小児科医療の現状と問題点


1.このレポートを書くことになったキッカケ
2.小児科医療の現状と問題点
3.小児科医療の採算性
4.平成14年4月の診療報酬改定で何が変わったのか
5.ある市民病院の取り組み
6.日赤病院の取り組み
7.小児科関連の報道







1.このレポートを書くことになったキッカケ

当サイトの常連さんが書き込んでくれ記事が元になっていることは確かである。
〜〜〜〜〜
だいぶ前の新聞のコラムで見かけた話です。ちょっと記憶があいまいなんで、かなり間違っていると思いますが
概ねこういう内容でした。

65歳以上の人数と16歳以下の人数は大体同じなんだそうですが、(このへんの年齢は記憶が定かではありません)
国の医療費負担率は65歳以上にかかるほうが16歳以下のそれの数倍にのぼるとのこと。

年寄りのほうが病気にかかりやすいので当然と言えば当然なのですが、あまりにも差がありすぎるので、
ある小児科の先生だか誰だかがとある政治家に「もっと子供にかける医療費も増やしてくれ」と頼んだそうです。

そしたらその政治家が一言。「子供は票にならない。」

どうですかな?
これが政治家の本音でしょうね。こんな人物が政治をやっている以上、医療というのは良くなりませんな。
医療に限らず日本自体がいつまで経っても良くならんでしょう。

たまにポロリと本音を漏らし、それが大きく問題にされるや最初は「そんなことは言った覚えはない」と逃げ、
証拠を突きつけられて言い逃れができなくなると今度は「発言の真意が取り違えられた」とか言い逃れをしますな。
〜〜〜〜〜
この書き込みに対してのレスポンスを考えているうちに「老人医療費の影に隠れたような形になってはいるけど、
小児科は実はもっと悲惨な現状があるのではないか?」というのが分かり始めていた。

まずは子どもの人数と医療費の実際を出来るだけ詳しく可能な範囲で調べることを思いついた。
ちょうど定期購読している雑誌に最新データーがあったので、それらを元に以下のようなレスを書いた。
〜〜〜〜〜(掲示板レスの転載開始)
統計上でいう「子ども」とは15才未満のことだそうです。未満という言葉なので「15才は含まれない」ということですね。
財団法人・厚生統計協会 http://www.hws-kyokai.or.jp/index.html が発行している月刊誌「厚生の指標6月号」に書いてあります。

以下のデーターはその「厚生の指標6月号」から抜粋したものですが、
人口のデーターは今年・平成14年4月1日現在のものですから最新ということですね。

総人口→12731万人(約1億2700万人)
そのうち、0〜14才の人口→1817万人(全体の14.3%)
〃 〃 、65才以上の人口→人数の記載はないが全体の18.3%
 
 これによって〇〇さんのの記憶
>65歳以上の人数と16歳以下の人数は大体同じなんだそうです
→は、本当に正しかったことが分かりました。
 
次に医療費に関してですが・・・。
財団法人・社会経済生産性本部の中の「情報システム部」というサイトhttp://www.jpc-sed.or.jp/hii/index.html のグラフが
視覚に訴えており、最も分かりやすいと思います。こちらのデーターは最新の物ではないと思いますが、大して変わりはないでしょう。

生涯医療費のグラフ http://www.jpc-sed.or.jp/hii/jyohou/siyouritu.htm を見たら一目瞭然なのですが、
1人の人間が一生に使うと予想される医療費総額の6割近くが60才を越えてから使っているという結果ですね。
また年齢別医療費のグラフ http://www.jpc-sed.or.jp/hii/jyohou/nenreibetu.htm ではもっと顕著に出ていると思います。
すなわち、〇〇さんが書いている「65才以上の医療費が15才未満の数倍にのぼる」という記事の裏付けが出来ました。
ざっとこの表を見ただけでも7〜8倍はあるんじゃないかと感じます。
 
「子どもは票にならない」ですか・・・。
一体、どのスイッチを押したらそういう言葉が出てくるんですかね!?まるで「選挙に来ないやつは寝てればいい」と言った
某首相のようですぞ。まあ、マジに考えるとムカツクので適当にしておきますが、私個人の考えでは老人よりも生産性の
ある子ども達に医療費をかけるべきとは思いますよ。

だけど、それこそ1人で言っていたのでは話にならないし、結局は「こんな人物が政治をやっている以上、
医療というのは良くなりませんな。医療に限らず日本自体がいつまで経っても良くならんでしょう」って事なんでしょうな〜。
別に私個人の生活に大きな支障はないので構わないんですけどね。

今、老人医療費の裏で隠れていて表面化はしてませんが、小児科医療も悲惨らしいですよ。
まずは小児科医が不足していることが第1の問題、そして詳しい裏付けはしてないのですが、小児を救急で診察しても
大した利益にならないので閉鎖・転向する小児科医が多いという事があるそうです。さすがに飢え死にする子どもはないにしても、
社会経験が未熟で不勉強な親が増えていることとも重なって、小児科医も瀕死の重傷状態(?)だそうですぜ。
〜〜〜〜〜(掲示板レスの転載終了)

