一期一会



8月17日 曇り


朝、早々に俗世のキャンプ場を出て次の寺に向かう。

朝の清々しい空気を吸い込みながら、風を切って走る。

「やべー。マジ気持ちぃー」
走りながら叫びながら歌いだす。

「少年時代」

今回はこの曲を一番多く口ずさんでたな。

今日は寺を結構回った。
39番、40番。

暑いのは同じだけど、今日はゴキゲンな川には遭遇出来なかった。

そのかわり、
寺の入口付近にある
手を洗うことによって心を清める清め水
お互い頭やら体やらかけ合い、
怪しい目で見られながらも
ミニミニちゃぷタイムを敢行し続けた。

41番寺まで来たとき、寺の前でこいちはあるものに目がいった。

50近いおじさんと、20代後半くらいの女の人と、
20くらいの今時めずらしいまとも坊主頭の男の子の3人連れ。
別にいつもなら気にもとめないけど、
彼らは何か
不思議な違和感を伴っていた。

すぐにどうでもよくなって、般若心経タイム。
なかなかうちらもカンを取り戻してきて、うん、いい感じ。

と、その時。

「おい、文京区!」

・・・・・はい?我?こいちか?
確かにこいちのカブは文京区ナンバーだ?

振り向くとさっきのおじさんが、思いっきりこっちを見てる。
「君、文京区だろう。学生だな。東洋大学か?」
え?限定?その前におい文京区はねぇだろう。

「あー、違いますよ。」
一瞥して去ろうとするとおじさんがさらに続けた。

「そうか、いや、こいつら東洋大学生なんだって。
君達もそうかと車から見て思ったんだ。」

20くらいの男の子の方を見ておじさんは言った。

???

わけわかんねぇ。
あんたら家族なんじゃぁ。
そしてこいつらって、男の子と女の人?

とりあえず軽くかわして次の寺にに出発。
振り返るとやっぱり彼らは同じ車に乗り込んでる。
ま、いいや。

そして42番でこれまた般若心経。
抑揚のつけっぷりで、途中二人で吹きだして困った。

そして43番到着。
「こいちゃん、この寺、今日のテン場にいいんじゃん?」

確かに。
結構日も落ちてきたし。

坂を登ってさらに階段を登って、寺から見える景色は気分いい。
しかも回りは民家がぽつーんぽつんだ。

「くぴ。隊長、決定です。買出しいっちゃおうか?」
「くぴくぴ。」「くぴくぴ。」

くすくす笑いながら白装束を脱ぎ捨ててたその時!



「あれ?君達。」
さっきのおじさんだ。
「あ、こんにちわー。」

適当に世間話して、今日はここでテント張るーとか言ったら、

「じゃぁ、君らも一緒にここで寝させてもらえば?」
おじさんが男の子を見て言った。

???


「あ?」
みかと素早く視線で会話する。
このおっさん何言わしめ?
わからん。
ま、なんでもいっか。
そっすね。

んで、坊主頭の男の子に目を向ける。
!!!!!
いきなりみかの横で、こいちのモチベーションがガチ上がった。
うっわ、ちょー好みっ!
すると向こうの方からもう一人同じく坊主の男の子が現れた。

なるほど。
おじさんと女の人の車に男の子二人がヒッチハイクしてたらしい。

「別にいいけど。」
みかが言った。

「じゃ、そういうことで。」
おじさんはすたすたとその場を立ち去った。

最初の男の子がこっちを見て言った。
「あいつら、ぜってぇ不倫だよな!」


二人は東洋大生で
一人目がホシノ、二人目がウラベって名前だった。

しかもその後、二人が旅の途中に遭遇した
カネコという男の子も加わって、総勢5人になった。

まさか、この出会いがこいちとカネコに多大な変化を与えるとは、
この時、まだ誰も想像だにしていなかった。

それは
今日のドラマで・・・。


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