第86回  道徳観は金次第?

4万円を受け取り、40万円の罰金を言い渡された男がいる。
振り込め詐欺の振込口座として使われるのを承知で開設した4口座を
4万円で売り渡したがその動機は金に困ったから。

金に困っている身が罰金をどう工面して払うのかは、
わたしの知ったことではないけれど、
今ごろは悪を利用したお小遣い稼ぎは割りに合わないと、
深いため息をついていることだろうから、良いお灸になったと思う。

罰金が懲罰の意味があるのなら、
<高い>と思わせるものでなければ効果は期待できない。

その点で、交通違反の反則金が引き上げられた際に違反者から
「高すぎる」と悲鳴にも似たコメントが寄せられたことがあったが、
それでこそ懲罰の意味があると思った。

そもそも違反者が、罰金についてとやかくいう資格はないはず。
罰金を取られるのがいやなら違反を犯さなければよろしいまでのこと。
また罰則金の高低については法律を遵守している限り、
善良な国民にはなんら影響はないはずである。

その点で、車を運転中の携帯電話の使用を規制する法律に、
当初は罰金刑がなかったことを非常に疑問に思った。
人間の性として懲罰金を科さなければ、自身の道徳観に緩みが出てくるのは当たり前。
それを実証するかのように、法の規制後も運転中の携帯電話使用は
以前とほとんど変らなかった。
効果がないとわかったのか、その後のさらなる改正で罰金刑が科せられるようになり、
違反は半分近くに減少した。

罰金刑が採用された当時の読売に
<運転中の携帯、5500人摘発>の見出しがあった。
前年の11月に改正道路交通法が施行されてから翌年の1月末までに、
新たな罰則対象になった全国での違反ドライバーの数である。
それまでは運転中の携帯電話は当たり前のように目撃されたので、
警察も少しはがんばったなぁと感心した。

摘発のその間、ドライバーが携帯電話を使用中に起こした事故は、
前年同期より48.7%減少したというから、ほぼ半分になったと言える。
負傷者や死者も激減している。
これをみても罰金刑を採用した改正法の効果が現れていることがわかる。

運転中の携帯は他人の命にかかわるが、
携帯電話のお手軽さは青少年の心身を蝕む側面も持ち合わせている。
最近のデーターでは出会い系のサイトが小学生を侵食しているとの
ショッキングな結果が出た。

児童買春の被害者のうち13歳、12歳以下が増加している。
また別のデーターでは携帯を所持している女子高校生の方が、
携帯を持たない女子高校生よりも性体験がはるかに多い結果が出ている。

29歳の男が中学1年生の女生徒を12日間連れ回す事件があったが、
これも携帯電話の出会い系サイトで知り合ったものだが、
この手の犯罪は増加する一方である。

悪徳出会い系サイトの業者は暴利を得ているようだが、
これらにはぜひともその暴利を上回るような罰金刑を科して欲しい。
この商売は見合わないと思わせることが必要である。
売り上げ金の一部をかすったような罰金額では彼らに痛みを与えることはなく、
のさばらせるだけである。
彼らに容赦は無用。

蛇足ながら、青少年のこれらへのアクセスは野放し状態も同然である。
以前から指摘されているこれらの対策も、
最近になってようやく腰を上げつつあるようですが、
事件の拡大のスピードからするとなんとも鈍いスピードで
いつになったら追いつくのかと案ずるばかりです。

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