ここで終わるのかと思っていたら、別の常連さんが次々に書き込んでくれたこともあって、
これは「掲示板に埋もれさせるのは勿体ない!」と思うようになった。そこでドクター友達を始めとして“業界ネットワーク”と
インターネットを酷使して色々と情報収集したり、あるいは情報の裏付けをした結果で今回のレポート公開となった。

                                                                       このページのトップへ戻る

2.小児科医療の現状と問題点

ここ10年間、小児科を持つ病院は減り続け、小児科医の数も年々減少し、医師不足に陥る事態を迎えている。
その理由のひとつとして、現在の診療報酬体系の問題を指摘する声がある。小児医療の分野では、子どもの身体に負担を与える検査や
投薬はなるべく行わないことが原則。
検査や薬が多いほど報酬が増える現在の診療報酬体系では、小児科は病院にとって収入の少ない科となる。
また、小児科では注射や点滴、レントゲン検査をする場合に暴れる子どもを抑える人手が必要とされ、
他の科に比べて何倍もの手間がかかる。しかし、注射も検査も大人の患者と報酬は同じ。
更に子どもの薬は体重によって処方する量が微妙に変わるため、個別に調合する必要がある。
その量は1歳児で大人の1/4ほど。そのため、手間はかかるのに診療報酬は少ない。


365日小児科医が常駐して24時間体制で診療する病院が少ないと、大病院に一極集中型することになってしまい、
多い日では1日100人を超す患者が訪れて、夜中の0時まで患者が絶えない日もあるそうだ。
救急で子どもが運ばれると、軽症の患者は何時間も待たされる。

報酬が少なく人員を要し、尚かつ採算がとれず病院から減り続ける小児科の現状と、現在の診療報酬体系の問題について、
ある小児科医は「小児科領域の診察をしていくとだんだん病院の経営が苦しくなるという状態を脱していく方向に
医療制度を改革していく必要がある。本当に質の高い医療を要求される子どもたちに、全てを与えられない時間的な制約がある。
このままだと非常にまずい方向に進んでいく」と考えている。これは小児科医療の現場にいる勤務医のコメントであるが、
小児科医師の不足だけでなく、背後には診療報酬体系にも欠陥があるということが分かってきた。

ここで2人の現役ドクターの書き込みを引用させて頂くことにする。掲示板上で事前に許可は得てあることを、ここに明記しておく。

《名前:内科医  投稿日:6/16(日)21:27》
そうだね、小児科はあまりにも割があわない。最近、診療報酬は成人並になったようだが。
まあ、診療報酬が半額でしかも医療事故も怖いとくれば医学生は小児科を避けるのは必然的。
子供はちょっとしたミスが死につながるし、家族もすぐ訴訟をおこす。今、1番減少の一途をたどっているのが、産科医。
これはね、マジで訴訟が怖いから。けっこう児も母体も亡くなることはある。
しかも、健康な状態でめでたい時に死亡したりすれば、家族はかなりショック。怒りは全部こちらに来る。

だから今、人気なのは眼科とか皮膚科あたり。だって楽だしね。緊急で呼ばれることも少ないし、きつい仕事も少ない。
それでもって開業もできる。今の若い子はローリスク、ハイリターンを選ぶようだ。外科とかきつい仕事は避ける傾向にある。

あるアメリカの医師が産科医にこういったそうだ。「訴えられたくなっから医師をやめることだ」ってね。
ごもっとも。

看護師にもそんな危機が近い将来くるんじゃないかな。それだけの責任はもっていいと思うよ。
それなりの地位を得るにはそれなりの責任が必要なのさ。

《名前:半熟  投稿日:6/16(日)23:57》
確かに小児医療は瀕死の状態です。特に公立病院の小児科が。ずいぶん前から不採算部門の切り捨てというものが
公立病院でも取り沙汰されるようになっていますが、小児科のことなんですよね。

小児科は点数が少ない。一応大人と同じ出来高払いなのですが、体重が少ないので薬の「量」は少ないんですよね。
だから単価も安くなります。それに、小児科の場合あまりがんがん薬をださない方が良心的。
だって、予想できない副作用とか、絶対あるもの。それが大人だったらいいけど(失言)子供だったら影響も大きいから。
侵襲的な検査だって出来ない。例えばレントゲン、CTだって少年期の細胞が盛んな頃には
あまりあてない方がいいと、最近では言われています。
基本的には同じ金の払いかたをしているかぎり儲かるわけはない。
おまけに難しい。

