Q2以降の解説はこちらで・・・。
Q2:検査データー(採血)の主な項目についての解説
Q3:高額療養費について 3/2追記部分あり
Q4:エコノミークラス症候群について
Q5:看護婦(師)と准看護婦(師)の違いについて 1/15追加
Q6:1次〜3次救急について 1/20追加
Q2:検査データーの主な項目についての解説(written
by 検査技師)
ここでは病院でよく行われる検査の正常値とその意味について基本的な点を解説してみます。
各種療法においての検査データーを参考に投与量が決められることが多いので、自分の検査値を知っておくことは非常に重要です。
1つの参考にしてみて下さい。
以下に示す検査の正常値については、施設・測定方法によって若干異なるのであくまで目安としてとらえ、
実際に測定された施設の正常値を優先する方が良いでしょう。
【血液の検査】
☆赤血球数(RBC) − 正常値 男性で400〜550万個/mm3、女性で350〜450万個/mm3
赤血球は、身体各組織に酸素を運ぶという重要な働きを持っています。実際に酸素と結合しているのはヘモグロビンという物質で、
赤血球が赤いのはヘモグロビンという血色素によるものです。
赤血球によって運ばている酸素は各細胞におけるエネルギー利用に不可欠となっており、酸素の不足は各組識の円滑な働きを
阻害してしまうことになります。生体に必要なエネルギーは主に糖質を分解して得られています。
このエネルギーを生み出す過程に「TCA回路」がありますが、TCA回路は酸素が不可欠となっており、
このTCA回路がうまく回転しないと糖質が生み出すエネルギー効率は低下してします。
女性の正常値が低い点については、やはり月経による失血が大きな要因となっています。鉄欠乏性貧血が女性に多いこと、
献血をする際に女性では男性より長い期間を空けないと献血できないのも同じ理由によるものです。
赤血球数の検査で異常が出る場合、低下しているときは貧血、反対に上昇している場合には多血症が疑われますが、
必ずしも赤血球数だけで診断するのではなく、ヘモグロビンやヘマットクリット値を含めて総合的に判断されるものです。
赤血球は寿命が120日と長く、逆に言えば全赤血球の1/120が毎日壊されており、新しい赤血球と入れ変わっています。
☆ヘモグロビン(Hb) − 正常値 男性で13〜17g/dl、女性で12〜15g/dl
ヘモグロビンというのは赤血球中に含まれる血色素で、ヘムと呼ばれる独特の構造体とグロビンというタンパク質から
できています。ヘムというのはピロール環と呼ばれる構造4つが更に環を作るような形で結合したテトラピロール環
(テトラは4を表わします)を指し、この中心に鉄が結合しています。この独特な構造が酸素と結合し、必要に応じて肺で
酸素と結合して全身に運ばれた後、酸素の少ない末梢組織では酸素を放出するという仕組みになっているのです。
ヘモグロビンとよく似た構造の物質に「ミオグロビン」と呼ばれる筋肉中に含まれる物質があります。
このミオグロビンも酸素と結合する性質があり、筋肉中で酸素を貯めておく働きがあります。これも必要に応じて酸素を放出します。
つまり私たちが呼吸して吸い込まれた酸素は、肺でヘモグロビンに取り込まれ、
血流を介して末梢の組織に運ばれていって放出されると、筋肉ではミオグロビン中に取り込まれ、
それが運動などをした際に必要に応じて放出されて、細胞で糖質からエネルギーを作り出す際に、
重要な役割を果たすというわけです。
検査ではヘモグロビンの量が減っていないか、あるいは多くないかを調べ、赤血球の能力としての指標とも言えるでしょう。
しかし、この数値だけで「貧血」の確定診断はできません。
☆ヘマトクリット値(Ht) − 正常値 男性で39〜50%、女性で36〜45%
ヘマトクリット値というのは「全血液中における赤血球の容積比率」を表わします。
つまり、全血液容積を100%とした場合、赤血球の占める比率が何%にあたるかを示しています。
この数値も単独で貧血を診断するというわけではありません。この理由は以下に「赤血球恒数」として説明してみます。
「赤血球恒数」
赤血球恒数というのは、赤血球数やヘモグロビン、ヘマトクリットの検査データから算出し、貧血などの診断に参考になります。
赤血球恒数には次の3つがあります。
☆平均赤血球容積(MCV)=ヘマトクリット(%)/赤血球数(10の6乗/μl)×10
☆平均赤血球血色素量(MCH)=ヘモグロビン濃度(g/dl)/赤血球数(10の6乗/μl)×10
