神の瞬きとその愛
修理屋のおっちゃんに聞いた砂浜、”塩谷の浜”をゲットし、荷物を降ろした。
とりあえず、怖。
もう19時近く、あたりは暗い。
それがまた怖さを際立たせていた。
海の方は真っ暗で何も見えず、どこまで波打ち際が来ているのかも見えず、
目の前に広がる闇の深淵からは、何がきてもおかしくないという感じだった。
無人の海辺で野宿は2度目だったが、比べものにならないほどその場は自然に近かった。
「でも、すげーいい。」
どちらからともなく声に出す。
テントやしちりんを置き、カブで食料の買出しに行く。
買出しも終わり、テン場に戻る途中、パン屋を発見。
「見てくかー、明日の朝メシに。」
二人でふにゃふにゃ入ると、パン屋のお兄ちゃんが珍しそうにうちらを見る。
「そのバイクで、女の子二人で旅してんのかい?」
パン屋さんに旅の大筋を朗々と語り、今日のテン場の治安も確かめ、
パン屋さんの反応に心ゆくまでぴーたー心を満たしたところで別れを告げようとすると、
「待ちなよ。これ、持っていきな。」
おぉう、おぉぉう。
パン屋さんが、パンをくれた。パン屋さんが、ケーキをくれた。
ありがたう・・。
大漁大漁!とはしゃぎながら、テン場に戻ったうちらは、
いつものように各自、動き出す。
テントを作り、隊長は木集めに、二等兵は火起こしに。
「こいちゃーーーん!ゲットなりーーー!!」
しちりんパタパタしながら、横でたき火の下準備をしていると、遠くの方でみかの歓喜の声がした。
「ぷき!?」
答えてみかの方を見るが、暗くてみかの持つロウソクの灯りしか見えない。
ロウソクの灯りと聞こえてくる音。
ズー−ルズー−ル・・・ズー−ル・・・
!!!!!
「でかっ!!!」
みかは木を引きずっていた。
枝ッぷりの木ではない。まさに木を引きずっていた。
(みか曰く、「あたしのウエストくらい。」)
ブラボー・・・
心の中で呟きながら、かけよる。
「隊長、大物ですのー。ふっほり、ふっほり。」
みかは、にんまり笑うと言った。
「さらにすごいの発見したよ!」
マジですごかった。
かつてない大物だった。
ひ弱なぴーたー2匹では、動かせないくらいの大物だった。
(みか曰く、「小錦のウエストくらい。」)
ビバ・海。ビバ・ぴーたー。
そして火起こしも終わり、みかが料理を作り、むさぼるように食事。
今日はテン場をゲットするまでにずいぶん時間がかかったので、空腹状態マックスだったのだ。
ひとしきり食事を終え、ぷっくりぷっくりとだらだらしていた。
あたりは完全に闇に包まれ、遠くから近くから波の音が聞こえ、二人を照らすのはたき火の火だけだった。
雲ひとつない空には満天の星が輝き、心を癒してくれていた。
心ゆくまでふんにゃりした後、二人はもぞもぞと動き出した。
「海はいいねぇ。」
「また違う趣がありますのう・・。」
「そろそろぴーぴータイムでもいきますかのう。」
「いいですのう。」
テントの中から各自リコーダーを取り出そうとした瞬間!!!
轟音があたりを揺らし空が光った。
どん・しゅるしゅるしゅる・ぱんぱぱん
「花火だーーーー!!!」
「うおーーー、すげーーーー!!!」
いくつもいくつも菊玉があがった。色とりどりの花が夜空に咲いた。
ぼけーと空の花を見上げながら、ふと思い呟いた、
「そっか、今日8月15日だ、終戦記念日だからかー」
「おー。そうだね。」
今思えばただの夏祭りにあたったんだなーって感じだけど、その時は心の底からそう思った。
神を感じた。
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