僕は大人内科なので思うけど、子供の診療はむずかしい。全分野の病気をみなければいけないし、独特な病気がある。
というわけで、小児科のなり手が少ない。おまけに公立病院でも小児科を廃止するところが出てきた。
そして、開業している先生は夜間の診療はしたがらない。
というわけで、夜空いている小児科に、患者がうわっと集まる
わけだ。そういう公立病院に勤務している小児科の先生は、
基本的に24時間営業。おまけに、中規模な病院だったら、独り医長だったりする。てことは、ずーっと24時間営業。
いま、公立病院の小児科Drは本当に非人道的な環境で働いています。過労死寸前。それはやる気なくすわ。


僕の勤めているところでも、昼間は開業医の先生のところにかかっているけど、夜熱が出たりしたらうちにきたりするひと多いです。
勿論、夜中だからカルテの照会も出来ないし、どんな病気があるのかもよくわからない。そして、その夜さえ乗り切れば、
通常の外来は開業医の先生のところへ帰って行く。4月の改訂でたしかに小児診療アップしたけど、そんなもの焼け石に水。

確かラスベガスのある州では医師の保険金の掛け金が20万を越えたので、医師が引き上げてしまい、
無医村になりかけているそうな…。それも極端、それもアメリカ。

《名前:半熟  投稿日:6/18(火)13:16》
悲惨な現状ねぇ…

救急のDrは24時間〜48時間勤務とはいえ、終わりがある。2日働いてまる1日休みとかね。このときには絶対に呼ばれない。
だけど1人医長の小児科は…

朝9時から外来、5時まで診療。それからも夜、ときどき(病院によってはしばしば)呼ばれる。夜中でも、朝方でも。
当然、その呼び出しがあるからといって、昼間の仕事がなくなるわけじゃなし。土曜日も日曜日も呼ばれる可能性がある。

そんな状態で、夜、誰かと食事に行く(家族、友達問わず)。土曜日・日曜日ちょっと町へ買い物へ行く。ちょっと遠方へ旅行へ行く。
おちついて行けますかいな。責任感が強いDrほどどこにもいけなくなってしまう。お酒が好きなDrも、深酒はできない。
こんな状態3ヶ月続いたら、だれだってノイローゼになっちまう。

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現場の意見としてはこういう感じになっている。
読者の方で、お子さんを持つ親としての意見なり体験談なりをお持ちの方がいらしたら是非とも御一報頂けないだろうか…?
メールでも掲示板でも構わないので、医療を提供する側からの意見と現状だけでなく利用する方の意見も聞いてみたいと思っている。

                                                                   このページのトップへ戻る

3.小児科医療の採算性

この採算性という点については、埼玉県久喜市の土屋小児病院長・土屋喬義氏が病院のホームページ上で記載している文章を
参照されたい。今回、この記事を書くことになったキッカケ等を書いてメールで許可を求めた所、快く文章利用の許可を頂いたので、
この場を借りて土屋先生に御礼を申し上げたい。
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小児救急医療の採算性(救急、時間外診療を中心として)
埼玉県小児科医会のアンケートに答えて〜平成11年10月26日〜

土屋小児病院 土屋喬義

はじめに
埼玉県では病院の小児科を取り巻く状況が激変しつつあります。
私の目には市中病院の小児科医師がどんどん減少して行くように見えます。
私の知る限り母校の獨協医科大学の小児科より市中病院に派遣以外で就職した人を知りません。全て開業です。
今獨協医科大学の小児科には11件の常勤医派遣要請が来ています。つまり希望すれば病院への就職口はいくらでもあるのです。

この事は大学病院を退職した小児科医にとってもう病院の小児科に魅力が無いと言う事です。
何故でしょうか?
それは病院に勤務する小児科医の待遇があまりにも悪すぎると言う事にあります。開業したほうがはるかに収入が良く、
夜間診療からも逃れる事が出来て労働条件が良くなる事が明らかです。なかでも夜間の小児科の救急については話題となっています。

夜間の診療はいったい誰がやるのでしょうか?
看護婦、看護補助者、事務職などのパラメディカルは週労40時間がほぼ守られています。
しかし医師はどうでしょうか。 先のパラメディカルは夜勤扱いとなり、当然8時間働けば16時間の休みが与えられます。
(3交代の場合、 2交代では夜勤前後に16時間の休息)。
医師は夜間睡眠が取れるとう前提で当直となり、そのため当直明けも平常通り勤務をしなくてはなりません。
小児の夜間救急、診療希望者(大部分は救急ではなくて診療希望者)はとても多く、少し規模の大きな小児科の夜間外来では
医師は殆ど眠れません。


小児科医の賃金
殆どの場合市中病院では当直を自分の病院の小児科医だけでまかないきれません。
小児科医が極端に不足しているため、市中病院で夜間診療を行うとすれば労働基準法が守られないのは当たり前の事となっております。
医師も基本の労働時間は週労40時間ですが、医師は特別職として労働基準法の特例扱いとなっています。
小児科の夜間診療は小児科医の善意と法定外の過重な労働で成り立っていると言っても過言ではありません。
もし労働基準法の労働時間が守られるのでしたら昼間の外来を1人で、夜間も常に1人の小児科医のいる小さな小児科でも
小児科医を3人雇う必要があり、しかもその小児科医は3日に1回、月に10日も当直をしなければなりません。
このため当直は大学病院などの比較的時間のある(しかし給与の低い)医師にお願いする事になります。
その当直料は小児科では一晩(6時頃から朝7時頃までの13時間)で経験にあまり関係なく、どんなベテランがやっても
交通費込みで3万円から5万円が大体の相場です。この額は高いでしょうかそれとも高いでしょうか?