☆平均赤血球血色素濃度(MCHC)=ヘモグロビン濃度(g/dl)/ヘマトクリット(%)×100
平均赤血球容積は「単位赤血球あたりの容積を示すもの」で、ヘマトクリット値が低くても赤血球数は少なくないという場合は
赤血球1個々が小さいということになるので、このような場合には「小球性貧血」という事になります。
逆にこの値が高い場合には「大球性貧血」ということです。
次に平均赤血球血色素量は「単位赤血球中に含まれるヘモグロビンの量」を表わしており、これが低ければ「低色素性貧血」
逆に高ければ「高色素性貧血」という事になります。
平均赤血球血色素濃度は「単位赤血球容積あたりのヘモグロビン濃度」を表わしています。
これが上昇するのは一部の貧血に限られてきます。
貧血1つをとってみても、赤血球数が正常でも「個々の赤血球」が小さいというタイプのものがあったり、
逆にヘモグロビン濃度が正常でも「赤血球1個が大きくて赤血球数は少ないというタイプ」の貧血もあるのです。
具体的には、貧血として最も有名な「鉄欠乏性貧血」では「小球性低色素性貧血」の形をとるのに対し、
巨赤芽球性貧血では「大球性高色素性」の形をとります。
他に再生不良性貧血や溶血性貧血では「正球性正色素性」の形となります。
ひと口に「貧血」といっても、いくつかのタイプがあることは、お分かり頂けると思いますが、それぞれの貧血によって
薬物治療も異なってくるため(鉄欠乏性貧血では鉄剤の投与、巨赤芽球性貧血ではビタミンB12の注射など)、
こうした赤血球恒数をしっかり考慮する必要があるというわけです。
赤血球に限らず血球は骨髄(骨の中)で作られています。
骨髄では血液細胞の元になる幹細胞から分化して、あるものは赤血球に、あるものはBリンパ球
(Bというのは骨髄由来であることを示します)に、またまたあるものは単球を経てマクロファージになっていく・・・というわけです。
「網状赤血球」というのは成熟赤血球の1歩手前の状態、言ってみれば「赤血球の赤ちゃん」とでも言いましょうか。
正常値は全赤血球の1〜2%となっています。
網状赤血球指数についてですが、エリスロポエチン(腎臓から分泌される赤血球を作るように指令するホルモンです)が正常で、
尚かつ骨髄での増血機能が正常な場合ではヘマトクリット値が30%以下に低下するような貧血状態において、
赤血球の産生能力は2倍以上に高まってきます。
網状赤血球指数というのはこの赤血球産生能の指標となるもので次の計算式によって求められます。
網状赤血球指数=[患者の網状赤血球(%)×患者のヘマトクリット値(%)/正常人のヘマトクリット値45(%)]
(×1/2)
※最後の(×1/2)というのは、末梢血の塗沫染色標本に多染性赤血球(説明省略)が認められる場合にのみ計算します。
この網状赤血球指数が3以上の場合には、貧血に応じて血球はちゃんと作られていると判断して、
溶血性貧血(赤血球が異常に壊されている病態)が考えられ、指数が2以下の場合には、
赤血球産生が低下していると判断して、鉄欠乏性貧血や巨赤芽球性貧血が考えられるというわけです。
☆白血球数(WBC) − 4000〜9000個/mm3
白血球というのは、赤血球のように単一のものではなく幾つかの種類が含まれています。
細胞として核を持っているのが特徴で、赤血球では核はありません。
白血球には大きな分類で顆粒球、リンパ球、単球といった種類があり、顆粒球ではさらに好中球(白血球の中で最も多い)、
好酸球、好塩基球に分類されるほか、リンパ球もBリンパ球、Tリンパ球に分類されます。
これらは主に免疫やアレルギー反応に関与しており、「何らかの原因」で白血球が著しく低下してしている場合には、
細菌やウイルスなどの外敵からの防御能力が低下して、容易に感染症を引き起こしてしまいます。
「何らかの原因」としては、薬剤によるものや、あるいは再生不良性貧血などの疾患によるものがあります。
逆に白血球が増加している場合には、既に細菌などの感染があり必要に迫られて白血球数が増え、
外敵と戦っている状態が考えられますが、他にも白血病によるものなどの可能性はあります。
白血球全体に占める各種比率については、まず顆粒球として好中球が40〜60%、好塩基球が0〜2%、好酸球が1〜8%位で、
これら顆粒球が特異的に減少している場合には「顆粒球減少症」あるいは「無顆粒球症」と呼ばれます。
他にはリンパ球が30〜50%、単球が1〜9%くらいの比率となってます。
