My favorite classic  back numbers

No.6 J.S.バッハ ゴールドベルク変奏曲 BWV988 
    演奏:グレン・グールド (Pf) 1955年演奏  
    レーベル:SONY M.E.

  55年版   81年版

今回は時代の寵児Gグールドです。55年版ゴールドベルクは彼のデビューアルバム
でもあり、彼の技と魅力が余すところなく発揮されている記念碑的名版です。この
アルバムが出た頃は、こんなバッハはないだろうと批判的な方が多かったようですが、
時代が彼を後押ししたというか、今やこのアルバムを語らずに、バッハが語れなくなって
いるほどです。50年も前の録音ですが、今聴いてもとれたての野菜のように新鮮で
瑞々しいところが名作の所以でしょう。もちろん今でも嫌いな人には嫌いな演奏で、
デビュー当時大騒ぎになったのは分かる気がします。時のCBSソニーの会長が彼の演奏を
聴いて、一目惚れし、専属契約をしたというエピソードもまた納得です。彼は今で言う
パニック障害みたいな性格で、人生半ばにしてステージでの演奏活動を辞めてしまい
ましたが、その後、人生の集大成とも呼ぶべきこの曲を81年にもう一度録音しています。
聴き比べて、これが同じ人??というほど異なるスタイルですので、2枚買うの?
なんてこと言わないで、セットで聞き比べてみて下さい。81年の深淵さ、55年の
爽快さ、甲乙つけ難い良さがありますが、初めての方には、先ず55年のモノラル版で
打ちのめされて下さい。このテンポ、ピアノなのに全く足を使わず、組み足で演奏し、
鼻歌付きでの演奏スタイル。どこをとっても風雲児ですね。ジャズファンも必聴です。
もし気に入ったら、次は同じバッハのフランス組曲やイギリス組曲などがいいでしょう。
もっと変わったのが聴きたいという「衝撃受けたい派」の方にお勧めするのは、
モーツァルトのPソナタ(No.8・10・11・12・13・15)1695-70年録音 SONY、
説明無用、まず御体験下さい。 覚悟していても卒倒ですね。 18.9.23記

 

No.5 シューベルト 4つの即興曲 P90 & P142 
    演奏:ラドゥ・ルプー(Pf) 1982年演奏  
    レーベル:ユニバーサルクラシック

   A  B

A.シューベルト 4つの即興曲 P90 & P142  ラドゥ・ルプー(Pf)
.第5回は知名度は若干劣るものの、個人的には大ひいき筋のピアニスト・ルプー
の登場です。シューベルト弾きとして有名ではありますが、下記のミケランジェリ
のような大御所ではなく、録音枚数も限られているのでなかなか入手は難しいかも。

繊細な音色では右に出る者がいないほど、優しく心に浸みる音を奏でてくれます。
シューベルト即興曲といえば、最近では内田光子さんのアルバムが評価が高いが、
私個人はルプーを一番に買います。シューベルトの哀しさが最も作為を感じずに心に
浸みてくるから。内田光子さんのアルバムは、ルプーより演奏技術としては上かも
しれませんが、そして彼女らしくすごく丁寧に弾いていますが、どうしても演奏者を
意識してしまうのです。 ルプーの音色にはそれがない。一聴して、こんな音色を奏でる
人がいるんだと驚かされます。そしていつしかルプーの音色にはまっていくのです。
P142の3番など、8つの即興曲の中では目立たない曲だと思うのですが、ルプーの
手にかかると、えっこんなにきれいな曲だった?と思わず play back するほどです。
このアルバム以上に一般に評価が高いものに、同じシューベルトの「楽興の時」
(同レーベル、1981年演奏)がありますが、私はこの「即興曲集」の方が、曲としての
格が上の分(誰が決めた)お薦めです。気に入ったら、両方揃えてみて下さい。

B.シューマン フモレスケ ・子供の情景・クライスレリアーナ ラドゥ・ルプー(Pf) 
他の演奏では、一般に、ブラームスの「小品集」(同レーベル、70年・76年 演奏)
が最も評価されていますが、私個人としては、シューマンの「フモレスケ、子供の情景、
クライスレリアーナ」(同レーベル、93年演奏)の方が、ルプーの音色や弾き口の
繊細さが特徴的に表出されており、お薦めです。 「即興曲集」と甲乙つけがたい
ほど魅力的なアルバムです。こんな優しい音色のシューマンは聴いたことが無いと
思うこと請け合いです。捜しても聴く価値ありですよ。   2006.8.15 記