ちなみに看護婦にかかる夜勤の労賃を当病院の例を取ると年収400万(25歳正看護婦)で
時給に換算すると年間就労時間は2000時間ですので400万円÷2000時間=2000円/時間となります。
16時間働きますので2000x16=36000円それに夜間手当が10000円です。
準夜深夜の勤務を行うと一晩で合計42000円。実際には福利厚生費、退職金の積み立ては含まれませんので更に高額となります。
最低修士である医師が所定外労働として働く訳ですから一晩の医師の当直料(実際には小児科の場合夜勤代)を6−8万円にしても
決して高くないと考えております。

小児科医の減少
小児科医の地位の低さ、待遇の悪さ、そして少子化による見通しの悪さから医学部での小児科希望者は減少し続けています。
このため各大学の小児科医の数は増えず、労働条件が過酷になりそれが再び希望者の減少に繋がると言う悪循環に陥っています。
大学病院で酷使されて疲れ果てた勤務医がそう簡単に賃金の安い市中病院の当直に助っ人として駆けつけるでしょうか?

夜間診療の採算性
これだけ低賃金で医師を使っている訳ですから小児科の病院は儲かって仕方が無いのではないでしょう。
医師は寝る閑もなく働くのですから。しかし夜間病院を運営するためには経費がかかるのです。
土屋小児病院を例に挙げこの様な外来を運営するためにはどれほどの経費がかかるか計算しました。

常時夜勤の看護婦を2人おく必要があります(いつも鳴りっぱなしの電話に対する応答も業務に含まれるため、
殆ど他の業務を兼務する事が出来ない)。一晩で16時間x2人=36時間、週7日で36時間x7日=252時間、
就労40時間ですので252/40=6.3人の看護婦が夜間の外来に従事することになります。

すると経費は卒後2年の若い看護婦が年収400万円x6.3人=2520万円、
医師が1回5万円x365日=1825万円、合計4345万円の人件費がかかります。
休日は外来だけで3人の看護婦が出勤し 医師の手当は6万とすると1年は52週で また祭日が12日で計64日あります。
これに対する経費は同様に計算すると・・・。
看護婦は時給1923円x8時間x3人x64日=295万円、
医師が60000円x64日=384万円
また休日の外来数は非常に多いので事務職の勤務が必要でこれが1日当たり2.5人必要です。
時給1700円x8x2.5人x64日=218万円。
年間の夜間及び休、祝祭日の人件費合計5242万円の人件費がかかります。

これに対し当病院の夜間外来数は年間約2296人、休、祝祭日の外来数は約2103人でした。
患者1人当たりの人件費は11916円となります。
これに対し、診察による材料費を除いた収益は1人当たり平均5000円程度と考えられます。
採算ベースで行くと年間30425万円近い赤字が出ている事となります。

この様な悪い環境でしかも低賃金で働く事を希望する医師は非常に少ないのが現状です。
当直の医師は個人的関係で無理にお願いしてきて頂く例が大部分です。
小児科を希望しさらに当直を進んで希望する医師を増やす(捜す)ためには、更に当直料の増額をする必要があります。
(内科医師の当直料の相場は6−8万円)
このための予算はさたに1人当たり3−4万円の積増しが必要と思います。
4万円x(365日+64日)+4万円x56日(休日分)=1940万円。

当院において夜間及び休、祝祭日の救急受付及び時間外診療を行い医師確保のためパートの給与を上げた場合に
必要とされる人件費は6875万円、健康保険による収益は2000万円と推定されるので不足額は6968−2000=4968万円となります。

終わりに
久喜地区では小児の夜間救急、診療を行う施設はもう1つ高木病院があります。
こちらは夜間診療数概数で4000人、休日診療数2000人との事で状況は同じと考えられます。

本年の日本小児科学会、救急医療のセッションにおいても小児の夜間診療、救急医療の実態の発表をいくつか見る事ができました。
発表によると各医療機関の年間時間外診療の患者数は、大阪救急診療所で2729人、日本医科大学3586人、
国家公務員共済組合連合会呉共済病院で4075人でした。日本医科大学では都下の大学病院小児科の時間外受診数は3000人から
8000人となっております。

当地区は小児科の夜間受付可能な施設が2施設もあり、しかも各施設の患者の受付実績は地域の小児科救急センター級であります。
これは全国でも類まれな地域であります。しかし何れの施設も時間外の診療は赤字でありその赤字は日勤帯の黒字で補填しているのが
現状であり、その補填源の医療収入も少子化、医療費抑制のため減少しつつあります。
この現状を踏まえ各病院は経営努力を続けておりますが先行きは暗澹たるものと言わざる得ません。

