感染症などの流行状況報告

注)ここから消えた項目を読みたい場合は「疾患の説明」にうつしてありますので
参照下さい.

感染症など流行状況(2021.4月27日:静岡市南部)

咳鼻水の子が増えています。ライノウイルスが流行っているのかも知れません。旧型コロナウイルス
の可能性もあります。そのほか一部こども園でRSV気管支炎が流行しています。溶連菌プール熱
ぱらぱら見られますが、流行という程ではありません。

急性細気管支炎(RSウイルス感染症、毛細気管支炎)  

 この疾患はあまり有名でないかもしれませんが,「RSウイルス」という聞き慣れないウイルスが
原因でおこる疾患で,毎年冬に流行し,乳児や低年齢の児の気道に強いダメージを与え,
呼吸困難や咳,喘鳴などをきたす怖い病気です.大人にも罹るのですが,鼻風邪レベルで軽く
済むため,軽んじられている傾向にあります.しかし,この病気は,特に未熟児で出生した児などに
かかると重症化することが多いので,危険の高い子供たちには1人あたり何十万円もかけて予防策
(シナジス:RSVの抗体の注射) がとられている程です.
1歳未満の児が冬場、急にゼイゼイしてきたら,喘息と考えず,この疾患を考えてまず一度小児科医の
診察を受けて下さい.潜伏期は3-5日前後で、高熱も数日間出るケースが多いようです。インフルエンザの診断
キット同様の鼻腔からの迅速キットで診断がつきますが、インフルエンザと異なり、このウイルスに対する
特定の治療薬も予防のためのワクチンも存在しません。11月から3月までの冬季に保育園等で大流行を
きたすので、小さい子の居る家庭では冬場に警戒すべき最重要疾患(インフルエンザよりも)の1つです。
またこの疾患は大量の分泌物をきたすために、それを土壌にいろいろな細菌感染症を併発しやすく、
かなりの頻度で、細菌性中耳炎や細菌性肺炎〜気管支炎を合併しますので、罹患後半に治りが悪い場合には、
それらの感染のチェックも必要となります。また6ヶ月未満の赤ちゃんに罹りますと、ゼコゼコする
のみならず、無呼吸発作(呼吸を止めてしまう発作)を起こしてしまう事もありますので、怖いです。
中耳炎の合併症も多く見られます。メタニューモウイルスはこのウイルスの親戚 です。

またこの病気は、咳が多いにも関わらず、主たる感染は接触感染です.すなわち「手」によって伝搬します
ので,手洗いがとても重要です. 上の子が罹って、下の子が居る場合に、保護者はその点にご注意して
乳児のケアをお願いします。

溶連菌感染症(しょうこう熱)

 「溶連菌」は正式名「溶血連鎖球菌」といい,ひとの咽(のど)について炎症(咽頭炎・扁桃腺炎)を
引き起こす原因となる代表的な菌のひとつです.
  【症状】 咽に溶連菌がつくと, 扁桃腺が腫れたり,咽頭痛,高熱,発疹,苺舌などを引き起こすのが
特徴で,症状なしで保菌している場合もあります. 発疹の特徴:赤インクを霧吹きで吹いたような非常に
細かな発疹が,体の一部に(手足を中心に,体幹・顔面にも)出現します.発疹症の中で最も細かく,
発疹径は0.2-0.3mmです.なかにアトピー性皮膚炎が増悪したようながさがさの皮膚になる方もいます.
苺舌(イチゴじた):最初は舌の上に一面白い苔のようなもので覆われます.まもなく白い苔様のものは
剥がれて赤剥け状態になります.その時の舌の状態が,舌本来のビロードのような部分が剥げてところ
どころにぶつぶつが残り,ちょうどイチゴのようにみえるので,苺舌と呼ばれます.苺舌は溶連菌感染症
以外では川崎病でもみられます. 回復期には手の皮がめくれることも特徴です.
 【迅速診断】 インフルエンザ同様に抗原迅速キットが 存在しますので,のどの粘膜を綿棒でしごいて
検査するとその場で診断ができます.
 【合併症】 この菌は万病のもとで,腎炎・リウマチ熱・アレルギー性紫斑病に発展することもあり,
一部に川崎病との関連も言われています.特に腎炎においては,抗生剤を飲まなかった方によく発症しま
すので,注意が要ります.
 【治療および経過】 抗生剤を2週間きっちり飲むことです.抗生剤を飲むとたちまち症状の軽減
(消失)を見ますが,そこがくせもので,2-3日で飲み止めるとたちまち再発して,それを放っておくと
腎炎発症を招きます.症状がすぐに軽快しても,しっかり2週間のんで頂くことが大切です.2週間
抗生剤を飲んだら,終了時に一度検尿をしておくことが肝心です.
 【隔離・お休み】 学校伝染病指定ですので,罹ったら数日は自宅待機が必要です. 治ったら治癒証明
をもらってから登校して下さい.
 【家族内予防】 この病気は家族内で伝染しあうことが多い病気です.誰か罹ったら子供達みんなで予防
しておいたほうがいいでしょう.大人でも罹ることがありますので(子供よりはずっと可能性は少ないで
す),もしお父様・お母様でも似たような症状がすこしでも有る場合はいっしょに薬を飲みましょう.
症状の無い方の予防は5日間,症状の有る方は2週間内服がいいでしょう.
 【再発】 はしか等と違って一度やるとむしろ繰り返すことが多い疾患です.「一度やったらもう罹ら
ないから安心」とは言えませんので知っておいて下さい. 

咽頭結膜熱(アデノウイルス感染症 別 名:プール熱)

 咽にアデノウイルスがつくと,扁桃腺が腫れたり,白苔がついたり,咽頭痛,高熱,眼球充血,目やに
などが現われるのが特徴で,別名「プール熱」ともいわれ,その熱は39℃が4-5日続きます.
(プールに入らなくてもかかりますので,プール熱なる名前は誤解を招きやすいと思われます)
 この疾患も迅速キットがあり,溶連菌同様の方法で診断できますが,溶連菌と異なり抗生剤が無効で,
インフルエンザのような特効薬もありません.けっこう重症ですが,治り出すとスッキリ治ります.
 本疾患も学校伝染病指定ですので,治癒証明が必要です.潜伏期は1週間くらいです. 


日本全国の流行状況は右記をご覧下さい。  参考:国立感染症センターのHP


静岡市静岡医師会のHP「感染症動向調査」という項目がございますので,実際の発生状況
(定点観測病院または診療所の集計のため,静岡市の全発生数ではありません)をご覧に
なりたい方は,そちらのHPもご参照下さい.
http://www.shizuoka.shizuoka.med.or.jp/