<BGM:哀しみの戦場へ>
あの戦いが終わってから、半年が過ぎた。
戦災の復興も、順調とは言い難いが、確実に進んでいる。
この半年は慌しく過ぎた。
今日は久しぶりの休日だ。
アリンディーネは、折角の休みだというのにピアノを聴かせる為に出かけてしまった。
彼もあの丘に行ってしまったことだし、今日は家でゆっくりするか。
・・・・・・そう、私の罪を贖うためにもその罪を直視せねばならんか。
あれは・・・彼と出会ったこの街から始まったと言ってよいのだろうか。

AC191年1月より始まった戦争。
前半は同じ人類同士の戦い。
後半は異星人との戦い。
地球人同士の戦いで疲弊した兵士達に戦い抜く余力はなく、連邦政府は勝利の美酒に酔ったままだった。
そのような状態で勝てる道理はなかった。一部の兵士は善戦するも大局を覆すことはできず、異星人に地球は支配されることとなった。

それから3年経った時に出会ったのだな。私と彼は。
あれは・・・そう、私が“ブロック・ブレイカー”と呼ばれていた頃の話だ。
私の任務はFI社が開発したA.D.の試作機「ソルデファー」をレジスタンスの手から奪還することだった。

先遣隊はうまくやっているだろうか。
所詮はAI・・・当てにならないからな。
やはり自分で行くか。
スペシャルズから何人か連れてその街に行く。

街に到着したときには、その街は半壊していた。
噴き上がる炎と煙に人々は逃げ惑い、火の神は弱き人々を容赦なく飲み込んでいった。
だから、私は無人機が嫌いなのだ。
すぐに無用な破壊活動をやめさせようと、AIに指令を送ろうとする。
だが、最初からそれをする必要はなかった。
なぜなら、無人機――スカルガンナー――は全て何者かによって撃墜されていたからだ。
アンノウンの機体が1。
いや、4に増えた。
どうやら、地球解放戦線機構の連中がここを嗅ぎつけたらしいな。
私はアンノウンの機体に興味を覚えた。
このアンノウンがレジスタンスに奪われた試作機「ソルデファー」であることは間違いない。
そして、この機体がスカルガンナーを5機落としたことも事実である。
ならば、“ブロック・ブレイカー”の名に懸けて、この機体を撃ち破ってみせよう。
だが、そんな自信はすぐに崩れた。
私はあっさりと追い詰められたのだから・・・。
戦闘続行は不可能と判断し、撤退することとなった。
私にとって、実戦での数少ない敗北だった。
それが彼との縁の始まりだった。


あの頃の私は、OZの理想を、トレーズ様の理想を信じて戦ってきた。
そして、それは恋人を守る事に繋がると信じていた。
だが、そんな理想は徐々に砕かれていく。
ジャミトフやバスクの台頭。トレーズの失脚。
私が信じた理想は露と消えた。私が信じる理想に反することを強要された。しかし、それでも従わなければならない。
バスクによってアリンディーネが人質として囚われている以上は。


そんな状況を打破してくれたのも彼だった。
どこで情報を得たのかは知らないが、アリンディーネが囚われている場所に単機で強襲し、アリンディーネを救った。
さらに、恋人のためとはいえ、敵として、帝国の兵士として多くの人々を、解放戦線の仲間達を殺めた私をマーチウィンドに迎え入れてくれた。


今こうして、ここにいるのも彼のおかげと言うことになるだろう。
私は彼には返しきれない恩がある。
だが、私は彼に何もしてやれなかった。
むしろ、恩を仇で返していると言っても過言ではない。
彼の好きだった女性が死んだのは、私が任務でこの街に無人機を送り込んだことが原因だ。
レラを助けようと飛び出していった彼を止めたのも私だ。
しかし、そのことを彼は責めることはなかった。
彼は私なんかの言葉で立ち直ってくれたようだ。
だが、私としては責めてくれたほうがマシだったかも知れない。
「あんたが止めなかったら、レラは救えたかもしれない」と。
無論、無理だったと言うことは彼も気づいていただろう。
それでも、そう言ってくれたほうがいくらか気が楽になったはずだ。
しかし、現実はそうならなかった。


幾つもの命が散っていくのを見送り、戦い続けた。
その結果が今の平和だ。
私が彼に返せる恩があるとしたら、彼とともにこの平和を守り続けることだろう。
まだやらなければならないことも山積みだが、一つ一つ片付けていけばいいことだ。
二度と哀しみが集う場所を作らぬためにも。
哀しみがなくなる世界を作るためにも。


気がついたら、日が沈みはじめていた。美しい夕焼けだ。
時間も遅いことだし、アリンディーネを迎えに行くとしよう。
そのあとは、きっと、彼も呼んでここで夕食ということになるのだろうか。
アリンディーネはことさらに彼を気に入っている節がある。
仕方がないと言えば仕方がないが、少し妬けるな。
そう言いながらも顔には微笑が浮かんでいる。
「さて、明日からまた忙しくなるな」


作者(三月 久遠)の感想>
2005年9月7日午前6時00分頃完成。
徹夜して、完成させました。
書くと決めたらまとめて書こうとしないと、ずるずると引き延ばした挙句、結局書き終えないままになりそうでね。
しかし、これ書く前にスパロボ64のリアル男の第1話くらいはプレイしておくべきだったな。
全部うろ覚え。
まあ、2次創作だから許してね。
8割方は想像だから。
執筆時間そのものは3時間くらい?
かなり前に書いた「墓参り」とちょっとリンクしてます。
いや、アークが墓参りに行っている間、エルリッヒはこんなことをしてたんだよ、程度ですけどね。
でも、ネタがなくなってきたな。
この際、64オリジナル面子総登場させよっか?
といっても、マナミ関連しかわからないけど。
だからと言って・・・OG面子出すのは反則かな?
とりあえず、何とか・・・大学の夏休み中に小説を一本挙げられた・・・・・・・。
あいかわらず、時間軸が一定しないな。
回想というのはこんな感じなのだろうか?


(管理人の感想)
以前贈って下さったSSのエルリッヒ視点のお話です。
アークライトの時もそうだったのですが、文体がとてもクールで、
この二人を表現するのにピッタリだと思いますー。

久遠さま、ありがとうございました!


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