今後時間外診療を永続的に続けるために公的補助は絶対必要なものであります。
補助は特定施設に与えるものではなく、小児科の夜間診療を希望する施設の参入を増やすために出来高(1人当たり1回1万5千円、
予算は埼玉県東部医療圏で1億5千万円程度)で行うことも現実的と考えます。

小児科医の減少を防ぎ小児医療を守るためには、小児科医を労働基準法に従い雇用する必要があり、
それに従って医療費の再計算をすべきです。小児科の診療報酬体系そして小児科医の賃金体系では
小児医療を維持するのには無理が生じています。
小児科を希望する医師が減少し、小児科が成り立たなくなって来ており早急に対策を立てる必要があります。
医師会及び県の保険担当者そして関係各位の働きを期待します。
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土屋小児病院ホームページ
http://www.tsuchiya.or.jp/~hospital/
今回のレポート文章は「院長室」というコンテンツから引用させて頂いた。

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4.平成14年4月の診療報酬改定で何が変わったのか

初のマイナス改定、つまり「値下げ」が昨年(2001年)末の政治の焦点になったことは記憶に新しいと思うが、
1つ1つの改定内容も医療のあり方を大きく左右することになる。何がどう変わるのか。主なポイントを点検してみた。

《入院費用 「社会的入院」は自腹で》
病状が安定し、入院医療の必要性が低いとみなされた患者は、入院6カ月(180日)を超えた日から費用負担が大幅に増える。
この日を境に、「入院基本料」の15%が保険のきかない自費払いになるためだ。
「15%は病室料に相当する部分」(厚労省)。社会的入院を選ぶなら部屋代は自腹を切るべし、と言っていることになる。

入院基本料は、病棟の性格や看護配置によって幅があるが、おおむね1日1万円前後。15%は1カ月で4万〜5万円になる。
この金額を割り引くか、逆に割増料金を取るかは医療機関の裁量次第だ。どのような患者が対象になるかは、まだ詳しく決まっていない。
厚労省は「難病患者、重い副作用のある抗がん剤を使っている患者、人工呼吸器を付けている患者」を除外例に挙げ、
夏ごろまでに細部を決める。

4月1日以前に入院していた患者には、経過措置が設けられる。自費払いとなる金額も当初は低く設定され、
02年度は入院基本料の5%で、03年度に10%、04年度から15%になる。

長期入院ベッド(療養病床)の入院基本料はこれまで、当初1カ月以内は割高で、6カ月を超えると逆に減額となり、
長期入院は病院の損になる仕組みだったがこれをやめる。
入院が6カ月を超えるかどうかを転院しても通算してカウントする新たな仕組みとあわせ「たらい回し」の防止策とする。

《大学病院の治療費は病院ごとに差》
大学病院の本院や国立がんセンターなど「特定機能病院」と呼ばれる高度医療機関は、1年後をめどに敷居がぐんと高くなる。
様々な名目の保険外負担を取ってもよいことになり、患者は特別料金を請求されるケースが増えそうだ。

ひとつは外来再診時。金額も、請求するかどうかも病院の裁量だが再診料に上乗せする特別料金を、複数の診療科に通う場合に
その都度求められるケースも出てくる。予約料も徴収条件が緩和されるので、別料金を払うのが普通になるかもしれない。

入院の場合は、もっと大きな変化がある。病院ごとに、いわば「病気の値段」を決める「包括払い」方式が原則となる。
薬や検査、処置などの料金を積み上げて医療費を計算している今の出来高払いより、患者にも「この病気だと1日いくらかかる」
というように料金が分かりやすくなる。病院を比べることも可能だ。
半面、入院患者には保険外の特別料金が課されることになる見通しで、差額ベッドの数も全病床の7割までに上限が引き上げられる。
患者負担は確実に増えそうだ。
特定機能病院は1年後をめどに「包括払い」を導入することとされ、その時期にあわせて保険外負担の徴収も実施する。

《小児医療 コスト高の現状に配慮》
引き下げ項目が並ぶ中で、小児の入院・救急医療はプラス改定となった。患者の負担は重くなるが、小児医療は診療コストがかさむため
総合病院などでは小児科の縮小・閉鎖や医師不足が深刻化している。そうした現状が配慮された。

入院診療費には、態勢の充実ぶりが報酬に加味される。たとえば、小児病棟に常勤医師が5人、看護婦が3床に2人の割でいれば、
1患者1日につき一律に3万円を請求できる。救急では、輪番制のように地域の小児科医が連携して夜間・休日診療体制をつくり、
6歳未満の子を診察した場合に3000円を加算する仕組みも新設した。

