第92回  ナマケモノの戯言(たわごと)

現在は100年に一度の不況と言われている。
働きたくても働く場所がない人たちの状況を連日のようにメディアが伝えている。
その一方で、以前に社会現象にもなった「働くのがイヤだ」とダダをこねていた
ニートの存在はどうなっているのでしょう。

日本人は流行に過度に反応し、流行に振り回されている感がありますが、
昨今はニュースや報道姿勢にもその兆候が顕著なので危機感を覚える。
ニートが突然いなくなったわけではないだろうけれど、
いまやその存在は実態がないかのごとく、世間からは忘れ去られている。
以前のテレビで見たニートはどうしているのかと思うことがある。

ある日のテレビ番組でニートの実態の特集をしていた。
当時、年々増え続けている働かない若者の存在は、
深刻な社会問題にもなり新聞で特集されたこともあったが、
その実態を映像で見るのは初めてだった。

わたしのニートに対する認識は、ふたつのタイプに分かれている。

働くのがイヤで親に寄生している若者。
つまり生来のナマケモノで、同情する余地がなく、
カウンターパンチでも食らわせて性根を入れ替えさせたいタイプ。

もう一方は、ある程度働く意思はあるのに、
イジメにあったりして周囲とうまくコミュニケーションがとれないから働けない状況で
なんとか自立の手助けをしてやりたいタイプである。

まずはパンチをお見舞いしたいタイプの登場。

取材対象の若者は28歳。
大学を卒業してから現在までニートを押し通している筋金入りのナマケモノ。

彼は働かないその理由を「働く必要がない」と断言。
さらに「マンションは親の持ち物。親が死んでも住むところには困らない。
親が生きている間は年金や貯金があるから喰うには困らない」と言い放った。

このナマケモノの日常は、親が勤めに出た後の昼頃になって起き出す。
すぐにパソコンへ直行。趣味の漫画のサイトを見てアハハと一人で笑っている。
(キモチわるーい)
漫画やブログの好きなことだけをして暮らしたいから、働きたくないとのこと。

取材「親に迷惑をかけているとは思いませんか?」
ナマケモノ「迷惑をかけたっていいじゃない」

取材「親に申し訳ないと思いませんか?」
ナマケモノ「思わない」

取材「親が死んだらどうします?」
ナマケモノ「そうしたら働くかも」

ワタシ「アンタみたいなグウタラを雇うところなんてどこにもないわよ」

ナマケモノはお腹が空くと母親に「かあちゃん、腹へった」と訴え、
30分ほどするとふすま越しに「御飯できたよ」とかあちゃんの声。
ナマケモノは家族と一緒の食卓をさけて寝室に持ち込んで一人で食べるが、
かあちゃんもだらしがないぞ!

ナマケモノの働きたくない理由はもうひとつある。
自分がどう思われているかが非常に気になる性格で、
就職すると周囲の人からどう思われているかを常に気にしてしまうから、
それが煩わしくてイヤだと言った。

しかし、彼はテレビの顔出しインタビューに応じ、
さらに自分の日常を記録するためのカメラを部屋に設置することも承諾、
一部始終を撮らせている。
これが放映されたら就職先のような狭い範囲ではなく、
全国区で「どう思われてまう」のだから、
彼の就職したくない理由との整合性はどうなっているの。

別のタイプのニートは27歳。
彼は関西にある「ニート自立塾」なる施設に入所。
この施設は国から補助金を得て廃校の校舎を改装して塾にしたもので、
期間は3ケ月間。その費用は食事代も含めて60万円。
その半額が国から補助される。
つまり、相当額の税金が投入されていることになる。

取材時の塾生は18歳から32歳までの20人。
全員が親の希望で入熟したが初日からすでに部屋に閉じこもり、
ハンガーストライキに突入した青年は、親と相談の上お引取り願った。

ほとんどのニートは部屋に閉じこもり、
パソコンやゲームに没頭する生活を送ってきた。
従って塾生はまず掃除や食事の支度の手伝いなど、
生活の基本から学ぶことになる。

取材に応じた27歳のニートは戸惑いながらも掃除をし、
当番でないときも食事の手伝いをする。
その時「ありがとう」と言われて人から感謝される喜びを知った。
入塾期間が終える頃一般の会社で体験学習をするが、ここで働く楽しさを経験し、
塾の面接の模擬試験を自分から申し出た。
入塾中の彼の態度を見た人材派遣会社の代表が、
他の仲間2人と共に彼をスカウトした。

今、彼は教えられる立場から教える立場に向けて張り切って準備中であるが、
その姿を見て目頭が熱くなった。(年を取ったものだわ)

放送内容は怒りあり感動ありで、感情の目盛りが忙しく上下に揺れまくったが、
あのときの若者たちはどうしているのかしら。

今もニートと呼ばれる若者たちがいるのに違いないと思っていますが。

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