第72回  ああ、結婚・・・

テレビで中国の特集番組があった。
その中で注目したのが中国の結婚事情である。
上海の中流家庭の様子を紹介していたが、
子供の結婚に対する両親の思いの強さには驚いた。

中国では一人っ子政策以後、<小皇帝、小皇后>と称されるほど、
子供は大切にかつわがままに育てられているとのことだが、
近年はそれゆえの弊害も問題視されているようだ。

最近中国を旅行した際に、市民生活の様子を見たいと町中の公園へ行った。
木の幹に何かを手書きした紙切れがたくさん貼り付けてあった。
詳細は分からなかったが箇条書きを見ると、年齢やら<大学>の文字があったので、
たぶん結婚案内だろうと推測したが、帰国後のテレビ番組の中で
それと同様の場面があったので納得した。

前述の中流家庭の母親は、28歳の娘のために血眼になって結婚相手を探している。
その手段はバスに乗って上海にある公園に駆け付け、
結婚募集の紙を求めて集まったごった返す人の波をかき分け、
よりよい条件のものを探し当てて家に帰り、娘を説得する。

しぶる娘が選んだ候補のうち、
二番目の男性とファミリーレストランで会わせることになった。
最初は双方の親も同席するがやがて二人きりになる。
その間、母親は別の場所で待っているが全く落ち着かない。
やがて夕刻になり、母親のもとに戻って来た娘は開口一番言った。
「あの人はケチだからいや!」
理由は食事の時間なのにごちそうしてくれなかったから。

母親はあきらめないで結婚募集を探し続けるようだが、
その様子は部外者にはちょっとした喜劇にも映る。

一方の日本も、子供の結婚の相談が人生コーナーに寄せられている。
自分の子供の結婚を心配しなければならないような 40代、50代の
未婚の息子や娘の行く末を案じる相談が、
年老いた親からたくさん寄せられている。
テレビ番組でその辺の事情を特集したものがあった。
 
日本の40代、50代の未婚男性が日本女性との結婚を諦めて、
中国女性にアプローチする姿を追ったものである。

アプローチはもちろん独力ではない。
結納金から手数料まで総額200万円もの費用を要する結婚ビジネスが存在するが、
中国から送られてくる女性の写真はみな女優さんのような美人で、
年齢も20代が多くを占める。

77歳の母親と暮らす40代後半の男性が22歳の女性を希望した。
彼は中国に妻を求める理由を「自分の環境ではもう日本の女性は無理」と言った。

彼は中国に渡り、写真の彼女と実際にあってデートした。
感触もとてもよく彼女も「とてもよい人」と前向きだったが、
その後彼女の態度が一変した。

理由は、彼の身上書に「住宅ローン」の項目があったこと。
中国ではローン制度がないため<借金>と誤解され切り捨てられたのだ。
 
テレビスタッフが結婚仲介ビジネスの中国人の元を訪ねると、
日本語がぺらぺらの30代の茶髪の男性が現れた。
ローンの彼女のことを尋ねると、
電話をしても一切連絡が取れなくなってしまったとのこと。
 
別の日本人男性はすこし事情が違っていた。
年収1千万円以上の56歳の大手企業の管理職。
イタリアに2ヘクタールの土地とイギリスにマンションを所有している。
「日本人女性からプロポーズもあるが、お金目的だからいや」という理由で、
中国女性に理想の妻を求めているようだ。

彼が選んだのはダンサー、ホテルのフロント係、デパートの販売員。
その三人と中国に行ってはデートを繰り返しているが、
その中から気の合った女性を選びたいと言った。
中国のディスコのフロアーでダンスを踊る56歳の彼は、
若者顔負けのパワーを発散していた。
 
彼は「日本女性はお金を求めるからいや」と言ったが、
彼はひょっとすると昔の慎ましい日本人女性の面影を、
若い中国人女性の中に見ているのだろうか。

では、中国人の若い女性は何ゆえに
親子ほど年の違う日本人(大抵がその年齢)と見合いをするのか。
なぜ「気の合うよい人」と言いながらローンを知った時点で、
理由も告げずに音信不通の態度が取れるのか。
そこに金銭感覚が働かないと言い切れるのだろうか。
 
たしかに写真や画面で見る若い中国人女性には、
今の若い日本人女性には見られない初々しい清潔感が感じられるが、
求めているものとなると、
究極は同じではないかと感想を持ったテレビ番組だった。

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