第77回  キンキラキン

いろいろなビジネスで成功した人たちの、
豪華な邸宅や暮らしぶりを披露するのが流行っているようだ。
特に、女性の成功者の生活スタイルは人気があるのか、
テレビをはじめとするメディアでの露出ぶりを目にする機会が多い。

わたしは彼女らがご執心のウズラの卵大の宝石や、
運動会が出来そうな広いリビング、
車庫にずらりと並んだ高級名車には興味も憧れも持ち合わせていない。

しかし、お散歩とノラネコ相手の没世間では、
世の中がだんだん遠のいてしまいには霞んでくるので、
我が身をバリバリの現実世界へときどき引き戻すことと、
情報収集にはこの手の番組のウオッチも必見になる。

最近たてつづけに女性版のビジネス成功者を見た。

まずは美容整形で成功している美人女医さん、年商10億円とか。
わたしの癖でその道の成功者を見るときは、
ご本人のビジネス分野が当人に反映されているかをまず検証する。

「どこか美容整形をしているのかな?」

彼女のかなり濃い目の化粧はちょっと不自然に映ったが、真偽の判定は微妙だった。
女医さんのイメージより銀座のマダム風の印象を受けたので、
苦労して女医さんになったのかと思いきや、父上もお医者さま。
従って実家も豪華版である。
成金の美白の女王さまの雰囲気がおじょうさまだったのかぁ。
意外!
高級外車や沖縄で一泊のちょいとリゾート暮らしも紹介された。

お次は、エステサロンの草分け的存在で年商220億円企業の女社長さん。
女社長さんは言ってみれば歩く広告塔。
つまりはエステという分野のビジネス看板。
それを検証すると・・・ちょっと肉付きがよろしすぎるような・・・
エステは果たして効果があるの? とイジワルなわたしの悪い癖。

彼女はご自慢の宝石箱を前に「これは1億円しました」と、
すでにテレビ露出用に並べてあったダイヤのネックレス、イヤリング、ブレスレットの
三点セットをご披露した。ほかにも高価な宝石がゴロゴロ。
彼女のイメージからすれば、さもありなんというところか。

最後は投資ビジネスで成功した40代の美人女性。
すでに知られている先の二人に比べたらニューフェイスである。
この手の成功女性には珍しいあっさりの薄化粧。
彼女はスッキリ鼻梁の天然の美形なので、その方がよろしいようだ。
装いはそれなりに高価なものだろうが、はた目にはごく普通のスーツ姿である。
さすがに「投資ビジネス」という分野を感じさせるが、
装いの中身は他の女性成功者と何も変らなかった。

シンプルなスーツの胸元には、これも見た目はシンプルなネックレス。
だが彼女は言った。
「これ、1億円したのよ」

つまり安サラリーマンの生涯サラリーを、
彼女はさりげなく首にブラ下げていたのだ。
それから画面に現れるもののお値段を彼女はいちいち紹介する。
「これは何百万円、あれは何千万」

立て続けに言う彼女を、リポーターが遮った。
「そこまでは聞いていませんよ」

彼女は、かの有名な六本木ヒルズにお住まいだ。
1ケ月の家賃が150万円くらいするようだが、彼女は言った。

「このマンションは上に行くほど300万円、400万円と家賃が高くなります。
 ホリエモンさんや有名な方は上階に住んでいらっしゃいます。
 私も、もっともっと上に住むようになるのが目標です」

わたしは特別な機会に六本木ヒルズの部屋を内覧したことがあるが、
映画で見る豪華部屋よりさらにすごかった!
そのとき感想としては「地に足がついていない生活なんてまっぴら」
わたしは極度の高所恐怖症なのです。

彼女の成功の秘訣は目標を持つことだそうだが、
彼女の基盤は米国留学時代にあるとのこと。
周囲はセスナ機でバカンスへ行くような友人ばかり。
ある誕生パーティーで友人が庭を指して言った。
「パパがプレゼントしてくれたの」
パパのプレゼントは庭を駆け回っている馬だった。
それを見た彼女は「絶対にこのような生活を手に入れる」と誓ったそうだ。

その夢を実現しつつある彼女は、視聴者に向けて力をこめて言った。
「強い目標を持って、それに向かって一生懸命努力することです」

うーん、良くわかる。
ナマケ者のわたしにはとても適切なアドヴァイスだ。
でも目標によりけりかな。

行き着く先が、高層マンションやキンキラキンではねぇ。


HOME  TOP  NEXT