「ここ10年の病院小児科医療の転落に、歯止めはかかった感じがする」と、厚労省に診療報酬の見直しを訴え続けてきた
「全国自治体病院小児科勤務医の会」で世話人をつとめる武弘道・前鹿児島市立病院長の評価だ。
ただ、同会が求めてきた改定には1500億円の予算が必要だったのに対し、今回の改定による増額は約250億円どまり。
「診療報酬全体がマイナス改定の中ではやむを得ないかもしれないが、病院小児科の不採算性が改善されるレベルにはまだ遠い」という。

<改定の主な柱>

●入院分野の見直し
1.6カ月を超えた入院患者のうち、医療の必要性が薄い「社会的入院」の場合に、入院基本料の給付を減らして患者の保険外負担とする。
2.入院基本料などの算定要件になる病院の平均在院日数を短縮し、長期入院型の病院との一層の差別化をはかる。

●外来分野の見直し
1.診療所と200床未満の病院を1カ月に4回以上受診する場合、再診料を半分に減額する。
2.200床以上の病院を1カ月に2回以上受診する場合、再診料を半分に減額する。
3.薬の投薬期間を原則2週間分までとしてきた制限を廃止する。

●小児医療の充実
1.看護体制に応じ入院医療管理料を拡充、手厚い看護配置を評価する。
2.地域連携小児夜間・休日診療料を新設し、普及をはかる。

●定額払い制の拡大
1.大学病院などで病気ごとの1日当たり定額制を導入する(2003年4月)。

●保険外負担の拡大
1.200床以上の病院で再診料に別料金を上乗せできるようにする。
2.予約料をとるための要件を緩和する。
3.保険適用になる前の医薬品は、薬の実費を払えば使えるようにする。

●薬剤使用の適正化
1.非ブランド薬品の使用促進のため、医師が商品名を避けて処方した場合に高めの報酬を払う。
2.調剤薬局で非ブランド薬品の情報提供料を新設。

●医療の質の向上
1.年間症例数や、医師の経験年数が豊富な場合に高い報酬を払う手術を拡大する。
2.早期治療型の病院として高い報酬をとる所の要件に、カルテ管理体制や退院指導計画の作成を加える。
3.低ランクの救命救急センターの入院料を減額。
4.床ずれ対策が不十分な医療機関は入院基本料を減額する。
5.医療安全対策が未整備な医療機関は入院基本料を減額する。

●予防的医療の評価
1.生活習慣病の指導管理料を新設。
2.リハビリテーションの評価。
3.歯周病対策の評価。

<キーワード・再診料負担は減少>
■むだな通院を減らす
15歳未満の子供や人工透析患者などを除き、同じ月内に何度も通院すると、途中から再診料が安くなる。
この結果、患者の支払いは減る。 診療所(現行740円)は、その月の1回目が810円に上がるが、2、3回目は据え置き、
4回目以降は370円に。200床未満の病院(現行590円)も、それぞれ650円、590円、300円となる。

200床以上の病院(現行700円)では、1回目が770円に上がる代わり、2回目以降は350円だ。
ただし、これは医師がその病院に通院することを認めた場合に限られる。
患者を過剰に通院させても、収入面で得にならない。医療機関にそう思わせて、無駄な通院を減らそうという狙いだが、
患者にとっては逆に通いやすくなる。


また、薬は原則として2週間分までしかもらえなかったが、4月から原則無制限になる。
症状の安定した慢性病患者にとっては、薬をもらうためだけに通院する必要がなくなる。

<キーワード・予防的な診療も評価>
■生活習慣の指導
「病気が悪くならないようにする予防的なものも評価できないか」――坂口厚労相の指示を受け、改定案では
予防的な診療を評価する項目もいくつか盛り込まれた。 1つが、新設された「生活習慣病指導管理料」。高血圧症、高脂血症、
糖尿病などの生活習慣病を抱える患者に対して、治療計画を立てて生活習慣の指導などをした医療機関に、月1回に限り
1万500円から1万6500円を医療保険から支払う仕組みだ。
また、寝たきり予防などの効果を上げるため、早期や回復期のリハビリテーションの診療報酬も手厚く配分した。

歯科の分野でも、歯周病対策などの予防的なケアを評価。初診から3カ月以上経過して病状が安定した後も、
メンテナンス計画を作って患者に文書を渡した場合には「継続治療診断料」を新たに設けるなど、症状の悪化を防ぐための
生活指導や治療を評価する仕組みを採り入れた。

<キーワード・「医療の質」にも焦点>
■診療報酬減額
医療の質が一定の基準を満たしていない場合に、診療報酬を減額する仕組みが設けられた。
医療機関に“ペナルティー”を科すことで、質向上を促そうとの狙いからだ。
その1つが、手術料に対するもの。110種類の手術について、年間症例数と医師の経験が基準に達していない病院は、
手術料が3割カットされる。手術によっては、年に50件以上の実績があり、10年以上の経験をもつ専門医がいる病院でないと、
7割の手術料しか請求できなくなる。重度の患者を24時間態勢で受け入れている救急救命センターについても、
厚労省の基準で「B」「C」ランクに評価された施設は、患者1人の入院料が1日5千円削られる。
ランクは医療者の勤務体制や空きベッド数などで評価されており、99年度の調査では全国142施設のうち57施設が「B」「C」だった。