No.4 ドビュッシー 前奏曲集 第1卷 映像 第1-2集 
    演奏:A.B.ミケランジェリ 1971-8年演奏 Grammophon

  A  B

A.ビュッシー 前奏曲集 第1卷 映像 第1-2集  
    演奏 A.B.ミケランジェリ
(Pf)

 第4
回は私の最も尊敬する伝説のピアニスト、アルトゥーロ・ベネデッティ・
ミケランジェリの登場です。 あのポリーニアルゲリッチが共に彼の門を叩いた
といわれる逸話はつと有名です(何も教えなかったという噂もありますが)。
彼は大の録音嫌いだったので、彼の残した録音は極めて少ないのですが、その
中でも最も定評のあるのがドビュッシー、中でもこのアルバムにある映像第1集
第1曲の「水に映る影」
は 並み居る名演の中でも超1級の評価を得ています。

 彼の魅力はなんといってもあるこだわり抜いた深く美しい音色にあります。ある
人に言わせると、ミケランジェリという演奏家はピアノ・スタインウエイの音色を
最大限引き出した人だと、なるほどそんな誉めかたも納得できるような気がします。
このドビュッシーのアルバムはその音色を聴くために存在する様なアルバムで、
大音量でもうるさく感じません。そして何度聴いても、その世界に引き込まれて
しまうほど、人を飽きさせない演奏でもあります。彼の演奏を先に聴いてしまうと、
後から誰が演奏をしても、点数は辛くなってしまいます。例えば K.ツィマーマン
の弾くドビッシー前奏曲は格別に繊細で美しいのですが、曲の骨格の安定感や
音色の重なりに物足りなさを感じますし、P-L. エマールの弾く映像も演奏技術
だけで言えば、ミケランジェリより確かな(これだけで特筆すべき事です)上に、
曲の骨格もしっかりしているのですが、音色の深みが若干欠けているのか、
聴いていてもその音の中に浸っていたいという感情が湧いてきません。
ミケランジェリという人はドビュッシーの音色を極めた演奏家だといっても過言
ではないでしょう。

「ブラームス;バラード集、シューベルト;PソナタNo.4、ベートーヴェン;PソナタNo.4」
 
演奏 A.B.ミケランジェリ(Pf)  
1971-81演奏 Grammophon

 もし、ドビュッシー以外の演奏を聴いてみたいという人には、「ベネデッティ・
ミケランジェリ・リサイタル」
というアルバム(スカルラッティ;3つのPソナタ、
ガルッピ;PソナタNo.5、ベートーヴェン;PソナタNo.32)65年演奏、King
がお薦めなのですが、 録音も古く、すでに廃盤状態で手に入りにくいので、
比較的最近の録音では上記がお薦めです。ミケランジェリはどうも4が好きらしく、
ベートーヴェン4は彼の十八番、そこにシューベルト4を添えて。そういえばラフマニノフの
ピアコンもNo.4の録音が残っている 偶然??  さあ、彼の音色にはまってみましょう。


        2006.7.19記

 

No.3 バッハ 無伴奏チェロ組曲(全曲) 
    演奏:ヨーヨー・マ 1994-7年演奏 SONY M.E.

 ヨーヨーマ   マイスキー 

 第3回は大好きなチェロの中でもとっておきのバッハの無伴奏チェロ。昔から
この曲の定番といえば、かのパブロ・カザルスの演奏。なにせカザルスはこの曲の
発掘者でもあるから。でも流石に録音が古すぎる。新しいスタンダードにふさわしい
のはこの人の演奏。何を弾かせても最高なのだが、このアルバムは別格中の別 格。
重すぎず、軽すぎず、音楽が哲学している。少し前に自分の部屋のステレオの
買い換えの際に、ヨーヨー・マーの無伴奏の弦が美しく響くスピーカーにしたい
と、わざわざ電気店の試聴室にこのアルバムを持ち込んで聴いたほどに、自分の
中での弦楽曲の音の中心に据えている存在。 弦が好きな人には格別な音色を
十二分に楽しませてくれること請け合いである。マイスキーの無伴奏も思い入れ
たっぷりで聴くほどに味があるが、速かったり遅かったりで何となく落ちつかない。
安心して弦の音色の中に埋もれて居たい時には、最高の1枚(2枚組)ですね。
初購入のゴールデンスタンダードとしては、こちらをお薦めします。

