第91回  売春にみる世代交代?

テレビ番組のトピックスで、
韓国のソウルで行われたデモ隊の様子を伝えていた。

韓国を旅行するとなぜかデモに遭遇する機会が多いが、
機動隊の物々しさやデモ隊のアピールの過激さは日本の比ではない。
しかしそのテレビ番組のデモの様子は、かなり雰囲気が違っていた。

全員が若いと思われる女性で、赤いスエットの上下を着用の一団、
白のスエットの上下の一団もいて、とても華やかな雰囲気がある。
年齢層が特定できないのは全員が帽子を目深にかぶり、
大きなマスクで顔を覆っていたから。

彼女らの目的は韓国の国会で検討されていた「売春禁止法」の阻止である。
つまり彼女たちは世界で一番古くからの職業とされている、
<性を売る>ことを生業としている女性たちである。

テレビ画面を見ながら、顔や風習は似通ったところがある民族同士ではあっても、
やはり国民性はエラク違うものだと考えさせられた。
これを日本に置き換えてみたらおそらくデモは絶対に成立しないと思う。

その日本の性産業はどうなっているのか?

昔は生計の立てられない貧農の娘が吉原などに売られていき、
戦後は<赤線地帯>と言われる場所で生活苦から進駐軍の兵士を相手に性を売った。
歌手の菊池章子さんが歌う「こんな女に誰がした」は、
そんな女の悲しい気持ちが滲んでいるヒット曲である。

つまり、昔は生活苦のために止むに止まれぬ事情があったが、
いつの間にか女子大生や若い女性がピンクサロン(古い!)で
アルバイト感覚で性を売るようになった。
テレビで堂々の顔出しをして「本番」とかいう言葉や
「何人相手にした」「月収はウン百万円」などと自慢げにご披露する。
やがてそういう女性たちが芸能界へ進出して、もてはやされるようになった。
いつしか若い女性の間には、有名になるには裸になるのが手っ取り早い、
という風潮さえ生まれてしまった。

昨今ではマスコミが流行らせた「援助交際」なる耳に聞こえの良い言葉に乗じて、
「売春」の低年齢化と大衆化に歯止めがかからない現状である。

テレビ番組の情報スクランブルで低年齢化するセックス経験の実態をレポートした。
昨今の風潮はある程度は予測していたが「ここまでとは」と衝撃を受けた。

画面に登場した二人の中三の女の子は顔を隠して、煙草を吸いながら応じた。
一人は小学5年生でセックス体験がある。
セックスへの関心は小学2年生のころから雑誌などをみて、
ラブホテルがいいと知識を得ていたという。
友人の数人が堕胎経験があるそうだ。

レポーターは衝撃を隠しきれない様子で伝えた。
「見るとまったく普通の可愛い中学生で、外見からは想像もつきません」

都の「青少年の性行動について考える委員会」委員会のメンバーで
「子どものセックスが危ない」の著書もある六本木診療所院長の赤枝恒雄氏は
週に一度診療所を解放して無料相談や診察を行っている。
赤坂氏がテレビスクランブルで語っていたのは、
低年齢層に急速に広がりつつある性病の実態である。
子宮が侵されて子供が産めなくなる可能性があるパミロウイルスに
診察した32%が感染していたという。

母親は「どうしてそんなにしたがるのでしょう」と言うが、
「自分の子供だけは違う」と思っている親が多いと赤枝氏は指摘する。
学校での性教育もあまり機能していないようである。
さらに赤坂氏は続ける。
セックスの知識がない中学生で経験した女の子たちは、
<オリモノが増えた><妊娠したかも>と不安を訴え悩んでいる。
その結果、勉強が手につかなくなり落ちこぼれたりするケースもあるとか。

「性を売りものにする」「性をおもちゃのように買う」この行為に対して、
日本でもそれなりの罰則があるが、現状を見ると空しく感ずる。
性を商品にした過激な表現も、当事者の履き違えた「表現の自由」で罷り通り、
青少年をターゲットにした携帯サイトの存在も野放し状態。
マスメディアは「売春」という言葉を避け、
罪の意識を感じさせない「援助交際」なる言葉を確信的に蔓延させ、
昨今は小中学生までもが売春行為にいそしむようであるが、
日本社会の反応は相変わらず鈍いようです。

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