☆血小板数(PL) − 20〜40万個/mm3
血小板は、出血した際に止血メカニズムとしての血栓形成に重要な働きを持っています。
血小板が減少すると、出血時に血が止まりにくくなるほか、著しい減少をみる場合には「紫斑」といって内出血状態を
引き起こしてしまいます。血小板の減少は薬剤に起因するものも多く、アスピリンなど非ステロイド性の消炎鎮痛剤では
血小板を不可逆的に阻害するので、新しい血小板と置き換わるまで1週間程度は作用が持続してしまいます。
このときは出血傾向に注意が必要になるわけです。血小板だけが減少してしまう疾患として、
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)があり、原因はよくわかっていないものの、血小板の破壊が亢進されていることから
免疫系の関与も指摘されています。
逆に血小板の合成過程が障害されている疾患としては、再生不良性貧血や骨髄異形成症候群(MDS)などがあります。
【腎機能検査】
[尿を検体とするもの]
☆尿たんぱく
腎臓の糸球体は「限外濾過」といって、分子の小さいものが濾過され、大きいものは濾過されないという基本前提があります。
このため分子量の大きいタンパク質は通常は濾過されず尿中にも僅かしか排泄されないのですが(1日に150mg以下)、
何らかの理由で多量のタンパクが尿中に排泄されてしまうケースがあります。
有名なところでネフローゼ症候群があり、血液中に含まれるアルブミンなどのタンパクが大量に排泄されてしまうため、
血液の膠質浸透圧が低下して浮腫(むくみ)などの症状があらわれます。このように尿たんぱく陽性では、
まず腎疾患が疑われることが多いのですが、激しい運動をされているような方では陽性となることもあります。
また腎疾患以外でも尿路結石、膀胱炎や前立腺炎でも陽性となることがあります。
☆尿潜血
[血液を検体とするもの]
☆尿素窒素(BUN) 正常値 8〜20mg/dl
☆クレアチニン 正常値 男性で0.8〜1.2mg/dl、女性で0.5〜1.0mg/dl
【肝機能検査】
☆GOT − 正常値 5〜35単位/ml
☆GPT − 正常値 5〜25単位/ml
☆LDH − 正常値 250〜350単位/ml
☆γ‐GTP − 正常値 40単位以下
☆血清総蛋白(TP) − 6.5〜8.0g/dl
☆アルブミン(Alb) − 3.8〜5.1g/dl
☆A/G比 − 1.1〜2.0
【糖尿病の検査】
☆血糖値(BS) − 正常値 空腹時で70〜100mg/dl
☆糖化ヘモグロビン(HbA1) − 正常値 HbA1で5〜8%、HbA1cで4〜6%
【高脂血症の検査】
☆総コレステロール(TC) − 正常値 120〜220mg/dl
☆HDLコレステロール 正常値 40mg/dl以上
☆中性脂肪(トリグリセリド、TG) − 正常値
50〜140mg/dl
☆βリポ蛋白(β lipo)− 正常値 300〜500mg/dl
【その他の代謝系の検査】
☆尿酸(UA) − 正常値 男性で3.5〜6.5mg/dl、女性で3.0〜5.5mg/dl
【腫瘍マーカー】
腫瘍マーカーというのは、悪性腫瘍などによって特異的なタンパク質などが作られることから、
これらタンパクの推移を測定することによって、悪性腫瘍の存在をチェックすることができるという仕組みです。
まだ研究途上のものが多いのですが、今後は腫瘍の早期発見といった点で大きな役割が期待できます。
既に臨床的に応用されている腫瘍マーカーも多いのですが代表的なものを説明してみます。
☆α−フェトプロテイン (AFP)
α−フェトプロテインというのは、胎生期(まだ母体の中にいるとき)に産生される分子量約70000の糖タンパクで、
妊娠中に染色体異常などのスクリーニングの指標として用いるように提唱されている物質です。
出生後の産生は著しく減るのですが、肝癌や肝硬変などでこの数値が上昇することが報告され、
主に肝臓癌の腫瘍マーカーとして調べられるようになったものです。現時点ではあくまでも指標なので
α−フェトプロテインが上昇するようであれば、種々の画像検査などで精密検査が行なわれ、
腫瘍の存在の有無が確定するものです。逆にα−フェトプロテイン値が低くても腫瘍が存在することはあり得ます。
☆CA19−9
CA19−9は消化器系の腫瘍との因果関係が指摘されているものです。
血液型というと、ABO式による血液型がまず有名で、次にRh式がよく知られています。
