第54回  半熟卵を鍛える

最近の治安の悪化に対して、早急に警察官の数を増やすことが望まれますが、
読売の「治安再生シリーズ」の記事中に、
警察官の卵たちの教育実態レポートがあった。

警察学校では、警察官としての自覚を促すために、
新人警察官に対して日々訓練が行われているが、
教官を務める警視の不安は、限りなく広がるようです。

まずは、体力の極端な低下。

1クラス40人の中に、懸垂が1回もできない者が5人ほどはいるとのこと。
(ちなみにわたしは1回できるかどうかの程度ですが)

ソフトボールを投げて骨折した(投げて!)例もあるという。

大半が集団生活の経験がなく、1人で外泊をしたことがない新人もいる。
箒の持ち方を知らない。
アイロンがかけられない。
お茶は湯のみ茶碗に茶葉を入れて直接お湯を注ぐ。

(今どきの若い女性の中には、米を研ぐのに洗剤を使う人もいると聞いたので、
 新人男子警察官の方がまだマシ?)

「躾がなっていないから、常識が身についていない。
 まるでマナー教室のようである。そんな学生たちを一列に並ばせ敬礼させる。
 そんなことから始まり、警察官としての自覚を持たせるまで教育をするのは
 大変なこと」

警察学校がマナー教室?
そりゃあ、教官も大変です。

教官は、親が子供を甘やかしているのも自立できないのも気になっている。
携帯電話が禁止されていた1か月間に、4回も面会に来た母親もいる。
教官の所へは、いつも連れ立ってやってくる。
みんなでひとつの場所に固まってしまう。
仲間意識は強いが、個性がないのも気になるとのこと。

入校1か月目の職務質問の実習状況は、まるでコメディのよう。

容疑者役の教官に声をかける二人の警官の卵は、
もじもじと譲り合うしぐさをしながらか細い声で「すみません・・・」
容疑者役の教官から「うるさい! 忙しい」と怒鳴り返されると、
二人は顔を引きつらせてすくんでしまった。
(教官の演技が、あまりにも迫真過ぎたのか?)

警察官として採用が決まった学生を集めたときの状況は、
茶髪やピアス、室内でコートも脱がない、歩き方もだらしがない。
(茶髪の人を合格させたの? そちらの方が問題)

・・・と半熟卵の警察官に対する教官の気分は、限りなくブルーになりますが、
一方では「他人と話すことに慣れていない。どなられることもないから
彼らが戸惑うのは当然。根気よく付き合うしかない」と、
理解と諦めが入り混じった複雑な思いを抱く教官もいるようです。

警視庁の捜査一課の元幹部は言う。
<人の心と向き合う>それが刑事の仕事だ。

「容疑者が、自分の不利なことを話すわけがない。
 こちらがどこまで知っているか、 びくびくしながら様子を見てる」
 ・・・のだそうだ。

そんな容疑者に対して、
かつての刑事は容疑者の人生を紙に書きだし自宅の壁に張り、
頭に叩き込んで調べに臨んだ。
容疑者の生家にまで足を運び、
柱に傷があれば、帰ってからそれを容疑者に伝える。

「背比べの跡が残っていたよ。お袋は髪が真っ白だったぞ」

当時の学校の担任にあたり、本人さえも覚えていない話を聞きだす。
究極は「助産婦に当たれ」と、生まれた時の体重を雑談の中でぶっつける。
犯人は「そこまで・・・」と観念するそうだ。

(最近の犯罪検挙率低下の理由も、今昔の刑事の気質の相違?)

半熟卵にはかなり遠い道程ですが、
かつて「落としの○○○」と異名をとった元刑事の言葉を
新人警察官へのはなむけの言葉としたい。

「頭は抜群にいい。教えたことはきちんとこなす。
 磨けば素晴らしい警官になれるのだから、教える側の質と熱意が重要だ」

荒れた世相の中で、最近は簡単な職務質問でも命がけの場面が急増している。
警察官は自分の命をいつも危険に晒しているから、
その職務には頭が下がる思いですが、
半熟卵さんのご健闘を心からお祈りしています。


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