ピーブズのこと |
彼についてのいくつのかのこと。
ホグワーツを徘徊するゴーストの一種である。(彼らとカッコで括られる程度には同じ存在)
正確には、ポルターガイスト。
寮に属しているわけではない。
この世の物質と同じ存在である。(接触ができる)
「しかも、ご存知のように、やつは本当のゴーストじゃない」
故に、彼は、ハリポタ史上最大の伏線だと信じてる。
ゴーストとポルターガイストの違いだよ、なんてオチはいや。お願いしますよぉ。
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《SLEEPING》
時は、ホグワーツに在籍する、つまり情報封鎖された学生でも、最終決戦が始まると知っているある日。
場所は、校長が団長を兼ねるからか、ホグワーツの大広間。
学生の排除されたそこの寮別のテーブルは、騎士団員で埋められていた。埋め尽くされていないのが、決戦に対する、唯一の不安要素、なのかな。
いわく、騎士団では、決して有力幹部ではない、名付け親とその、連れ合いが・・・・・・校長、この場合は、団長?のど真ん中に座っている。
そんな状況下、僕は学生でありながら、人数外の扱いで、ひとり離れた隅に座っている。
ざわざわとうるさい団員を、校長は指先で黙らせ、思ってもみない爆弾発言をした。
長々とした前置きは、モノの見事にムシをされていて。誰も、側に立つマクゴナガル先生も気にされてないのは、騎士団ではこれが普通、だということだろうか。なんだかなぁ。
「―――この、局面を、根本から覆すことになる。最終兵器を、いまここに現そう」
ドラマなら、最大音のBGMが場を盛り上げるべき時に、盛り上げてることには違いはないけれど、何故か、ブーイング。
どうして?喜ぶべきことなんじゃないの?
これまた、校長は気にせずに、「まずは、昔話から始めねばならん」云々と、始めた「昔話」とは。
長い昔話を簡単に纏めると、パパとママが生きている。――ってどういうことですかっ。せんせいっ。である。
「瀕死ではあったが、確かに息はあった。
そこでわしは、、2人の生存を気取られぬように、心と体を分け、今日、この日の為に、待っていたのだよ」
「っつーかっ。俺はっ」
と、話の切れ目を待ちかねたように、シリウスが叫ぶ。
それが原因で、12年もアズカバンに収監されていたのだ。その怒りも当然だろう。
けれど、その隣で。
「大事の前の小事。
敵を騙すには味方から。
われらは死など恐れない。
友軍の屍を越えていけぇ」
面白がっている響きを隠しもしないで、アジテーションしていた先生は、ここで、声をいつものおっとりとしたトーンに戻し。
「だって、きみ。契約書にサインしただろ?」
先生の、にっこりと笑う、慰めているのかなんなのかな、事実の指摘に、シリウスは、黙り込んでしまった。どんな契約書?なんて、考えないでおこう、うん。
頷きながら、校長は問題などなかったように、・・・・・・ピーブズを呼び出した。
ぷよぷと浮かぶピーブズはいつも通りの傍若無人。そこへ、校長がぱちんと指を鳴らすと、ガラガラと歯車が動くような音と共に、床が割れ、舞台の奈落からせりあがるように、ふたつの箱が現れた。そのからくりに、この城を作ったというか、改築した偉大なる魔法使いに対する呆れが先に立つ。ここはからくり屋敷ではなく、魔法学校を作っていた筈だ。なのに、この、からくり、なにを考えていたのだ。
僕だけではなく、団員達も呆れかえるのか、ただただ見守るばかり。
人がひとり横たわれる大きさの箱の上に、ピーブズは漂い。聞いたことない呪文で、彼の姿は、他のゴーストのように透き通っていく。違うのは、真珠のような白い透明ではなく、光のような透明になっていくこと。
ピーブズであった存在は、形を失い。光の粒になる。交じり合っていたものが、ゆっくりと分かれ、箱の中に、染み込むように吸い込まれていく。
両親が生きていた。
長年、孤児として生きてきた僕としては、喜ぶべき光景を前にして、呆然としている。驚きとか信じられないとかの動揺からならいい。しかし、はっきりいって、いまこの瞬間に、息子の出番はない。
普通、こうお涙ちょうだい式の感動の再会シーンが繰り広げられるはずだろう。ふ、つ、う。
いくら、なんでも、ちょっと、怒りぎみ。
「やぁ。両親が生きていた感想はどうだい?」
顔見知りである団員が、ひとり取り残されている息子、しかし、ある意味、当事者に同情を覚えて声をかけてくれた。
「いつ、息子がいたってコトを思い出してくれますか?」
憮然とするのは、先生すらも僕の存在を綺麗さっぱり忘れているからだ。
「あそこで、すぐさま、息子にいくようじゃ、ポッター夫妻の偽者だ」
そこまで言われる「ポッター夫妻」っていったい、何者ですか。
しかし、まだ、ママはいないんだ。
予想通りというのもなんだけど、箱の1つの蓋が開き、若い男性が起き上がった。どこかでとはいわない、毎日鏡の中で見ていた顔だ。間違いなく、その人は、パパ。ジェームズ・ポッター。シリウスと先生の親友。
だから、起き上がった第一声が、先生に向かってっていうのは、納得はいく。いくけれど、息子の僕は?
