第64回  マサイ族に負けちゃった!

携帯電話やパソコンの普及と共に、
<ITボケ>なるものが存在しているようである。
物忘れがその代表格のようですが、
「便利になるほど頭を使う機会が減るのです」と専門家は指摘する。

「脳の機能低下は記憶力にもっともよく表れる。
脳そのものに問題はないのにボケている」と、
脳神経外科医の築山節氏は語るが、これがつまりITボケ。

それを予防するには、
端的に言うと今の便利な生活を捨てなさいということになる。
ITに頼らないで不便でも自分の脳ミソを使って生活すること。
結局は以前のアナログ生活が、人間の脳細胞には快適ということになるようだ。

自分の快適を追及すると脳が不快感を表わし、
脳が快適になると人間が不便を余儀なくされるという、
まことに人間の脳は持ち主を安楽にさせないようにできていると、
つくづく思う。

その脳のメカニズムに、わたしは敬意を表している。

だからというわけではないけれど、
我が家は夫もわたしも未だに携帯電話を持っていない。
路上や住宅街をブツブツ電話をかけながら歩く人が当たり前の世の中を
<ヘンな世の中>と思わずにはいられない。

彼や彼女に「今どこにいる?」から始まり、
一日中逐一電話で連絡取り合う恋人同士や友人関係を、
薄気味が悪いと感ずる。

このようなIT濃密関係からITというツールなしに、
お互いが毎日顔をあわせる現実関係に移行したらどうなるのか。
その関係は数日も持たないうちに破綻することだろう。

携帯電話やメールは一種のバーチャルの世界である。
顔の表情が見えないその人の個性や雰囲気を文字で推測するのは、
もはや相手との関係ではなく、
自分の創った世界にどっぷり浸かっているようなものである。

さらに用事もないのに、やたらとメールを打ちまくり、
「返信がないと不安」と奴隷状態になっているさまを見ると、
異常ではないのと感じる。

しかし、人間は一度手にした利便さをなかなか手放せないものだ。
それが怖くて、わたしは携帯が持てないのかもしれないが、
どこかで、たかが機械に振り回されるのは真っ平と思っているようでもある。

築山節氏の監修によるITボケのチエックリストとなるものが
新聞に掲載されていたのでトライした。
アナログ生活を送っているのに、判定の目安のボケ点数が最高点だった。
(こんなもので最高点もらっても、ちっともうれしくないのに)

なぜ?

引っかかったのは次の項目。

・家族か職場の人としか話をしないのがほとんどの生活。
 (ノラ猫ちゃんとは過剰におしゃべりする)

・友人とのやり取りはメールのみ。
 (電話は向こうから来る。誘われてものらりくらりと約束を半年、
  1年と平気で延ばす)

・クレジットカードにサインするときくらいしか文字を書かない。
 (その通り!)

・レンタルビデオ店で同じ映画だと気づかずにまた借りる。
(レンタルビデオは利用経験が皆無でも、
 同じジャズのCDを2枚買ったことが何回かある)

・はじめて会ったと思っている人に「前に会った」と言われた。
 (人名、地名、本やCDのタイトルはどうしても覚えられない)

・覚えている電話番号は会社と自宅の2件しかない。
 (自宅しかない。その自宅も時折忘れる)

・映画やドラマを見ていてもすぐ飽きる。
(今の映画やドラマはまったく見ないが、たぶん見てもすぐ飽きる。
 昔の名画なら何度見ても飽きない)

・前の食事の内容が思い出せない。
 (しょっちゅう)

結果は16点以上で「記憶障害の疑いあり」

脳機能の障害や心の問題がないかを調べるため、
脳神経外科、精神科または神経内科を受診するとあった。

ITに溺れた生活を送ってもいないのに、なぜ?

築山氏は「能力の低下」を防ぐ方法として創造的な作業をすることとし、
文章やお絵描き、歌を歌ったり家事をしたり、
周囲を散策するのも良いとしている。

これらについては、わたしはすべてについてかなりこなしている。
お絵描きにしてもHPに「マサイ族に負けちゃった!」をアップしている。
マサイ族は、今やマサイ俗になって携帯電話を使っているようであるが、
我が家にはいまだに携帯電話がない。
したがって、マサイ俗に負けたのだ。

それでもIT依存症の結果が出た。
このボケの真相をさぐるために、
一度専門機関を受診してみたいと考えています。


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