第76回  耳ピアスを4つくっ付けた発信心理学者

子育ての苦労は24時間体制で目が離せない。
赤ちゃんの時はもちろんだが、よちよち歩きの時代も、
眠っている時以外は一時も目が離せない。

さらに自我が芽生えてくると、親の言うことは聞かない、
自分の要求が通らなければ泣きわめくで、
ママの神経を逆撫でしてどっと疲れさせる。

「ママにもほんの少しでいいの、時間をちょうだい」
と、ヒステリックに叫びたくなるのも当然である。

そんなママたちに、カナダで制作された番組をお薦めしたい番組が、
NHK衛星第一放送で木曜日午後1時から放映の「子育て」という番組である。

ただし、この番組の放映はときどき変わるらしい。
以前、この番組を初めて見たとき興味を持ち、
今は子育てには関係の無い身ながら時間があると見ていたが、
やがてその時間帯はワールドニュースに変わり、
それを見続けていたらメジャーリーグの野球放送に変わった。

それから以後はパッタリその時間帯の衛星放送にチャンネルを合わせなくなったが、
その後チャンネルを回す途中で偶然に懐かしい顔に出会った。

「子育て」の番組の主役である
発信心理学者のマイケル・ワイルス博士がその人である。
残念ながら今は放映していないがその時の番組の様子を書いてみたい。

彼は年のころなら30代後半、或いは40代?
プロレスラーのような巨体、頭頂部は滅び行く大草原になりかけているが、
残った髪は後ろでしっぽのように束ねている。
片耳には細い輪のピアスが4つ。

番組で博士は子育てで悩みがある家庭を訪問するが、
外国の家庭らしくいつも夫婦が揃って登場する。
夫婦の子育ての悩みを聞きながらその家庭の子供の様子を観察しつつ、
子供を叱ったり褒めたりの実践をする。

子育ての悩みは大半が
「子供が言う事を聞かない」
「ちょっとでもいいか大人の(自分の)時間が欲しい」

どうしたら子供が言う事をきくようになるか、
どうしたら自分の時間を少しでも確保できるかを、
博士が現場で子供たちに実際に接しながら教授するのである。

博士の教えを実践した数ヵ月後の様子も報告されるが
「自分の時間がとれるようになった」「子供が言う事をきくようになった」と、
両親たちには好評である。

この番組の良い点は教育的な押し付けがましいところや、
理屈っぽさがまったく感じられないことである。
つまり非常に楽しみながら子育て教育を納得させられるのである。

その功績は博士の風貌や、家庭を訪ねるときのくつろいだ服装も、
大いに影響しているようである。
博士は大抵がポロシャツ姿であり、時には半ズボンのとてもリラックスした雰囲気で、
悩める両親に面接する。
子供の叱り方や褒め方、親の時間に幼児と言えども立ち入らせない方法等を
とてもわかりやすく子供に実践して見せるのである。

ある日の放映内容は、
キッチンで調理をするママやパパにまとわりついて離れない子。
彼は大きな声をあげて騒いだりして親の言う事をまったく聞かない子だった。

母親が勤めから帰ってくるとまとわりついて離れない子に、
彼女はちょっとの間でもいいから休ませてと願っている。
博士は時間を限って子供に言い聞かせる方法をアドバイスしたが、
それにはタイマーを使った。

「ママに20分だけ時間をちょうだい」と、ママはタイマーをかけてみせる。
それを繰り返し教え込む。

数ヵ月後に母親が言った。
「ときどき私がタイマーをかけ忘れると、
 ママ、タイマーをかけて休まなくちゃっと、
 子供が言ってくれるようになりました」

ママはとても満足そうだった。

家の中で遊びながら大騒ぎする癖についても、博士は言った。
「親の注意を自分に向けたいから騒いでいるのです。
 だから騒いでも 無駄ということを教えなければなりません」

あれっ?

以前犬を飼いたいと思ったとき、まず本を3冊ほど買ってきて読んだ。
そのなかの一節に、激しく吼える犬についての教育方法があった。

「犬は飼い主の注意を引きたくて吼えるのです。そんなとき<吼えちゃあダメ>なんて
 顔を出して叱るのは犬の思うツボです。そういうときは無視しましょう。
 そのうちに吼えても相手にされないとわかると、犬は自然に吼えなくなります」

・・・なるほど、
犬と子供のしつけは、同じなんだぁ・・・

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