第55回 人生いろいろ、情熱もいろいろ

今、世の中は混沌としている。
幼児は、実の親にいじめられたり殺されたりする運命に晒され、
小中学生は、学校での級友からいじめや教師の歪んだ嗜好の餌食となり、
若者は無軌道で無気力、中年は疲弊で自殺率トップ。
高年は過去の教育による慎ましい日本人としてのタガが外れ、
若い世代に負けず劣らずの、無軌道やキレ状態に陥っている。

これだけを並べたてて見ると、日本の将来に暗澹とする思いですが、
これらはメディアが好んで発する刺激的な事件の主役たちであり、
その陰には多くの善良な国民がいて、
そういう人々によって世の中が支えられているのは明らかです。

その多くの善良な国民が住む国は、世界に冠たる長寿国ですが、
それを素直に喜んでよいものなのか。

もちろん現象としてはとても喜ばしいことですが、
ただ寿命を長く生きながらえているだけで、本当の長寿国と言えるだろうか。
長寿の人生の内容こそが大切だと思っていますが、
最近の読売の人生案内の内容には胸が詰まる思いがした。

投書の主は80歳の男性。
若い頃から苦労を重ねた末に、ある女性と知り合い結婚。
44歳にして子供も授かり楽しい生活を送ることが出来たが、
子供は幼いときに事故で亡くした。
夫婦で悲嘆のどん底から立ち直ることができたが、
その妻も3年前に亡くした。
最近なぜか死にたくなったが健康診断をうけたら、
「あと20年は生きられる」と言われた。

病気で苦しんでいる高齢者からすると羨ましいような話ですが、
当人にはそれなりの悩みがあるから、世の中はうまくいかないもの。

高齢者が老い先を楽しく生きられるような世の中が理想ですが、
年金の先行き不安、庶民に厳しい医療費や重税等、
高齢者にバラ色の余生は望めない状況です。

しかし、世の中は広い、元気すぎて暴走する老年もいるようです。

最近の読売の記事に登場したのは70歳の介護ヘルパーの女性。
この女性は79歳の男性に200通以上のラブレターを出し続け、
自宅に何回も押しかけるなどしたため、
男性が「精神的に参っている」と警察に相談。
老女はストーカー規制法違反容疑で逮捕されたというから、
元気すぎるのも困ったことになるのでしょうか。

ある女性雑誌のタイトルにも驚いた。
「介護疲れを癒した80歳の彼との性愛」
投稿者は主婦74歳である。

この女性雑誌は読者の赤裸々な体験を募集した記事が売りのようですが、
わたしは読んだことがない。
しかし、新聞の広告記事に載っているタイトルを見ると、
かならず仰天させられるような文字が踊っている。
こんなことまで書いちゃうのかしらと想像させるような、
赤裸々なタイトルの羅列である。

一度書店で立ち読みをと思っていても、未だに実現していないけれど、
先のタイトルから想像されるのは、夫の介護に疲れている74歳の主婦が、
80歳の彼と浮気をしているというものでしょうか。

しかし彼女の場合は切実である。
74歳がもし夫を介護しているとしたら、その苦労のありようは、
他人には計り知れないものがあるに違いない。
浮気とはいえ、その苦労が80歳の男性との性愛で癒されるのなら、
道は外していても、誰も文句は言えないのではと思った。

わたしとしては、かなり複雑な思いを抱きましたが、
若輩の身として、この先の自分の人生の情熱を思いやると、
ちょっと羨ましいような気がしないでもありませんが、
人生に情熱は必要不可欠なもの。

情熱に自信がお有りになる方は、どうぞ頑張っていただきたい。



HOME  TOP NEXT