2人の間の距離縮むまで。
最近、どうも尾行されている気がする。
それも、4時くらいからのことが多い。
まあ、犯人はわかったも同然なんだけど。
「1、2。……ふうん」
俺と、“犯人”との距離。
電信柱2本分。
影は2つ先の電信柱の後ろで息を潜めているようだ。
陽の沈みかけた夕焼け空が、影を長く映し出す。
「……バレてるよ、関口。隠れなくてもいい」
やっぱり、これ以上つけられているのは自分としても気分が悪い。
ここで言ってしまうのが吉だろうと思い、思い切って言う。
……電信柱2本分の距離のつきあいも結構おもしろかったけど。
「あ、バ、バレてた?」
「当然」
距離はまだ、電信柱2本分。
結構遠い距離だけど、彼女のくせのある髪は遠くからもよくわかった。
「はぁ…」
ワザとらしくため息をついてみる。
ここからは、演技勝負。
俺がため息をつくところを見て、関口は少し後ずさりした。
「どうか……した? 沢村」
「どうかも何も」
キミのせいだよ、と言いたげな瞳で軽く睨んでみる。
相当の距離があるというのに、俺の顔を見た瞬間に彼女は俯いた。
「ごめ……なさい」
「……あのさ」
思わず漏れてしまいそうな笑いを必死にこらえる。
どうしてこんなに楽しい?
どうしてこんなに可愛い?
どうしてこんなに愛しい?
「…好きでいてくれるのは嬉しいんだけどさ。こういうことされると、こっちも不安になるんだよね。……こういうことする奴は嫌いだな」
どんどん蒼白になっていく伊万里の顔。
あまりの衝撃に耐えられないといった様子で焦点の合わない瞳でこちらを見ている。
「ごめ……ん、なさい…。ただ、あたし………っ!!」
俺が雨苗と会うのが嫌だった?
それなら嬉しいけどな。
「雨苗と……会ってほしくなかった…!! それだけ、なの……」
涙目で見つめてくる。
関口のこんな瞳はあまり見たくないけど、これもまたいいということで。
「ごめん……。もう、しないから」
それだけ言って、去って行こうとする。
あー、おかしい。
でも、可愛い。愛しい。愛しい。
彼女の背中がだんだんと電信柱の2本目から離れていく。
小さくなっていく。
「待って」
急いで追いかけるわけでもなく。
ゆっくり歩く。
声をかければ彼女は止まってくれると信じていたから。
そして、電信柱2本分の距離を保って。
「……冗談だよ、嫌いだなんて嘘だ」
思い切り振り返って、驚きながら俺の方を見るその顔がたまらなくおかしくて。
ついには堪えていた笑いを吹き出した。
「くくっ、ははっ! いや、関口ってマジおかしい。おかしいっていうか……可愛いよ」
「ふぇ!?」
ただでさえ、夕陽に染められて赤い顔がもっともっと赤くなっていく。
その様子にも思わず笑ってしまった。
「……尾行。やめてほしいんじゃなくてさ」
「じゃあ……何?」
きょとんとして聞いてくる彼女に、俺は笑顔で答えた。
「今度からは、隣。一緒に歩こう」
「…………!!」
たたたたっと、関口が駆け寄ってくるのがわかる。
電信柱をあと1本超えて。
急いで、俺の前までやってくる。
「…飛びつかないの? 基本じゃない? こういうシーンだと」
ふざけて言ってみると、
「ば……っ、バカぁっ!!」
そんな風に言いつつも、顔を赤く染めて飛びついてくる彼女が可愛い。
「……好き。沢村が」
「……俺も、って言うとさ。俺が俺の事好きって言ってることになるから……」
「な、何言ってるんだよぉ!!」
軽く抱きしめる。
すると、さっきまで何だかんだ言っていた関口も急に大人しくなる。
「……伊万里が好きだよ、俺」
「あ……っ、ありがと…っ」
名前で呼ばれたことを知ってか知らずか、甘く熟したイチゴよりも赤そうな伊万里の顔。
キミのその一途さが。
愛らしさが。
世界中の誰より。
愛しいんだ……。
「……伊万里」
「ふえ?」
彼女の体を一時的に解放して、顎に指をかける。
斜め45°くらいの角度。
少し身長差があるから、俺が少し屈んで。
―――――2人の距離がなくなるのに、そう時間はかからなかった。
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<懺悔のこぉなぁ。(何)>
笑顔キャラって、基本的にサディストだと思うのデス。
とは言っても、このSSの中ではそうでもなさそうだけれど。
状況を楽しむって言うか、苦しんでたりするの見て、特有の笑顔になるとか。
「Blood Thread」なんか、そんな妄想を総動員して書いたり。
本題に戻ると、沢伊万は付き合い始めてからか、付き合う前は書きやすくても、
その中間あたりってすごく難しいのです。
いや、沢伊万自体難しいけど。
何か、電信柱にこだわって書きたかった。
それと、ほのぼの〜っていうか甘々〜っていうのを。
……無理でシタ。(号泣)
でわでわ。
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