Rh式というのは「D抗原」と呼ばれる物質の有無によって、RhプラスとかRhマイナスと言います。
これと同じような原理で幾つかの血液型があり、その1つに「ルイスA」と呼ばれるものがあり、
ルイスA抗原のある人がルイスAプラス、無い人がルイスBマイナスということです。
日本人では1割弱の人がルイスAマイナスとされています。
話がCA19−9と離れてしまいましたが、CA19−9という物質はルイスA抗原にシアル酸という物質が結合したものです。
膵臓・胆道系の腫瘍などではこの物質が異常に増えてくることが知られ腫瘍マーカーとして重視されています。
しかし、やはり絶対ということではありませんので、先程のルイスAマイナスの血液型の人では全く関係のない話になります。
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Q3:高額療養費について
高額療養費支給制度について説明します。
手術を受けたり、特殊な治療を受けたりすると保険があるからと言っても月々に支払う入院医療費は高額になります。
例えば心臓の手術を受け1ヶ月入院し医療費が100万円掛かったとしますと、3割負担なら30万円を支払うことになります。
勘違いする方がいまだにたくさんいるので、ここで再度書いておきます。
患者さんが窓口で支払う金額(この場合は30万円)が医療費の全てではありません。
この30万円は『医療費の一部にすぎない』のです。かと言って誰もが直ぐに出せる金額ではないかもしれません。
高額医療費には還付制度があり、これを高額療養費支給制度といいます。
以前は自己負担が63,600円を超えた額が還付されていましたが、現在は低所得者・一般・高額所得者で還付額が違っています。
1.高額療養費の区分自己負担限度額(月額)
医療を受けている人1人当たり, 同じ月・同じ医療機関に入院・通院した場合の一部負担金の自己負担限度額は以下の通りです。
上位所得者 121,800円 +(総医療費−609,000円)×1%
一般 63,600円 +(総医療費−318,000円)×1%
低所得者 定額35,400円
※1 低所得者とは,市町村民税非課税世帯をいいます。
※2 上位所得者とは,所得額が年額 670万円(月額56万円)を超える世帯をいいます。
※3 一般とは,低所得者,上位所得者以外の世帯をいいます。
2.同一世帯で同じ月に,低所得者は21,000円,一般・上位所得者は30,000円以上支払った人が2人以上の場合、
それらを合算し自己負担限度額を算定します。
3.同一世帯で, 高額療養費の支給を受けた回数が過去12カ月の間に4回以上になったとき,
自己負担限度額は,4回目からは低所得者は月額24,600円,
一般 37,200円、上位所得者は70,800円となります。
4.「血友病」, 「人工透析を必要とする慢性腎不全」及び「血液凝固因子製剤の投与に起因するHIV感染症」による
医療を受けている方は, 特定疾病療養受療証を医療機関に提示すれば、
所得に関係なく1カ月10,000円以内の負担となります。対象となる方は,
特定疾病療養受療証の交付を受けて下さい。
《請求》
医療保険の種類によって, 市町村役場(国民健康保険担当課)・社会保険事務所・各健康保険組合で行って下さい。
高額療養費支給申請書を提出することが必要です。
なお, 高額療養費の支給までの間, 一部負担金として支払う額の一定額を貸し付ける制度もありますので
各窓口でお問い合わせください。
ここで気を付けることは「請求しないと還付は受けられない」ということです。
自分の希望で個室に入った場合の差額ベット代や、入院時の食事代、高度先進医療の技術料などは、
高額療養費の支給対象になりません。その分は自己負担になります。
〔問い合わせ先〕
各社会保険事務所か健康保険組合
市 (区) 役所・町村役場の国民健康保険担当課
来年度、高額療養費の引き上げが検討されています。
標準報酬月額56万円以上の人は14万円程度に、56万円未満の人は、7万2千円程度に、
それぞれ引き上げる方針です。
市町村民税が非課税となっている低所得者の上限は、
現行の3万5400円のまま据え置く方針です。(平成13年9月12日現在)
☆☆更に詳しい内容はリンク集にもある「医療費と制度」をご覧下さい。
健康保険本人の医療費自己負担額を2割から3割に引き上げるにあたって、高額療養費も変わります。
この「医療費と制度」というホームページにはそれらについても詳しく解説されていますので宜しかったらどうぞ!