 マイスキーの同曲も聴き比べてみるとおもしろいと思います。同じチェロという
楽器ですが、本当に違う響きを出しています。そして どちらも◎です。
M.マイスキー 1999年演奏 Grammophon         2006.6.29記

 

No.2 ブラームス ヴァイオリンソナタ No.1-3 
    演奏:A.デュメイ(Vn)、MJ.ピリス(Pf)
   1991年演奏 Grammophon

   A 

A. Brahms Violin sonata 1-3  ピリス&デュメイ
第2回は私の大好きなブラームスの弦楽曲から、一番のお薦めはこのアルバム。
ヴァイオリンソナタ1-3が全部粒ぞろいに良い曲で、そのうえ演奏が美しい。
デュメイのヴァイオリンはロマンチックでいささか色気過剰ですが、この曲に
至っては、原曲のメロディーの美しさを引き出して◎です。ピリスの音色の美しさ
も定評が有るところ。2人の個性が着かず離れずにきらめき合って、匂い立つ
気品が溢れるアルバムに仕上がっています。

有名な1番の「雨の歌」や傑作の誉れ高い3番の第4楽章も悪くありませんが、
なんといっても2番第1楽章の中間過ぎにピリスが奏でるピアノの背筋がゾクゾク
するほどの音色の美しさや、同第2楽章で2人が奏でる音色の多様性は何度
聴いてもほれぼれします。
音色を聴かせてくれるふたりだから、3番の第4楽章のような激する楽章よりも、
ゆったりと聴かせる各緩楽章が本当に心地よいですね。
柔らかなソファーに身を沈めて、 一人でワインを傾けながら、部屋を2人の音色で
いっぱいにするのは、最高の贅沢ですね。邪魔が入らないことが大切です。

B Brahms Piano trio 1・2  ピリス&デュメイ&ワン
  1994-1995年演奏 Grammophon
このアルバムが気に入った方は、同様に
ピリス(Pf)、デュメイ(Vn)、ワン(Vc)が奏でる ブラームスピアノ三重奏曲1-2
も上記アルバムと甲乙つけがたいほどの素晴らしい曲と演奏です。
ことに1番は美しいメロディー満載な素敵な曲ですので、こちらもぜひ聴いてみて。
         2006.5.30記

 

No.1 モーツァルト ピアノソナタ 8,11,14,15 演奏:内田光子
   1983-1985年演奏 Philips (Super Best 100) 

      

 第1回を飾る作品は、日本が世界に誇るNo.1ピアニスト内田光子さんの登場です。
彼女のモーツァルトは近年のシューベルトと並んで評価の高い一級品ぞろいです。
そのなかでも、お馴染みのトルコ行進曲(K331)K545が入っているこのCDは
ぴか一で、K331の第2楽章メヌエットK545の第2楽章アンダンテなど緩やかな
楽章における美しさは天上の舞のごとく美しい。 内田光子さんの演奏はもともと
完成度の高い曲造りと繊細で神経の行き届いた演奏技術に定評のある所ですが、この
CDは(特に前出の2楽章などは)彼女の良さが存分に味わえる1枚と言えましょう。
ある専門家の「
内田光子のモーツァルトは1音1音が弾いているそばから、羽が
生えて翔んでいってしまうかのよう」 との評価は、彼女の演奏を表現してみごとで
す。K545の第2楽章は光子さんのお気に入りアンコール曲とか、これを聞いて皆
涙したという噂もあながち大袈裟では無いでしょう。今までモーツァルトがあまり
好きで無かった私をモーツァルト好きにさせた1枚、グルダにもピリスにも負けない
モーツァルトここにありです。そしてもう1つ言えば、このCD1000円で買えちゃう
所が驚き。騙されたと思って聴いてみて下さい。きっと惚れちゃいますよ。

もし気に入った方は、スタインバーグとの共演でモーツァルトのヴァイオリンソナタ
27,28,33,42
(2004年演奏 Philips)なども面 白いかも。  2006.4.17記