ、ゴハンを食べられないからなのである。ゴハンを食べられないのは
ツライ。だから下手にでているのだ。お客様の存在によって、明日の糧を得ているのだから、まさに
神様と呼ぶべきだろう。扱いも丁寧なのである。
同人活動は一般的に、趣味の範囲であって、それで生計を立ててる人はあまりいない。そういう
ギリギリな人もいないわけではないが。
つまり、同人活動においては、買いたくなければ買わなくてもいい、と強気に出ても問題ないのである。
それで売り上げが落ちても、首をくくるわけでもないのだ。
ただし、売り上げが落ちれば悲しい。売れれば嬉しい。これは非常に重要だ。つまり
金銭ではなく、感情の取引なのである。
感情の売買が枯渇しても死ぬわけではないから、そもそも「売れると嬉しい」という感情を
欲していなければ、客との取引を重視しない。つまり神様扱いしない。逆に売れないと
寂しくて死んじゃう、という人は客を重視するだろう。売れれば嬉しいけど、客を特別扱いするのが
メンドクサイと言う人は、それなりの対応をするだろう。こういう人が一番多い。
つまり、一般的な経営の死活問題のように、現象を単純化できない。売れても売れなくてもいいのに
売ってるんだから、そこに絡む問題は複雑で多様である。同人も金をとってる以上は、客を神様扱い
するべきである、という人は、現象を単純化しすぎている。
●お客様は神様です、は普遍的原則ではない
お客様は神様です、が成立する前提条件がないので、同人においてその原則はあいまいになっている。
神様扱いするかもしれないし、ぞんざいに扱うかもしれないし、対等の友人関係かもしれないし、
人を見て判断するかもしれない。つまりそこも含めて、同人活動は楽しい。接客に力を入れるのも
お店ごっこみたいで、結構楽しいのでそれはそれで良いと思う。
こうした、「感情の取引」という極めてあいまいで、ゆえに自由でなければ楽しくないところに、
お客様は神様扱いしろ、みたいに枠を引いてほしくないのだ。神様あつかいするのも楽しいよ、なら
いいのだが。
それでも神様扱いしろという人は、それも、客の自由である。客も自由に楽しむ権利がある。だから
そういう人は、客を神様扱いしない同人屋からは離れればいい。買いたくないからさっさと買わないで
オサラバする、
買う側の方が意識してそのようにしていっていい。結局それが、同人の自由とユルさ、無責任さ
良くも悪くも怠惰な空気を守るだろう。
2008年9月28日
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