88回  ミステリアスな頭

最近の事件のニュースは時代を反映したネット関連が多い。
ネットを通じてまったく面識のない面々が一緒に自殺を図ったり、
強盗団等を結成して犯行に及ぶことがある。

ネットという特性から、見知らぬ面々が同じ目的を持って集合するときには、
一番手軽で便利なツールということになりそうだが、
わたしがいつもこの手のニュースで不思議に思うのは、
面識のない者同士が「それぞれの相手に対する信頼性をどこに置くのか」
という疑問である。

わかりやすい例は、ネットを通じてショッピングするとき、
まず第一に頭に浮かぶのが信頼性である。
わたしは信頼性を重視するので原則として大手の通販しか利用しないことにしている。
ある時、照明器具を欲しかったが、
大手の通販でイメージに合ったものがなかなか探せなかった。
他に方法がなかったのでやはりネットを検索して、
名前を初めて聞くような会社から購入することにしたが、
実際に商品を手にするまではいろいろと気になった。

たとえばそれが詐欺被害だったとしても数万円程度の額だから諦めもつくからと、
そこまでの覚悟をしてネットの購入を決めたものだ。
(実際に被害に遭ったら、絶対に諦められないと思うけれど・・・)

わたしは心配性(用心深い?)なので、すこしオーバーかもしれないが、
ネット通販ひとつにしてもこれくらい相手の信用を推し量る。

しかし、ネットの案件が自殺やら、強盗、或いは殺人を目的に、
見知らぬ面々が集合するとなると、世間をはばかる犯罪ゆえに、
お互いを信じなければ自分の身に危険が及ぶ怖い立場である。
その信頼性となると、とてもネット通販どころではないはずだが、
面識のない者たちがその信頼をどこに置くのだろう。

普通の人間が考えるのは、より重い信頼性を相手に感じなければ、
とても一緒に犯罪を実行する勇気はない、となるはずである。

しかし、彼らはまるでデートの約束をした相手に会うような気軽な気持ちで出かけ、
初対面の相手と一緒に行動を共にし、いとも簡単に罪を犯す。

普通の人から見れば、彼らの頭の構造は実にミステリアスに思えるが、それは普通の人が普通の感覚で推し量るからなのだろう。

つまり、彼らの頭の中は犯罪、或いは自殺の考えで飽和状態になり、
他のことが一切考えられない状況になっているらしいから、
相手に求める信頼性なるものの入り込む余地など無いということなの?
ゆえに面識のない氏素性のわからない相手と、
いとも平気で簡単に気心を合わせて犯罪に走ることが出来るの?

たとえば、自分の職場に気に喰わない上司がいるとしよう。
アントニオ猪木氏の熊手のような手を借りて、一発ガツーンと張り倒してみたい。
しかし大抵の人はこのように思った段階でやめるのが一般的である。
なぜならその後の諸々の事柄に考えが及ぶからである。
張り倒すことを諦めてそのうっぷんを居酒屋でグチるのはよく見かける光景です。

気に喰わない上司にガツーンの一発をカッコよくできるのは、
ドラマか映画の中の熱血主人公だけである。
彼らはその後の生活の心配は一切無用であるから。

しかし、それを現実社会でも後の心配は無用とばかりに、
何も考えずに犯罪に突っ走る馬鹿者のなんとも多いこと。

現代社会の便利な文明ツールは、
正しく使いこなせば生活全般に鬼に金棒の強力な助っ人になり得るけれど、
愚か者が愚か者らしく使うと、世の中を混乱させ恐怖に陥れる
厄介な暗黒のツールになるようです。

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