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Q4:エコノミークラス症候群について
【病態】 【症状】 【治療】 【予防法】
エコノミークラス症候群は「深部静脈血栓症」と言う。
【病態】
静脈内に血栓を生じ、その結果として炎症を起こした病態を静脈血栓症。
静脈内に炎症を起こし、その結果として血栓を生じた病態を血栓性静脈炎と呼ぶ。
しかし、両者を区別する意義はない。静脈は表在静脈と深在静脈の二種類に分類され、
前者で起こる場合を表在性血栓性静脈炎、後者で起こる場合を深部静脈血栓症と呼ぶ。
欧米ほど高頻度ではないが日本でも増加の傾向にある。男性よりも女性にやや多く、40代後半から50代に
起きやすいとされている。最近では長時間の飛行機搭乗によるエコノミークラス症候群、あるいは旅行者血栓症としても
注目を集めている。
静脈血栓症は血栓性静脈炎とも言われ、多くは二次的に静脈壁に炎症所見を伴う。
静脈血栓症は全身の表在性や深部のどの静脈にも起こりえるが下腿静脈、骨盤内深在静脈、
鎖骨下静脈、肝門脈および肝静脈、腎静脈血栓症などの深部静脈血栓症が臨床的に重要である。
静脈の血栓は脳梗塞や心筋梗塞の原因となる動脈におこる血栓(血流速度の速いところにできる血小板が中心の血栓)とは
違い血流のうっ滞、血管障害、血液凝固能の亢進の3つの因子が重要だが、殆どは血流のうっ滞が主因であると考えられている。
【症状】
@ 表在性血栓性静脈炎
熱感、疼痛、局所に有痛性の硬い索条を形成する。ほとんどは、特別な治療を行うことなく、数週間以内に自然治癒する。
A 深部静脈血栓症
患肢の浮腫性腫脹と緊満痛が突然出現する。数時間で極限に達する。
表在静脈も深部静脈経由で心臓に戻るので、静脈還流が阻害され、表在静脈の怒張が見られる。
閉塞が大腿静脈領域にあれば、股以下の静脈還流が阻害されるが、この際には二次性の動脈痙攣を伴い、
表在静脈の網目様の怒張に加えて、皮膚が蒼白となり、有痛性白股症と呼ばれる。さらに進行すると、患肢は壊死に陥る。
患肢を伸展した状態で、足関節を背屈させると、腓腹部に疼痛が生じる(Homans徴候)
患肢にマンシェットを巻いて加圧すると、低圧で腓腹部に疼痛が生じる(Lowenberg徴候)
静脈の血栓性閉塞による循環不全と血栓の飛遊による肺塞栓をおこし重篤になることもある。
静脈閉塞では動脈閉塞と異なり皮膚の表面の体温は低下せず、皮膚は紫色か赤色になり、
静脈内圧の上昇のために水分の移動がおこり、著明なむくみ(浮腫)が生じる。
下大静脈や鎖骨下静脈の閉塞では、側副血行路の発達がみられ、皮膚の静脈の怒張がある。
下大静脈の閉塞では両下肢の浮腫がある。
血栓後症候群として静脈内圧の上昇のため皮膚の表在静脈に瘤(静脈瘤)が出来たり、栄養不足のために色素が沈着したり、
皮膚炎や湿疹を起こしやすくなったり、治りにくい潰瘍が出来たりすることもありえるとされている。
【治療】
深部静脈血栓症治療のゴールは、急性期の浮腫、疼痛などの局所症状の軽減、
肺塞栓症の予防および静脈炎後遺症の予防の3点とされている。
急性期では浮腫や疼痛が軽減するまで安静を保ち、疼痛に対しては非ステロイド抗炎症薬を
投与する。また以下の抗凝固療法を基本とし、必要に応じて血栓溶解療法を追加する。
1)抗凝固療法
新たな血栓の生成を予防し、自己が持つ血栓溶解力に期待する治療の第1選択であり、
副作用として出血の危険性があるため、通常はどの程度の抗凝固力であるかを調べながら使用する。
急性期にはヘパリンやより出血の副作用が少ない低分子ヘパリン、慢性期にはワーファリンが
用いられる。
2)血栓溶解療法