安全対策のガイドラインや、医療事故の報告制度を院内につくっていない病院も、入院基本料が1日あたり100円引かれる。
床ずれ対策が十分でない病院も入院基本料が1日50円減らされる。

<キーワード・病院の機能分化促進>
■治療型と療養型
病気を治療して患者の早期退院を目指す病院と、療養環境に配慮した長期入院型の病院。
この区別を一層明確にするよう、報酬に誘導策がちりばめられている。
病院の入院基本料は普通、患者の入院日数の平均値が短いほど高く設定されているが、この日数要件を一層短くする。
例えば、一番高い基本料をとるための要件は、従来の「25日以内」から「21日以内」になり、早期に高度な医療を施す病院への
急性期加算の条件は「20日以内」を「17日以内」に短縮する。

一方、長期入院型の病院では、看護職の最低配置基準を引き上げ、これまでの「患者6人に1人」を廃止して「5人に1人」を標準とする。
介護保険の病院より手厚い配置にして、医療と介護の役割分担も進める。
機能分化がうまく進めば、患者も病状にあった病院が選びやすくなるはずだ。

<キーワード・薬の選択肢に広がり>
■後発医薬品
高い薬が使われがちな処方を見直し、値段の安い後発の医薬品の使用を促すため、医師が成分を示す一般名で処方した場合、
商品名での処方より処方せん料を高めにする。

後発の医薬品とは、新薬が特許で保護される期間を過ぎてから売り出される薬をいい、厚労省はその約6割を「先発品と同等の品質」
としている。調剤薬局が患者に後発品の情報を提供し、調剤した場合は、新たに情報提供料が加えられる。

厚労省は4月から、後発品の値段をインターネットのホームページで開示する。
少しでも薬代を減らしたいと考えている人は、自ら「同じ効き目で、もっと安い薬はありませんか」と尋ねてみることが大切だ。
このほか、薬事上の承認は受けたものの、まだ保険適用になっていない新薬も、一定の条件のもとで使いやすくなる。
こうした新薬を使うと、これまでは診療費も含めて自費で払わなければならなかったが、新薬代だけを負担すればよくなる。

2002年2月・朝日新聞より

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5.ある市民病院の取り組み

インターネットの性質上、特定の施設名や個人名の掲載は好ましくないのだが、この場合はとても有益な取り組みであるし、
特に誹謗や中傷が目的でもないのであえて実名で掲載させて頂くことにした。

JapanMedicineニュース 2002年7月22日より引用
藤沢市民病院、24時間小児救急を実現〜国内初の勤務シフト導入〜


藤沢市民病院(神奈川県藤沢市、長谷川英之院長)は、小児科医が一定期間ごとの交代制で夜勤にあたる「変則勤務シフト」を導入。
24時間小児救急診療を5月からスタートさせている。
こうした勤務シフトは、米国の救急病院では「指導医の勤務体制」として定着しているが、日本では初めてという。

一般の当直とは違い、医師の勤務時間がオーバーしないよう枠を設けることから、
働きづめの小児科救急医の勤務状況を改善するだけでなく、救急医療の質向上にも寄与すると期待される。
小児科医不足や不採算を理由に小児科の縮小や閉鎖が相次いでいるなかで、
あえて24時間小児救急を開始した藤沢市の取り組みは注目を集めている。


藤沢市の人口は38万人で、うち小児は5万4000人。地区医師会が運営する休日・夜間急病診療所が2か所設置され、
比較的救急システムが整備された地域。しかし、平日の救急診療は午後11時まで。
それ以降の時間帯では医療空白が生じ、市民からは24時間救急体制が求められていた。
「安心して子どもを産み、育てられる街づくり」をめざす同市は、こうした小児救急の空白を埋めるため、
今年度の重要事業として、24時間小児救急体制の確立を盛り込み、整備費として一般会計に7000万円を計上、
主に藤沢市民病院の医師補充に充てることを決めた。

重症な救急患児と午後11時以降の小児救急を担当する藤沢市民病院は、小児科医を7人体制から4人増員して11人体制にした。
しかし、NICU(新生児集中治療室)当直もあり、小児科医の過剰勤務が危惧されたため、
一般の当直制ではなく新たな勤務シフトを取り入れることにした。

具体的に導入された勤務シフトは、深夜帯の救急担当医として2人の医師が夜勤専任チームを編成。
この2人が隔日、交代制で午後5時から翌朝8時半まで診療を担当する。

この間の勤務は、週3回となるため、労働基準法で規定する4週160時間の範囲内に収まることになった。
1チームの夜勤専任は1か月交代で、同期間終了後は次のチームと交代し、昼間の通常診療に戻る仕組みだ。
同院は原則担当医制をとっているため、小児科では夜勤担当医を交え毎日1時間ミーティングを開き、情報を交換。
夜勤担当医の受け持ち患者の診療をほかの医師がフォローできるように、互いに患者情報を共有し、
夜勤になった医師が深夜救急に専念できる環境を整えている。

