平成14年9月のテーマ
〜私をやる気にさせたあの一言〜


あなた(ナースのおばちゃん)が私の名前を呼び続けてくれたお陰で死なないで済んだ。

これは今から15年ほど前に勤務していたある大学病院の内科病棟での出来事である。
この患者さんは確か40代の女性だった。
特発性門脈圧亢進症の疑いということで、精査・治療目的の入院だったと記憶している。
そして彼女はB型肝炎も患っていた。
検査が続いていたある日の夕刻、確か、夕食の配膳はまだだったと思うのだが、なんせその位の時間帯は
まだ日勤者が残っていたのが幸いしたと思われる。
夕食前に腹部のCT検査を終わらせた彼女は単独歩行で病室に戻った・・・。
その瞬間、ゆっくりと床に寝ころぶように倒れてしまったのだ。そう、疾患特有の大量吐血とともに。
担当医ではないが、その辺にいたドクター達をかき集めて緊急処置が行われた。

それらの処置の合間をぬって、2〜3分間様子を見るという時間があったのだが、あとから彼女自身に聞いた話だと、
この時にとてつもない睡魔が襲ってきたそうだ。その時、ちょうどBED-SIDEで処置の介助や片付けをしていた私が
彼女の名前を呼びながら何かをやっていたらしく(詳しい記憶が私にはない)、
何回も何回も「〇〇さん、もう少しで終わります」とか「〇〇さん、吐きそうな感じはありませんか?」とか
色々と話しかけていたらしい。彼女はその1つ1つに頭の中で答えることによって眠気を回避したというのだ。
あとで言うには「あの時、あのまま寝ていたら私は意識が薄れて死んでいたと思う」と。
従って、上記のような言葉を頂いたのだ。
当時の私にとっては、大して意識していた訳ではなかったので、とても嬉しく感じたことを記憶している。
なんたって若い頃だから・・・。




あなた(ナースのおばちゃんのこと)と〇〇さんに助けて頂いた。

これは「病院で出会った人達」というコンテンツの中の「ケイコさんという人」に、
2002年元旦に追記した部分にも書いてある。
ケイコさんは平成6年頃に私が当時勤務していた病院の外科病棟に入院してきた患者さんの1人だった。
学生さんがついており、またその指導係だった私は他のナース達よりもケイコさんと関わる時間が増えたのは
ごく自然な成り行きだった。
病状経過の中でケイコさんはMRSAという感染症になってしまい、一時的に隔離されることになった。他のナース達は
感染を広めない為にも、日勤の時間帯は私と学生さんが処置等を担当することになったのも自然な成り行きだった。

一般の人には分かりにくいかもしれないが、隔離というのは別室に入り他の患者との接触を避けることによって、
感染源を持ち出さないというだけでなく、易感染性がある患者さん本人をもMRSA以外の細菌感染から保護するという
大切な役割があるのだ。投薬も点滴も処置も汚物処理も、とにかく日勤帯は全ての看護業務は私と学生さんがやっていた。

ケイコさんの話では何かの処置をしている最中に、私がケイコさんに何か言ったらしく、
その一言が彼女にとってはとても嬉しかったとのこと。それから約8年後に私に頂いた言葉が上記のものになっていた。
前述の言葉に続けてサラッと会話の流れの中で「せっかく助けてもらったから、今度は人のために生きることにしたの。
それでおじいちゃん(たぶんご主人のお父様)の介護をしているのよ」と言っていた。
穏やかだが、どこかにこの人の強さを感じさせる一言だった。これもまた「よーし、やるぞ」という気にさせてくれた一言である。





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