発症早期であればウロキナーゼなどの血栓溶解薬の全身投与については、静脈弁の破壊を防ぎ
血栓症後の浮腫などを軽減する目的で急性期に用いることがあるが、高齢者では出血の危険が高くなることがある。
また最近では早期に特殊なカテーテルを直接血栓内に挿入し、血栓溶解剤をシャワー状に噴射するカテーテル線溶療法も施行されている。
3)血栓除去術
発症後数日以内なら部位によりカテーテル等にて摘出できることもある。
【予防法】
JALのサイトを参照して頂きたい。機内でのことを書いてあるが日常にも充分通用することである。。
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Q5:看護婦(師)と准看護婦(師)の違いについて
その1→保健婦助産婦看護婦法上の違い
第5条
この法律において「看護婦」とは厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじょく婦に対する療養上の世話又は
診療の補助をなすことを業とする女子をいう。
第6条
この法律において「准看護婦」とは都道府県知事の免許を受けて、医師、歯科医師又は看護婦の指示を受けて、
前条に規定することをなすことを業とする女子をいう。
その2→免許申請(資格そのもの)の違い(申請先による違い)
第7条
保健婦、助産婦又は看護婦になろうとする者は、保健婦国家試験、助産婦国家試験又は看護婦国家試験に合格し、
厚生労働大臣の免許を受けなければならない。
第8条
准看護婦になろうとする者は、准看護婦試験に合格し、都道府県知事の免許を受けなければならない。
その3→資格が有する“籍”がどこにあるか、という違い
第10条
厚生労働省に保健婦籍、助産婦籍及び看護婦籍を備え、保健婦免許、助産婦免許及び看護婦免許に関する事項を登録する。
第11条
都道府県に准看護婦籍を備え、准看護婦免許に関する事項を登録する。
その4→実質面での違い
業務内容も異なり、看護婦の方がより責任のある仕事を任される。また収入面でも格差がある。
これは当然のことである。
労働省統計要覧1998年版によれば給与は月々数万円程度は異なる。
准看護婦制度そのものが、高校に進む女子が3割程度しかいなかった時代に制定されたものであり、
現在では制度の停止の検討も進められている。
ここ数年で、閉鎖されてしまう准看護学校・准看護婦(士)養成機関が増加している。
養成課程(要するに各看護学校)の“受験資格”による違い
准看護婦養成所(ほとんどが医師会立)
中学校卒業者及び平成〇年3月卒業見込者、またはそれ以上の学歴を有する者。
看護大学・短大・専門学校
高卒以上。大検合格者も、高卒と同等の扱いになる。
参考資料
1.「看護婦へのルート」
2.毎日新聞社説を抜粋したもの『准看護婦制――時代に合った制度改革を!』
看護婦(士)を養成する制度が複雑過ぎる。国家資格による看護婦と都道府県資格での准看護婦という2つの資格が
混在しているためだ。質の高い看護へのニーズも高まる。時代に合った養成ー資格制度に転換できないか。
ようやく厚生省も腰を上げた。
10年以上の勤務経験を持つ准看護婦(士)に限って、働きながら看護婦になれるコースを設ける。
その報告書が厚生省の「准看護婦の移行教育に関する検討会」(黒川清座長)で、このほどまとめられた。
現行の制度下では、准看護婦が看護婦になるには仕事を辞めて看護婦養成所に入学し、2年間学んでから
国家試験を受けなくてはならない。家事責任を持つべテランの准看護婦には事実上、道が閉ざされていた。
新たに国の支援で、早ければ2002年度にスタートする移行教育は衛星放送を活用、働きながらでも学べる。