「いやぁー、リーマス。その節は、世話になったねぇ」
その節とは、先生がホグワーツで先生をしていた頃をさしている、のだろう。
「えっ?記憶があるの?」
「もぉー、そりゃ、ばっちり」
えへへと誤魔化し笑いを浮かべた先生に、シリウスの方が不安になった、らしい。
「おまえ、なにをやった?」
えーと、あーと、と。時間稼ぎにもならない。逆に、唸れば唸るだけ、「やましいことがあります」と証明してるような言い逃れをしつつ。この場を誤魔化せると思えるなにかをみつけ、先生のね、顔がそう語ったんだ。でも、それは先生の思い込み、きっと、もっと泥沼にはまるだけの結果になると思う。
「教師の立場で、教育的指導?
大変だよ。リリーがまだ起きないよ」
と、逃げた・・・・・・
のこる1つ、おそらくママが眠っている筈の箱に、逃げ出した。僕のところからでは、今、ママがどんな状態なのかも見ることは出来ない。
先生は急いで蓋に手をかけ。パパのほうは、勝手に開いたんだ。多少、不手際があったのかと、不安になるのも判る。が、校長が動かない以上、それっていらない心配ってやつなのかも。
蓋は重そうにみえて、結構、軽いらしい。ずらした蓋を床に落とした。
身を乗り出して、覗き込んだ、途端。バランスを崩して、上半身が箱の中に落ちていった。先生ってば、水に落ちたネコのように毛を逆立ててたもんだ。胸を圧迫してるからか、声を出せない呻き声をあげて、たっぷりと一分は、じたばたとしてた。
落ち着けば足がつくことを思い出した溺れる人のように、慌てることをやめて身を起こした時には、恥ずかしいのか、顔が真っ赤になっていた。
「ごちそうさま」
と、箱の中から弾んだ声に、これ以上なく真っ赤になる。
それが、僕が、始めて聞いた、ナマのママの声だった・・・・・・
「うんもぉー。眠り姫を起こすのは、キスがお約束でしょ?」
うーんと、伸びをして起き上がる、写真で見たそのままの姿がコケティッシュに笑う。
シリウスは毛を逆立てて、先生を腕の中に抱きこんでるし、腕の中の先生は、未だパニック中。
パパは、・・・・・・・
「きみを起こすのは、僕の役目じゃないのかい」
「一緒に寝ちゃう王子さまって、ありがたみがねぇ、ないのよ」
ママはそれを蔑みながらいったんだ。
パパは、言葉に詰まり、やっぱり、自覚があるっていうのか、痛いところをつかれたっていうのか。代わりに、シリウスを見上げて、パパはシリウスより背が低かった。睨みつけてから。
「取り返しを宣言する」
「取り返す?」
これ見よがしに、いまだにパニックしている先生を腕の中に抱き込んだ。
その意味することは、一体。
いやぁ、だから、なに?
僕は、騎士団の集会に誘われた時に覚悟したとおり、この場での傍観者であることを選択した。
「これは僕に与えられた試練なんだ。乗り越えなければ、リリーの王子様たる資格は、与えられない。
覚悟しろよ、シリウスっ」
もう、すっかり、息子の存在なんて、地の果て、なんだろう。両親と名付け親とを呆れながら見てる。それしか、僕に出来ることはなかったし。
ドラマを見るくらいのお気楽さで眺めている僕も存在を忘れてた彼に、いきなり抱え込まれて、彼のローブの中。
彼の教育的配慮ってヤツだとは思うけど。今更、別に、シリウスと先生の関係には驚きはしないよ。
暗いローブに包まれた僕には、両親たちの声だけが聞こえる。
「いい加減、これを貢物にするのはやめろ」
「いや、それだけで赦してくれるわけがないだろう。
ここは、ハイグレードの貢物に決まってる、覚悟しろよ」
「だから、なんだ、そりゃ」
「おまえの嫌がる顔だ。
リーマス。リリーのキスを返してもらうっ」
「なんで、そーなるっ」
「一石二鳥のグッドアイディア。だから、はやく、さぁ、リーマス」
慌てたように、ローブの上から耳を押さえつけられた。けれど、そんなもの、その後のハイテンションな会話を妨げる何の役にも立たなかった。
「やらせるかってぇーのっ。そんなに、返して欲しけりゃ、俺がしてやる」
一瞬の沈黙、続いた大広間を揺るがすどよめきの振動。に、ママの悲鳴。耳を押さえられた僕にも、はっきりきっかり聞こえるって、怖い。
「いらーん。ばかやろー」
押さえるくらいではムダだと悟った彼は、おそらく、魔法を使ったんだろう。
ローブの中は、怖いくらいの静けさに包まれた。
一筋の光も見えない真の暗闇のなか、ローブの布ずれの音さえ聞こえない無音にの中にいた僕には、時間なんてものは無意味だった。
果たして、どれだけ、僕は孤独の中にいたのか。
ママが、息子を思い出してくれたのを知ったのは、「このっ、どさくさ紛れて、売約済みに手をだすんじゃないわよ」という雄叫び、だった。
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この話を考えていた頃、トムさんの本命が誰だか判りませんでした。
ので、こんなカンジを妄想しておりました。
で、それを踏まえた上で、リーマスにあんなことやこんな事をさせていたわけです。
その節の話は、いずれ書くつもり・・・・
おまけ 「すりーぴん」
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