源泉の宿・宿泊記

長湯温泉/大丸旅館(★★★★★)
日本一の炭酸泉が溢れる芹川沿いの静かな宿


長湯温泉は、大分県九重山系の東のふもとにある直入町にあります。泉質は国内では数少ない炭酸泉で、源泉の湧出量と二酸化炭素の含有量、温度から日本一の炭酸泉と呼ばれています。芹川に沿った中心地に、旅館・民宿・公共施設など17軒、川原の露天風呂「カニ湯」、町営公衆浴場の「御前湯」「長生湯」「天満湯」などがあります。

●料 金 1泊2食 10,000円〜
●所在地 大分県直入郡直入町長湯7992-1
●電 話 0974-75-2002
●交 通 大分自動車道湯布院ICからR210経由40キロ
●食 事 夕食/会席(客室)、朝食/和食(食事処)
●風 呂 内湯・露天風呂(男女各1)、家族風呂1、宿直営の外湯「ラムネ温泉」
●施 設 和15室(全T付)
●イン/アウト イン15:00/アウト10:00
●宿泊日 2004.12.23-24

■温泉 大丸旅館のお風呂の構成は次のとおりです。
〈旅館内湯〉:宿の中にあるいわゆる内湯
@ 男女別(露天風呂併設):入浴時間はチェックイン時から翌朝7:00まで
A 家族湯:入浴時間はチェックイン時から翌朝7:00まで
〈旅館外湯(「ラムネ湯」)〉:宿から300mくらい(徒歩4〜5分)離れた場所にある大丸旅館直営の外湯
@ 男女別露天風呂:一般客は200円ですが、宿泊客は無料。17時以降は施錠してしまうため、会員以外は入れなくなります。宿泊客には宿から専用のカギが渡されるので、17時以降はそれを使って中に入ります。
A 家族湯(2つ):利用するには予約が必要で通常チェックイン後に希望時間を聞いてくれると思います。利用時間は、19:30〜20:30、20:30〜21:30、21:30〜22:30 の中から希望選択します。予約した時間に入りにいくときは、帳場でその旨を伝えカギをもらって行くことになります。

内湯の男湯ですが、湯船の大きさは2m×4m程度の長方形の湯船、シャワー付きのカランが3つあります。それほど大きな浴室ではありませんが、掃除も行き届いているようで清潔感があり好感が持てる感じでした。お湯は熱すぎずぬるすぎず、たぶん40度くらいでしょうか、ゆっくり長湯できる温度です。長湯温泉という温泉名もこの「長湯ができるお湯」というところからきているようで、昔から長湯温泉の温泉は「飲んで効き、長湯して効く長湯のお湯は胃腸、心臓に、血の薬」と謳われているそうです(「血の薬」というのは血圧を下げる効果があることから入っている文句らしい)。お湯の色は、緑がかったうすい黄土色とでも言ったらよいでしょうか。飲泉もできます。味は炭酸がほとんど抜けたサイダーをお湯で薄めて、そこに鉄サビ風味を加えたような感じでした(微妙に甘さが感じられますが鉄サビ風味で正直美味しい味ではない)。日本一の炭酸泉というからにはもう少し炭酸独特のシュワシュワ感が口の中で感じられるものと思っていましたが、実際にはそれほどでもありませんでした。湯船の縁から天井までは大きなガラス窓で外に芹川を望んでいます。露天も併設されていますが、こちらは直径2m程度のほぼ円形状のもので小さな露天でした(女湯は四角形)。内湯と違ってお湯が淀んでいるような感じにも見えたので、露天にはあえて浸かりませんでした。余計な飾り気がなく、シンプルな造りの内湯はゆったり落ち着くことができ、お湯の良さと相まって個人的にはかなり高評価でした。(ラムネ湯(ラムネ温泉)については別掲

(男性用内湯) (男性用露天風呂)
(女性用内湯&露天風呂) (家族湯)


源泉チェック
緑褐色
泉質 炭酸水素泉、二酸化炭素泉
源泉温度 42〜48度、31度
湧出量 計1000リットル/分(自家源泉4本(自然湧出1本、掘削自噴3本))
PH 6.3ほか
飲泉
■部屋