全国に24万人いる、就業経験10年以上の准看護婦の多くは、それを待ち望んでいた。が、准看護婦制度をどうするのか。
肝心の点があいまいにされたままだ。
准看護婦制度は1951年、当時の看護婦不足を解消するために、中学卒業だけで2年間養成所に通えば看護婦になれる
道を開いたのが始まりだった。
その後、看護婦養成体制は年々整備され、今、看護婦は約60万人、准看護婦は40万人が医療現場で働く。
看護婦数はかなり充足されてきた。 しかも医療は高度化、複雑化する一方だ。高校卒業後3年以上の教育を受けた看護婦に対し
准看護婦の受講時間はほぼ半分しかない。
厚生省調査によると、准看護婦のうち4割が看護婦の資格取得を希望する。
そのうち6割強が「准看護婦教育では内容的に不十分で、患者のニーズに応えられない」という。
看護婦の賃金より相当低いというだけでなく「このままではついていけない」という実感からだろう。 こうした時代の流れを受け
厚生省の准看護婦問題調査検討委員会は96年12月「21世紀の早い段階をめどに、看護婦養成制度の統合に務める」との
方針を打ち出した。
今回の「移行教育報告書」は、それを受けて、まとめられたものだが「日本医師会」(坪井栄孝会長)は「准看護婦の養成を停止すれば
看護婦不足が深刻な地域で医療が崩壊する」として、准看護婦の養成停止に強く反対する。
そのために養成制度の一本化は棚上げにされた。が、大きな問題が残された。
今回の「報告書」によると、移行教育は5年間だけの実施という。
准看護婦がこのまま養成され続ければ、5年間の時限を過ぎた場合、経験10年に達しても准看護婦はこの制度の恩恵に浴さない。
不公平、不合理な結果を招くことになる。
なにより、准看護婦制度をこのままの形で養成、存続させるのはもはや無理があろう。
平均入院日数をみると、日本は欧米に比べ倍以上長い。看護の質と量のアップが、在院日数を短くできるとの報告がある。
年間30兆円を超えた医療費の削減効果も期待できる。 どういう看護制度が急速に進む少死高齢社会の中で望ましいのか。
その立場から、できるだけ早く、新たな制度作りの論議を始めたい。
(毎日新聞 1999/05/08)
3.平成11年厚生白書より引用
保健・医療関係者 約204万人
医師数 239002
歯科医師数 84366
薬剤士数 175119
保健婦数 35566
助産婦数 24129
看護婦数 565918
准看護婦数 407631
針灸師等 約24万人
歯科衛生士数 56466
臨床検査技師数 44000
歯科技工士数 36652
保健所職員数 33974
診療放射線技師数 29220
4.保健婦助産婦看護婦法の最新条文
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Q6:1次〜3次救急について
1次救急は、比較的症状が軽く入院の必要もなく、外来の投薬・注射・処置だけで済む場合のこと。
多くは夜間・休日の時間外診療が中心となる。休日急患診療所、在宅当番医制及び救急告示病院により運営されている。
2次救急は、入院による観察を必要としたり、早期の手術等を必要としたり専門医の処置が必要な場合で、主に1次救急施設からの
転送受け入れ可能な救急施設で行われる。休日・夜間における病院群輪番制等により運営がなされている。
3次救急は、まさに生命の危機の状態、あるいは複数の科にわたる治療が必要な場合で、救急隊直送または
2次救急施設からの紹介が主体となる。救命救急センター及び熱傷センターでの広域的な運営がなされている。
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