<BGM:哀しみの戦場>
あの戦いが終わってから、半年が過ぎた。
戦災の復興も、順調とは言い難いが、確実に進んでいる。
この半年は慌しく過ぎた。
おかげで、なかなかここに来ることが出来なかった。
この街を見渡せるこの丘に・・・。
そう、全てはこの街から始まった。


「エミリアァァァァ」
爆炎と硝煙の中に、その少女の身体は消えていった。
全ては突然だった。
帝国の軍隊が攻めてきたかと思ったら、次の瞬間には街は火の海と化していた。
「俺たちが一体何をしたっていうんだ!!」
おば夫婦がレジスタンスを支援していたのは知っていた。
だからと言って、街をここまで破壊する必要があるのか。
帝国の無人機が迫ってくる。
(ただでは死ぬもんか)
そう思い、辺りを見渡すと一つのロボットが見えた。
それが帝国の試作機だったとは、あの時の俺に知るよしはなかった。
「同じ殺されるにしても、少しぐらいは抵抗してやる」
そう叫び、おば夫婦、そして、エミリアのためにもせめて1機は倒してやる。
そう心に誓った。
そして、そのロボットに乗り込み、戦った。
その戦いの中で、”ブロック・ブレイカー”エルリッヒ・シュターゼンを破った。
そして、地球解放戦線機構の人々と出会い、俺は彼らと共に地球のための戦いに身を投じていった。


あの頃の俺は、何のために生きるのか、何のために戦うのか分からなかった。
そんな時にあの少女と出会ったのだ。


地球解放戦線機構がある街に寄ったとき、そこでは帝国とゲリラの戦闘がおこなわれた後だった。
生存者はほとんどいなかった。
数少ない生存者、いや唯一の生存者だったかもしれない、少女を俺は助けることになった。
その少女はレラという名前だった。
彼女がいなければ、今の俺はいなかったかもしれない。
最初の頃は、誰とも打ち解けようともせず、
それどころか、傷の手当てをしたら自分の街に帰ると言い出した。
結局、アウムドラから飛び降りるわけにもいかなかったので、
彼女は俺たちと共に行動することになった。
共に行動していくうちに、レラは俺だけには心を開くようになっていたようだ。
そう誰かが、俺に言っていたのを覚えているから。
あいつと話をしていたら、エルリッヒ・シュターゼンに対する憎しみも消えていった。
俺の心を変えてくれた。
何のために生きるか、何のために戦うかが分かったのは、彼女のおかげだと言っても過言ではないだろう。


彼女がいたからこそ、俺は最後まで戦い、生き延びられたんだと思う。
ある意味で、その頃が一番幸せだったのかもしれない。


エルリッヒ・シュターゼンの恋人を助け、彼が仲間になって、共に戦うようになってからしばらくたった。
あの日、俺達マーチウィンドは宇宙に上がらなくてはならなくなった。
そのために、宇宙に上がるための施設を奪回することにした。
あの頃、宇宙に上がるための施設は全て敵に押さえられていたから・・・。
ミケーネ帝国が占拠する施設を取り返したと思ったのも束の間、それは敵の罠だった。
その施設には爆弾が仕掛けられていた。
その爆弾を解除するためにレラは出ていった。


思えば、あの時彼女が出て行くのを止めておけばよかった。
そうすれば、後に起こる悲劇を回避できたかもしれないのに・・・。


結局、彼女は、レラは、爆弾を解除することに成功するも、足をやられ、動くことが出来なかった。
岩盤の崩落に巻き込まれ、彼女は帰らぬ人となった。
マーチウィンドは宇宙に上がれたのは、レラのおかげだろう。


そして、俺が今ここに立っているのも・・・。
俺は、エミリアが死んだ時何も出来なかった。
そしてレラが死んだ時も。


好きな女性(ひと)を、好意を抱いた女性(ひと)を救うことが出来なかった。
2回も・・・。
そのことを考えると、自分に腹が立った。
自分はなんて無力なんだろうかと惨めになった。
宇宙に上がった後、しばらくはそんな状態だった。
しばらくたつと、気持ちが落ち着いたのか、そんな気持ちが薄れていった。
むしろ、レラの最後の言葉を思い出し、そのために戦うと誓った。
多分、エルリッヒのおかげだろう。


