第78回  女子アナ亡国論

紅白歌合戦の女性司会者に有動アナウンサーが抜擢されたことがある。
有動アナは夜9時のNHKニュースのキャスターをしていた時代に、
ニュースの中で堂々と「マジ」と口走ったことがあるが、
彼女は天下のNHKのアナウンサーである。

「へっ!」

ニュースを見ていた夫は吐き捨て、わたしもすごく不機嫌になった。

夫は以前その番組のキャスターであった森田美由紀アナがお気に入りだった。
夫が彼女を気に入っている理由は、浮ついたところがない、清潔感がある、
まともな人ということらしいから、昨今のタレント女子アナとは
一線を画す人と思っているようだ。
彼女の私生活は知らないが、わたしも森田アナにとても好感を持っていた。

「森田美由紀アナは女子アナの良識、常識だ」
 
これが夫婦そろっての感想である。

以前、タレント化した女子アナについて厳しいコラムを書いているが、
その女子アナ採用基準についてますます疑問を持つような記事を、
週刊誌で読んだことを思い出した。
放送作家の山田美保子氏が週刊新潮の連載エッセイ「秘密の花園」で、
日本テレビで毎週土曜日に放送していた「恋のからさわぎ」という番組について
書いている。

「恋のからさわぎ」は、司会の明石家さんまさんと、
素人の女性20人ほどで恋に関する話のやりとりをする番組であるが、
3回ほど見た覚えがある。

最初はチャンネルのハシゴの途中で5分ほど見たが、
あまりにも低俗な内容なので憤然としてチャンネルを変えようとしたが、
低俗程度を検証しようと思い直し、時間がもったいないと思いつつも
我慢しながら3回ほど続けてみた。

出演女性は、女子大生、看護婦、OL、フライトアテンダント、
幼稚園の先生、水商売関連と、職業も背景もさまざまである。

彼女たちが決められたテーマに沿って告白したり暴露する内容が過激で
あまりにも破廉恥である。
このような若い女性が今の日本にいるのかと思うと、
彼女たちの代わりに穴を掘ってもぐりこみたいと思った。
堂々と、或いは自慢げに自分の恥を晒す彼女らを前に、
こちらの方が恥ずかしくなってうつむいた。

その低俗番組が2003年にすでに十周年を迎えている。
オーディション応募者は3万人を超え、卒業生と言われる出演者は千人を数えるとか。
(古い2003年のデータだからその後はもっともっと増えているはず)

その第1期生で「説教部屋行き」となった女性がTBSの小倉弘子アナ。
「説教部屋行き」とは番組の最後に出演者の中で最もオカシナ女性を
司会者が選んで説教するというものであるから、
つまり出演者のなかでも最も低俗と烙印を押されたのであるが、
その人がアナウンサーになった。

第8期生ではおなじくTBSの小林麻耶アナ。
他にも気象予報士、ラジオパーソナリティ、地方局のキャスター、レポーターやら、
低俗度で話題になった彼女たちは就職先に事欠かないようだ。

(これはどういうことなの?)

それにしてもこの手の低俗番組が1944年から未だに続いているようだが
視聴者の意向(視聴率)を反映したものとしたら、
番組ばかりを責められないから情けない。
「恋のからさわぎ」には女子大生が多数出演していたようだが、
彼女たちは在学中に「非常識」を身につけることを学んでいたのか?

ある日の読売の放送塔に読者投稿が寄せられていたが
フジテレビの女子アナスペシャルを見た感想を述べている。
そのタイトルは「国語力が低い? 女子アナ」

女子アナの国語力の低さに驚きました。
大学で何を学んできたのでしょう。(埼玉県、男性)

最近の女子アナはではモーニング娘の出身者や、
ミスコンテストなどの芸能界出身者がかなりの比重を占めているそうだ。
当然のことながらアナウンサーとしての基本発声や訓練などは
二の次になっているというから呆れる。

テレビは影響力の強いメディアである。
女子アナが発信する風潮がこれからの若い女性にどれほど大きな影響を与えることか。
それを思うとき、仮にも女子アナの話題性や破廉恥度で視聴率を稼ぐなどあってはならない。

フジテレビは女子アナのタレント化で、先鞭をつけたのはウチだと胸を張っている
そうだが、恥をさらしていると気がつかないマスコミ業界はどうしたものだろう。
女子アナの採用基準は常識と良識に照準を合わせたものにして欲しい。

つまり、このコラムの主旨は破廉恥出身の女子アナを責めているのではなく、
女子アナをタレント化してそれを平気で使っているテレビ業界と、
それをよしとしている視聴者への鬱憤なのです。

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