人が何かモノを創る時、「創る」という行為にはいろいろな考えが複合する。
例えば、他人の評価が欲しい、有名になりたい、金が欲しい、プロになりたい、
いろいろ思いがあり、創るという行為の軌道に影響を与えている。
そのように、創作行為を形作る観念は、様々なモノが複合して現れるのだが、
それらの観念を取り除き、純粋に創作行為というモノを求めた時、それはどのような
性質をもつのだろうか。すなわち、誰かに見せたい、報酬が欲しい、
賛否が知りたい、そのような結果を全く求めなかったら、
ただ純粋に創作行為というモノが心理上ありえたとしたら、
それはどのような性質や方向性をもつのだろうか。
もしもそのような創作がありえるのならそれは、精神の具現化、というものに近づくだろう。
自分自身の人生や、経験や、趣味嗜好、心理というその城の別表現として、創作物が現れる事になる。
創作とは自分を創る事である。創作とは完全に内向的な作業なのだ。
しかし、現実には純粋に内向的な創作を行うということはほとんど無い。
作品を発表し、金を得る課程で色々な力を受け、それは変容する。
純粋な創作というモノは存在しない。
しかし、同人というのは、純粋に近い創作活動を発表できる場なのである。
純粋な創作活動から出発し、商業化で金を取るようになって、
その心理的内容が内向から外向に変容するその過程にはさまざまな
ステージがあり、同人はそのステージの一部である。それはより内向的な性質をもった、過程である。
同人という場は、純粋な創作に近いものを得る事ができる場なのである。
純粋な創作から商業化までの連続的なスペクトルの中の断続的なステージとして、わざわざつくられた
場所なのだ。それはやはり外向的な商業化とは分けられて存在するべきだろう。またそこにある作品の
性質もよく知っておくべきだ。それは非常に内向的なモノなのである。それは純粋な創作に近く、
すなわち自己表現なのである。自分のために創ってるという性質が強い。またそうあるべきだと思う。
なぜ、同人に対してそういう線引きを太枠で主張するのかというと、私としては東方プロジェクトの
商業化議論があるからだ。
東方ほど、同人作品として、見本のような存在もない。東方は同人である。むしろすごく同人である。
なぜなら、東方は作者のZUN氏の精神世界の表現だからだ。どんな創作物も作者の精神世界の表現だが、
それが純粋に近い形で作品になっているモノだと思う。それができるのが同人であり、それをやってるのが
ZUN氏だと思う。もちろん他にも、そういう種類の創作活動をがんばってる人は、同人界には大勢いるとはおもうけど。
東方は同人であり、ファンの異様に沢山いる同人である。ファンが増えれば、社会的責任や
重圧がどうしても生じる。そういう意味で境界線にいる作品である。作者が意図せず、同人と商業を同時に背負ってしまった
作品なのだ。だからこそ、その境界線の上で議論する必要も出てくる。
それで、東方は同人か商業(社会的)かという話だが、まぎれもなく同人である。それははっきりさせたい。同人である。
内向的な、自己の精神を見つめる作業としての作品がある。東方はZUN氏の精神であるという事を、大事にしたい。ファンが
増えても減っても何を言っても、結局その作品は作者の側を向いている。作者のためのものを作れる、というのが
同人という創作活動に与えられたステージの役目である。
同人においてお客様は神様(優位)か、と言う問題は、私としては店と客の、接客の問題としてはあまり考えていない。
そもそも態度の横柄な同人誌即売会における一般参加者なんて見たことないしなぁ。社会的な現象としてなら、
自分はサービス業なので、日本の過剰なお客様優位には辟易しているが。
内向的な創作活動の場としての同人を維持する為には、一般参加者はお客様ではなく、参加者、つまり身内だと
する思想が必要なのではないか。お客様という商業上の考え方はやはり、ものの見方を外向的にする。それが
悪いというわけでなく、場にそぐわないと考える。
私は、モノを創るということの、心理上の経験を重要視したい。
創作行為によって得られていくモノはたくさんある。もちろんお金や名声ではない。心理の城である。
自分自身にとって有益だろう。それを重視したい。同人の内向的な内輪な雰囲気も大切にしたい。そこから
得られるモノも沢山あるだろう。創られていくモノも沢山あるだろう。自分自身に対してである。
私は、そうしたモノが同人だと思う。それは商業化思想とはそぐわない。だから、同人において
客を神様扱いする必要はない。あるいは、ファン同志として接するのが望ましい。
横柄な客がウザイから、とかそういう理由ではなく、場の特徴から考えて、同人における参加者を
客として扱うべきだという考えには疑問を持つ。
もっともそんな横柄な参加者は滅多にいないとはおもうけど、同人の商業化という問題が懸念される昨今、
接客という立場からも、同人と商業の分離を考えた方がいいのかもしれない。
2008年10月13日
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