この機会に同院で働くことになった柴崎淳医師は「夜間救急は全く眠れないので、日勤も続けてやるとなると、
仕事の質が落ちる可能性がある。この体制は勤務が週に3回だけと保障さるので、当直医にとっては非常にありがたい」と語る。

これまで小児救急の受け入れ患者実績は、5〜6月の2か月で1678人(前年同期比で2倍強)。
年間受け入れ患者数は1万人を超すペースで続いており、同院の24時間小児救急開設が藤沢市民に広く浸透してきているという。
医師の大幅増により「採算度外視」との指摘もあるが、自治体病院だからこそ取り組まなければいけないこともある。
同院小児科の船曳哲典医長は「市や病院事務方の深い理解があって実現できたことだと思っている」と話している。

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6.日赤病院の取り組み

JapanMedicineニュース 2002年8月5日より引用
日赤・全国92病院、小児医療の実態把握へ〜データ集め次回改定へ反映ねらう〜


日本赤十字病院に勤務する小児科医の間で、小児科勤務医の主張を次回の診療報酬改定に反映させようとする動きが出ている。
小児医療の実態を把握するため、まず全国92の日赤病院を対象にした調査が進行中だ。

4月の診療報酬マイナス改定のなかで「プラス改定」だったとされる小児医療だが、
特に小児救急医療を行う病院関係者の見方は冷ややかだ。

例えば、急性期小児入院医療を評価するために再編されたのが「小児入院医療管理料1」(3000点/日)。
しかし、これを算定した病棟は一般病棟の平均在院日数の計算から除外される。
この為、病院全体を考えると算定を断念せざるを得ない“絵にかいたもち”でしかないという指摘も多い。


●小児医療勤務医の声を集約へ
大津赤十字病院(881床)の西岡研哉小児科部長は、日本小児科学会に「勤務医部会」を新設すべきだと訴える。
小児科勤務医の過重労働を軽減するとともに、小児科を病院の不採算部門といわせないために、
勤務医のこれまでの「ゲリラ的」活動と同時に「正規軍」としての活動も不可欠との考えからだ。
日本小児科医会、日本新生児学会との連携も考えている。
西岡部長は「小児入院管理料」が相変わらず算定しにくい要件になっているため、算定できる施設は少ないと予測する。
大津赤十字病院でも、細かい制限条項がついているため「算定は最初から問題外」だった。

また「地域連携小児夜間・救急診療料」は、外部の医師が当直要員として勤務するのであればいいが、
病院小児科医のバックアップ要員が必要になるため、あまり実益がないという。
ただし、勤務医と開業医との病診連携の点では少しは意義があるかもしれないともみる。
小児科医10人、NICU30床、一般小児病棟40床を持つ同病院ですら、あまりメリットがない改定内容だった。

西岡部長は、病名や重症度を問わず、小児入院医療を一律の点数で評価する「同管理料」の発想自体がそもそもおかしいと指摘。
重症患者の入院医療費を、軽症の入院患者が負担することになるため、納得がいかないという。
小児医療は多くの時間と労力が必要なため、技術料の引き上げを求めていく考えだ。

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7.小児科関連の報道

診察断られ乳児死亡 救急病院など小児科医探せず

岩手県一関市で4日、生後8カ月の男児が救急病院や総合病院など4カ所の病院で次々と診療を断られ、
適切な処置を受けられないまま自宅で亡くなっていたことが分かった。県警は司法解剖して死因を調べている。

両親や病院などによると、男児は1日夜から発熱や嘔吐(おうと)下痢の症状に襲われた。
2、3の両日は、それぞれ市内の開業医で受診、解熱剤などを処方されたが、3日夜になっても症状は変わらなかった。

両親は救急指定の☆▽病院に連絡。「眼科医しかいない」と言われ、市内の☆立▽◇病院に電話したが応答はなかった。
市内の別の総合病院に連絡したが「整形外科医しかいない」と断られた。
約30キロ離れた水沢市の総合病院にも連絡したが「近くの病院に行った方がいい」と断られ、
午後9時すぎ、眼科の当直医しかいない☆▽病院に駆けつけた。男児の体温は40・8度で、激しい下痢を繰り返していたという。

眼科医に2日前からの症状を訴えると、眼科医は非番の小児科医にポケベルで連絡しようとしたが応答がなく、
座薬と水分補給のブドウ糖注射を施しただけで帰宅させた。
4日午前7時20分ごろ、男児がぐったりしているのを両親が見つけ119番通報。☆▽病院に運ばれたが、すでに心停止状態だった。

2002/09/19 asahi.comより




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