そうやって戦い、俺たちはかつての仲間と争い、そして勝利を収めた。
銀河の守護者を名乗るアル=イー=クイスさえ倒して、今の平和がある。
まだまだ、やらなきゃいけないことがある。
この平和を長く、できるのなら永遠につづけていくためにも、
エミリアやレラのような人をつくらないためにも、俺は俺のできることをしなければならない。
そんな事を考えていると、丘のてっぺんについた。
そこからは街が見渡せる。
まだまだ、復興途中の街が。
しかし、俺がここに来たのは街を見渡すためではない。
ここにある女性に会いに来たのだ。
女性達といった方が適切か。
エミリアとレラである。
ここには、彼女達の墓がある。
墓といっても、下に遺体が埋まっているわけではないが。
「遅くなってすまない。色々と忙しくてな」
俺は2つの墓の前に腰を下ろすと、そう語りかけた。
そうやって話し込んでいたら、気が付いたときには夕方だった。
街の向こうに日が沈んでいく。
なかなか幻想的な光景だった。
その眺めに見惚れていると、遠くから俺を呼ぶ声がした。
「少年」
「アーク君」
どうやら、エルリッヒとアリンディーネさんらしい。
どうやらもう戻らないといけないみたいだ。
「すまん、レラ、エミリア。今日はもう帰らないといけないみたいだ。また近いうちに来る」
そう言って、俺は丘を駆け下りた。
俺の帰る場所へ。
そして、レラが夢みた世界を作るため。


作者(三月 久遠)の感想>
2003年6月22日午前2時30分頃完成。
なんか勢いで作ってしまった。
どうしよう、これ。
・・・どこかに投稿するしかないかな。
私が良く行くスパロボ関係のHPにでも送ろうかな?
しかし、スパロボ64うろ覚えだ。
レラの死ぬ話がどんなのだったかは大まかには覚えていても、細かい所は覚えていない。
しかも、アークが何で、帝国の試作機に乗ったかも覚えていなかったりする。
実際、ゲームを始めたのは2年半くらい前だし。
10話ほど進んだとこで、止まって、半年くらい前に再開してクリアしたんだけど。
そんな訳で、この小説は、攻略本の知識と私の想像力で出来ているものです。
あまり、本気にしないで下さい。
イメージとしては、スパロボ64アーク編のED。
なんというか、墓参りをするイメージがあったので、こんな話になりました。
ほとんど、墓参りのシーンはないですけど。
あと、アークとエルリッヒは一緒に住んでいるわけではないですよ。
ただ、アークを呼ぶとしたら、エルリッヒとその恋人しか思いつかなかったと言うわけです。
・・・執筆時間1時間30分。
2003年6月25日午前11時00分頃1部追加。
追加と言っても、一番上の<BGM:哀しみの戦場>を追加しただけだったりする。
考えてみると、私が書く初めてのスパロボの短編小説。
これを書いたと言うことは、私は本当にスパロボ64が好きなんだなあ、と改めて思いましたよ。
何度も繰り返しますが、うろ覚えなんで、ゲームと矛盾するような所があるかもしれませんが、
無視してください。というか、見逃して。
大学の試験前だというのに、何をやっているんだ、私は・・・。
この小説の解説。
「かつての仲間」とは、わかると思いますけど、クワトロ・バジーナことシャア・アズナブルのことです。
ルートとしては、独立軍ルートを通りエルリッヒを仲間にしたルートです。
アリンディーネはエルリッヒの恋人です。
(管理人の感想)
というわけで、「64」リアル系男主人公アーク話です。
私はセレインルート以外は未プレイなもので、
この小説を拝見して、ますますアークルートに興味津々です。
久遠さまのサイトには、スパロボのコンテンツがないそうですが、
勿体無い!是非加えていただきたいものです。

久遠さま、ありがとうございました!


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