静寂の声

「出力80%低下…機体損傷率…93%…」
「終わりだ、W17」
「…私が倒れても、戦況に変化はありません。私の役目は、アクセル隊長…あなたたちの足止めです」
「役目は果たした、か。未練はないのか?」
「未練…?アクセル隊長、どうしてしまったのです…?それに…私が倒れたところで、
Wナンバーはいくらでもいます」
「…自分を持たない、持つことが出来ないお前は…やはり出来がいいだけの…ただの人形だ、W17」
「…Wナンバーは…そのために…造られたのでは…?感情を廃棄し・・・戦いにのみ価値を求めるのが・・・
シャドゥミラーでは・・・ないのですか・・・?」
「!?」
「アクセル隊長・・・私は・・・」

W17の最後の言葉は爆音に消されて聴くことは叶わなかった。


〜静寂の声〜


「おーいアクセル。ブリーフィング始まるぜ」
ケーンが俺を呼び止めた。
「いよいよ最終決戦だからな。奴さんの情報もってるあんたが来ないと話になんないからさ、
早く来いよ・・・ってどうした?具合でも悪いのか?」
「ケーン・・・俺は変われたと思うか・・・お前に・・・ギガノスへ降れと脅した時から」
ケーンの顔色が変わった。無理もない。殴られるか罵倒されるかと覚悟を決めていたが
ケーンの反応は意外と冷静なものだった。
「確かにな・・・最初会ったときは記憶喪失のくせになんつー脳天気な奴だって思ってて・・・
おふくろを人質に脅迫された時のあんたは・・・『鬼』だと思ったな・・・」
「鬼?」
「あぁ伝説上のバケモノなんだが・・・それみたく『人間』の持つ感情がないというか・・・
それくらい冷酷で残虐極まりない奴だと憤るより恐かったな」
「そうか・・・」
「でも今のあんたはそうじゃないぜ。ちゃんとした血も涙もある『人間』だと思うぜ」
「・・・ありがとう」
「まぁ・・・今までやってきた事は許せねぇけどな・・・けどあんたは生き残って謝罪し続けるのが
あんたへの『罰』だと思うんだ・・・だから死ぬなよ。みんなもそう思っているはずだぜ。」
「・・・本当にお前たちは甘いな」
「んだよ。せっかく人が許してやってもいいって言ってんのに・・・」
「悪ぃちょっとした言葉のアヤなんだな、これが。んじゃま、そろそろ行きますか」
「・・・って呼び出したのはこっちだっつーの」


甘すぎる、お人よしばかりの集団。

だが真に「皆の平和のために」と戦う信念を貫き通せる集団。ロンド・ベル

彼らの人を信じる力がなければ俺は変われなかった。

今にして思えばW17が自分を持てなかったのは当然のことだ。

あそこは全てを混沌の世にするため、望んで人形となっていたのだから・・・

もし・・・あいつがロンド・ベルにいたのなら・・・「人形」を越えた「何か」になれたのだろうか

あいつは最後・・・俺になにを伝えたかったのか・・・



「W17・・・」
一言つぶやく



けれどその言葉に応えるものは誰もいない






(後書きという名の反省文)
最初にあるラミアとの会話でアクラミにはまりました(最後の一文は創作ですが)
うちのラミアは一応これでも彼女なりの「意志」を持ってることになってるのですが・・・
そっちサイドのSSが上手くまとまらないので逃げます。(^^;サリィ様がこんな駄文ですが
もらっていただける事に感謝します。


(感想)
アクセルっておちゃらけたイメージが強いのですが、
本当は色々と深くて暗い部分を内包しているキャラだと思うのです。
槐安夢さんの書かれたお話は、そこの所が表現されていて、好きです〜♪
本当に、素敵なお話をいただきまして、ありがとうございました。

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