大丸旅館の客室は、事前に調べていた情報では、本館と旧館に分かれているということでしたが、実際に訪れてみると本館1階に3室、2階に5室、そして旧館は工事中のようでした。今回泊まった部屋は本館2階の「金口(きんぐち)」という部屋。片引き戸を開くと、板の間と洗面、トイレ、そして和室10畳の部屋でした。大丸旅館では部屋はすべて宿の前を流れる川(芹川)に面していますが、2階の部屋だと立ち上がらないと川が見えないこと、そして料理も1階部屋とは少し異なるということで料金は平日1万円(税別)でした(ちなみに1階は1万2千円)。ですが、部屋の広さといい、小奇麗な様子といい(掛け軸や壁に掛けられた絵、板の間やトイレに生けられた花などどれも素敵)、お茶セット(急須と湯のみ)も毎回取りかえ、寝る前には冷水ポットとコップも用意で、とても1万円とは思えず、料金と比べた場合の評価としても、大満足と言っていいものでした。

(本館2階「金口」) (本館2階「金口」の室内)
■料理 夕食は17:30から部屋食でした。まず見事に細工された前菜が並んだ大皿、きのこと柚子の和え物、大根の酢漬け、馬刺しが並べられました。本当に一品一品丁寧に作られた前菜は食べるのが惜しいくらいでした。また使われている食器も豊後竹田で特注品というもので、見た目にも料亭の料理といった趣が感じられました。そして「暖かいものは暖かいうちに」を基本にしているようで、食べ頃を見計らって、ヤマメ(この地方ではエノハと呼んでいます)と野菜の天ぷら、揚げだし豆腐、もち入り茶碗蒸し、天然のイノシシの焼き物、地鶏の鍋、が2回に分けて出てきました。特にヤマメ(エノハ)の天ぷらは、頭から丸ごとサクっと食べられ、香ばしくなんとも言えず美味しかったです。そして、冷たい茶蕎麦、漬物とむかごのご飯、最後にほうれん草のアイスクリームで締めくくられました。地のものばかりを使って、こんなに見事で美味しい料理を暖かいうちに何度かに分けて出してくれるとはうれしい限りです。これで1万円とは料理(夕食)の面においても大満足と言っていいものでした。
(大皿に盛られた前菜) (大根の酢漬け) (馬刺し)
(ヤマメ(えのは)と野菜の天ぷら) (揚げだし豆腐) (イノシシの焼物ほか)
(冷たい茶蕎麦) (むかごのご飯&漬物) (ほうれん草のアイスクリーム)
朝食は、7:30〜8:00に1階の帳場向かいにある部屋へということで、そこで食べました。この日は3組しか泊まっていなかったせいか、テーブルを3つ並べていっぱいくらいの部屋でした。あらかじめ豆腐、青菜の胡麻和え、山菜、海苔、漬物、焼き豚、大根おろしといった小鉢が並べられていて、席に座った後で、味噌汁にご飯、アジの干物、暖かい豆乳が運ばれてきました。朝食も思った以上のボリュームでしたが、ただご飯が少し柔らかくあまり美味しくなかったのがマイナスポイントでした。
(朝食はこんな感じ) (アジの干物)
■接客 部屋の案内は(少し早めに着きすぎたせいか(?)支配人の男性がしてくれました。素朴な感じの良い方で、親しみが持てました。こちらからいろいろ質問をしてしまったせいか、浴衣がどこに置いてあるかの説明を忘れてしまったようで、あわてる点もありましたが、特に悪い印象は残りませんでした。そして食事を配膳してくれた仲居さんや布団を敷いてくれたお手伝いさんも、皆さん気さくな方ばかりで特に問題はありませんでした。

総じて、この宿の評価は? 平日本館2階で1万円(税、サービス料別)はとにかくお徳!館内の雰囲気、部屋の広さ、風呂の充実度、料理とどれをとっても満足度120%。そしてなんといっても外湯のラムネ湯の魅力が大。また是非泊まってみたい宿です!(お気に入り度=★★★★★)